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2012年11月12日 (月)

医療費自己負担是正 日医と現場の温度差拡大

本日の本題に入る前に、ようやくと言うべきでしょうか、先日こういう報道があったのをご存じでしょうか。

年金過払い分:減額、来年10月から…民主案成立へ(2012年11月9日毎日新聞)

 本来より2.5%高い公的年金の支給水準の是正に関し、民主党は8日、当初案より1年遅らせて13年10月から減額する方針を固めた。14年度末まで3段階で計2.5%引き下げ、本来水準に戻す。カットを1年延期すると約1兆円の「払い過ぎ」となるものの、減額に反対する公明党に配慮し、次期衆院選や来年夏の参院選後に先送りした。民主党は政府提出の国民年金法改正案を修正する意向。自民党も応じる方向で、同法案は15日に衆院を通過し、今国会で成立する見通しだ。

 公的年金の支給額は物価の変動などに連動して決まる。だが、00〜02年度は物価が計1.7%下がったのに、当時与党だった自民、公明両党は高齢者への配慮から年金額を据え置いた

 現在の年金額は本来より2.5%高く、累積の過払い額は約7兆円に達した。政府は今年10月から3年で2.5%減額する方針を決定。12年度は0.9%、13、14年度は0.8%引き下げるとし、先の通常国会に同改正案を提出したが継続審議となっている。

 その後、民主党は来年4月からの引き下げも模索したが、結局来年10月からとした。13年度後半と14年度前半に1%ずつ、14年度は後半にさらに0.5%引き下げる。時期を遅らせる分、本来水準に戻す期間を3年から2年に短縮し、年金財政への影響を抑える。

 1%の減で支給月額は国民年金(満額約6万5000円)で約650円下がり、最終的には1600円程度の減額となる。

 厚生年金(標準世帯の夫婦2人分、約23万円)は1%減なら月に約2300円の減で、最終的には約6000円の引き下げとなる。【鈴木直】

現在の状況ではまだ予断を許しませんが、主要政党が合意したということで基本的には過払い分を是正するということは決定的となったと見るべきでしょうか。
年金生活者と言えばバブル以前には社会的弱者の典型のように言われていましたが、近年の平均所得の低迷と共に現役労働者層の貧困化が進んできますと、過去の資産蓄積がある高齢者は一転して最も資産を多く持つ富裕層と見なされるべき存在になってしまいました。
これに加えてデフレ下での支給額是正が政治的配慮から延び延びになってきたことから、年金生活者や生保受給者といった定額収入が担保されてきた人々が優遇された形になっていて、例えば各種公的負担が免除されている生保受給者は実質年収400万相当の生活水準だと言いますから、社会情勢の変化に応じて適宜是正すべき点は是正しようという声が出るのも当然です。
医療の世界においても各方面での声の高まりを受けて高齢者や生保受給者対策が様々に議論されている中で、先日以来お伝えしているように日医や一部政治家による抵抗が根強いことは先日お伝えした通りですが、実は医療の現場に近い人々の間ではいささか異なった見解を持っているらしいという調査結果が出てきました。

生活保護者の後発品「義務化」に賛成過半数- 医師向け調査 (2012年11月7日CBニュース)

 生活保護受給者に後発医薬品の使用を義務付けることについて、医師の54.1%が賛成していることが7日、医師・医療従事者向けサイトを運営するケアネット(東京都千代田区)の調査で分かった。

 調査は10月26日にインターネットを通じて実施。会員医師1000人から有効回答を得た。それによると、「生活保護受給者に後発品の使用を(今後)義務付けること」に関して考えを尋ねたところ、「賛成」は54.1%、「現状のままで良い」は28.9%、「違った方法を考えるべき」は17.0%だった。

 回答者にコメントを求めたところ、「(後発品は)認可されている薬品なので義務付けてもいいのではないか」などと義務化を求める意見がある一方で、「先発品と後発品の効果がまったく同じと保証できない現状では、義務化は困難」などの慎重論も寄せられた。

 そのほかの肯定的な意見としては、「後発品の使用を国策として促進するのであれば、先発品にこだわる必要はない」「経済的な理由から後発品を希望する人が多い中、全額免除の人だけが高い薬を使うのはヒトとして納得できない」などがあった。これに対し慎重論では、「先発品と後発品両方をそろえるのは、医療機関の負担」などの指摘があった。

 また、後発品の中でも、使用を義務付ける対象を限定すべきとの声や、薬代の一部を自己負担にすることで、生活保護受給者が自主的に安価の後発品を選ぶのを促すべきだとの提案もあった。【佐藤貴彦】

医師の7割超、医療扶助の一部自己負担を- ケアネット調査 (2012年11月7日CBニュース)

