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2012年10月23日 (火)

保険と言うものに関わるニュース二題

昨今では妊産婦の高齢化が進んできていることもあって生殖医療、不妊治療というものにも非常に関心が高まっています。
一方で少子高齢化対策上も出生率向上は社会的に求められているところですが、そんな中でとかく高額のコストが制限要因になりがちな不妊治療を支援しようという話が出てきたようです。

金融庁、民間保険で「不妊治療」の補助ができるよう検討(2012年10月18日FNNニュース)

高額な治療費がかかるといわれている「不妊治療」。その費用を民間の保険で補助できるよう、金融庁が検討していることがわかった。
産婦人科に通う女性は「たくさん悩んでいる方がいるので、とてもありがたいことだと思います」、「1歩、踏み出せるんじゃないか」などと語った。

厚生労働省は2012年6月、第1子を出産する母親の平均年齢が、初めて30歳を超えたと発表した。
出産年齢が高齢化する中、不妊治療の関心が高まっている
金融庁は、高額な費用がかかる不妊治療の負担軽減のため、民間保険の対象にすることを検討している。
不妊治療をしていた女性(32)は「自己負担がすごく大変だった。年間で70万円~80万円くらい」と語った。
現在、第2子を妊娠中で、その健診のため病院を訪れたこの女性は、3年間の不妊治療の末、最初の子どもを授かったという。
人工授精の3回を含め、費用はおよそ240万円で、費用の捻出に苦労したという。
不妊治療をしていた女性(32)は「自分が妊娠中に保険に入ろうと思った時に、(不妊治療で)入れませんと言われたこともあったので。(保険があると)やっぱりありがたいです」と語った。

体外受精や顕微授精などの費用は、1回に30万円から40万円ともいわれ、高額。
しかし、健康保険は適用されず、患者が重い自己負担を強いられているのが現状となっている。
ある調査によると、子どもがいない夫婦が、不妊を心配したことがある割合は、およそ6割
そのうち、不妊治療を受けたことがある夫婦は、およそ5割にのぼった。
さらに、厚労省が行っている不妊治療の助成金の支給件数も、6年間で5倍に急増した。
少子化を考えるうえで、不妊治療は避けては通れない大きな課題となっている。
この現状に、清水産婦人科クリニックの清水良美理事長は「必ず成功するということでもありませんし、2回、3回ということもございますので、やはり(費用は)相当な負担になると思います。費用的なことを聞いて、断念する方も中にもいます。保険で出してくれるとなると、もうひと月、来月もやってみようかという気持ちになる。それで妊娠が成立すると、いいことだ」と語った。

子どもが欲しい女性にとって、民間保険の参入は朗報となるのか。
保険アナリストの山野井 良民氏は「不妊治療は、どうしても高額な負担になる。お金に余裕のある人しか、治療を受けられないというのが現状。不妊治療の費用を保証する保険が開発されると、社会的な不公平を改善することになる」と語った。
2年前から不妊治療を受けているという、38歳のAさんは「去年1年間の治療では、100万円は確実に使っていると思います。お金がネックでやめてしまえば、このままだと、確率的には子どもを設けるのは低いですし、ある程度、できる範囲のことはやろうと。お金を理由に(不妊治療の断念は)今は考えていない」と語った。
お金が理由で、子どもをあきらめたくないというAさん。
仕事を続けながら、高額な治療費を払っているという。
Aさんは「今、治療を行っているわたしの立場では、治療を行っている最中でも、その保険に加入できるかどうかとか。年齢制限があると、わたしも高齢な方に入るので、ちょっとつらいなってなります」と語った。

金融審議会では、早くて2013年秋の臨時国会に、保険業法の改正案を提出する方向。
一方で、山野井氏は「専用の保険となると、不妊治療を希望する人だけが加入すると、保険の運営としては、難しい問題が出てくる。医療保険に特約として、自由に選択できて、加入できることが考えられる」と指摘している。

