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2012年12月25日 (火)

新政権の医療政策 公約から想像する問題点

近く新政権発足が確実視される自民党ですが、今回の総選挙において掲げられた医療政策のまとめがありましたので紹介します。

政権復帰した自民党が掲げる今後の医療政策を読み解く(2012年12月22日QLifePro)

地域による医療格差の是正、いつでもどこでも高品質な医療サービスを

12月16日に投開票が行われた衆議院選挙。地滑り的に全国で大勝し、3年ぶりに政権与党として復帰する。同党が掲げた総合政策集「J-ファイル2012」の中の医療や福祉に関する公約を見てみよう。
発足が確実視されている安倍政権は、「地域による医療格差をなくし、国と自治体が連携して、日本全国どこででも均一な医療サービスが受けられる社会の実現を目指していく」としている。

その実現のために、有床診療所をはじめとする診療所の機能の強化・充実や、地域産業保健センターの強化、救急医療体制作りの強化などを行っていくとある。

また、医療費の問題については、高額医療費の限度額を引き下げるとともに、医療と介護の総合合算制度を創設することで、高額医療費の負担を抑え、誰でも安心して医療サービスが受けられる体制を整えるとした。

医療関連従事者の確保や役割の拡大

医療関連従事者の確保や役割の拡大も重要な医療政策の1つとして挙げているのも特徴だ。具体的な政策としては、医師の科目別・地域別の偏在の解消、必要な医学部定員の確保、総合診療医の育成とかかりつけ医およびかかりつけ薬局の導入・強化などをかかげている。

さらに、かかりつけ薬局の充実・強化は、薬剤師の業務拡大や基礎的医薬品の安定供給などとともに、セルフメディケーション(自己健康管理)の推進などを目的としている。

また、高齢化の進行に備えて、介護サービスの充実にも取り組んでいく。介護サービスの効率化・重点化を行い、公費の負担を増大させていくことで、介護保険料の増大を抑え、介護従事者の処遇改善を進め、質が高く、必要な介護サービスが受けられる体制を整える。

さらに、介護支援専門員(ケアマネジャー)を国家資格化し、特養・老健などの「介護保険施設」においての専従化を進めることで、高齢者が高品質な介護サービスを受け、住み慣れた街で自立した生活を営むことができる社会システムの構築を行うという。

3年ぶりに政権復帰した自民党。これら政策が単に選挙のための絵に描いた餅にならず、キチンと実行されるかどうか有権者としては引き続き注視していきたい。

介護も含めた高齢者対策がかなり大きな比重を占めているのは高齢化社会が進んでいく中で選挙対策としても当然のことなのですが、特に繰り返し出てくるキーフレーズとして医療格差の解消ということを挙げていることが注目でしょうか。
医療格差ということはすでに各方面で言われていることですけれども、例えば「日本全国どこででも均一な医療サービスが受けられる社会の実現」などと言うことを文字通りに解釈するとド田舎にも集学的治療が受けられ各科専門医も取りそろった総合病院がないといけないと言うことになり、これは限りある医療資源のリソース配分を考えた場合に逆格差と言われることにもなりかねません。
そう思いつつ実際の格差解消策として並べられているものを見ますとこれが厚労省の規定の方針通りといった感じで特に新味があるものでもないのですが、逆に言うとこうした政策を地道に推進していくことが格差解消に結びつくと言う考えなのであれば「均一な医療サービス」という言葉の定義を巡って異論が出ないでもなさそうに思います。