 生活保護受給者の医療扶助について、医師の7割超が、医療費の一部を受給者に負担させる制度を導入すべきだと考えていることが7日、医師・医療従事者向けサイトを運営するケアネット(東京都千代田区)の調査で分かった。賛成派からは、生活保護を受けていない低所得者との公平性を指摘する意見が寄せられた一方、現状維持を求める医師からは、受診抑制や、医療費の支払いを拒否された場合に医療機関が負担することを懸念する声などが上がった。

 同社は10月26日、インターネットを通じて医療扶助に対する意識調査を行い、会員医師1000人から有効回答を得た。それによると、「医療費適正化のため、生活保護の医療費の一部を自己負担にすること」について聞いたところ、73.1%が「賛成」で、「違った方法を考えるべき」は15.6%、「現状のままで良い」は11.3%だった。

 自由回答では、「少額でも一部負担にすれば、不要な点滴をしたりする人は減る」「(負担がないと)無駄な薬や検査など、何でも要求してくる。医療費の抑制になる」などと負担導入に賛成する声や、「受診抑制を心配するのであれば、その前に、保険料をきちんと納めているのに窓口負担を心配して受診できないワーキングプアと呼ばれる方々に補助すべき」といった公平性を求める意見があった。また、「原疾患で働けなくて生活保護になっている人は、別に扱うことが必要」「軽症疾患には自己負担を導入し、慢性疾患や重症疾患はこれまで通りにしてはどうか」といった提案もあった。

 一方、自己負担導入への慎重論としては、「受診抑制につながる」「一部の不心得者のために必要な人への援助を削るべきでない。不正をなくすために、役人がきっちり精査すべきだ」といった意見のほか、「結局支払われずに病院の負担になる。(病院への)責任転嫁だ」などの指摘もあった。「一部負担にしたとして、お金を払ってくれない人を診療拒否できるなら良い」との声も寄せられた。【佐藤貴彦】

見てみますとかなり赤裸々な意見も出てきているようですが、やはり自己負担が低いことが過剰受信を招き医療現場の疲弊を招いているという共通認識が背景にあるようで、少なくとも際限のない過剰受信は抑制し得る程度の自己負担引き上げはやむなしという意見は妥当なものに思えます。
ただ先日三井厚労相および日医がこれら諸是正策に対して(控えめに表現すれば)慎重な見解を述べたというニュースを紹介しましたが、政治家が選挙も念頭にこうした反対論を主張することは理解出来るとしても、現場医師の代弁者のような顔をして政治とも関わり合っている日医が断固反対を叫び続けているというのはどうなのかです。
もちろん日医会員と言えば開業医および病院の経営に近い上級勤務医が主体で、彼らからすれば生保受給者=取りっぱぐれのない上顧客という認識であるのかも知れませんが、現場で多忙な医療活動を行っている中堅・若手勤務医にすればこうした客層が増えてくるほどに勤労意識を削がれていくわけですよね。
日医の運営が民主的であるとは過去も現在も一度として聞いたことのない話ですが、こうまで現場との意識に乖離を来している組織が現場の代弁者のように振る舞うというのもどうなんでしょうか?

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心と体」カテゴリの記事

コメント

生保の医療扶助の自己負担の導入には賛成です。自己負担割合や上限額を調整すればよいと思います。
ただ、ひとり医療扶助のみを変えればすむという話ではなく、生活保護のありかた全体を改革するなかで行う必要があると思います。

自己負担の導入が実現すれば、ジェネリックの義務化は必要ないと考えます。
仮に、生保にジェネリックを義務化するのであれば、外来の院外処方に限るとしてほしいです。
「義務」となれば、ジェネリックの存在する薬を採用する場合は必ずジェネリックを在庫する必要が生じるわけで、
現状ではDPC病院でも療養病院でも そんなことはしていないはずで、その負担は過大なものになると予想します。
ところで、薬家のことはよく知らないのですが、現状で 調剤薬局では、ジェネリックの存在する薬は必ずジェネリックを在庫しているのでしょうか。

投稿: JSJ | 2012年11月12日 (月) 08時52分

患者の足を遠ざけるような行為は業界団体として歓迎できないって別に間違っちゃいないですよね。
そして現場の臨床医は多忙すぎるからもっと患者を減らしたいと考えるのもうなずけます。
要は医療を経営的に見るか公共サービス的に見るかって違いなんじゃないですか。
病院の状況に応じて選択できるようになれば理想的かも。

投稿: ぽん太 | 2012年11月12日 (月) 09時00分

細部の運用に色々と意見はあるにせよ、原則やって構わないという現場のコンセンサスはおおむね固まっているように感じます。
それだけに何が何でも反対という日医の強硬姿勢には違和感を感じてしまうのです。

