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2012年10月11日 (木)

本当の価値が厳しく問われる時代?

近年になって貿易不均衡是正の意味もあって日本各地で外国人看護師の導入が試みられていますけれども、様々なカルチャーギャップなども障害となってあまりうまく運んでいるとは言えないようですよね。
そんな中にあって先日のことですが、とある来日看護師のちょっとしたつぶやきが大きな共感を呼んでいると話題になっています。

「日本人は時間守らない」その真相(2012年10月6日ニコニコニュース)

日本人は海外の人々から、「時間に厳しい」と評されることが多い。しかし、9月28日にあるツイッターユーザーが投稿したインドネシア人看護師の言葉が、その概念に一石を投じるものとして注目を集めている。

そのツイートを投稿したのは、京都のNPO法人で事務局長を務める男性。男性は9月28日、NPO法人POSSEより刊行されている雇用問題総合誌『POSSE』でのインタビューより抜粋し、

「インドネシア人看護士『日本人は時間を守りません。遅刻に対しては大変厳しいのに、仕事の終了の時間は守ったことがありません』(『POSSE』vol.16、安里和晃インタビュー『EPAは介護・看護現場を変えたか』より)」(原文ママ)

とツイート。確かに、会議が長引いたり、残業したりすることが日常的になっていることが多い日本人ではなかなか気づきにくい内容だ。

このツイートは投稿後すぐに広く拡散され、10月3日現在そのリツイート数は7000回を超えている。また、2ちゃんねるのニュース速報板に立てられたスレッド「外国人看護師 『日本人は時間を守らない。遅刻には厳しいのに仕事終了の時間は守ったことない』」では、

「なるほどねえ。そういわれると時間にルーズな国ってことになるか」
「これぞまさに正論だな」
「ですよね もっとこの件については海外の人たちに叩いていただきたい
「久々に目から鱗 社畜生活で感覚麻痺してんだな」

など、同意の意見が多数ある一方、

「その通りだが、そういう発想持ってる内は日本で働かない方がいい」
「正論だけど終了時間を守らないからこれだけ経済成長できた」

と、意見を認めつつも日本社会の現実に照らし合わせて考えを述べる声を書き込んでいるユーザーも複数見られる状況だ。

日本における東南アジア諸国からの外国人看護師・介護福祉士の受け入れは、2008年に発効した「日・インドネシア経済連携協定」と「日・フィリピン経済連携協定」に基づき、2009年度から実施されたもの。2012年5月までに、上記の協定をもとに両国から合わせて1562人が日本に入国しており、今後も増えていくといわれている。今回のツイートは、ネットユーザーが“労働時間”というものについて考えるきっかけとなったが、今後も日本で働く外国人による“分析”が注目される機会は増えそうだ。

以前から日本人は外国人の意見を(それも特に厳しい意見を)非常にありがたがるちょっと変わった民族だという声がありますけれども、なるほどこの件については確かに言われてみればその通りですよね。
最近では現役世代のワープア化と並んで特にこのただ働き問題も非常に注目を集めるようになってきていますが、一昔前のように終身雇用の年功序列、生涯を原則ただ一社に捧げるという時代であれば、多少ただ働きをしたとことで後になって元は取れるというのも事実だったのでしょう。
しかし今や非正規雇用全盛期の世の中でもあり、正規雇用とは言えいつ首を切られたり転職を強いられたりするかも知れないとなれば、働いた分は確実に支払いをしてもらわないことにはやっていられないと感じるのも当然でしょう。
このあたりはまさしく終身雇用感覚にずっぽり浸かりきってきた管理職世代と、その下で働く若年雇用者との間で大きく意識が異なるところなのでしょうが、この記事を見て思わず思い出してしまったのが先日出ていましたこちらの記事です。

医師国試の負担感、受験生と教員で温度差- 医学部長病院長会議が調査(2012年9月22日CBニュース)

 今年2月に行われた医師国家試験の受験生のうち、国試の負担が過重だと思っている人は4割に満たないことが20日、全国医学部長病院長会議の調査で分かった。これまでの調査などで教員側から「負担が大きい」との声が多く寄せられていたため、受験生に負担感について初めて聞いたが、受験生と教員では温度差があることが浮き彫りになった。

