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2012年11月19日 (月)

高齢者医療・介護問題 ベストな距離感

先日は保険を支払う側である健康保険組合連合会(健保連)の白川修二専務理事が前期高齢者の窓口負担1割という特例が続いている件に関して、「法治国家なのだから、法律の通りしっかり実施してほしい」とかなり強い口調で早期に2割負担に是正することを主張していましたけれども、財政面でも年々厳しさを増しているのが高齢者の医療と介護の問題です。
何しろ団塊世代の高齢者仲間入りに代表される高齢者人口増加に加えて、その財政を担保するべき若年者は人口減少と所得減少のダブルパンチで自らが口を糊するだけでも精一杯という状況ですから、ここで下手な舵取りをすれば国全体が大変なことになってしまいかねません。
それでも医療の面では結局担当医の裁量権が非常に大きいわけですから最低限の部分に関しては何とかなるだろうという淡い期待感がありますが、一方でそうした強権的な権力者が不在の介護領域では利用者自身が主体的に問題と向き合わないことには大変なことにもなりかねません。

保険料納付者の8割余りが介護に「不安」 (2012年11月15日CBニュース)

介護保険料を納める世代のうち、家族や自分の介護について不安を感じている人は8割余りに達することが、オリックス・リビングの調査で分かった。また、不安を感じる一方、将来の介護について、まだ何も考えていない人が7割近くいることも明らかになった。

オリックス・リビングでは、今年10月4日から5日にかけ、全国の40歳以上の男女1238人を対象に、介護に関する意識調査を実施した。

このうち、家族の介護に関する不安の有無について尋ねた質問では、不安(「不安を感じる」と「やや不安を感じる」の合計)と回答した人が全体の86.0%に達した。また、自分の介護についての不安の有無については、86.1%が不安と答えた。一方、自分に介護が必要となった時について尋ねた質問では、68.4%が「まだ何も考えていない」と回答。「考えているが、家族には伝えていない」(23.9%)という回答と合わせると、「介護保険料を納める人のうち、92.3%が将来の介護に不安を抱えながらも、実質的には何の対応もしていないことになる」(オリックス・リビングの入江徹企画チーム長)。
(略)

介護人材確保、小規模自治体ほど困難?(2012年11月14日CBニュース)

人口規模が小さい自治体ほど、高齢化が進み、介護人材の確保に苦労している可能性がある-。そんな調査結果を、ニッセイ基礎研究所の進藤由美研究員がまとめた。調査結果によると、人口5000人未満の小規模自治体では、平均して3人に1人が65歳以上の高齢者となっている上、平均年齢も52.3歳に達している。進藤研究員は、さらに高齢化が進むと、小規模な自治体では、ある程度の体力が不可欠な介護人材を確保するのがより難しくなるとし、自治体間の積極的な連携などの工夫が必要と訴えている。

進藤研究員は、2010年の国勢調査を基に、全国1750か所の市町村の人口構成を分析した。各自治体を人口規模別に7つに分類し、それぞれのグループの高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)の平均を算出したデータでは、「5000人未満」の自治体の高齢化率が35.5%で最も高く、以下は「5000人以上1万人未満」が31.6%、「1万人以上3万人未満」が28.7%、「3万人以上5万人未満」が26.1%、「5万人以上10万人未満」が24.1%、「10万人以上30万人未満」が22.6%、「30万人以上」が21.5%となった。

既に4人に1人が高齢者となっている自治体の割合は、「5000人未満」の自治体では92%に達したほか、「5000人以上1万人未満」は86%、「1万人以上3万人未満」は73%、「3万人以上5万人未満」は58%、「5万人以上10万人未満」は41%、「10万人以上30万人未満」は23%で、「30万人以上」では7%にとどまった。進藤研究員は、小規模な自治体では、高齢者に向けたサービスだけでなく、障害者や子どもに向けたサービスを提供するための人的資源も確保しにくくなっていると指摘。その上で、「例えば、高齢者と障害者と子どもへ向けたサービスを一元的に提供できるような仕組みづくりが必要ではないか」としている。【多●正芳、●は木へんに朶】