>現状で 調剤薬局では、ジェネリックの存在する薬は必ずジェネリックを在庫しているのでしょうか。

以前薬局から聞いた話では同効薬可の処方箋が来ると価格が示された一覧表を見せて選ばせる、在庫を置いていないものは取り寄せになるということです。
置いていない薬は取り寄せてでも用意しなければならないというのは院外薬局化を推進した時の取り決めであったと記憶しています。
無論実際にはなるべく院内に置いてある薬に誘導するようなことは行われているのでしょうが。

投稿: 管理人nobu | 2012年11月12日 (月) 10時56分

>医療費の支払いを拒否された場合に医療機関が負担することを懸念する声などが上がった。
>「一部負担にしたとして、お金を払ってくれない人を診療拒否できるなら良い」との声も寄せられた。

これはとても重要な指摘だと思うなあ

ところで折衷案としてまずは選定療養を取っている施設で一部負担化してみては?
大病院集中の緩和策としても使える手ですから反対は少ないんじゃないかと

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年11月12日 (月) 14時39分

日医のコメントはないのかな

投稿: アミバ | 2012年11月12日 (月) 17時00分

通常飲食店では、未払いは食い逃げで即逮捕です。
しかし医療の未払いはペナルティが無いのが実情です。

道徳に訴えても、DQNには無駄です。したがって何らかのペナルティが必要です。

<準備>
1.健康保険証をすべてをICカード化(個人もち、顔写真データ入り)
 他人のものを使用すれば、顔写真が異なり不正が発覚
2.保険の有効/無効/未払を受付時、ネットで確認(健康保険組合サーバーで)(病院/診療所/院外薬局/柔整 等 保険がきくところは全部義務付け)

<実施>
未払い発生→事務が、未払い入力(サーバーに未払いフラグ設定)

ペナルティ期間(例えば3日以上経過)過ぎた時点で
保険証 未払いフラグ成立

全医療機関で受診時は前払い金(1万円)、受診後10割で清算
払わないなら診療拒否。
(入院なら預かり金10万円)、当然薬局、柔整も10割

この状態で救急搬入された場合は限定された医療機関で診療を行う。終了した時点で支払わない場合は警察に突き出す。入院の場合も退院後、警察に突き出す。

未払いを払い終えた時点でフラグ消去、ペナルティ解除

これならDQNも困って払うはず。もし他人の保険証使うことも防げるし、もし使った時点で逮捕というのはどうでしょうか。

投稿: ドロッポ医 | 2012年11月12日 (月) 22時14分

もっと実現性の高いやり方が

投稿: | 2012年11月13日 (火) 00時10分

大半のまともな患者さんは、現状でも未払いなどありません。
一部のDQNな方は、道徳に訴えても無駄です。後ろ指差されることに恥と思わないからです。

こういった人への対応は、個別の対応では難しいのが現実です。おとなしい病院事務では取り立ても簡単ではありません。未払いの債権を、ヤミ金に売ってしまってもよいのなら楽ですが、そうもいきません。

まじめに払っている人がバカを見ないようにするには、公平性の観点からペナルティの導入はやむを得ないと思います。
未払いになれば、保険証が一時停止にすることは現状でもできるでしょうが、DQNは他人の保険証を使う、医療機関を渡り歩くなど斜め上の対応をしてくると考えられます。国民所得が減少を続けており、医療費の未払いはもっと増えるでしょうし、効果のある対策が必要となります。病院もソーシャルワーカーもさっさと生保に落とし込んでいる場合もありますが、未払い防止としては効果ありますが、社会全体としては?な対応です。

ペナルティのある人だけ前払いをするには、確認が必要なので上記の対応が必要となります。それよりも簡略化して、中国のように全て前払いというシステムが妥当かもしれません。誰も信用せず、未払いも防げるという点では良いと思います。しかしながら、救急車で搬入時点で、救急隊へ支払い、救急受付で診察料支払った時点で診療開始というのもなんだかなぁと思います。

投稿: ドロッポ医 | 2012年11月13日 (火) 00時58分

未払いの取り立て業者への依頼はもう行われとりますわな。
別に躊躇せず権利を行使したったらええんと違いますか。

投稿: rat-cat | 2012年11月13日 (火) 06時11分

ドロッポ医様

枝葉なことですが…
><実施>未払い発生→事務が、未払い入力(サーバーに未払いフラグ設定)
>ペナルティ期間(例えば3日以上経過)過ぎた時点で保険証 未払いフラグ成立

「モラトリアム期間」ではなくて、この時点で「ペナルティ期間」ですか?

投稿: 福京 | 2012年11月13日 (火) 07時34分

すいません。モラトリアム期間(猶予期間)の間違いでした。

投稿: ドロッポ医 | 2012年11月13日 (火) 09時50分

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