« オスプレイ問題 他人の思想信条を縛ることの怖さ | トップページ | 今日のぐり:「いきいきうどん 善通寺店」 »

2012年10月 5日 (金)

新専門医制度 若手下っ端の問題だったはずが

ちょっとメインで使っているPCが壊れまして、しばらくコメント等満足につけられなくなるかも知れませんことをお断りしておきます。
さて、医師不足対策と言いますと厚労省の管轄というイメージがありますが、これが医学部定員をどうするか、医学部新設やメディカルスクールの是非はという話になると文科省の領域になります。
すでに以前から厚労省と文科省がタッグを組んでこの問題に取り組んでいて、先日も更なる定員増は認めるが新設はないという話をお伝えしたところですが、ちょうど先日就任したばかりの田中新文科相がこの問題について極めて率直なコメントを出しています。

少子・高齢化など対応の医師育成を-田中眞紀子新文科相が会見(2012年10月1日CBニュース)

 野田第3次改造内閣で新たに就任した田中眞紀子文部科学相は1日夜、文科省で記者会見し、医師育成の考え方として「少子・高齢化の中で、高齢者の慢性疾患に対応できる医師、またはiPS細胞の研究者など、『医師の質』が問われる」と述べた。

 田中文科相は、これまでの政治活動の中で、地方大学の医学部における定員増を多く要望されてきたことを紹介する一方、「お金も掛かるし、簡単に結論は出ない」と述べた。基本的な考え方として、「社会の構成から見て、大学も病院も、どういうところにフォーカスを当てていくか、しっかり勉強していきたい」と語った。【大島迪子】

医学部の定員増 「もう少し勉強しないとわからない」(2012年10月2日今日の歯科ニュース)

医学部定員問題で明言避ける 田中真紀子文科相が就任会見

10月1日に組閣した野田新改造内閣で入閣した田中真紀子文部科学相は同日夜、就任会見を開き、医学部の定員増の問題について問われ、「もう少し勉強しないとわからない」「簡単に結論は出ない」と話した

会見の中で、田中文科相は「『優秀な医者を地元に出してほしい』という要望はあるが、定員増にはお金もかかる」と指摘。少子高齢化時代における高齢者の慢性疾患への対応やIPS細胞の研究を引き合いに出して「大学も病院も、どういうところにフォーカスをあてるか考える」として、重要度の高い問題に絞り込んでいく考えを示した。(m3.com編集部 池田宏之)

ちなみに例によってメディアによるバイアスがかかってはいけませんから、こちらに文科省による公式映像をリンクしておきます。
今までは医学部定員増を要望してきた一方で大臣としての第一声が「定員増?何も知らないから答えられない」というのは確かに率直すぎるコメントだと思いますけれども(苦笑)、就任直後から歴史教育などで積極的な発言を繰り返している田中大臣にしてみればこちらは全くの専門外ということになるのでしょうか?
とりあえず今のところは総論的なコメントを出す程度の知識しかないと認めた形ですから、今後もこの方面の話は今まで通り?官僚主導で進んでいくことになるのだろうと思うのですが、こうした場合その前段階として各方面から学識経験者その他を集め意見を聞いたという形にするのがいつものやり方になっています。
その意味でこうした会合の類に呼ばれる先生方というのは最終的に各省庁の意向に沿った結論が出るような人選がなされていると見るべきなのでしょうが、その目線で見ていますと時々ちょっと妙な事と言うのでしょうか、あれれ?それでいいの?と思うような話が時折出てくることもあるようです。

学会専門医、更新厳格化で新制度に移行を- 専門医機構・池田氏が提案(2012年10月3日CBニュース)

 厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」(座長=高久史麿・日本医学会長)は3日、第三者機関が認定する新たな専門医制度での資格認定・更新の在り方などをめぐって議論した。この中で、学会が認定した既存の専門医と新制度で認定される専門医の関係が論点になり、池田康夫委員(日本専門医制評価・認定機構理事長)が、更新の要件を厳しくすることで既存の専門医を新制度に移行させるよう提案した。ほかの委員から強い反対はなかった

