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2012年11月 5日 (月)

医学部新設 意外な方向から否定される?!

研修医のマッチング結果が先日発表されましたが、岩手県では募集124人に対して実際の受け入れ人数が59人と前年より8人の減少、特に岩手医大付属病院はわずかに4人というのですから厳しい状況は相変わらずのようです。
そんな東北地方において先日こんな座談会が開かれたというのですが、記事から引用させていただきましょう。

座談会「地域医療-震災後の新たなモデルを目指して」/医師確保へ医学部を(2012年10月30日河北新報)

 東日本大震災が発生する以前から医療資源の乏しかった東北の被災地で、医師の不足傾向に拍車が掛かっている。河北新報社は震災からの東北再生に向けた提言「地域の医療を担う人材育成」で、仙台に臨床重視の大学医学部を新設する必要性を訴えた。仙台市内では仙台厚生病院と東北福祉大(ともに青葉区)が医学部新設構想を打ち出しているが、医師会などの反対も根強い。河北新報社が設置した東北再生委員会の委員を務めた増田寛也氏ら被災3県の医療事情に詳しい3氏に「地域医療-震災後の新たなモデルを目指して」をテーマに話し合ってもらった。

◇座談会出席者
 元総務相・前岩手県知事  増田 寛也氏
 元東北大医学部長     久道  茂氏
 東大医科学研究所特任教授 上  昌広氏
【コーディネーター】
 一力雅彦 河北新報社社長

新設こそが偏在を解消/上氏

 -地域医療と医師不足の現状から伺いたい。
 増田寛也氏 岩手県では127の医療機関が被災した。約9割の102が再開したが、このうち37が仮設診療だ。仮設はいずれ常設に戻すかどうか決断を迫られる。相当な個人負担があり、考えあぐねている開業医が多いようだ。
 被災直後、全国から災害派遣医療チームが県内に入ってきた。この年末を節目に派遣を引き揚げる動きがあり、その後をどう手当てするかが課題だ。来年以降の医療体制をどう確保するか大きな不安を抱いている。
 上(かみ)昌広氏 震災前、日本の医師(医療施設従事者)数は人口10万当たり219.0人(2010年)で、08年のデータでは経済協力開発機構(OECD)の加盟国30カ国中、下から4番目。フランス、ドイツは約350人、英国、米国も約250人いる。
 福島県浜通り地方は約100人で、中東とほぼ同じレベルだった。浜通りの医師数は震災後に半分にまで減り、この1年間で震災前の水準以上に増えた。私が支援している南相馬市立総合病院は常勤医が16人だったが、今は20人いる。東京、京都、九州からドクターが続々と入った。それでも絶対数がまだ足りない。せめて日本の平均にするためには倍増しなければならない。一朝一夕では達成できず、医学部の定員増だけでは難しい
 久道茂氏 宮城県の人口10万当たり医師数は222.9人で、47都道府県の中で27位と中位に位置する。しかし平均値では見えないことがたくさんある。登米医療圏は101.2人で、仙台市の326.7人の3分の1以下だ。気仙沼圏は121.0人、石巻圏も156.2人。宮城は医師の地域偏在がひどく、医療崩壊の寸前にある。
 もう一つ大きいのは診療科の偏在だ。登米医療圏にはお産を扱う医師がいない。地域住民は他地域と同じように健康保険料を納めているのに、医療が受けられない不公平が生じている。勤務医と開業医の差も問題だ。都市部には開業医がたくさんいるが、地方は少ない上に高齢化している。
 上氏 地域の医師数に最も影響するのは医学部があるかないかだ。福岡県では、いずれも医学部のある北九州市と久留米市に医師が多い。横浜市は横浜市大医学部がある南部に医師は多いが、北部は少ない。
 増田氏 厚生労働省の調査によると、全国で約2万4000人の医師が不足している。都道府県別では岩手の医師不足が最も深刻で、必要な医師数を満たすには現状の1.4倍を確保する必要がある。
 上氏 1970年代に当時の厚生省と日本医師会が将来医師が過剰になると主張し、医師数を抑制したため現在の医師不足を招いた。人口1300万の九州には医学部が11校あるが、同規模の千葉、埼玉両県は計2校しかない。900万の神奈川県も4校。医学部の新設が許認可制になっている点が問題だ。

