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2013年1月 9日 (水)

生活保護是正問題 ようやく出てきた具体策

本日まず初めに、近年ようやく生保不正受給と言うことが一部ゴシップ誌の専売特許から離れ一般のマスコミにも取り上げられるようになってきましたが、実際に不正対策を試みようとすると制度的な不備も大きいということが明らかになってきたというニュースを紹介してみましょう。

「生活保護」薬物密売通じ暴力団へ 支給ストップ、見極めに壁(2013年1月6日産経新聞)

 生活保護をめぐっては、暴力団組員らが身分を偽り、保護費を不正受給する詐欺事件が相次いできた。このため、各地の福祉事務所は、申請の際に不審な点があった場合、警察当局に照会。暴力団関係者と判明すれば、申請を断るといった運用がなされている。

 しかし、申請の際に覚醒剤などの薬物常習者かどうかを見極めるのは容易ではない

 厚生労働省の担当者は「違法薬物に関する照会は指示していない」と明かし、警察庁幹部も「過去に薬物事件について問い合わせがあったというのは聞いたことがない」と話す。

 福祉事務所が申請を断ったり、保護費の支給を打ち切るには、資産や収入を隠しているなど、支給の要件に反する実態が判明しなければならない。申請者が覚醒剤などの薬物事件に絡んでいたとしても、摘発されていなければ、支給が止まることはない

 そこが、公的資金の一部が暴力団に流れる温床となっている。

 困窮状態にあるのに生活保護の申請をためらって家族で餓死したとみられる問題が全国各地で相次ぐ一方、受給者が覚醒剤欲しさに強盗やひったくりなどの事件を引き起こすケースも後を絶たない

 大阪府警に平成24年3月に強盗事件で逮捕された生活保護を受けていた無職の男は、覚醒剤の購入資金を得る目的で犯行に及んでいた。警察庁幹部は「覚醒剤を買って保護費を使い果たし、さらに違法薬物を得るために窃盗や強盗事件を起こすなど一般市民の生活を脅かす二次的な被害が発生したケースは多い」と危機感を示す。そのあげく、公的資金の一部が暴力団の資金源になっている現状を、どうつぶしていくか。警察や厚労省、関係当局などに突きつけられた課題といえる。

違法行為に手を染めるなど論外であることはもちろんなのですが、例えばこうした犯罪を犯した人間は当然ながらその後正業に就く可能性は極めて低くなるはずですから、彼らが罪を償った後に再び困窮したとしてどのように遇するべきかということはなかなかに難しい課題であるように思いますね。
諸外国においても同様のジレンマはあるようですが、収入もなく日々の生活にも事欠く人間が各種犯罪に走り治安が悪化していくリスクを考えれば、ある程度最低限のお金を出しておいた方がかえって安く済むんじゃないかと言う考え方もありますよね(あまり行きすぎると某神話の国のようになってしまいますが…)。
日本の場合はもともと治安もよく民度も高いからそこまで心配しなくても…と考える人もいるかも知れませんが、一方で日本では寄付行為や宗教・NPO団体による慈善活動が諸外国よりずっと不活発だという側面もありますから、生活支援と言えば公的支援に、より正確には生活保護というシステムたった一つにほぼ完全に依存しているというリスクは指摘されるところです。
この結果せっかく出来る範囲で仕事を始めても収入分だけ保護費が削られていくので結局何もせずごろごろしているのが一番いい、なんておかしな話もあるくらいで、この生保という制度ももう少し制度を改めていく必要があるだろうという点ではようやく大方のコンセンサスが得られてきたように思います。

その実例として最近ではようやく生保の前段階として当座の食料を現物支給します、なんて試みが自治体レベルで始まっていて良い傾向だと思いますが、現政権も導入を検討しているというこの現物給付には何故か熱心な反対論者も多いといった調子で、いわゆる総論賛成各論反対の状態でこのまま改革も先送りになるんじゃないかという懸念がなしとしません。
しかし生活保護とは法的にもわざわざ「最低限度の生活需要を超えてはいけない」という規定があることも考えると、少なくともどちらでも変わりないものならより安上がりに済ませるべきだと言う考え方は妥当であって、安売りのクオーツ時計で用は足りるのに高価な機械式時計でないと満足出来ない、なんてことはやはりおかしいだろうと見るべきでしょうね(残念なことにそうした事例はしばしば散見されるようですが)。
その意味で最近議論の的になっているのが国がわざわざ「同じ成分、同じ薬」と公言している後発医薬品(ジェネリック薬)の使用率が自己負担のない生保患者で一般より低いという問題ですが、一部方面から何故か強烈な反対の続いていた後発品使用の強制化に代わって今度はこんなアイデアが出てきているようです。

生活保護受給者、後発薬に誘導「先発薬なら差額負担を」 政府検討(2013年1月6日産経新聞)

 政府は5日、増え続ける生活保護費を抑制するため、受給者が高価な先発薬(新薬)を使用する場合、安価な後発薬(ジェネリック医薬品)との差額分について自己負担を求める方向で検討に入った。

 診療や調剤など受給者の医療費は「医療扶助」として全額を公費で負担しているが生活保護費のほぼ半分を占めている。後発薬の普及を促すことで、医療扶助の適正化を図るのが狙い。生活保護費の削減は、平成25年度予算編成の焦点になっている。

 高齢化や景気の悪化を背景に、生活保護の受給者は増加傾向にあり、24年6月現在で約211万5千人に上る。

 12年度に1・9兆円(国負担は1・5兆円)だった生活保護費は、22年度に3・3兆円(同2・5兆円)まで膨らみ、国の財政を圧迫。このうち、医療扶助費は半分の1・6兆円を占める。受給者に医療費負担が免除されていることが、医療費の増加や医療機関の過剰診療につながっているとの指摘は少なくない。