 池田委員は、▽学会が認定した既存の専門医▽これから新制度がスタートするまでに認定される専門医▽新制度で認定される専門医―の3者の関係を整理することが必要だと指摘した。その上で、既存の専門医について、資格更新の要件を厳しくすることで新制度に移行させる案を提示。「更新のハードルをかなり厳しくしていかないと、専門医制度が国民に理解されない」と訴えた。また、新制度が本格的にスタートするまでの移行期間についても、第三者機関が専門医を認定する仕組みにするよう提案した。

■基本領域の専門医認定は原則1人1つ

 検討会ではまた、1人の医師が基本診療領域について複数の専門医資格を取得することの是非をめぐっても議論した。その結果、原則として複数の資格取得を認めるべきではないとの意見が多数を占めた。

 池田委員は、基本領域の専門医資格は原則として1人1つにすべきだとの考えを表明。「(専門医資格を)1つ取って、それを更新しながら新しい資格を取るという努力をする人は当然いると思うので、それを妨げるものではない」としながらも、更新の要件が厳しく設定されれば、複数の資格を維持するのは難しいとの見方を示した。桃井真里子委員(自治医科大教授)も、「基本領域の専門医は、複数取れるようなクオリティーではいけない」と強調した。

 一方、今明秀委員(八戸市立市民病院副院長)は、「救急専門医の中に高い外科技術を持っている人がいるから、東京周辺の三次救急がうまくいっている」と指摘。複数の専門医資格の取得が認められなければ、多発外傷や熱傷に対する医療提供体制が崩れるとの懸念を示し、救急専門医に対する配慮を求めた。
 これに対し山口徹委員(虎の門病院長)は、同検討会の中間まとめで、基本領域の専門医資格を取得した上で、より専門性が高い「サブスペシャルティ領域」の資格を取る2段階制の制度にする方向性が打ち出されていることから、「外科救急」をサブスペシャルティ領域の1つに位置付けることで対応するよう提案した。【高崎慎也】

専門医制度というものは様々な意味を持っていますけれども、基本的に各学会の認定する施設で一定期間の修行を積まなければならないというシステムですから、卒後研修のキャリアパスというものに非常に大きな影響を与えるものであることは言うまでもありません。
先日の厚労省の調査でも研修医の声として条件が合えば医師不足地域での地域診療もやりますという答えが多数派に上った、そしてその条件として実に40%の研修医が「専門医取得後である」という条件をつけており、また臨床研修終了後の進路選択についても「専門医取得につながる」ことを考慮して決めるという声が多かったわけですよね。
要するに若手医師にとって専門医取得というのは相当大きなイベントであって、だからこそ厚労省などもこの専門医制度をダシにして実質的な医師強制配置の権限を手中に収めようとしているわけですが、それがいつのまにか「旧資格の専門医を持っている先生は更新を厳しくしよう」「基本領域は一つしか取得を認めないようにしよう」と言い出せば、対岸の火事がこちらに延焼してきた気がする先生方も多いのではないですか。

この専門医資格の議論は看板に掲げる標榜科の議論ともリンクしていますが、特に日医などを熱心に支えていらした地域の開業医の先生方に多いのが「○○内科小児科」式の看板を掲げているケースで、もちろん双方の領域で専門医なりを取得しジェネラルに診る分には十分なスキルを持っているのでしょうけれども、下手をすれば今後こういう掲示は出来なくなるということですよね。
「なんだ、そんなもの改めて新資格で取り直せばいいじゃないか」と思うかも知れませんが、旧専門医の更新ハードルを思い切って厳しくするという話が出ているところがミソで、下手をすると開業の先生などは全く更新など考えられない状況に追い込まれる危険性すらありそうです。
もともとこの専門医というもの、実際にその領域の専門家として高度な診療に日々従事している医師に対して与えるべきだという声も根強くあって、今はごく一般的な患者しか診ていない開業の先生などに「更新のためには認定施設で年間○症例を診療すること」なんて条件をつけられた日には間違いなく更新は不可能ですよね。