偏在解消ということに関連してもう一つ、最近では医療の費用対効果ということも言われるようになってきていますが、医療格差とは費用対効果あるいは経済原則から形成されてきたという側面もあって、例えば人口集積度の低い田舎での医療充実はこの費用対効果の改善という観点からは全く真逆の方向への迷走とも言えるものですよね。
一頃から田舎にタヌキやイノシシしか通らない道路をばんばん作っていると土建行政がさんざん悪者にされてきましたが、実は医療の費用対効果という観点から言えば医療券の中心に医療資源を集中し、周辺部からは整備された道路網で患者の行き来を容易にするというスタイルが一番効率が良いという意見も出ているように、地域格差はむしろ積極的に活用した方がいい部分もあるはずです。
この点で実は医療と介護と言う二大分野は一見して密接な関係にあるようにも見えながら患者動線の点では動的、静的という大きな違いがあって、例えば急性期医療と療養型病床を含む慢性期医療・介護とはリソースの地域配分に格差を設けた方がより効率的で、後者が外来では地域の総合医としても働くと言うのであれば一石二鳥ですよね。
この辺りは折から言われている医師強制配置計画とも絡むところなのですが、この方式の欠点は下手をするとジェネラリストが僻地巡りを続けることを余儀なくされかねない一方、片田舎で役に立たなそうなニッチな専門領域を目指すことで都市部定着を目指すという発想が出てきかねないことで、どのような制度設計を行っていくのかが改めて注目されます。

格差解消と並んで気にかかるのが高額医療費限度額の引き下げや医療と介護の総合合算制度創設、さらに介護領域における公費負担の増大などに見られるように医療アクセスの改善を追求する施策が並んでいることですが、悲しいことに患者の自由度が極めて高い日本の医療制度でこうしたアクセス改善策を講じれば際限なく医療需要が増大していくということは過去の歴史が証明していると思います。
ちょうど先日は横倉日医会長が安倍氏と会談した折、かつての第一次安倍政権でも継承された頃と違って社会保障費の自然増は圧縮しないという手応えを得たように言っていますが、同会長の感触が正しかったとしても何らの需要制限策も取らないままこうした方針を貫けば早晩国として耐え難い規模にまで医療費が自然増加してしまうでしょう。
先の格差解消の話とも絡めて考えて見るならば、例えば国民全てが医療アクセスに不自由しているという往年のイギリス式の悪平等主義とも言える体制を目指すのであれば全ての話が矛盾なく成立する可能性がありますが、さすがに地滑り的大勝が黙っていてもほぼ約束されていた状況でそこまで深く考えて公約を書いたと言うことでもないのでしょうね(苦笑)。
となると逆に国民受けがよい当たり障りの無い政策を羅列しただけという可能性が高そうですが、そう思ってみると特権数多の高齢者医療問題に対してより深刻さを増している若年ワープア層対策がすっぽり抜け落ちていることが気になってくるというもので、やはりこの辺りは世代間の人口差と投票率の格差とが公約のターゲットにも反映されているのだと捉えるべきなのでしょうか。

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コメント

実は統合医療の推進も公約に掲げられてたりする。
いよいよ日本にもホメオパシーの時代が来るのかしら。

自民党が政権公約で「統合医療の推進」を明記
http://ib-kenko.jp/2012/12/post_834_1214_ym_1.html

投稿: tenga | 2012年12月25日 (火) 08時31分

公共投資で大盤振る舞いするのに医療介護でもこんなこと言っちゃって財源どうするのよ
マスコミでさえ高齢者優遇はこれ以上続けられないって言ってるこのご時世に無茶ぶりが過ぎる

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年12月25日 (火) 09時19分

この記事を読む限りでは出費を増やすばかりで抑制する話には触れられてないようですが、一応こんな文言があるようです。

>国民負担の増大を極力抑制する中で、予防医療総合プログラムの策定など、健康管理への自主的取り組みの促進、医療保険制度における財政基盤の安定化、保険料負担の公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等により、真に必要な医療の提供を進めます。

特に「保険料負担の公平の確保」「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」という文言が具体的に何を意味するのかが気になりますね。

投稿: 管理人nobu | 2012年12月25日 (火) 12時06分

公約の価値がここまで暴落したら話半分に聞くのも惜しいくらい・・・・

投稿: あんず | 2012年12月25日 (火) 18時17分

来年の参院選が終わるまでは良くも悪くもあまり話が進まないような気がします。
今回の衆院選圧勝で自民党は守りに入ってますから。

投稿: クマ | 2012年12月25日 (火) 19時54分

その通り。いわゆる現実路線ってやつだね。
もともと自民党はそういう政党だが、今はそれが有権者にどう受け取られるかで参院選の流れが決まると思う。

投稿: | 2012年12月26日 (水) 07時43分

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