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2012年12月11日 (火)

特定看護師問題 さらにじわじわと後退?

特定看護師問題に関連して、先日厚労省でこういう会議が開かれたと言うニュースが出ています。

看護師の特定行為、22項目を対象外に- 厚労省が修正案 (2012年12月6日CBニュース)より抜粋

 厚生労働省は6日、「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」(座長=有賀徹・昭和大病院院長)を開き、医師の指示の下、看護師(いわゆる「特定看護師」)が実施する特定の医療行為(特定行為)について、これまでの議論を踏まえた修正案を示した。原案では、94項目を特定行為として位置付けていたが、修正案では他の職種が行っているものなど、そのうち22項目を対象外とした。

■特定行為の定義に「病態の確認」を追加
 この日の会合で厚労省は、特定行為の考え方について、これまでの技術や判断の難易度に加え、対象となる病態の変化に応じた行為の内容を事前に明示したプロトコルに沿って、「看護師が患者の病態の確認を行った上で実施する行為」とすることを提案した。

 修正案は、その新たな考え方を踏まえたもので、原案で特定行為とした94項目のうち、「直接動脈穿刺による採血」や「腹部超音波検査の実施」など47項目については、看護師による病態の確認を要する「特定行為」とする一方で、「手術前検査の項目・実施時期の判断」や「直腸内圧測定・肛門内圧測定の実施」といった15項目に関しては、今後、病態の確認を伴う行為かどうかを検討した上で、最終的に特定行為とすべきかどうかを判断するとしている。

 また、看護師による病態確認が想定されなかったり、他の職種が実施していたりする13項目については、特定行為の対象外としたほか、「手術時の臓器や手術器械の把持・保持」や「在宅で終末期ケアを実施してきた患者の死亡確認」(「患者の死の三徴候の確認」に改称)など9項目を「一般の医行為」に修正。また、「実施時期の判断」と「実施」が分かれていた10項目については、一つの行為に統合するとした。

 特定行為の対象外となった項目に関しては、技術や判断の難易度の高い行為が多いことから、厚労省の担当者は、「通知等で診療の補助に入っていることを明示した上で、院内研修などの研修が必要だと考えている」と述べた。
(略)

特定看護師問題ではその業務対象をどこまでとするかで長い議論が続いていますが、範囲を明確化するほどに総論賛成だった議論が各論反対であることが明らかになってきた感があります。
実際にどのような行為が分類されているのかについては厚労省のHPに掲載された資料を参照いただきたいと思いますが、結局のところ特定看護師に何をさせたいのかということに関しても微妙に意見が食い違っていて、看護師サイドにおいても医師抜きで特定行為をどんどん推進したい積極派と、業務を増やすのは嫌だという消極派に二分されているようです。
特に医師と看護師の業務分担に関する議論などは、どこか大学病院の病棟での議論を見ているかのような感もありますね。

医師と看護師の役割分担めぐる議論が大詰め(2012年12月10日日経メディカル)より抜粋

(略)
看護師の裁量は?
 「看護師の裁量はどこに反映されるのか? 『病態の確認』は単なるスクリーニングだけではないのか?」。東京医科歯科大大学院教授の井上智子氏が厚労省案にかみついた。厚労省の担当者は、「病態の確認をした上で、あらかじめ定められた『プロトコール』の範囲に合致しているかの確認をする点がポイントだ。この場合には医師の具体的指示を求めないので、看護師の裁量と言える」と答えたが、他の委員から「病態の確認は、看護師がいつもやっている行為ではないか」との声も出た。

 厚労省が示したフロー図では、医師の指示が出されてから特定行為などが行われるまでの流れが詳細に書かれている。大きな議論になったのは、「B分類の行為」のうち、「包括的指示」で特定の看護師のみができる流れと、「具体的指示」で一般の看護師が行う流れとの違い。「包括的指示」で行う流れには、「プロトコールに規定された病態の範囲にあるか」という確認と、「患者の病態がその範囲に合致しているか」の確認という「2つの確認行為」があるが、「具体的指示」の流れにはない。

 特定の看護師と一般看護師の業務範囲を分けるのは「2つの確認行為」だが、プロトコール自体は「医師をはじめとするチームで決める」(厚労省)ため、特定の看護師がその裁量を発揮する場面がないのではないか、というのが井上氏の疑問だ。これに対し、有賀座長は、「プロトコールをチームで決める中で看護師に活躍してもらう。医師にも看護師にも他の医療者にも裁量がある」と返した。星総合病院理事長の星北斗氏は、「特定行為の考え方を変えるセンセーショナルな資料だ」として、「B分類の行為」を一般の看護師にも解放する点を評価した。

医師の業務は軽減されるのか?
 「今回のフロー図を見せられた現場はものすごく混乱してしまう。医師が看護師に『やっておいてね』と言ってやってもらうのが『包括的指示』だと思っていた」。恵寿総合病院の理事長で全日本病院協会副会長の神野正博氏は、こう不満を漏らした。厚労省案によると、特定の看護師に「丸投げ」ではなく、医師との連絡を緊密にしながら業務を進めていくことが示されている。