同会議では医師国家試験について、受験生と教員に対するアンケート調査を毎年行っている。今回の受験生への調査では、10大学(国立5、公立1、私立4)の856人に調査票を配布して、合格発表前に回収。568人から回答を得た。

調査結果によると、受験生に対し、「国試が医学生にとって過重であり、不安をあおっているとの指摘があるが、どう思うか」と聞いたところ、「そうは思わない」が60.4%で、「そう思う」の36.4%を上回った。「国試があるために、臨床実習が形骸化しているとの指摘があるが、どう思うか」との設問でも、「そうは思わない」が57.6%で、「そう思う」の39.1%より多かった

別所正美会長は同日の記者会見で、負担が過重と思う受験生が想定より少なかった理由について、「学生は今のような国家試験に慣れてしまっているのではないか」との見方を示した。
また、嘉山孝正相談役は、「今の学生は、クラス代表を通じて『午後5時以降は手術で残さないでくれ』と平気で言ってくる。国試のために臨床実習が形骸化しているということは、教員に聞けば分かることだ」と指摘した。【高崎慎也】

しかし嘉山先生は5時以降手術で残さないでくれと学生が言ってくるという話を「国試勉強の負担が増し臨床実習が形骸化している」例として挙げている訳ですけれども、さすがにそれは全然別の問題では?と思いませんでしょうか?
そもそも当の学生自身の口からも「国試の勉強がきつい」という声はさほど挙がっていないわけですし(むろん、他の理由で居残りにつきあえないことは幾らでもあるでしょうが)、国試勉強のために学生が居残り残業拒否が出ているのであれば近頃の研修医が残業を拒否し始めたのも国試の負担のせいか?ということですよね。
一昔前の医学生も授業や実習はろくに出ないで昼間は寝ていて、夜になると集まって国試勉強などという強者が結構いましたけれども、そういうケースも別に忙しいから学校をサボっているというものでもないでしょうに、嘉山先生にしても考えればすぐに判るようなこんな話を出してこなければならないほどにタメにする議論をやっている場であるということなんですかね。

いささか脱線しましたけれども、まさにここで見られるのが若年世代と管理する側の年長者側の感覚の差と言うもので、学生からすれば「実習に遅刻でもしようものなら激怒するくせに、自分たちは実習終了時間に遅れ放題でもペナルティーなしか?」と言いたくもなるのではないでしょうか?
もちろん午後5時以降であっても居残ることによって失うもの以上に得るものがあるとなれば、それは学生だろうが研修医だろうが自ら進んで居残らせてくださいと言ってくるでしょうけれども、今現在広く行われているような単に側で突っ立っているだけの手術見学に居残ってまで付き合う価値があるのかどうかということです。
そう考えるとこの問題、単に国試勉強が忙し過ぎるからだとか学生に熱意がなくなったなどと人ごとのように言っていられる問題ではなくて、まさに彼ら教育を担当する側に対して学生が「あなた達の教育には居残ってまで付き合う価値はないんです」とはっきりノーを突きつけているのだということを自覚してもらわないといけませんよね。

最近は学部学生のうちから海外武者修行など厳しい教育を課す大学も多くなっていて、もちろんそれが学生のモチベーション向上に役立っているという側面も確かにありますけれども、一方で課されるハードルが高くなればなるほどそれがもたらす効能についてもシビアに評価されるようになるということを教育者は忘れてはならないでしょう。
一昔前なら医者と言えばカネには不自由しない特権階級じみたところがあり、実際に嘉山先生らの年代であれば幾らでも好き放題稼いでもいられたのでしょうが、今の医学生は隣で一緒に部活に励んでいた歯学部生がワープア化したり、先輩が奴隷病院から逃散し開業したものの借金まみれで青息吐息という現実を目の当たりにしているからでしょうか、とかく考え方が現実的です。
ただでさえ時間が限られている中で意義の乏しいことに長時間拘束を強要し、当然ながら学生や研修医から反逆され始めたことに驚いて「俺たちの若かった時代にはこれくらい黙っていてもやっていたぞ」なんてことを言い出すといかにも老○らしく聞こえますが、それならせめて相応の見返りくらい用意しないことには今時誰もついてこないということですよね。