 受給者の医療費が一般の人より高額であることも問題になっており、財務省の試算では、30~39歳の受給者の場合、1人当たり医療費(外来)は年間12万7千円で、一般の人(4万7千円)の2・7倍に達する。

 後発薬についても財務省が23年5~6月のデータ(数量ベース)から試算したところ、受給者の使用率は20・9%で一般の人の23・0%より使用率が低かった

 政府は先発薬を使う場合は差額を自己負担とする仕組みを導入することで、受給者に後発薬の使用を促し、医療費の増加に歯止めをかけたい考えだ。

 後発薬の義務化の議論もあるが「生活保護受給者だけが義務化されるのはおかしい」などの理由から抵抗感が根強く、田村憲久厚生労働相は「事実上(後発薬に)誘導できる政策を考える」と述べていた。

 自民党は衆院選公約で、国費ベースで8千億円の生活保護費の削減を打ち出しており、実現のために医療扶助の適正化は不可欠となっている。

 【用語解説】後発薬(ジェネリック医薬品)  新たに開発した医薬品を先発薬(新薬)と呼ぶのに対し、後発薬(ジェネリック医薬品)は先発薬の特許期間(最長25年)が切れた後に同様の有効成分でつくる医薬品を指す。開発費を大幅に圧縮できるため、先発薬より価格が2~7割安く、医療費の削減も期待できる。厚生労働省が普及に力を入れており、国内外の製薬会社の参入も増加している。

医療費自体が高額に付くことに関して言えば、生保受給者の中には当然ながら基礎疾患があって働けないという人達も相応に含まれているはずですから、厳密にはそうした補正を入れた上で比較してみないことには一概に何とも言えませんが、医療現場にとっては必要でもないのにタクシー代わりに救急車を呼ぶ、不要と思われる検査や治療を要求するといった困った患者が多いという実感はあるかも知れません。
ただ厚労省の建前としては後発品と先発品は全く同等であると主張しているわけですから、実際の医療給付の段階で選択の余地を残しているのがそもそもおかしいという意見もあって、同じ薬と言うなら薬価も全く同じにすべきだとか、一般患者も含め原則全員後発品を使用させるべきだとか、生保云々を抜きにして以前から議論されてきたところではあったわけです。
このあたりはどのように考えれば「不当な差別だ!」と言われがたい政策になるのか難しいところですが、一般患者にしてもジェネリックではなく先発品を使用することで差額を自己負担しているということを考えるならば、生保患者においても同様に差額を自己負担するのは差別どころか全く同等の扱いであるわけで、これはなかなかうまいことを考えてきたなという気がしますね。

先日も少しばかり紹介しましたように就任会見当時の田村厚労相は政権公約とも言える保護費1割引き上げは推進する意欲を示したものの医療扶助の削減には否定的、かつ後発医薬品強制化にも及び腰である様子だっただけに、こうして「事実上(後発薬に)誘導できる政策」を早々に打ち出してきたことには多少なりとも意外な気がします。
ただ記事を読んだ限りでは厚労省というよりは財務省が主導して話を進めてきているのかなという気配も濃厚で、この辺りは数字で明確に示された逆差別の実態もあるだけに、差別はせずとも少なくとも一般患者並にまでは政策誘導していかないことには国民感情としても納得しがたいところでしょう。
ただ一口に8000億円の削減と行っても国費ベースでは削ったものの、その分を結局は各自治体につけ回すようなことになっては意味がありませんし、何より生保患者の相手に疲れた医療現場などにとっても救済になるようなうまいやり方での改善策を検討していただきたいものだと思いますね。

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コメント

>安売りのクオーツ時計で用は足りるのに高価な機械式時計でないと満足出来ない

軽四でことたりるのに高級外車を乗り回すナマポw

投稿: aaa | 2013年1月 9日 (水) 10時35分

8000億円削減ってじつに四分の一削減ですけどできますか?
過去にこんな大がかりな社会保障の抑制ってなかったような。

投稿: ぽん太 | 2013年1月 9日 (水) 11時14分

>軽四でことたりるのに高級外車を乗り回すナマポw

生保受給者をそうと知りながら接する機会が多いという点では医療現場はちょっと特殊な環境ですからね。
そういう意味では一般の国民と多少認識が異なっているのかも知れませんけど。

投稿: 管理人nobu | 2013年1月 9日 (水) 11時42分

報道する側、あるいは広めている側の問題もねえ。
河本の件はあれほど騒いだにもかかわらず(自分はそもそも母親の生活保護より
河本の年収5千万がウソだろと思ってたわけだが)、
北海道の道議の母親の件とか、松山市議が不正受給の口利きしてた件とかは
ちょこちょこっと記事にしただけでハイおしまいだもんよ。

まあ理由は分かるけどさ。

投稿: 名無子 | 2013年1月 9日 (水) 12時37分

200万もいるんだからナマポ新党でも立ち上げたらいいじゃん
議員になったらもうナマポ代表じゃなくなるけどな

投稿: | 2013年1月 9日 (水) 12時49分

甘利大臣、骨太の方針「痛み伴うものに」- 社保制度改革は国民会議が担当
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38957.html

小泉政権時の経済財政諮問会議は、公共事業の削減や社会保障費の抑制などの改革を含めた
「骨太の方針」を取りまとめた。今回も同様の改革を打ち出すのかを記者に問われた甘利氏は、
「もちろんだ」と即答。

投稿: | 2013年1月10日 (木) 09時10分

公共事業増やすのか減らすのか…

投稿: ぽん太 | 2013年1月10日 (木) 13時45分

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