 フロー図では、医師が指示を出してから看護師が業務を実施するまでの流れは一方通行ではなく、時折ループして医師に戻ってくる。有賀座長は、「行ったり来たりを繰り返す」と説明。厚労省の担当者は、「病態の確認をやりながら、医師との連携が随時行われるべき」と説明した。一般の看護師が「B分類の行為」を行う場合には、「医師が患者のベッドサイドに行って病態の確認を行う」(厚労省)としている。星氏が「指定研修を受けた看護師でも、具体的指示を受けて実施するのか」と質問したところ、厚労省の担当者は「そういう理解だ」と答えた。

 厚労省案では、「包括的指示」で実施する場合には、「必要に応じて、医師に再確認や提案を行う」としている一方、「具体的指示」で実施する場合には、「看護師が医師に随時報告を行いながら、具体的指示を求める」と記載されている。しかし、「包括的指示」で実施する場合でも、具体的指示を受けながら実施するという解釈を示したため、両者の違いをめぐって議論が一時錯綜した。
(略)

一般の看護師の業務が増える?
 厚労省の提案に対し星氏は、「もう少し削ればコアになるものが見えてくる」と指摘し、「B分類の行為」のうち研修を義務付ける47行為をさらに減らすよう求めた。星氏は、「病院を離れて研修に行かなければできない行為が多くなればなるほど、地域の医療機関に与える影響が大きい」と語気を強めた。しかし、難易度の高い「特定行為」とされている「B分類」の枠組みを維持したまま絞り込むと、一般の看護師が「具体的指示」で行う業務の範囲が拡大する可能性もある。

 医療法人鉄蕉会医療管理本部の前看護管理部長である竹股喜代子氏は、「この流れは限りなく『B』(特定行為)が『C』(一般の医行為)になっていく。ナースがどんどん業務を引き受けることになり、現場の混乱を生じる」と星氏に反論。「日本の病院の7割は200床以下の中小病院で、現在の環境でも看護師にかなりの無理を強いている。『特定行為』は難易度が高い行為ばかり。これを一般の看護師が引き受けるのは、私が考えるレベルを超えている」と声を荒らげた。

 一方、ケアーズ白十字訪問看護ステーション統括所長の秋山正子氏は、「医療現場では医師が足りない。看護師がすぐにやることで、患者さんのQOLが上がるという状況が在宅医療でもある。議論を前に進めていくべきだ」と厚労省案を支持した。他の委員からも「皆さんの意見は、大きな方向性は違っていない」との発言もあり、議論は収束した。
(略)

そもそも特定看護師なるものについては必ずしも医師側からは積極的導入論者は多くなく、むしろ看護師サイドの地位向上を目指して提唱されてきたものであったように理解しているのですが、一方で医師の側にも日常診療でルーチンワークとして行われている業務の一部なりと看護婦がやってくれれば助かるという期待感もあったわけです。
しかし特定看護師が自ら判断をしながら特定行為を行えるとしても、一般看護師も医師の判断に従ってなら特定行為を行える、しかも特定看護師であっても行為の最中にたびたび医師に確認する必要があるとなれば、わざわざ研修など面倒な手順が必要な特定看護師などに頼らずとも…と考えてしまう先生方も多いのではないでしょうか?
これに加えて今でさえ忙しいのに仕事が増えるのは困る、なんてことを言い出す看護側代表まで出てくるというのでは、結局は責任を持って仕事をする意志などなく単に特定看護師という肩書き?だけが欲しかったんじゃないかと誤解される恐れすら出てきそうですね。

この仕事の振り分けの問題は結局医師と看護師のどちらが多忙かということにも結びついてくるわけですが、医師の側からすればチームで業務を分担しきちんとローテーションを組みながら仕事をしている看護師が、勤務時間などあってなきがごとしで30時間、40時間の連続勤務は日常茶飯事という医師より忙しいなど考えられない、という見方もあるでしょう。
無論、定型的な業務がほとんどの慢性期の施設などでは医師は指示だけ出しておけばほとんど看護師がやってくれるというケースもあるわけですから、最終的には個々の現場での実情に即して相談して決めるしかないはずなんですが、いざ業務分担をしようと思ってもやっていいかどうか判らないから出来ませんと言われるのが一番困るはずです。
何より看護と医師の仕事の範囲とは実に曖昧に流されてきた領域でもありますから、こうしていざその範囲を明確化するに当たって「それは私が考えるレベルを超えている」ばかりでは、一部施設では今までも当たり前に行われてきた業務ですら何かしらの掣肘が加えられることにもならないかと危惧してしまいます。
その意味ではひとまず看護師が何らかの前提条件付きででもやっていい範囲はなるべく幅広く取っておく、そしてその実施にあたっては施設のレベルやいざというときの対応能力なども含めて個別に判断していくということにしないと、大病院も小病院も急性期基幹病院も療養型もひとまとめにして全国一律の基準で決めようというのはさすがにまとまるものもまとまりませんよね。

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コメント

特定看護師って認定が面倒そうだけど大学の似非看護師ばかりが取ったりしないの?

投稿: さわち | 2012年12月11日 (火) 08時58分

そもそも看護師だって不足している点についてw

>結局は責任を持って仕事をする意志などなく単に特定看護師という肩書き?だけが欲しかったんじゃないかと誤解

節子それ誤解やないww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年12月11日 (火) 09時33分

それを言っちゃあおしめえよw

投稿: aaa | 2012年12月11日 (火) 10時22分

無論全員が全員積極推進派ということもないとは思います。
だからこそ一般看護師の業務範囲の方に要注目でしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2012年12月11日 (火) 11時50分

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