固有の事情、地域で解決/増田氏

 -医学部新設には、全国医学部長病院長会議も反対している。一方で全国市長会が医学部新設を決議し、宮城、新潟、神奈川、静岡の4県知事が国に要望書を出した。
 上氏 医師は高齢になると働けない。これに対し患者は高齢化に伴い疾患が増え、医療需要は指数関数的に増える。医療安全の観点から、勤務医の労働時間に規制をかける動きもある。私たちの研究室のシミュレーションでは、関東圏は2050年ごろまで医師不足が続く。東北の医師不足も35年まで悪化する
 仙台市に医学部を新設すべきだ。人口200万を超える大きな県である宮城の中心に位置し、旧七帝大に数えられる東北大という研究志向の高い大学もある。旧帝大のある都市で医学部が1校しかないのは仙台市だけだ。地域医療と研究を分業した方がいい
 -全国の医学部入学定員はかつての約7600人が現在は約8900人にまで増えている
 久道氏 確かにここ数年間の定員増は、医学部を10校以上新設したのに等しい。しかし定員増は卒業生が地域医療に従事することを担保していない。1973年の国の無医大県解消構想で、各都道府県に医学部・医大が1校以上置かれた。新設された大学のほとんどは地域医療を担う構想でつくられた。北海道大と札幌医大、大阪大と大阪市大、京都大と京都府大など、旧七帝大のある地域には地域医療を担うための大学が必ずある。
 東北大は歴史的に宮城県の地域医療を担ってきただけではなく、東北各地の基幹病院に医師を派遣してきた。その一方で研究もしなくてはならない。東北大は入学定員(12年度125人)の約半数が研究職に就く。宮城県には地域医療を担う、または臨床を重視する医師養成機関が必要だ。
 増田氏 医学部新設に反対する意見の多くが全国の医師需給の観点から議論している。私はこの問題は「被災によって加速度的に地域医療の崩壊が進行している東北につくる」という視点をまずは押さえなければならないと思う。東北の医療、大学関係者には考えてもらいたい。地域の医師不足は地域で解決する地産地消の発想が必要だ。自分たちで医師を養成し、東北の若い人材を地域に投入したい。

複数科勤務、義務付けも/久道氏

 -医学部新設の動きは民主党が政権交代を果たした09年の総選挙で、マニフェスト(政権公約)に医師養成数を1.5倍に増やすと掲げたのが発端。今後、運動論をどう展開するべきか。
 久道氏 「地域医療を担う使命」。これを医学部新設の条件にするのがいい。仙台厚生病院と東北福祉大の構想には、卒業後に地域医療への従事を義務付ける奨学金など具体的な方策が組み込まれており、医学部新設の申請があれば許可を出してほしい。
 全国の自治体病院の約7割は赤字で、最大の原因は医師不足にある。東北に医学部を新設しても卒業生が一人前になるまでに10年近くかかる。それまでに、例えば宮城県内の自治体病院を一つの地方独立行政法人に統合し、調達コストの削減や人事の迅速化を図る手法もある。診療科偏在は、外科志望の医師には麻酔科や産婦人科、内科志望には精神科や小児科に何年間か勤務を義務付けるなどすれば、ある程度解消できる。
(略)

それぞれに真実の一端は突いたコメントが並んでいるのですが、まずは地域医療が破綻しつつある中で医師の囲い込みが起きている、それならば医師不足の地域にはもっと医学部を作るべきだという論点が一つ挙げられています。
確かに人口比で医学部定数の多い、少ないが地域の医療需給バランス是正を妨げているという声には一定の説得力があって、かねて医学部を新設するなら千葉や埼玉だろうという声があったことも事実なんですが、その一方で医学部定員125名を誇る岩手医大を擁しながら県内研修希望者がその半数以下という現実が示しているように、単に学部定員を増やすだけでは意味がありません。
失礼ながら県内卒業生の過半が県外逃亡するような地域を基準にして医学部を造設していったのではコストの面でもさることながら、全国的に医師過剰になっても特定地域では医師不足だからと医学部定員を増やし続けるということにもなりかねず、あまり現実的な話ではありませんよね。
実効性ある解消策としては単に学生の総数ではなく卒後の定着率の方が問題なのだとすれば、究極的には特定地域内でしか診療を行えない自治体内限定の医師免許をという話にもなりかねませんが、さすがにそれも無理だと言うことで現在は奨学金や授業料免除によって卒業生の進路を地域に縛り付ける「地域枠」というものが拡大しつつあるわけです。

