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2012年11月22日 (木)

医師不足と女医問題 早計な戦力外通知はもったいない

本日まずは妥当と言えそうなこちらの調査結果を紹介してみましょう。

小児、産婦人科18年連続減=医師数トップは高知-厚労省調査(2012年11月20日時事ドットコム)

 病院の小児科と産婦人科(産科)が18年連続で減っていることが20日、厚生労働省の2011年の全国調査で分かった。同省は「医師不足や少子化の影響とみられ、産婦人科は訴訟リスクの高さや夜間集中などの厳しい勤務状況も一因」としている。
 小児科がある病院は前年から63減の2745施設、産婦人科は同37減の1395施設だった。
 東京電力福島第1原発事故で警戒区域に指定された福島県双葉町など相双地区では、病院の医師や看護師の数が一時的に半減した。
 人口10万人当たりの病院の医師数(非常勤は常勤に換算)が最も多いのは高知県(221.2人)で、最少は埼玉県(108.8人)だった。全国平均は156.1人。
 高知県は10万人当たりの病院の数も最多。同省によると、共働きの家庭が多く、病院が介護の受け皿となっている可能性があるという。埼玉県は、病院が多い東京都に近いことが影響しているとみられる。

記事に添付のグラフを見ますと以前から言われているように西高東低の傾向が見て取れるのですが、東北諸県は元より首都圏や中京圏といった大都市圏において顕著な不足傾向が見られるというのも特徴でしょうか。
もちろん単純な人口比での数字だけでは地域内の医療受給は評価出来ず、諸施設感の連携や集約の程度、あるいは交通網や救急隊の整備状況といった諸要因も大いに関係してくるわけですが、特にこの二診療科に関して言えば女医の需要が非常に大きいという点も挙げられると思います。
小児科などは女医比率が非常に高い診療科で需要と供給がマッチしていると言えますが、婦人科領域などはその性質上患者側から女医を期待する声が多かったにも関わらず、とかく厳しい勤務環境等もあってか平均をやや上回るという程度で、慢性的な人材不足のみならず昨今こうした面からも女医の動員を図ろうという動きが全国的に出てきていることは当然の流れですよね。
産科医などはあまりに多忙なために他人のお産は幾らでも取り上げているのに自分は生んだことがない女医もいるなどと笑い話のような話も少なくありませんが、近年医学部学生においても高まり続ける女性比率をどのように臨床現場に活用していくべきか、幾つかの課題が挙げられています。

医師カップル「チームで子育て乗り越える」- 保団連、女性医師の企画開催 (2012年11月19日CBニュース)

 全国保険医団体連合会(保団連)女性部は18日、東京都内で女性医師・歯科医師学習交流会の特別企画「医師カップルに聞く!これからの生き方、働き方」を開催し、2組の医師夫妻から、仕事と家庭の両立についての考え方を聞いた。いずれの夫妻とも、「チームの意識で子育てを乗り越えてきた」などと、具体的なエピソードを交えて話した。
 この日の特別企画に招いたのは、主婦会館クリニック(千代田区)の堀口貞夫・雅子夫妻と、吉田敦(独協医科大感染制御・臨床検査医学講座准教授)・穂波(国立保健医療科学院生涯健康研究部主任研究官)夫妻。
 堀口夫妻は、共に産婦人科医。1968年に結婚し、翌年に第1子をもうけたころの苦労談を披露した。貞夫さんは、「子どもが熱を出した時に、保育所が受け入れてくれなくて困った」と当時を振り返った。雅子さんは、貞夫さんを夫に選んだ理由について、「(貞夫さんが)仕事をする女性と結婚したいという考えを持っていたので決めました」と話した。また雅子さんは、「女性、妻、母の体験は、患者を理解し、男性の産婦人科医にも女性の目線の必要性を多少は伝えられたと思います」とした。
 一方、吉田夫妻は、穂波さん自身が複数のメディアを通じて、子育てをしながら海外留学したエピソードなどを紹介している。穂波さんは、子どもがいたからこそ習得できたこととして、タイム・マネジメント力などを挙げた。「不合理で、予測不可能なのが子育て。それに対処するために、忍耐力も付いた」。また、穂波さんは、「わたしたちの共通のゴールは、2人とも幸せになり、子どもにたっぷり愛情を注いであげることです。お互いが感謝しつつ、認め合いつつ、同じゴールに向かうチームなのだと思っています」とも語った。

