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2012年11月17日 (土)

医師数増加 見る側の視点で異なる評価

先日も医学部定員上限引き上げの話題をお伝えしたところですが、全国医学部長病院長会議からちょうどこんな話が出ているようです。

学生の学力「低下」の医学部が9割超- 医学部長病院長会議が調査 (2012年11月15日CBニュース)

 全国医学部長病院長会議は15日の定例記者会見で、医学部がある全国の国公私立80大学の9割以上に当たる75大学で、教員から「学生の学力が低下している」といった意見があるとの調査結果を発表した。学力の低下が懸念される原因としては、「医学部定員の増加」を挙げる大学が「小中高のゆとりカリキュラム導入」の次に多く、同会議の吉村博邦顧問は「これ以上急激な定員増を続けると、深刻な事態になりかねない」と危機感を表明した。

 調査は、80大学の医学部長か教育担当責任者を対象に、昨年3月-今年4月に実施した。
 調査結果によると、学生の学力が低下しているという意見が教員からあったり、そうした傾向があったりするかを尋ねたところ、75大学(93.8%)が「ある」と回答した。2010年12月-昨年1月に行った前回調査で「ある」と回答したのは、79大学のうち68大学(86.1%)だった。

 今回の調査ではさらに、「『学生の学力低下』が懸念される場合、その原因としてどのような事項が考えられるか」と聞いたところ(複数回答)、65大学が「小中高校の、いわゆる『ゆとりカリキュラム』導入」を挙げた。「医学部定員の増加」は58大学で2番目に多かった。【兼松昭夫】

これまた前回のコメント欄でも話題になったようにあくまでも主観的なイメージということで、カリキュラムも違う以上厳密な年代間比較は難しいと思いますけれども、興味深いのはこちらの調査ではその原因として医学部定員増加よりもゆとり教育の成果という声が高かったという点でしょうか。
医学部定員増で優秀な学生が底をついているというのであればどうしようもありませんが、単なる教育の失敗であたら学生の能力をスポイルしているだけであれば改善のしようはあるという理屈で、自らこういう結論を出した以上は今後使えない研修医が増えてくると全国医学部教員の教育法が未熟だったからだと言われるようになるのでしょうか(苦笑)。
いずれにしても学生気質が変化していることは誰しも異存がないところでしょうが、教育する側の主観としてはこれ以上定員を増やすなどとんでもない、勘弁してくれといったところが実感なのだとしても、医師不足が伝えられる医療現場からはまた別な意見もあるのではないかと誰でも思いますよね。
もちろんどうしても必要なものであれば教員の手配をするなりしてでも定員を増やさざるを得ないのは当然ですが、最近では臨床と教育のそれぞれの立場で若干の温度差が見られるようにも感じられるのは、教育の現場ではすでに限界まで学生が増えているのに対して臨床の現場にその結果が反映されるのはまだ先であるからでしょうか。

メディカルスクール開設前に需給予測を- 法科大学院踏まえ大磯氏 (2012年11月12日CBニュース)

 「医師養成大学院(メディカルスクール)を考える」と題したシンポジウムが11日、東京都内で開かれ、メディカルスクール開設のメリットとデメリットをめぐって医師や弁護士らが意見を交わした。この中で、医師と弁護士の両方の資格を持つ浜松医科大の大磯義一郎教授は、法科大学院(ロースクール)の開設により弁護士が余る状況になったことを踏まえ、メディカルスクールでは開設前に需給予測をすべきだと強調した。

 メディカルスクールは、4年制大学を卒業した人に対し、4年間の医学教育を行う大学院レベルの医師養成機関で、米国などで導入されている。

 聖路加国際病院の福井次矢院長は、北米型のメディカルスクールを開設することで、優れた臨床医を育てられるようになるとの期待感を表明。その理由として、▽単に成績が良い人でなく、医師になりたい人が入学する▽大学で医学以外の学問に触れており、幅広い教養が身に付いている▽大学医学部に付属病院をつくるのではなく、病院に医学部を付設することで、臨床重視の教育ができるようになる―などを挙げた。
 また、杉原正子氏(慶大病院研修医)は、社会人経験を経て6年制の大学医学部に入学した経験から、4年制のメディカルスクールを導入すれば、医師養成費にも、時間にも無駄がなくなるとの考えを示した。