他方では臨床医と研究医の区分、診療科毎の偏在といった問題も提起されていますが、これなどはまさしく今議論されている新専門医認定システムによって診療科毎の医師数から地域内での定数までコントロール可能になるのでは…とも期待されて?いるところですよね。
逆に言えば医学部定員の大幅増で医師数がどんどん増えてきている中で、総数だけを取り上げてどんどん医学部も新設しろでは非常に非効率ですから、より効率よく安価に問題を解決出来るのであれば財政上もこれに超したことはないのは当然です。
そうした目で見ますと先日就任早々の田中真紀子文科省が突然に鶴の一声でこんなことを言い出したというのも、実は単なる思いつきではない深慮遠謀が隠されているのかもしれません。

田中文科相:3大学の新設認めず…審議会の答申覆す(2012年11月02日毎日新聞)

 田中真紀子文部科学相は2日、閣議後の記者会見で「大学設置認可の在り方を抜本的に見直す」と述べ、認可を厳格化する方針を示した。また、大学設置・学校法人審議会が1日に来春の開学認可を答申していた秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大(愛知県)の3件の4年制大学を不認可とした。文科相が審議会答申を覆したのは、省内に資料が残る30年間で初めてで、極めて異例の判断

 学校法人が大学を開校したり学部を新増設したりする場合、文科相は審議会にその可否を諮問し、答申を受けて決定する。田中文科相は全国に4年制大学が780(国公立181、私立599)校あることに触れ「大学教育の質が低下している。そのために就職できないことにもつながっている」とし、当面は新設を認めない方針を示した。今後、検討会を設け、メンバーの多くが大学の学長や教授で占められている審議会の在り方を見直す。

 1日に答申された学部の開設(16件)、大学院の開設(13件)は答申通り認可した。【石丸整】

ルールに則って粛々と準備してきた各大学にすれば寝耳に水の話ですから、すでに関係各方面に大いに波紋が広がっているのも当然の話なのですけれども、元々は財務相を希望していたという田中大臣が単なる思いつきでこんなことを言い出したのでしょうか?
このニュースと相前後するかのように、今度は財務省筋からこんなニュースが出てきていますけれども、並べて見比べてみると興味深いですよね。

“教職員定数 5年で1万人削減”案(2012年11月2日NHK)

財務省は、文部科学省が目指している少人数学級の実現は必ずしも教育の向上につながらないとして、公立の小中学校の教職員を5年間で1万人削減する案をまとめ、来年度予算案の編成作業では、増員を要望している文部科学省との間で、教職員の定数をどう取り扱うかが焦点の1つとなりそうです。

この案は、財務省が1日に開かれた財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会で示したものです。それによりますと、文部科学省が教職員の増員によって実現を目指している少人数学級について、必ずしも教育の向上につながらず、少子化が進んでいることもあって、公立の小中学校の教職員の定数を逆に5年後の平成29年度までに毎年2000人ずつ、合わせて1万人削減すべきだとしています。定数の削減で、650億円の事業費を減らせるとしており、この財源を全国学力調査やスクールカウンセラーなど外部の人材活用、それに財政の健全化に充てるべきだとしています。
一方、文部科学省は、公立の小中学校で1学級の児童や生徒数を35人以下にするという少人数学級を実現するためには教職員を5年間で2万7800人増やす必要があるとして、来年度予算案の概算要求でそれに必要な予算を要望しています。
このため来年度予算案の編成作業では、小中学校の教職員の定数をどう取り扱うかが焦点の1つとなりそうです。