■周囲への感謝の気持ちが大事

 この日の特別企画の参加者には、子育てをしながら医師や歯科医師を続ける女性も少なくなく、2組の夫妻の講演に熱心に聞き入っていた。
 講演の後には、演者らと参加者との意見交換会が行われた。1人の女性が、「わたしは、勤め先に理解があり、比較的恵まれた環境で子育てをしながら、仕事をしています。一方で、子どもを持たずに働いている女性医師もたくさんいます。本人の意思もあるし、子どもができない人もいます。そういう人たちに対し、わたしたちは、子どもがいて、子育てをしなくてはいけないなどと強く主張してしまうことは、少し考えなくてはいけないと感じています」と問題提起をした。
 これに対し、吉田穂波さんが、「まず周囲に対して、感謝の気持ちが大事だと思います。女性同士で仲良くなる時に、子育て同士だから仲がいいとかではなく、違う境遇の人とも仲良くなることで、将来にわたって、助け合っていけるのかなと思っています」と応じた。
 また堀口貞夫さんは、昔、勤務していた病院でのエピソードを紹介した。「当時、看護婦さんや助産婦さんには、40代でシングルが多かった。そうした中で、若い人で結婚して、妊娠する人が出てきた時、そこの院長が、妊娠したとか、おなかが張るとかで当然のように休んでいる人たちに対し、『これまで、職業か結婚かのどちらかを選ばなくてはならず、職業を選んできた人たちがあなたを支えるのですよ』と言ったのを覚えている」と話した。
 この日の司会を務めた保団連理事の板井八重子さんは、「相手への感謝の言葉の大切さが話題になりました。相手に対して、心を込めて伝えていくというのは、女性が得意にしていることだと思います。ここでの話を、さざ波や波紋のように伝えていくことが大事だと感じています」と述べて、この日の特別企画を締めくくった。【君塚靖】

以前に行われた調査では「女性医師の増加が、いわゆる『医療崩壊』の一因になっていると思うか?」という質問に対して、男性医師の実に4割超が「そう思う」と回答したという結果が出ていましたが、当事者である女医自身が最大の課題として仕事と家事の両立を挙げているように、医師であることと家庭人であることは両立しがたいものであったと言えますよね。
女医増加という現象に関しては必ずしも好意的ではないものも含め様々な意見があり、男性に比べると女性の戦力は2~3割引という試算もあるようですが、こうした感覚の及ぶところ多くの女医が女性であるよりも医師であることを優先する場合が多く、また周囲も女医であるよりも単に医師であることを暗黙のうちに求めて来たように思います。
女医がまだ少なく例外的な存在であった頃はそれで済んでいたかも知れませんが、今後長期的に見れば医学部の男女比率は限りなく50:50に近づいていくとすれば、いつまでも女医に私生活を捨てた特殊な女性であることを求めるよりは、安心して妊娠・出産も行った上で長期的に働ける環境を用意した方が人材確保の面でも有利に思えます。

今後新卒医師の女医比率がどんどん上がっていく中で、やはり性差というものは歴然とあるという大前提に立って女性に働きやすい環境を整えていくことは、少なくとも「男並みに働けない女医などいりません!」なんて旧態依然とした施設よりも確実に新卒者の半数にアピール出来る理屈ですよね。
まして昨今では家庭人として成立し得ない医師の労働環境こそ諸悪の根源であって早急に是正すべきだと言う考え方が次第に主導的になっているのですから、急性期基幹病院で休日なしの奴隷労働が出来なければまともな医師ではない!という風潮こそまず改めるべきでしょうし、そうした時代錯誤な施設は男にとってもろくな環境ではないだろうと容易に想像出来るわけです。
医師確保に様々なアイデアが出ていますけれども、やはり働きやすい職場環境というものは最も普遍的な魅力を発信出来るものであるようですから、うちは忙しい病院だから仕方がないで終わらせずきちんと対策を講じスタッフを守る手立てを取っていけば、自ずから士気も上がり患者からの評判も良くなっていくかも知れませんね。
もちろんその過程で男女間にいらぬ不公平感が生じ新たな溝などを作ることがないよう、融和と相互理解のための努力が男女双方に必要であることも言うまでもありませんし、思わず「これだから女医は…」などと言いたくなった時には使えないその他大勢の医師を見た時と同様、「たいていの医者はいないよりはいた方がマシである」という大原則を思い出して見るべきなのでしょう。