しかし介護スタッフも高齢化しているとはまさに老老介護の現実が拡大再生産されたような気がしますが、それでも個々の家庭がバラバラに家庭内での介護に直面していた時代に比べると、地域内でサービスとして共有されるようになっただけ効率化し状況も改善してきているはずだと考えるべきなのでしょうか。
高齢者自身までも介護スタッフに駆り出すと言えば何か悪いことのようにも聞こえますが、昨今シルバー人材センターなどというものがあるくらいで高齢者と言えど労働力としても期待出来ると見なされている、そして何より介護職などは若年者から大いに忌避されているという現実もあるわけですから、年金財政も怪しい折に介護する側、される側双方にメリットのある解決策ではあるのかも知れません。
ところでよく雇用不安などに関連して介護領域に若い人材をという提案はなされるし、実際不景気の世で確実に需要のある業界に求職者を吸収するということは大事な事ですが、一方でこうした介護問題ということになると子や孫世代も含めた家族をどう巻き込んでいくかという議論につながりやすいという点は少しばかり危惧しています。
田舎などでは未だに施設や病院に老親を預けるのは親不孝、最後まで自宅で看取ることこそ親孝行であるという考え方が残っているところもあり、国の「家に帰れる高齢者はなるべく家に帰す」という政策がその価値観を後押ししている部分もあるのですが、先日出ていたこういう調査結果をまず取り上げてみましょう。

県民意識調査:48%、自宅で死にたい 在宅困難、8割「家族に負担」??医療福祉に関する回答 /滋賀(2012年11月08日毎日新聞)

 県は20歳以上の県民を対象に、在宅看(み)取りの取り組みの参考にする「滋賀の医療福祉に関する県民意識調査」の結果を発表した。1775人が回答し、48%が自宅での最期を希望。自宅療養が困難な理由として、8割近くが「家族に負担がかかる」を挙げている

 調査は7月25日?8月13日、無作為抽出した男女3000人に実施。最期を迎えたい場所は自宅に次いで病院が22・6%で「わからない」も21・7%を占めた。また、自宅療養は55・7%が「実現困難」と答えた

 自宅療養が困難な理由(複数回答)としては、家族の負担のほか▽「症状が急に悪くなった時の対応に不安」(60・7%)▽「経済的負担が大きい」(35・1%)▽「往診してくれる医師がいない」(28・9%)??という回答が多かった。延命治療については「望まない」「どちらかというと望まない」の回答が合わせて8割以上となった。

 充実を求める医療分野(複数回答)は、がん対策が46・9%と最も多く、次いで救急医療33・7%、認知症対策31%など。在宅医療は28・9%だった。【姜弘修】

人間誰しも平等に避けられないのが最終的な死である以上、生活に余裕のある先進諸国ほどいかに生きいかに死んでいくかということに関心が高まってくるのも当然と言えば当然で、社会が発達してくるほど医療費もどんどんかかるようになることは当たり前の結果ではありますよね。
日本の場合は心身ともに穏やかな最後を迎えるということを表現する慣用句として昔から「畳の上で死にたい」と言う言葉がありますが、実際問題として今日日本人のほとんど全員が病院内でなくなっているという現実を思うとき、平和な時代でありながら実は実現困難な夢になってきたと考えざるを得ません。
その理由として挙げられている家族に負担がかかるということの背景には病院に入れておくのが一番安上がりで手間暇がかからないという日本の特殊事情もありますが、心身の負担が双方に過重なものとなった結果、「自宅で家族に看取られ安らかに死にたい」という願望とは正反対の結果にすらなりかねないということも考えておかなければならないでしょう。

家族介護者の26%が虐待経験あり!虐待の種類は心理的虐待が80%以上(2012年11月4日@DIME)

株式会社エス・エム・エス(本社所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:諸藤周平)が運営する、介護の悩みを介護の専門家に無料で相談できるQ&Aサイト「安心介護」は同サイトの「安心介護」会員を対象に介護現場における虐待の実態調査を実施。結果を公開した。高齢者による介護や、周囲に協力者がいないため一人で介護をしている方などが増加し、介護疲れ等が原因による虐待がメディアで取り上げられるようになっているが、そのような中、本調査では全体の26%が日々介護する中で虐待をしてしまったと回答し、また全体の30%が虐待をしそうになったと回答した。実に56%もの家族介護者が、介護による精神的・肉体的疲労、周囲に協力者がいない等、過酷な介護状況におかれていることがうかがえる調査結果となっている。詳細は以下の通り。

