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2012年11月15日 (木)

自由診療に絡んだ話題二題

医療機関の消費税損税問題というものが早急に是正すべきだと言われていますが、一方で益税問題というものも是正が検討されているというニュースからお伝えしましょう。

医療機関の「益税」是正へ 政府税調、自由診療多い機関対象 (2012年11月12日日本経済新聞)

 政府税制調査会は12日の会合で、医療機関の税負担が減る「益税」の原因とされる納税制度を見直すことで合意した。社会保険の対象にならない自由診療で多額の収入がある医療機関は、実際よりも多く経費が計上できる可能性がある「概算経費」の適用から外す。収入の大きな医療機関が税負担で優遇される事態を回避する。

 医療機関が収入から差し引く経費を計算する際に、一定の「概算経費率」を適用する対象から自由診療の多い医療機関を外す。厚生労働省の提案に沿って調整を進めることにした。2013年度税制改正での実現を目指す。

 現行の制度は社会保険の診療報酬による収入が5000万円以下の小規模な医療機関が対象。事務負担を軽くするのが目的だが、実際の経費を概算の経費が上回れば、課税対象の所得が減って税負担が抑えられることになる。

 医療機関には診療報酬が少なくても、自由診療で多額の収入のある場合がある。厚労省の調査では制度を適用された医療機関のうち総収入が7000万円を超える層では4割以上が自由診療の収入だった。規模の大きな医療機関は経費率が低い傾向にあり、概算経費を適用すれば「益税」となっている可能性がある。

 制度の問題点は会計検査院も指摘していた。ただ、概算経費率そのものが実際の経費率に比べて高すぎるのではないかという指摘に対しては、厚労省が実態に近いとする調査結果を提示した。今後、詳細なデータを追加して議論を進める。

この診療報酬5000万以下の医療機関に概算経費率を認めるという制度、昔からマスコミなどは「医師優遇税制だ!」などと盛んにバッシングを繰り返してきましたけれども、医師一人あたり平均の診療報酬収入が1億円という日本の保険診療においては、これは経費計算など到底出来ないような老医が奥さんを事務員にして細々と続けているような零細開業医の救済を念頭に置いた制度だったわけですね。
ところが以前にもお伝えした通りこの「診療報酬5000万以下」というくくりが最近また問題になってきていて、記事にもあるように保険外診療でがっぽり儲けている自由診療クリニックなどが保険診療分は5000万以下だからとこの制度で過剰な経皮を認めさせるということも理屈の上では可能ですよね(幸いにも報道などから見る限り、実際にそうした行為に走っている金満クリニックはほとんどいないようですが)。
いずれにしても制度の趣旨も考えれば保険外が主体の自由診療クリニックに対しての対策は当然必要だとは思いますが、この自由診療クリニックの問題に絡めてもう一つこういう記事も紹介してみましょう。

不妊治療保険、金融審で議論…合意得られず(2012年11月13日読売新聞)

 金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会は12日、不妊に悩む人を対象にした「不妊治療保険」を認めるかどうかを議論した。

 不妊治療には、健康保険の対象外も多いため、経済的な負担を軽くする狙いだ。しかし、商品設計が難しいことなどから慎重な意見もあり、合意は得られなかった。金融庁は今後、合意が得られれば、来秋にも関連法令の改正を目指したい考えだ。

 不妊治療では、体外受精では1回あたり30万~40万円が必要とされる。公的な助成制度も一部あるが、治療を受けるカップルにとっては大きな経済的負担だ。

 不妊治療保険が実現したとすると、治療にかかった費用の一部を事後的に補償する形になるとみられる。

 ただ、事前に不妊であることが分かっている人に対してどのように対応するかや、男性も対象にするかなど、クリアすべき課題も多い。参入には消極的な保険会社もある。

不妊治療に関わる一つの問題は非常に高額の費用がかかってしまうことで、体外受精や顕微授精などの治療を受けるごとに大きな金額が飛んでいく、しかも保険がきかないわけですから全額自己負担で、先日は金融庁がこの方面に民間保険を使えるように出来ないか検討しているというニュースが出ていたことはお伝えした通りですが、どうもうまくいかないらしいというところでしょうか。
一方では高齢化著しい昨今の妊娠・出産年齢とも絡んで、どう見ても今さら妊娠は無理だろうという高齢出産希望者に経済的制約が自然と治療終了の目安を伝える役に立っているという意見もありますが、金銭負担の面で大きなアドバンテージを持っている著名人高年齢者が相次いで不妊治療に成功したというニュースがこうした一般人希望者を呼び込んでいることを考えると、何やらうまく宣伝に乗せられてるようで釈然としない思いもします。
前回コメント欄にも意見が寄せられましたように、不妊治療のみを対象にするとなると保険料を払う人がほぼそのまま保険を利用する人になるはずですから保険としての扱いが難しい、そして不妊治療以外も対象にした一般の民間保険に組み込んでしまうと大多数の利用者は自分と関係のないところで保険料負担が引き上げられる可能性が出てくると、制度設計は確かに難しそうですね。

少子化が叫ばれて久しく、不妊治療も年々利用者が増えているわけですから国としても何らかの助成措置などは考えているはずですが、こうした保険外診療が増えれば増えるほど当然一部の自由診療クリニックが大きな収入を得るようになる、その結果冒頭に挙げたような益税問題もますます顕在化してくる可能性が出てきますね。
そしてより大きな問題としてはこうした不妊専門のクリニックはお産そのものにはタッチしていない場合が多いのですが、高齢妊娠・出産の増加に伴い様々な合併症トラブルも増えてくることが明らかになっていて、母胎の健康は元より例えば胎児異常に伴う人口妊娠中絶が倍増しているといった、妊娠後のフォローアップの方が大変だという現実があるわけです。
近年崩壊が叫ばれているほど過酷な産科の現場から見れば、自由診療で好き放題にお金を稼いだ不妊クリが一番面倒でトラブルにもなりやすいところだけを押しつけてきているようにも見える形ですから、このままイケイケで前のめりに進ませるばかりではいずれ格差の拡大から「やってられない」ということにもならないかと心配になってきます。

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コメント

>このままイケイケで前のめりに進ませるばかりではいずれ格差の拡大から「やってられない」ということにもならないかと心配になってきます。

杞憂ですよw。だってあの産科医だじぇえええええwww?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年11月15日 (木) 09時30分

リンク先の記事で
>うち実際の経費を把握できた約1650人を調査した。
>年収が5000万円を超える人が約300人おり、うち数人は1億円を超えていた。
これって制度利用者で人並みに稼いでる人は限りなくゼロだったってことだよね?

投稿: アンデルセン | 2012年11月15日 (木) 11時13分

産科医もあんまりいじめすぎない方がいいかと…(苦笑)

いずれにせよ数からすると非常にマイナーな問題で是正に反対論もないでしょうから、さっさと改めるべきは改めておくのがいいだろうと思います。>益税問題
こんなことでマスコミがまたぞろ針小棒大に騒ぎ立てるのもおもしろくはないのですし。

投稿: 管理人nobu | 2012年11月15日 (木) 11時48分

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