 一方、大磯氏は、法科大学院の開設後は弁護士が余る状態になっていると指摘した。これにより、「毎年、わたしの所に来る修習生が希望する就職の条件が悲惨になっている」「医師で司法試験に受かった人でも、専門知識を法曹業務の中で生かしづらくなっている」といった問題が起きているとした上で、その原因は「希望的観測に基づく需給予測だ」と批判。「メディカルスクールにおいては、きっちりとシミュレーションをやっていただければと思う」と強調した。
 一方で、法科大学院について「4年制大学を卒業し、社会経験を持った人がモチベーションを持って来ているので、教育の質はものすごく高い」とも述べ、一定の評価を示した。

 これに対し井上清成弁護士は、法科大学院ができたことで、地方の弁護士不足が一気に解決したと説明。「デマンドサイド(需要側)から見れば、ロースクールは成功。どれだけ弁護士が悲惨であるかは、国民には関係ない」と語った。【高崎慎也】

さすがに某大先生など一部の例外を除いて今さらメディカルスクール導入論者にも勢いはありませんが、見ていますと成績よりもやる気の方が重要だ、だから社会人になってまで医師を目指して入学してくるような人材は素晴らしいのだと、妙にヨイショしているようにも感じられるところでしょうか。
個人的にも社会人入学というと受験一直線で世間知らずのまま医師になったストレート組と比べて良くも悪くも世渡り上手と言うのでしょうか、少なくとも自ら艱難辛苦を求めるような求道タイプはお目にかかった記憶がないのですが、それ故にか一昔前には社会人入学組=厳しい医療現場では使えない人材という偏見も確かにあったように思います。
法科大学院の実例を挙げて社会人入学組は「教育の質がものすごく高い」と言っていますけれども、以前よりもずっと簡単になったはずの国試ですら法科大学院組の合格率は低迷し学校によっては一人も通らないところもある、一方でストレート大学生の迂回路となっている予備試験組の合格率が極めて高いと言う現実をどう考えるべきだと言うのでしょうか?
そういう意味でどうも志の高い学生が集まる云々という主張には眉に唾をつけたくなってしまうのですが、ただ考えて見ますと医療の永続性を担保するためにも労基法無視の奴隷労働などとんでもない、むしろ人の命を預かる仕事だからこそパイロットなどに見られるような厳しい労働管理が必要なのだという流れが近年出来上がってきている訳ですよね。
その点で彼らを一つの目安にして医療現場の無理や無茶を洗い出すということはそれなりに意味があるのかも知れませんが、そうした人材が大勢増えるほどに一般入試組の定員を圧迫する形になりますから、これまた短期的にみますと臨床現場では医師数が増えたほどには手不足感が解消しないということもあるかも知れませんね。

ところで井上弁護士の指摘は非常に重要な点をついていて、弁護士にしろ歯科医にしろ余りまくって食うにも困るような状況に追いやられている方が利用者の側からすると競争原理でサービスもよくなった、待ち時間も減ったと良いことずくめにも見えるはずですが、これに対して医師の側から見るとどうなのかも考えておかなければならないでしょう。
医師の待遇をどのように評価するかは人によって様々な指標が考えられますが、例えば給与面で見ると経済成長だ、バブルだと浮かれる世の中を尻目にかれこれ30年間も横ばいを続けてきた医師給与が、このところの医師不足騒動もあってか地味に上がってきていると言います。
一方で労働環境という点ではさほど改善が見られないどころか、厳しい状況にある施設では逃散が相次いで残ったものも辞め時を探しているような状況だとすれば、結局は給与や労働時間など様々な要素のバランスをどのように求めていくかというコンセンサス不在で医師数をどこまで増やすべきかという話など出来ないはずですよね。
一般的に病院の売り上げは医師数に応じて決まるとも言われる以上、医師数を増やしていけばどこかで診療報酬をさらに切り下げ医療費を抑制すべきだという話にもなってくるはずですが、その頃には若くて給料の安い先生が来てくれるからと高給を取るばかりで働きの悪い老医達がどんどん淘汰されるようにもなっているのでしょうか。

