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2012年12月14日 (金)

産科無過失補償 結果を踏まえ改訂へ

本日の本題に入る前に、以前から言われていた詐欺行為についてとうとう逮捕者が出たというニュースをお伝えしましょう。

難病女児利用し募金詐欺 容疑のNPO役員ら逮捕 大阪府警(2012年12月10日産経新聞)

 ■数百万円集金か

 大阪府内に実在する難病の女児(5)への支援を訴える街頭募金活動を行い、通行人から現金をだまし取ったとして、大阪府警捜査2課が詐欺容疑で、大阪市内のNPO法人「W.S.A」役員、中村穣次容疑者(32)ら5人を逮捕していたことが10日、分かった。中村容疑者らは1年数カ月前から大阪市内の繁華街や大阪府泉佐野市内などで嘘の募金活動を繰り返し、数百万円の募金を集めていたとみられる。

 府警によると、ほかに逮捕されたのはいずれも同府内の19~58歳の男4人。逮捕容疑は今年11月上旬、泉佐野市内の街頭で、厚生労働省が小児慢性特定疾患に認定している「骨形成不全症」を抱える女児への支援名目で募金活動を行い、数人から寄せられた計千円を詐取したとしている。

 府警によると、中村容疑者らは2~4人で街頭募金を実施。逮捕者以外にも活動していた人がいるという。NPO法人は慈善団体を装うため、難病患者の支援を事業目的として今年8月に設立されていた。

 骨形成不全症は骨の主要成分であるコラーゲンの異常で骨が極端に弱い先天性疾患。骨折が多発したり、骨が変形したりする症状が出る。

 厚労省が原則18歳未満の患者に、症状や所得に応じて医療費の一部を助成している。女児は重症のため全額補助を受けていたという。
(略)

俗に「難病詐欺」などと呼ばれるこうした詐欺行為には様々なやり方がありますし、過去のケースでは実際に難病であり治療行為も行っているような場合でも必要以上と思われる募金を募った上で用途も公表しないといった場合にも詐欺まがいの行為だとして容易に炎上してしまうようですから、どこまでが許容される行為なのかは非常に微妙なところがありますね。
ただ今回の場合は医療費全額が公費補助される対象ということですからお金は何に使っていたのかということにもなったわけで、以前から言われているように今後この種の募金活動は個別に好き勝手なことを行うのではなく、きちんとした公的団体に資金をプールして必要なだけを支給を受けて活用するといった明朗なやり方も必要になってくるのかなと思います。
いずれにしてもこうした詐欺行為が成立するのも対象が「気の毒な子供」であるからというのは一面の真理で、例えばこれが「うちの寝たきり爺ちゃんの介護費用をカンパしてくださ~い」では集まるものもそうそう集まらないでしょうから、小さく弱いものに対する保護衝動とは子孫を残そうとする本能にもつながる人間の根源的欲求の一つに数え上げてもいいものなのかも知れませんね。
そうした観点からも産科無過失補償制度が未だ実現のきざしも見えてこない他の医療補償制度に先駆けて運用されているのも納得出来る話なのですが、運用開始からここまでのデータが最近になって相次いで発表されたことが報道されていますので取り上げてみましょう。

産科補償制度開始から414件が対象に- 11月末現在、1年で168件増(2012年12g1つ11日CBニュース)

 分娩に関連して一定の条件下で重度脳性まひを発症した児に補償金を支払う「産科医療補償制度」で、制度が始まった2009年1月から12年11月末までに414件が補償対象に認定されたことが11日、日本医療機能評価機構のまとめで分かった。11年11月時点から168件増えた。

 414件を児が生まれた年別に見ると、09年生まれが185件、10年生まれが151件、11年生まれが69件で、12年生まれが9件。この1年で新たに認定されたのは、09年生まれが29件、10年生まれが62件、11年生まれが68件だった。このほか23件が、現時点では障害の程度の予測が難しく、補償対象かどうか判断できないものの、適切な時期に再診断などが行われれば認定できる可能性があるとして、「再申請可能」となっている。
 414件のうち、損害賠償請求が行われたのは23件(5.6%)で、うち4件が解決済みという。

