« 今日のぐり:「天乃うどん店」 | トップページ | 出生前診断の指針公表 »

2012年12月17日 (月)

メタボ健診受診の強制は意味があるか?

俗にメタボ健診とも言われる特定健診について、先日相次いで受診率の低さを指摘する報道がなされていました。

メタボ健診の受診率43% 10年度、目標に遠く(2012年12月12日47ニュース)

 厚生労働省は12日、40~74歳を対象とした特定健康診査、いわゆる「メタボ健診」の2010年度の受診率(確報値)が前年度から1・9ポイント上昇し、43・2%になったと発表した。対象者数は約5219万人で、受診者数は約2255万人。政府目標の受診率70%には程遠い結果だった。

 健診の結果、心筋梗塞や脳卒中の危険性が高まるとされるメタボリック症候群やメタボ予備軍と指摘され、保健指導が必要とされた人は約413万人。このうち指導を受けた人は約54万人にとどまった。

”日曜健診 国保加入者が殺到”(2012年12月8日読売新聞)

40歳以上の国民健康保険加入者の特定健診受診率を上げようと、前橋市が募集した今冬の「日曜総合健診」に申し込みが殺到した。市では「平日に休みを取りにくい自営業者などの国保加入者の現状に配慮したことなどが功を奏した」としている。

特定健診は、生活習慣病予防のために、2008年度から国が自治体や健康保険組合などに義務づけている。対象は、医療保険に加入している40~74歳の男女。同市の国保加入者の特定健診受診率は08~11年度まで、30%台で推移しており、国が市町村に求める受診率の目標65%を下回っている。

同市では原因として、国保の主な加入者である自営業者や農家らが、病院が開いている平日は仕事が忙しくて健診を受けられないためと分析。日曜日に複数のがん検診と合わせた健診を行うことで、受診率を上げようと、今回の健診を企画した。

市健康増進課によると、更新された保険証を郵送する際に受診を呼びかけるチラシを同封。9月20日から、今月2日と来年1月20日の2日間で先着計400人を募集したところ、すぐに定員を超え、締め切り後も200人以上から問い合わせがあったという。応募者の6割以上が健診を初めて受ける市民で、同課は「受診者の掘り起こしにもつながった」としている。

健診で引っかかった人のうち、きちんとその後のフォローアップを受けている人がわずか一割ほどで、大多数は受けっぱなしで放置しているという事実に留意いただきたいと思います。
一般論としては企業勤務者よりは平日休業の多い自営業や農家の方がまだしも時間の都合がつきそうな気もするのですが、サラリーマンにしても会社から強力に受診を指導されているから受診しているだけという人も多いでしょうし、ましてやそうした強制力の働かない自営業では受診するモチベーションが低くなるのも仕方のないことなのでしょうか。
厚労省では受診率向上のために健診時の面接をネットで行うことも認めるという方針のようですが、一方で健診後の指導についてはさらに厳しくする方針でもあるようで、これだけ未受診者が多いこともあわせるとペナルティーを恐れる企業側からの締め付けは今まで以上に厳しいものになってくるはずですよね。
一方では今もメタボの診断基準について異論が示されるなど必ずしも健診そのものに完全なコンセンサスが得られているとも言い切れない状況でもあるのですが、そんな中で今度はこんな話が出てきているということが注目されます。

特定健診の医療費削減効果を検証へ- 厚労省検討会がWGを設置 (2012年12月12日CBニュース)

 厚生労働省保険局の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」は12日の会合で、内臓脂肪型肥満に着目した特定健診と保健指導による医療費の削減効果などを、国のデータベースを活用して学術的に検証するワーキンググループ(WG)の設置を決めた。来年3月ごろまでに検証の方法や進め方を決め、その後、検証作業に着手する予定だ。

 この「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのWG」では、特定健診と保健指導により、血圧や血糖値などの検査値や、食習慣が改善されたかどうか、生活習慣病を予防することで、どれほど医療費が削減されたか、などを検証する。委員は、検討会の座長を務める多田羅浩三・日本公衆衛生協会長のほか、▽津下一代・あいち健康の森健康科学総合センター長▽福田敬・国立保健医療科学院上席主任研究官▽三浦克之・滋賀医科大教授―の計4人で構成し、必要に応じて追加する。

 WGは非公開で開催。検証結果は、同検討会に報告するとともに、適時公表するという。【高崎慎也】

すでに今年の夏には社会保障審議会の主導で医療にも費用対効果の概念を導入していくべきだという方針がまとめられたところであり、例えば喫煙対策なども都道府県が達成すべき目標の一つに掲げられていたくらいですから違和感はないのですが、しかしこの特定健診というものの費用対効果を検証するとなると大もめしそうですよね。
もともとは病気になる前に予防していくことで医療費を削減できるという考え方で行われているのがこの特定健診ですが、実際にやってみますと生活習慣病などと呼ばれている通り各個人の暮らし方に由来すると思われる異常値が毎年引っかかってくる、そして相変わらず改善する兆しもないまま健診と精査、指導を繰り返されているというケースも少なからずあるわけですね。
もちろん何もせず放置しているよりは将来の大病発生のリスクは減るのかも知れませんが、健診業務自体もそれなりに手間暇もコストもかかる一方でどうもあまりはかばかしい成果を上げているようにも思えない節もあり、一般の疾患を対象にするだけでも十分に多忙な医療現場のリソースをこれ以上割いてまで得られるメリットがどれほどあるのかと言う疑問を抱く人も相応にいるのではないでしょうか?

