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2012年12月10日 (月)

後発品問題 こだわるなら安定供給は必須の条件ですが

最近では生活保護受給者にその使用を義務化するかどうかでも注目されている後発医薬品(ジェネリック)問題ですが、こうした議論がなされる元々の背景としては未だに日本では後発品使用率が高くはないという現実があることは言うまでもありませんよね。
そんな中で先日の中医協ではジェネリックのさらなる普及を目指してこんな新ルールが打ち出されたというのですが、まずは記事から紹介してみましょう。

後発医薬品普及へ新ルール=薬価で中間報告-中医協部会(2012年12月5日時事ドットコム)

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)薬価専門部会は5日、割安な後発医薬品のある先発医薬品の薬価に関する中間報告をまとめた。後発医薬品の普及に向け、一定期間を経ても後発医薬品への切り替えが適切に進んでいない場合、薬価を引き下げるルールを導入する方針を盛り込んだ。次期診療報酬改定に反映させる。

 後発医薬品は、先発医薬品と成分などは同じだが、開発費を抑えられる分、薬価が安い。厚労省は、患者の負担軽減や医療保険財政の改善を進めるため、2012年度までに後発医薬品の数量割合を30%以上(11年9月現在で22.8%)に引き上げる目標を設定し、利用促進に取り組んでいる。

どうも今ひとつこの新ルールの効果というものが判らないと言いますか、処方する医師の側からすれば値段も大差なくなるのであれば使い慣れた先発品を優先したいだろうし、患者にとってもジェネリックを希望するメリットが乏しくなる気もするのですが、おそらくは厚労省あたりから出てきた何かしらのデータなりに基づくことなんでしょうね。
ジェネリックに関しては当「ぐり研」でも繰り返し取り上げて来た通り「同じもの」だと偽って売るから問題で、最初から違うもの(類薬)として加減しながら扱うのであれば問題ない範疇だとは思うのですが、一方で同じ薬と言いながら効果は元より副作用の出方が違う、そして何より適応症が違うという厄介な問題がある点は制度的な課題としてはっきり明示的に解消していただきたいと思いますね。
そしてもう一つ、先日は薬剤師である熊谷信氏がこんな問題提起をしていますけれども、これまたはるか以前から「後発品メーカーは安定供給に問題が…」とかねて現場臨床医から不安視されていたことが現実になっているという話ですよね。

相次ぐ後発品の販売休止、問題点はどこにある?(2012年12月4日DIオンライン)

 先月11月初旬から、一部の後発医薬品の供給が不安定になっています。最初に名前が挙がってきたのは、確かシルニジピンだったでしょうか。その後、ビソプロロールやリスペリドン、マニジピンなどについても、一部メーカーが供給制限や一時販売休止を発表しています。

 各メーカーの報道発表によると、原因は、それらの後発品の原薬の入手が困難になったことにあるようです。RISFAXや日刊薬業は、「原薬を調達している韓国の原薬メーカーがGMP不適合を指摘され、原薬を出荷できなくなった」と報じており、当該企業が関わっている医薬品や日本企業に影響が出ているとみられます。

 私は、この問題に対しては、様々な見方ができるのではないかと考えています。GMP違反をした韓国企業の責任はもちろんですが、日本の後発品メーカーに対しても厳しい目が向けられています。

 もっとも、日本の後発品メーカーが、国内ではなく韓国から原料を調達していたことを問題視する人もいるかもしれませんが、そこは感情論的な部分で、あまり目を向けるべきではないと思います。一番の問題点は、日本の後発品メーカーのリスクマネジメントの“甘さ”ではないでしょうか。

 つまり、医薬品の原薬を調達するのに、単一のソースしか持たないからこのようなことが起こるわけです。原薬調達、製造、流通など、医薬品が患者さんの手元に届くまでには多くの過程を経るわけですが、色々なケースを想定した上で、それに対する個々のリスクマネジメントを行うことが必要とされます。

 こうしたことが大きな問題として認識される背景には、もちろん、後発品使用の拡大があります。一部の銘柄とはいえ、医薬品の供給が滞ることで影響を受ける患者さんの数も、以前とは比較にならないほどの規模なのかもしれません。

 これに対して沢井製薬の社長・澤井光郎氏は、全品目を対象に原料の調達先を複数化していく姿勢を示しています。原料調達の複数ソース化を行うことで、今回のような事態を避けることは、後発品メーカーとしても考えていかなければならない問題です。

 ただ、個人的には、そのような取り組みをどこまで行うべきなのか、疑問に思うところもあります。今回のケースでいえば、原料調達の複数ソース化を行うことで、後発品の最大のメリットの一つである「価格」が高止まりし、享受できなくなる可能性が出てくるからです。

 「安価であることを求めるなんて浅ましい。医薬品は安定供給あってこそのものだ」という反論はごもっともですし、私もそうあるべきだと考えます。しかし、全ての後発品に対して、いわゆる“フルサービス”を求めることは、本当に必要なのでしょうか