ちなみにそんなに金銭的負担が問題ならいっそお産関連は全部保険扱いにすれば…という人もいるかも知れませんが、産科関連については保険外の完全自由診療だからこそゴージャスなセレブ産院など多種多様な業態が発達してきたという経緯もあって、日本では保険外診療のモデルケースとしてもそれなりに意義があったんじゃないかという気がします。
さて、どうも不妊治療でどこまで保険扱いで行われるかは施設によってまちまちのようなのですが、排卵誘発剤や人工授精(AIH)までは保険診療で扱っている施設があるようで、一方体外受精、顕微授精以上は自費扱いになるようですから、すぐ100万、200万というお金が飛んでいくと言います。
不妊治療を繰り返している方々は当然ながら高齢など条件が悪い方が多く、特に40歳以上ともなれば正直無理だろうと思いながらも希望がある以上続けざるを得ないという専門医の先生方にとっては、この経済的要因によって治療を断念させられるということもある意味ほっとするところではあったようですね。
逆に各種補助の充実によって到底妊娠が無理でも今まで以上にがんばってしまう方も増えてくるということになりますが、記事中にもあるように現在では公的な補助制度の利用者も急激に増えてきているようで、財政面からも医療リソースの面からも一体どこまでを支援の対象にすべきなのか、たとえば50歳、60歳になっても望むまま幾らでも支援を続けるのかといった議論も必要になってくるのかも知れません。

今回の検討では民間保険でということなんですが、結局経済的にペイするかどうかということを考えると加入者は当然確実に高い治療を受けることが前提でしょうから、やはり不妊治療専用と言うより他の保険とセットでということにならざるを得ないでしょう。
もともと高齢出産では各種リスクが飛躍的に高まることが知られていますが、以前にも取り上げたように卵子提供で妊娠した場合は妊娠高血圧症候群になる割合が体外受精に比べても約6倍になるなど、不妊治療を受ける段階で言葉は悪いですが母子ともに何らかの合併症はまず必発するものと覚悟しておかなければならないはずです。
記事にもあるように今までは妊娠が成立してからこうしたリスクを知り、慌てて保険に加入しようとしたところ合併症のため断られたといったケースもあったようですから、こうした保険の登場によって妊娠希望者の危機意識が高まるのであればそれはそれで意味があることかなとも思いますね。
さてもう一件、こちらもまた以前から言われていたことですが、ついに対策をしなければと言う議論がようやく歴史上初めて始まったという先の長いニュースです。

柔整療養費抑制へ、社保審専門委が始動- 療養費改定で公開の議論は初(2012年10月19日CBニュース)

 増え続ける柔道整復療養費の抑制策を検討するため、社会保障審議会医療保険部会に専門委員会が設置され、19日に初会合を開いた。厚生労働省によると、療養費改定について公開で議論するのは初めて。まず2012年度療養費改定の案を取りまとめた上で、中長期的な療養費の在り方を検討する予定。厚労省側は、多部位施術や長期・頻回施術への保険給付の見直しなどを課題に挙げている。

 「柔道整復療養費検討専門委員会」は、医療保険部会が11年12月に、柔道整復などの療養費について「12年度改定において適正化するとともに、関係者による検討会を設け、中・長期的な視点に立って在り方の見直しを行う」とする「議論の整理」を行ったことなどを受けて設置された。座長には、医療保険部会の部会長も務める遠藤久夫・学習院大教授が選ばれた。

 柔道整復療養費は、国民医療費を上回る勢いで伸びていたため、09年に政府の行政刷新会議が行った事業仕分けで対象になり、都道府県間で請求部位数に大きな差があることから、3部位以上の請求に対する給付について「見直しを行う」と評価された。これを踏まえ、翌10年6月の療養費改定では、3部位目の給付率が80%から70%に引き下げられ、4部位目以上は給付しない仕組みになった。

 その結果、柔道整復療養費の10年度の伸び率は1.3%で、09年度から1.0ポイント下がった。また、全体に占める3部位以上請求の割合の全国平均を見ても、09年10月分は50.8%だったが、10年は46.8%、11年は40.9%と減少傾向にある。しかし都道府県別では、11年でも、最高の大阪(63%)と最低の山形(12%)では、約5倍の開きがある。