思うに特定健診の制度設計における最大のミストは国民は等しく健康になりたいと願っているものであり、そのために自らの健康上の問題を指摘してあげる機会さえあれば誰しも健康になろうと努力するなり治療を受けるなりするだろうという、今時ちょっとないような不自然な性善説に基づいているところにあるように感じます。
実際には健診で異常値でも出そうものなら「どういうことだ!正常値に書き直せ!」と怒鳴り込んでくる人間など珍しくないですし、要精査で引っかけようものなら「検査も治療もする気ないから。さっさと仕事に支障なしって証明だけ書いて」と言い放つ人間も日常茶飯事で、そうした自ら望んで健康になりたいとなにがしかの労力を払おうと言う意志のない人々にとって健診など単なる余計なコストにしか過ぎないということでしょう。
その意味では単純に健診関連業務だけでの費用対効果で比べて見るのではなく健診患者の治療率や、リソース不足な医療現場に対する負担とその結果起こるだろう一般患者への悪影響という部分までも含めて考えて見ないことには正確な検証は出来ないだろうし、どうせ引っかかっても何もする気のない人に受診を強要することも少なからぬ手間暇とコストをかける意味があるのかとも思えてきますね。

|

« 今日のぐり:「天乃うどん店」 | トップページ | 出生前診断の指針公表 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

血圧の測定値を目の前で書き直してった剛の者がいたなあ

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年12月17日 (月) 11時17分

ほんとに予防効果があるのなら、自ら予防の努力をした者としなかった者とで保険料や給付に差をつけてもいいんじゃ?
多くの民間保険がそんなしくみになってますよね。

投稿: ぽん太 | 2012年12月17日 (月) 12時37分

差をつけるなら健康保険加入も任意にしてもらわないと
無理やり全員入れられて高い保険料取られた上に差別されるんじゃ話にならない

投稿: みんみん | 2012年12月17日 (月) 14時00分

>無理やり全員入れられて高い保険料取られた上に
いや~ 無理にでも全員入っているから、現行制度の徴収額は
この程度の金額で済んでるんでしょ?
手に入れられる医療環境を考えると、バーゲン価格の筈ですよ。

>健康保険加入も任意にしてもらわないと
もし任意にするなら、生命保険と同じように
「高齢」や「病弱」なハイリスク群に属してからでは、
加入できない、あるいは超高額な保険料を月々掛けさせられる
そんな事になりますよね。。
要は「弱者切り捨て」「姥捨て山」政策って奴です
つまり事実上現行の保険制度が崩壊する訳ですね。
まあ それもヨシ と言うなら、それもヨシです、
それがグローバルスタンダードではありますから。

>差別されるんじゃ話にならない
「差別」というより、自助努力をした場合には、
インセンティブを受けられるって話にも考えられますよ~。

投稿: 福京 | 2012年12月17日 (月) 16時55分

健康には留意していて、腹もぜんぜん出っ張っていなくて、忙しくて全く時間がなくて、行っておりませんが。
血液検査の数値は欲しい気もするんですが、メタボ検診って言われちゃうとねぇ。行っても無駄っぽい感じなんですよね。

投稿: みる | 2012年12月17日 (月) 21時37分

健康保険が民間じゃありえないくらい好条件なのは事実として、それでも保険料高すぎるって声はあるくらいですので、人間の行動は必ずしも理屈通りにはいかないというのは仕方ないです。
ただ本人も受けたくないと言っているものを無理矢理追い立てて受診させるほどの価値がメタボ健診にあるのかどうかですよね。
費用対効果で考えれば現役時代は好き放題やって退職後は長生きせずぽっくりいってもらった方が社会保障の負担は最小化されるという考え方もあるでしょうし。

投稿: 管理人nobu | 2012年12月18日 (火) 11時28分

降圧剤のARBとかスタチンとか販売している製薬会社の利権がからんでいる悪感がしますね。

投稿: 逃散前科者 | 2012年12月18日 (火) 14時11分

たいして効果に違いもないのに新薬は増え続け薬価が上がる一方
うちにもやたら新薬に切り替えたがる先生いますがプロパーとはツーカーですね
年寄りにわざとACE出してるのに勝手にクソ高いARBに変えんじゃねえと言いたいわホント

投稿: 石原 | 2012年12月18日 (火) 16時30分

こんにちは。

検診で異常値がでても、自覚症状として
でにくいのが生活習慣病ですからね。

自覚症状がないと「大丈夫だろう」と
油断してしまう・・・。

生活習慣病の悪化がどれほど恐ろしい
ものなのかを広めることも大切かも・・・
と思いました。

投稿: ヨッち | 2012年12月26日 (水) 16時32分

ローソンは健診受けなきゃボーナス減らすって言ってるらしいね
でも健診だけ受けて引っかかっても放置じゃ意味ないんだけどね

投稿: あん | 2012年12月26日 (水) 18時07分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/56333684

この記事へのトラックバック一覧です: メタボ健診受診の強制は意味があるか?:

« 今日のぐり:「天乃うどん店」 | トップページ | 出生前診断の指針公表 »