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コメント

単純に時代が変わったってことじゃないですか?
ちゃんと自分で当り前の権利を主張出来るのはいいことでしょうに、悪いことみたいに言うのってどうなんでしょう。

投稿: ぽん太 | 2012年10月11日 (木) 08時56分

国試勉強がきついって学生より実習が厳しすぎるって学生の方がずっと多いのに
学生のレベルが下がったとか医療が高度化したとか言ってカリキュラム詰め込み過ぎ
とにかくこれ以上実習厳しくするのだけはかんべんしてくれ

投稿: 名無しのゴン兵衛 | 2012年10月11日 (木) 10時29分

予定超過が普通に起こる世界なんだからこそ、予定の段階ですでに超過してるのはどうなのかってことです。
どうせ上になったらやるときは理屈抜きでやらざるを得ないんですから、なおさら学生だの研修医だのといった頃にスケジュール管理能力をたたき込んでおかないと。
そもそも5時以降に居残れば実習の実が上がると言いたいならその根拠を示すべきで、漫然と時間を使えば適当に成果が上がるだろうなんて考えは教育じゃありません。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月11日 (木) 11時27分

臨床研修指導医講習会の日程予定も、土曜の8;30-20;30と日曜の8:30-18:30と詰め込みすぎの日程です。
週末潰して、疲労困憊でたまりません。

投稿: りりか | 2012年10月11日 (木) 12時09分

うーん・・・・
外人さんのいうことももっともで耳が痛いんだけど
こっちも熱いれてやるとついつい時間オーバーしちゃうし
そんなとき「5時だから帰っていいですか」なんて言われるとガックリだし
努力不足指導力欠如って言われりゃその通りなんですが・・・・
管理人さんも存外手厳しいなあ・・・・

投稿: 荒木 | 2012年10月11日 (木) 15時26分

りりかさまへ
その講習会は、必要な講習時間が決まっており、通常は3日かけて行う講習会です。
無理矢理2日で終わらせようとしてそうなった・・・というか、最近は無理矢理2日で終わらせる方が主流ですけど。

荒木さまへ
1日8時間で結構有意義な研修は出来るものですけどねえ。当然、教える方も相当しんどいですけど。
以前私が大学にいた頃は、学生や研修医を野放しにする時間が多すぎました。そのときの反省を踏まえて指導しています。
私は時間オーバーしそうな状況の時は「今日はもうちょっといてね。明日はその分早く解放するから。」と伝えることにしています。そうすると、死にかけてた研修医の表情が相当明るくなります。
もちろん、その約束を守らなければなりませんが・・・
どうしても遅い時間まで残さなければならない場合、終了時間をあらかじめ決めておくことが大事です。終了時間のはっきりしない研修は、教育効果が相当落ちます。

投稿: クマ | 2012年10月11日 (木) 20時18分

国試と臨床実習、どっちが大事かってそりゃ圧倒的に前者でしょうもん。国試落ちたら臨床実習なんて両生動物の糞を掻き集めただけの値打ちしかないw

ちなみに当方学生時代、脳外の臨床実習でオペに夜中の2時までつき合わされました。まあそれはいいんですがモニターが焦点ぼけててなにがなんやら…まあ3流私大1浪2留の劣等生でしたからw焦点合ってたってどーせなにがなんやら分かんないんですがww

他にも臨床実習中のみならず医師になった後も不愉快なエピソードてんこもりで未だに脳外にはいい印象を持っていません。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年10月12日 (金) 10時58分

>管理人さんも存外手厳しいなあ・・・・

そうでしたか?
ま、このあたりは当「ぐり研」の成立過程にも関わるところなので、あまりいい加減な扱いではレゾンデートルが問われますから(苦笑)。
もちろん教育問題というのは非常に難しいのは事実ですが、「教える側も一生懸命やってるんだから」がいつでも言い訳として通用するわけではないということでしょう。
特に医学の場合は口を酸っぱくしてエヴィデンスエヴィデンスと言っている中で、学部や研修医の教育だけが昔ながらのやり方ってのは効率も悪いし違和感も感じずにはいられません。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月12日 (金) 11時10分

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