 初会合で厚労省側は、12年度療養費改定に関する「基本的考え方」の案を提示。多部位請求への給付について「さらなる見直しを行う」ことを提案した。さらに、長期・頻回施術に対する給付の見直しや、頻度が高い施術について理由書を支給申請書に添付させるなどの運用の見直しを行う案も示した。
 また、支払側の高橋直人委員(全国健康保険協会理事)は、「12年度療養費改定に当たっての意見」と題した資料を提出。この中で、「不適切な請求も後を絶たず、適正化が急務」とした上で、「改定率を引き下げる方向で検討していただきたい」と求めた。さらに、行政刷新会議の提言を踏まえて、3部位目の請求への給付率を33%に引き下げることや、施術期間や施術回数に上限を設けることなどを要望した。

 一方、施術者側の委員からは、慎重な議論を求める声が相次いだ
 田中威勢夫委員(全国柔道整復師連合会長)は、1936年の制度開始からこれまで、制度変更がほとんどないことに触れ、「いろいろな制度疲労を起こしており、制度に不備がある」と指摘。「制度の不備と不正請求を整理して議論しなければならない」と訴えた。近藤昌之委員(全国柔道整復師連合会常任理事)は、「全体の医療費を下げるためにも、柔道整復医療を活用してほしい。(柔道整復師が)治療することで、予防効果も期待できる」と語った。

 次の専門委では、12年度療養費改定についてのたたき台が厚労省から示される予定。療養費改定は通常、2年に1回、4月に行われる診療報酬改定を踏まえて6月に実施されているが、12年度改定はこの専門委が取りまとめる改定案を受けて実施される。

■はり・きゅうの療養費も専門委で検討
 同日には、「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」も初会合を開いた。この専門委も、11年12月の医療保険部会の議論の整理などを受けて設置され、まず12年度療養費改定の案をまとめた上で、療養費の中長期的な在り方を検討する。柔道整復とはり・きゅうなどでは、療養費の支給対象になる負傷や支給方法が異なるため、別に専門委が設けられた。【高崎慎也】

しかし柔道整復師の施術には予防効果があると正当化いますけれども、医家による保険診療では原則予防治療は保険扱いが認められていないわけですから、このあたりにも不公平な取り扱いが慣習化してきたことが伺われますね。
思えばこの柔整問題も長年とんでもないことだと言われ続けながら、2009年になってようやく民主党政権下でこの問題には対策が必要だと仕分けで取り上げられた、そして2010年あたりから各地の健保組合で厳しい審査や不支給と言った具体的な行動が出てくるようになった経緯は過去にもお伝えしてきた通りです。
当事者もまさに制度が時代に合っていないのだと言っているわけですから、さっさと制度を改める議論を進めるべきなのは当然ですが、スケジュールを見ても実現はまだまだ先の話でもあり、しかも例によって近い将来の政権交代でまたしても有耶無耶にもなりかねない危惧もあります。

医療がこれだけ締め付けが厳しくなり本来必要な医療すら行えないようなケースがある中、柔整だけがレセプトのチェックも受けないまま好き放題に医療費を使って儲けているというのもおかしな話で、本来であれば基準も何も違う以上は全くの別物として医療と切り離していただいてもおかしくないと思います。
同時に「保険が使える安いマッサージ屋」として柔整を不正利用してきた国民の側がそのつけを医療費国民負担という形で支払わされることもある意味因果応報なのですが、同じ医療費を支払うならより実質的な効果のあるものにこそ十分なお金を使っていただきたいと考える国民も多いのではないでしょうか?
ともかくこの柔整問題については今までにもあまりにいい加減に行われていることは公然の事実だったにも関わらず全く野放しであったという経緯があるわけですから、いつまでも既得権益に配慮して慎重な議論で時間を浪費するばかりでなく実のある改善を早急に図っていただきたいものだと思いますね。

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コメント

柔整は各界に同門的な縁故が多そうなイメージあるんですが実際どうなんでしょうね?
病院の不正請求にはマスコミも大騒ぎするのに柔整には何も言いませんし。

投稿: ぽん太 | 2012年10月23日 (火) 08時43分

たとえ特約であったとしても、不妊治療特約の損を生命保険本体で取り戻すような設計では、結局 不妊治療を行わない顧客には(他の保険よりも)損な保険になりますから、保険商品として成立しないと思います。
やはり、不妊治療保険として損得が釣合う設計にする必要があると思います。
単純計算だと、保険料は一組の夫婦が不妊治療に費やす費用の平均値(分母には不妊治療を受けない人もある程度含む)ですね。
それよりも多く費やす契約者が多ければ保険会社の負け、自然妊娠・出産も含め費やす費用の少ない契約者が多ければ保険会社の勝ち。
保険料をどれだけ低く抑えられるかは、結局のところ、自然妊娠・出産してしまう加入者をどれだけ集められるかにかかるかと思います。