【家族介護者の26%が虐待経験あり!虐待の種類は心理的虐待が80%以上】

 日常的に介護をしている方の26%は、虐待経験ありと回答。虐待の種類では、「暴言や、いやがらせ」などの心理的虐待が85%と最も多く、次いで被介護者に「暴力的な行為」などの身体的虐待が42%、介護放棄・放任が17%という結果となった。虐待をしてしまった主な理由としては、「1日に何度も何度も同じ話を繰り返すので、無視したり、暴言を吐いた。(心理的虐待)」、「認知症とわかっていても、暴言、強い反抗、親戚への虚偽の話につい手がでてしまった。(身体的虐待)」、「精神的疲労や介護に対する親族の理解・協力が得られなかったため介護放棄した。(介護放棄・放任)」
などの意見が目立った。

【家族介護者の30%が「虐待しそうになったことがある」】

 虐待経験なしと答えた方(全体の74%)に、虐待をしそうになったことはあるかの調査を行なった結果、41%が「虐待をしそうになったことがある」と回答した。つまり、全体の30%が「虐待をしそうになったことがある」という結果になった。また「虐待をしそうになったことがある」頻度としては、「1か月に1回以上」と回答した割合が59%と高く、「週に1 回以上」と回答した割合で見ても30%と高い傾向がみられた。虐待をしそうになってしまった主な理由としては、「寝ずに、何回も大声で叫び、暴れられたとき」、「文句を言われたり、激しく罵られたとき」、「スムーズに介護ができなかったり、介護サービスを受けたがらなかったりするとき」などの意見が目立っている。

医療の世界で厄介事の代表格としてたびたび取り上げられる「遠い親戚」問題ですが、日頃から身近に接していない人間ほどたまに会いに来たときには優しく出来るものだとすれば、常時介護や看病に汗水垂らしている人間にとっては「もういい加減にしてくれ…」と感じてしまうのも無理からぬことかなと思います。
となれば、亡くなる場所が自宅の畳の上であれ病院のベッドの上であれ、家族との良好な関係を最後まで維持出来るような適当な距離感を保っておくことが重要なのであって、物理的に近くあればあるほど親密になると言うのは一方的な依存関係になりがちな高齢者介護の領域では必ずしも通用しないということです。
医療現場でもどちらかと言えば延命治療に消極的な現場スタッフと千代もと願って積極治療を希望する家族という構図がしばしば見られますが、これも日常的に患者を間近に見て過去の類似の症例が辿った経過を知っているスタッフからすれば、とかく濃厚な対応をすることが必ずしも良い結果にならないと理解できるのは当たり前のことですよね。
ただ考えようによっては家族介護に飽き飽きすることで「先生!お爺ちゃんを一日でも長く生きさせてあげてください!」などと強硬な要求をしてくる家族も減ってくるでしょうから、あるいは高齢者医療費削減まで考えての自宅誘導政策であったのだとすれば日本の政治も案外先の先を見据えているのだとも言えるのでしょうか?

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コメント

中高年が介護を担当して若者がその仕事を引き継げばいいと思う
会社にとっても給料だけ高い中高年はリストラしたいでしょ

投稿: あめんぼ | 2012年11月19日 (月) 09時23分

都会と田舎じゃ距離感が全然違いますし家族によっても全然違うんで
けっきょく個々に顔色見ながら調節する必要がありますな

たぶん子供の虐待死でもおんなじような調子で
画一的強制的に介入すればいいってものでもないんでしょうな
そこまできめ細かい対応が出来るほど人手も予算もないってことも同様かと

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年11月19日 (月) 11時04分

家族のストレスは医療従事者のストレスにも直結するので、なるべくなら安定的な関係であってほしいわけです。

投稿: 管理人nobu | 2012年11月19日 (月) 12時21分

不安の原因が何かも調べておかないと対策立てようがないですね

投稿: 琢磨 | 2012年11月19日 (月) 15時45分

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