いくら少子高齢化が言われていると言ってもゆとり教育の見直しが叫ばれる中で、いきなり教職員を1万人も減らすのでは国民的にも納得出来ないのではないかと思いますけれども、支出削減ということに関してここまで財務省が文科省に圧力をかけてきているということでしょうか。
前述の記事にある通り新設が認められなかった三大学の中には公立大学も含まれていますが、私立大学であっても国からの補助金は入っており、ましてや今の時代に医学部新設ともなれば自治体からはたっぷりと補助金が付くだろうことは想像に難くないだけに、この一手は従来からコスト面で非効率的過ぎるという指摘が多かった新設に新たなネガティブ要因が加わったという形です。
すでに医学部新設に関してはほぼないだろうというのが大方の予想になってきていますが、ここまで厳しいことを要求されるのであれば新設どころか今後は一足先に破綻しつつある歯学部や法科大学院と同様、国試合格率や留年率など教育公立にまで踏み込んでの大学の査定も行われていくことになるのでしょうか。

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コメント

いまさら骨董品の田中真紀子登用ってどんな周回遅れだよw

投稿: aaa | 2012年11月 5日 (月) 08時45分

医学部新設もすでに不要って声もあるわけで、こうなるといよいよ厳しいですな
いっそのこと医師不足県は定員全部地域枠にしてみれば現実も見えてくるんじゃないかと

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年11月 5日 (月) 10時16分

田中角栄さえ居なくなれば日本の政治は良くなる
そう思っていた時代が自分にもありました

投稿: 昭和は遠くなりにけり | 2012年11月 5日 (月) 11時01分

戦後史を考える上で角栄さんも欠かせない偉大な宰相の一人だったと思いますよ。
真紀子さんもその遺伝子の一部なりとも受け継いではいるはずですが。

投稿: 管理人nobu | 2012年11月 5日 (月) 11時26分

田中角栄の成功体験のごく一部を模倣するだけでその本質を見失った政治家が蔓延したのが悪かったような。
そして重箱の隅をつつくだけで本質を見ないマスコミとそれに乗せられた国民ですか。

そういえば田沼意次も近年再評価されてますね。
思えば江戸の昔から「白川の清きに魚のすみかねてもとの濁りの田沼こひしき」という警句があったんですね。

投稿: ぽん太 | 2012年11月 5日 (月) 12時58分

無駄の削減は結構なのですが、きちんと精査し、理屈に則ってやらないと単なる事業仕分けの焼き直しになってしまいます。
やったのが田中真紀子なのと、その後の自民が石波さん出して色々言ってるのを見ると早速その場の思いつきをやらかした感が激しいですね。

投稿: 吉田 | 2012年11月 5日 (月) 13時04分

でも長年役人も交えて関係者が詰めてきた話を新任大臣の思いつきでやめられるものかしら?

投稿: anan | 2012年11月 5日 (月) 13時33分

某旧帝大教授が内科医に精神科、小児科勤務を数年義務づけ発言って?

悪いけど、片手間の数年間で診療ができるようになるほど、内科、精神科、小児科は甘くないですよ。

臨床がわかっていない者の発言です。

そもそも、医師不足の地域には初期治療だけのgeneral practitionerを診療所に配置して、病院を集約化させて専門医を配置というのが、海外先進国のやり方です。
人的医療資源の有効な配置って、公衆衛生の基本でしょう。

発想自体が、そもそも根本から間違っているのでは?

投稿: とある内科医 | 2012年11月 5日 (月) 15時48分

そんなことはみんな知ってるけど、利権がからんでんだろ

投稿: | 2012年11月 5日 (月) 19時13分

真紀子大臣、思い付きで3大学不認可
http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp3-20121103-1041696.html
 文科省は10月、創造学園大などを運営し経営が悪化している群馬県の学校法人「堀越学園」に解散を命じた。この事実を田中氏は重視し「安直に(新設を)認めると教育の現場が混乱するんです。こんなことが2度と起こらないようにしたい」とまくしたてた。

 審議会で「新設を認める」との答申が出ていた。高等教育局幹部から再三「答申通りでお願いします」と説得を受けた田中氏は「駄目なものは駄目」と首を縦には振らなかった。記録の残っている過去30年で、答申を覆して、大臣が不認可の決定を下したのは初めて。文科省職員は「3大学は巡り合わせが悪かった、としか説明しようがない」とため息をついた。

投稿: もう、わやや… | 2012年11月 6日 (火) 11時44分

真紀子もう支離滅裂
誰だよこんなやつ大臣にしたの

投稿: | 2012年11月 7日 (水) 15時07分

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