面白いので、どんな保険があり得るか考えてみました。>不妊治療保険
たとえば
プラン1:30歳まで保険料を積み立て(一時払い可)、30歳以降不妊治療を受けると保険金が給付される。
     妊娠・出産するまでは複数回の不妊治療が受けられる(無制限かどうかは契約内容次第)。
     一回 妊娠・出産したら、契約終了。
     積立期間も含め、自然妊娠・出産したら契約終了。払込済みの保険料はほとんど戻らない。
プラン2:契約期間内に不妊治療を受けると保険金が給付される。加入年齢の下限はないが上限あり。
     契約開始後一定期間は免責。
     妊娠・出産したら契約終了。
     自然妊娠・出産であっても払込済みの保険料はほとんど戻らない。
(保険会社指定(もしくは任意だが不妊治療を受ける医療機関とは別)の医療機関で不妊症の診断を受ける必要あり。)
(不妊治療の内容に保険会社が介入する。)

こう考えてみると、逆に、不妊治療を受けるなら保険が使えるうちに=まだ比較的条件の良い年齢のうちに、というインセンティブがかかりそうでかえって良いかもしれません。

投稿: JSJ | 2012年10月23日 (火) 09時46分

男性側に原因のある不妊は男性が保険に入らなければならないシステム、とすれば、ペイするかもしれません。

投稿: クマ | 2012年10月23日 (火) 10時16分

100万、200万ぽっちの、ちょっと気の利いた車すら買えない程度の金も捻出出来ないようなBBA…失礼、高齢出産希望者にムリに子供を産んでもらう必要はないのでは?子供が出来て育てる、となると健常児ですらもちろんそんなもんじゃすまない手間も金もかかるワケで、ましてやハイリスクなBBA…じゃない、高齢出産者をや。

すぐに思いつく即効性がありそうな少子化対策として、年間20万を超えるという膨大な人工中絶胎児の(言葉は悪いですが)有効活用なんてのは如何でしょうか?望まない妊娠をされた方に補助金を出し(出さなくてもいいかも)、産まれたら速やかに養子縁組、若しくは公的機関で育成するシステムを確立する…。自分で育てなくいていいのなら「産む」という選択をする女性は相当数いるのではないでしょうか。
*中絶されるような子供は高確率で劣悪遺伝子排除法に引っかかりそうなのが難点ですがw

>柔整は各界に同門的な縁故が多そうなイメージあるんですが

はっきりゆえばいいじゃないすか、警察利権だっっておやだれかきた

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年10月23日 (火) 11時58分

おっしゃるような民間保険として成立するのかどうかが最大の謎なのですが、むしろ貯蓄タイプの積み立てのような形で学資保険などにつなげていくのがいいのかなとも。
いずれにしてもこうした保険が登場することで意識改革を行う意義はあるかと思いますし、年齢制限等が医学的妥当性から設定されれば教育的効果もあるかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月23日 (火) 12時27分

一定の年齢までは手厚く補助をしておいて、それを過ぎると補助を先細りさせるのがいいのでは
早く生まないと損だと経済的にも判らせるべきでしょう
一定年齢以上の不妊治療なんて趣味の領域でしかないんですから自分の金で好きにやらせるべきです

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年10月23日 (火) 14時24分

オバンの不妊治療なんてムダ

投稿: iura | 2012年10月23日 (火) 23時20分

震災直前、危険だと主張していた学者は騒乱罪で訴えられていたらしい。
そういう事実を見るとこの判決も当然のように思えるな。

投稿: | 2012年10月27日 (土) 22時53分

記事を拝読しました。はり・きゅうの療養費の話は初めて聞きました。

投稿: あん摩 | 2013年6月 4日 (火) 14時12分

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