 この制度の補償申請期限は5歳の誕生日までで、09年に生まれた児は14年の誕生日まで補償を申請できる。【高崎慎也】

むしろ年々申請が減ってるじゃないか!という人もいるでしょうが、誕生直後には判断のしにくい場合もままあることから、最終的にはある程度長期間の経過を見た後でないと申請がどれくらいの比率になるのかは判断出来ないでしょうね。
ただ補償対象を相当に絞り込んだこともあって申請されたケースの大多数が認められたのはいいとして、もともと年間3000人という脳性麻痺児のうちでもごく限られた対象のみに補償するということで厚労省も500~800人程度と非常に控えめな予想を打ち出してきていましたが、現状ではその予想すらはるかに下回る低調さでほとんどの脳性麻痺児は華麗にスルーされているということですよね。
この制度に関しては例によって様々な問題点が指摘されながらも無いよりは断然あった方がいいと考えているところですが、制度自体の認知度が上がってくればもう少し申請件数も増えてくるだろうとは言え、やはり脳性麻痺という重い障害を抱えた患児と両親にすれば「何故全員が補償されないの?」と言う素朴な疑問はあるのではないでしょうか?
特にこの制度で期待されていた柱の一つとして周産期医療事故に関わる医療訴訟を減らせるのかという命題がありましたが、補償される対象かどうかを医師が判断するともなればまたそこで係争化の下地が形作られてしまうことは避けられず、実際に損害賠償請求も発生している点を見てもやはり北欧型のような医師と家族が協力して広範な無過失補償を目指すというスタイルがよいのではないかと思います。

また、すでに余剰金280億円が行方不明?になっていると報じられるなど制度の運用面で数々の課題を抱えていることは明らかになっているところで、天下の天下り団体である医療機能評価機構も来春から見直し作業に取りかかるというスケジュールを公表していますが、補償水準や補償対象の議論と並んで未だに根強く残るのが医師へのペナルティー導入の是非です。
何らペナルティーがなければ医療技術向上へのモチベーションも湧きようがなく、研修参加など最低限の教育的ペナルティーは職業人の義務として必要だろうということを言う人も未だにあり、今後の議論の進展次第でこの辺りの話が煮詰まってくるようですとより広範な医療無過失補償の導入や医療事故調創設の議論へも影響を与えずにはいられませんよね。
ただそもそも現行の補償対象が極めて限定的なものになっているのも出産時の事故に関連すると推測される症例に対象を絞っているためですが、分娩を原因とする脳性麻痺はせいぜい10~20%とも言われ、有名なところとして一頃医療訴訟に恐れをなしてアメリカでは帝王切開率が急上昇した、ところが脳性麻痺は一向に減らなかったという話にもあるように「脳性麻痺=医療ミス」的な捉え方には非常に問題がありそうです。
もともと脳性麻痺は過失度合いと賠償額のミスマッチが極めて大きいと言われ、ただでさえ各種リスクを忌避して産科医が不足を極める事態にもなりかえって母子の健康に悪影響を及ぼしているという状況が先にあったわけですから、制度を改めるにしても医師と家族とに新たな対立要因を持ち込むような方向での改訂は避けた方が結局は利が多いのではないでしょうか。

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コメント

金払っても訴訟率5.6%って高いんじゃ?
補償導入しても下がってないんじゃ意味ない気が

投稿: tenga | 2012年12月14日 (金) 09時26分

産科全体の訴訟率が12%でしたっけ?それに比べれば下がったと言っていいのかどうか。
実感としてどうなのか実際の症例に遭遇した先生のご意見もうかがいたいですね。

投稿: ぽん太 | 2012年12月14日 (金) 11時51分

個人的には思ったよりも訴えられてるなという印象です。
ただ補償対象が拡大され社会的にそれが当たり前になってくるとまた変わってくるのかも知れませんね。
いずれにしてももう少し安定期になってからのデータが出ないと何とも言い難いという感じです。

投稿: 管理人nobu | 2012年12月14日 (金) 12時13分

ぼったくりの金はどこに消えていったんだろw

投稿: aaa | 2012年12月14日 (金) 16時59分

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