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コメント

女医に限ったことじゃなく仕事に見合った給料にしてほしいです
仕事はなんでも人に丸投げなのに給料だけ高いっておかしい

投稿: ikko | 2012年11月22日 (木) 08時19分

こういうのもあります

なぜ生産性を高めるほど経済は没落するのか
http://president.jp/articles/-/7866

無駄が多い方が成長につながる?

投稿: 柊 | 2012年11月22日 (木) 08時39分

「これでギャラは同じなの」
つまりは理屈じゃなく感情の問題ってことですか。>女医問題
でも勤務時間が終わっても当たり前のようにボランティアしてることにも問題あるんじゃ?

ぺーぺーの頃お世話になった元オーベンは男同様にバリバリやってる人でしたが、案の定晩婚でしたね。
さいわいにも高齢出産ながらお子さんも生まれたそうでよかったですが。
金も能力も人並み以上にある女医さんの遺伝子が残りづらいってのももったいないことですよ。

投稿: ぽん太 | 2012年11月22日 (木) 09時54分

おもしろいことに看護師は院内保育所等々各種配慮がある中で、女医は何故か放置されてきたように見える点ですよね。
女医も院内保育所を利用できるようになった、なんて話が職場環境改善でニュースになるくらいですから。

投稿: 管理人nobu | 2012年11月22日 (木) 10時59分

女医と結婚したほうが経済的には余裕ができるでしょうから、子供が出来ても成人するまでに子供にかかる諸費用(主に学費)のやりくりも楽になるはずです。一方で女医比率が増加してそのうち7〜8割が結婚〜妊娠〜出産〜育児(児の急病など)で頻繁に休むとなると、特に急性期を扱う病院の臨床現場としてはいくら有能でもスタッフとして計算できないというのが実情でしょうね。
現実的には、望まずとも休んでも現場に影響の少ない慢性期の老人病院やリハビリ病院、健康診断などの勤務を選ばざるをえない女医も多いはずです。夫が開業して手伝う立場の人もいるでしょうけど。
現在は1人子供を産むとなれば色々な意味で母親には大変な負荷がかかります。経済力があるだけに、夫の子育て協力が乏しければ、離婚してシングルマザーの道を選ぶことにも躊躇しないと思います。

投稿: 逃散前科者 | 2012年11月22日 (木) 11時28分

女医が行き遅れるのは仕事のせいだけじゃないと思うがw

投稿: aaa | 2012年11月22日 (木) 12時28分

専業主婦やってるウチの嫁見てる限りでは、仕事と両立出来る程家庭は甘くないとオモ。

>女医が行き遅れるのは仕事のせいだけじゃないと思うがw

誰かうちに来て36歳独身女医の妹をファックしてよいぞww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年11月24日 (土) 10時13分

長期的に見れば医学部の男女比率は限りなく50:50に近づいていくとすれば、いつまでも女医に私生活を捨てた特殊な女性であることを求めるよりは、安心して妊娠・出産も行った上で長期的に働ける環境を用意した方が人材確保の面でも有利に思えます。
→著しく同意。
やっぱり女性は生理があり、生む性であるから、ジェンダーの差ってあると思うんだよね。
子供のいる女医、これから出産したいと考えている女医、未婚の女医問わず、女と男の違いってあると思う
男女まったく同じにってわけにはいかないな

投稿: | 2013年7月26日 (金) 14時40分

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