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コメント

忙しい病院が安月給で楽な病院ほど給料高いって逆転現象が一番よろしくないでしょ
労働の質と量に応じた給与が支払われるようになれば不満もかなり軽減されるんじゃないかな

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年11月17日 (土) 09時39分

>労働の質と量に応じた給与が支払われるようになれば

10.ありえない解決策を図る
「犬が卵を産めるようになれば良いって事でしょ」

安月給で忙しい病院に勤めちゃう特殊性癖者は全労働者の敵だからして徹底的に粛清すべきですねw
*まあほっといても訴訟や過労死で絶滅するでしょうけど繁殖力も極端に低下してるしww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年11月17日 (土) 10時36分

今後、ゆとり教育世代が臨床現場に参入してくるに従って、安給料でハイリスクで激務の救急指定医療機関の崩壊と撤収が加速するでしょう。今の日本の臨床医のおかれている状況を考えれば、ゆとり世代の若手医師にとっては、この時代にわざわざリスクを犯して救急医療でどんな患者でも引き受けることはただ己の人生を失うだけの無謀な自殺行為と認識されても不思議ではない。訴訟リスクや健康被害リスクに見合うだけの正当な報酬や保険も全くないわけですし。
田舎だけではなく、都会でも救急対応できずに死に至るケースがますます増えるでしょうね。
医者が労働の質量に見合う給料が支払われているか否かなど、一般市民には全く関心のないことですし。
モチベーションを高くして勇んで参入してきた一般常識(苦笑)社会人とやらが医療の臨床現場に来ても、
やたら権利意識だけ強くて使えないだけのが増えても現場は迷惑なだけだと思いますが。

投稿: 逃散前科者 | 2012年11月17日 (土) 12時01分

まあ医療現場に社会の常識を!というのは国民世論でもありますからして、その導入を順次進めていくというのは既定路線だとは思います。
実際に近年次第に意識改革が進んできているのは各方面で感じているところではないでしょうか?

投稿: 管理人nobu | 2012年11月17日 (土) 12時21分

ほぼ全員が一般大卒後の4年制医学部入学システムの国・・・・・アメリカ(4年制大卒後)、カナダ(3年制または4年制大卒後)、オーストラリア(3年制大卒後)。

英国も一般大卒後(3年制大卒後)の医学部入学枠を新設拡充。
*accelerated four-year graduate entry courses in medicine
http://www.medschools.ac.uk/Students/Courses/Pages/Graduate.aspx

アメリカ、カナダ、オーストラリアが参加予定のTPPが成立したら、EUや英連邦みたいな医師免許の相互承認だけでなく、
日本も一般大卒後の医学教育に変わっちゃたりして・・・・

投稿: とある内科医 | 2012年11月17日 (土) 19時25分

逃散前科者さまへ
ゆとり世代がそこまで賢いのであれば、そうなるかもしれませんが・・・
この世界、基本的には頭の良い人間の集まりなのですけど、その中でもバカのほうが扱いやすい瞬間もあるわけで。
実際、学士入学で医師になった人達の方がマイナーに逃げる傾向が強いですし。

投稿: クマ | 2012年11月17日 (土) 23時29分

>一般常識(苦笑)社会人とやらが医療の臨床現場に来ても、
>やたら権利意識だけ強くて使えないだけのが増えても
>現場は迷惑なだけだと思いますが。

仰る通り。
戦力としてあてに出来ず、こっちのペースまで乱され、
「いっそ信楽焼の狸でも置いといてくれ」…。
でも一歩引いて考えてみると
彼等の言い分は「標準的な権利の要求」に過ぎないのでは。
すると彼等の出現自体、現場の人間の目を覚まさせる為に
必要なコストであったかとも感じられます。
ああ あれでもいいのか~ ってです。

投稿: 福京 | 2012年11月18日 (日) 08時22分

働いた分はちゃんと給料払え
労基法無視の残業泊まり込み強要はやめろ
365日24時間拘束なんてありえないだろ

こんな当たり前の要求したら糞味噌に罵られる医療の世界ってどんだけ毒されてんの?

投稿: てんが | 2012年11月18日 (日) 09時55分

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