 “べき論”だけでなく、現状を見据え、必要に応じて妥協し、実現可能な方法について模索していくことも大切なのではないかと感じています。

リスクマネージメントと言えば以前にもアメリカで企業相手の保険ブローカーをしている方から、あちらに進出している日系企業の保険に対する考え方は総じて甘いが、特に製薬メーカーなどはあまりにお寒い内容の保険しか用意しておらず何かあれば撤退すればいいくらいに甘く考えているのでは?という指摘を受けたことがありますが、契約というものに対してある意味甘い日本企業という言い方も出来るのかも知れませんね。
有名なジョークにも「アメリカの会社が日本とロシアの企業に同じ部品の発注をしたところ…」という話がありますが、日本人の性質として契約通りに仕事をすればいい、ではなく契約以上に自然と頑張ってしまう、その結果普段の仕事をしていく上で契約というものを意識することが自然と少なくなってしまうのかも知れません。
しかし先の震災でも被災地内の一カ所でしか生産していなかった部品供給が滞ったために軒並み大企業の生産がストップしてしまったという事例が問題になったくらいで、今時の企業は生産効率を追求して世界中に工場を分散させているようでいて、実は突発的な災害等に対する脆弱性は地域の町工場に分散発注していた時代よりもはるかに劣ってしまっている可能性はありそうですね。

熊谷氏はこのリスク細分化ということに関して元々ジェネリックの優位性であるコストとの兼ね合いから、あまり過剰な対策を行うこともどうなのかと問題提起していますが、確かにジェネリックはどれも名前が違うだけで同じものであるという大前提を受け入れる限り一社が消えても他社製品で代替すればいいという発想は合理的と言うしかありません。
先日も格安航空会社が運行開始早々にトラブルが続発して顧客から呆れられたという報道がありましたが、そうしたリスクも込みで安い選択枝を提示されるということは資本主義社会としては全くおかしな話ではありませんよね。
ただ現実的には前述の通りジェネリックは先発品とも違う、そして他社のジェネリックとも違う「同系統の類薬」というレベルにとどまっているわけですから、現場臨床医からは「そんな不安定なものに頼るくらいなら最初から先発品が安心」という声が出るだろうことは想像できますよね。

この点に関してはどちらの主張にも一理あるとは思いますが、思うにかつては同種類薬の中でもこの会社の薬が一番効くんだ!と言った情報に精通し、一見すると似たような治療をしているのに他の先生よりも患者の経過がよいという先生が「治療がうまい先生」として一目置かれるようなところもありました。
ただ治療の標準化が叫ばれガイドライン(これは当然ながら製品名ではなく一般名で薬剤がリストアップされています)に従った治療をまずはやってみましょうという流れで医学教育も行われるようになっている時代にあって、そういう表だってのものではない経験的なコツに頼った治療スタイルはやや古いものになってきているのかも知れませんね。
国がこうも大々的に後発品、後発品と言うことの裏を返してみれば、ただでさえ多忙極まりない医療現場にそこまでの職人芸的精密さに基づいた医療は求めませんよ、もっと大ざっぱな医療でも構わないんですよという暗黙のメッセージであるとも言えるのでしょうか。

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コメント

田舎病院で自治医の先生の医療を初めて見たときはインパクト大だった記憶が
そもそも論で言えばジェネリックに商品名がいるんだろうか?全部一般名でいいんじゃないかって思うんですが

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年12月10日 (月) 09時55分

>一定期間を経ても後発医薬品への切り替えが適切に進んでいない場合、薬価を引き下げるルール

開業医に患者を誘導しようと病院外来を引き下げた二の舞になる悪寒w

投稿: aaa | 2012年12月10日 (月) 11時00分

効果が本当に同じなら値段が違うのはおかしいはずだと誰か言い出さないかなと思っているんですが。

投稿: 管理人nobu | 2012年12月10日 (月) 13時35分

そのとおりですね。一般の健康保険の患者の処方が薬局の都合でに勝手にジェネリックに変更されるのは心外。
食べ物や日用品と同じで値段が安いというのは消費者に知られたくないそれ相応の都合の悪い理由があるはず。
後発品解禁になったとたんに30〜40社から一斉に同じ薬が発売されるというのも奇妙な話です。
いくら売れてる薬といってもここまでライバルが群雄割拠すれば1社の利益は伸びるわけもない。下手したら
発売しても薬局に強いパイプがなければ結果的にさっぱり売れないということもあるでしょう。

投稿: 逃散前科者 | 2012年12月10日 (月) 15時45分

後発品使用率にこだわる意味がわからないです。
先発品が高くて医療費に響くのなら単に薬科引き下げれば済む話で、別に後発品である必要はないですよね。
どうせ後発品が出るころには製薬会社も元は取ってるでしょうから不満もないのでは?
すでに生産設備持ってる一社が生産するより新規参入複数社で生産する方が原価は高くつくでしょうに。

投稿: ぽん太 | 2012年12月10日 (月) 16時02分

>一般の健康保険の患者の処方が薬局の都合でに勝手にジェネリックに変更されるのは心外。

医師サイドが勝手に変更されるのがイヤなら「ジェネリック不可」にしとけば済む事ですし、患者サイドなら薬局で「ジェネリックはイヤ先発品にしてくれ」って表明すれば済む事でわ?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年12月11日 (火) 09時43分

素朴な疑問。。。
ゾロに反対する先生って、ゾロにかえたら大変なことになっちゃった経験があるから反対してんの?
アレルギーはなんの薬でも起こるし、いくらか効き具合が違ってても容量調節でいんじゃね?
そこまで意固地になって反対する理由がちょっとわからないんだけど。。。

投稿: アキラ | 2012年12月12日 (水) 16時13分

同じ小麦粉とクリーム使ってるからオレ様が作ったこのぐしゃぐしゃの糞ケーキは一流パティシエが作ったケーキと同等のもんだ安くしといてやるありがたく思えさぁた食べろw、と言われて納得出来るならそれもまたよしw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年12月14日 (金) 10時23分

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