こういう議論に参加している先生方はまずもって大学病院など症例にも全く不自由しない先生方ばかりでしょうから、特に反対の意見もなく粛々と議論が進んでいるのも当然なんだろうなと思うのですが、あえて深読みするとおもしろいことにもなりますよね。
たとえば極端な話更新が非常に厳しくなり、大学病院のような大きな施設に所属していなければまずもって難しいともなれば、地域の中小医療機関にとっては大学の先生方というものは標榜科を維持するためにも是非ともバイトにでも来ていただきたい存在ということにもなるのでしょうか?
もちろん薄給で臨床に研究に多忙な日々を送っている大学の先生方には地域病院のバイトはよい収入源であり、地域病院にとってもよいハク付けになるという持ちつ持たれつの関係があったことは否定出来ませんが、いわば自らの利権を強化するような話を当事者として議論しているというのもおかしな構図ではありますよね(むろん、そうした意図は毛頭ないんだろうとは思いますが)。
いずれにしてもこの専門医制度改革の話、このまま行けばお国のためにと若手を人身御供に差し出してやれやれ、これで片付いたと思っていたベテランの先生方も気づかぬところで我が身に火の粉が降りかかってくることになるかも知れませんね。

|

« オスプレイ問題 他人の思想信条を縛ることの怖さ | トップページ | 今日のぐり:「いきいきうどん 善通寺店」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

意外と日医は反対しないんですかねえ?
会員からクレームは来ないんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2012年10月 5日 (金) 09時46分

定員増やしても逃散したら意味がないという現実に早く気づくべきでは。

投稿: 吉田 | 2012年10月 5日 (金) 11時22分

構想としては全医師を内科、外科、小児科、眼科、総合診療etcの基本領域に分けようって話なわけですから、
池田氏としても、一人でいくつも専門医を持たれるのも困るけど、何の専門もない医師が生じるのも避けたいはずです。
少なくとも一つの基本領域の専門医には移行できる道を作っておかないと、そっぽを向かれるか失業医師が大量発生するかのどちらかです。
(基本領域の専門医資格がなければ医師として働けなくなるのなら、どんな条件であろうとクリアせざるを得ませんし、
専門医資格がなくても仕事ができるのならハードルと利得の損得勘定ということになります。)
これまでの経緯から、他の基本領域からこぼれ落ちた医師を総合診療医で掬い上げようって話にはならないでしょうし。

先月は、入院基本料算定 上積みに関わること(研修を終了した医師が勤務していることが算定条件)で2つほど研修を受けたのですが、
どちらも二日間缶詰め状態。カリキュラムの半分は講義、残り半分は例題に対し受講生が討論する、という形式でフォーマットが共通していました。
今の厚労省ご推奨のやり方なのでしょう。
根拠はありませんが、こういった研修会が更新の条件になるのではないかと想像しています。
でなければ、あるいは これプラス 試験ですね。
一つめの基本領域はこれで移行できるけど、二つ目移行は認定施設での数年間の研修をやり直してください、となるのではないかしら。

蓋を開けてみれば、私の予想は甘かった、となるかもしれませんが。
最悪でも専門医を諦めればよいだけで、医者を廃業しなければならなくなる事態にはならないだろうと思ってます。
これも甘いかしらん。

投稿: JSJ | 2012年10月 5日 (金) 11時26分

劣悪なPC環境で明日の更新がどうなるものか…

今後準公的資格とするのでしたらインセンティブとして専門医であることに何らかのメリットを付与しなければ制度が立ちゆかないはずです。
それが単に勤務医にだけ関わるものか、開業医にも関係するとしてどの程度深く関係するかがポイントなのかなと。
現在掲げている看板を下ろすよう強いられるのだとすれば日医も黙ってはいないと思うのですが。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月 5日 (金) 14時22分

結局利権目的なんでしょうけど、このまま義務だけ肥大化したら旧専門医を残そうって声も出るんじゃないです?
どうせ診療報酬加算で誘導ったって医師本人に還元されるわけじゃないんでしょうに

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年10月 5日 (金) 20時35分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/55811852

この記事へのトラックバック一覧です: 新専門医制度 若手下っ端の問題だったはずが:

« オスプレイ問題 他人の思想信条を縛ることの怖さ | トップページ | 今日のぐり:「いきいきうどん 善通寺店」 »