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2012年10月15日 (月)

てんかん運転規制問題続報 学会側の視点

先日取り上げましたてんかん患者の運転免許取得に関わるてんかん学会の提言の件ですが、いくつか追加情報がありますので紹介したいと思います。
まずは先日の提言を行った背景について、こちらの記事から引用してみましょう。

てんかん免許条件、無発作期間を見直し- 申告促す狙い、てんかん学会が提言(2012年10月11日CBニュース)

 日本てんかん学会は11日、記者会見を開き、てんかん患者への運転免許の可否に関する運用基準について、発作のない期間を従来の2年から1年に見直すことなどを盛り込んだ提言を発表した。同学会の法的問題検討委員会の松浦雅人委員長は「無発作期間(の長さ)と事故率に差がないというデータがある一方で、この期間が短いほど、患者さんがてんかんであることを正しく申告するというデータもある」と指摘し、無発作期間の要件を短くすることで、患者の申告を促し、交通事故の防止につなげる狙いがあるとした。

 現行の運用基準では、発作が過去2年間なく、再発の恐れが極めて少ない場合や、発作が意識障害、運動障害を伴わないものに限られている場合、発作の再発が睡眠中に限定されている場合に免許が取得できる。
 これに対し提言では、再発の恐れが極めて少ないと判断する基準について、発作のない期間を1年間に短縮し、その後も同じ治療を継続する場合に見直した。
 また、医師の指示で抗てんかん薬を減量・中止したり、やむを得ない理由で服薬できなかったりして発作が再発した場合は、治療内容を戻して3か月間発作の再発がなく、その後も同じ治療を続ける場合も、再発の恐れが少ないとした。ただ、抗てんかん薬の減量中や減量、中止後、半年間は運転せずに経過観察する。
 このほか、運転の支障になる発作は「意識障害や運動障害を伴わないもの」に限らないとし、「意識や行為に影響を及ぼさないもの」に拡大した。

 会見で松浦委員長は、「昨年以降、てんかん患者が関係した交通死傷事故が相次いで報道されたが、このような悲惨な事故を減らす努力は、医師、患者、警察が協力して実行すべき緊急の課題」と強調。今回の提言については、「てんかんの多様性とともに、治療の進歩に伴って海外のガイドラインが変化しており、グローバルスタンダードにも対応した実効性のあるルール」とした。
 また、同委員会の西田拓司委員は発作のない期間を1年間に短縮した理由について、「限られたエビデンスで出てくる数値が1年で、海外ではこれが潮流になっている」と説明。また、「患者が将来の見通しが持てる基準だと思っている」とも述べた。【津川一馬】

「そういうエヴィデンスはある」ということでしたらこの際ですから、文献名を挙げていただければ大いに議論の参考になったかも知れませんよね。
このところ相次いでいるてんかん患者の事故で社会の関心が高まっている背景として、過去にもてんかん発作によるとされる人身事故を繰り返していながら法で定められた持病の申告もせず、さらには医師から処方された薬すら飲まずに車を運転していたといった、「それはどう考えてもおかしいだろう」という運転手の態度に世間の批判が集まったからであった訳です。
おかげで真面目に治療を行いきちんとコントロール出来ているてんかん患者が就職上の不利益を受けるなど迷惑を被っている訳ですが、今回てんかん学会が出した提言にはこうした不心得患者についての対策は全くなされていず、世の中には真面目な患者しかいないように見えるという点が反発を受けている原因ではないでしょうか?
もちろん医学の世界で患者をいい患者、悪い患者と表だって規定する訳にもいかないとは思いますが、例えば「きちんと医師の指示に従って適切に治療を継続していた場合には」などといった一文を入れておくだけでもずいぶんと印象が違っていたのではないかと思います。

そのてんかんですけれども、発作が起こっているにも関わらずきちんと診断をなされていないケースが少なからずあることは以前から指摘されていて、それが正しい治療による十分な疾患コントロールの妨げになっているのだとすれば発作に伴う事故までもいわば医原性とも言える話になりかねませんよね。
てんかん学会を始め専門諸団体でもそのあたりの実情は懸念しているようですが、それと運転免許など社会的規制の問題とをどうリンクさせていくべきなのかということが現在の大きな課題になっているようです。

てんかん、非専門医の診断の質が課題- 運転免許制度、医師も試行錯誤(2012年10月12日CBニュース)

 日本てんかん学会が11日に発表した「てんかんと運転に関する提言」には、発作のない期間の短縮や、多様な症状に対する取得・更新条件の設定などが盛り込まれた。一方で、この日の医師らの講演からは、「てんかんと診断できない医師」の問題など、解決策の見いだせていない課題も多く挙げられた。てんかんなど一定の疾患の患者が、条件を満たした上で運転免許を取得できるようになった道路交通法の改正から10年。免許の取得や更新の基準と、患者の自己申告に関し、試行錯誤が続いている。

■非専門医が診断の主体

 「問題は、ここにいる学会の会員は、てんかん患者の2~3割しかカバーしていないんじゃないかということ。運転してはいけない発作があるのに、医師の能力が足りずに(運転してしまっていて、非専門医など)医師の側に責任のある場合もある
 運転免許制度の課題に関する発表に対し、会場から上がった声。「適切に診断されていない」「てんかんと診断されずに運転している」患者の存在は、どの演目でも共通認識だった。その背景には、100万人とも言われる患者数に対し、専門医が400人に満たない現状がある。
 運転免許取得時の申告では、主治医による診断書か、指定医療機関による臨時適性検査の結果が必要だが、実際は98%が主治医診断書によるもの。講演では、不安障害と診断され、服薬治療を続けた後に検査を受けに来た患者や、2年以内に発作があったにもかかわらず、てんかんと診断されていないケースなどが紹介された。高齢者では、認知症と診断される例も多いという。

■医師による無申告患者通報制度

 昨年、栃木県鹿沼市で起きたてんかん患者による交通死亡事故を受け、政府では、てんかんを含む「一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会」を開いている。この中で、医師による無申告運転免許取得患者の警察への通報義務が検討されており、この議論も紹介された。

 検討会の事務局を務める警察庁運転免許課の廣田耕一課長は、患者による自己申告を増やす方法として、「医師による通報は、鹿沼の事故の遺族会が求めているところ」と説明。一方、検討会では「医師と患者の信頼関係が損なわれる」「患者が本当のことを言わなくなり、治療から遠ざかることで余計に危険な運転者が増える」といった意見があると紹介した。通報制度は、義務ではなく、任意として法に位置付ける案もあるという。

 これについて、てんかん学会法的問題検討委員会の西田拓司委員は、学会員を対象にしたアンケートで、「免許を取得しないよう再三の忠告に対し、患者が従わない場合」の任意の通報制度に対し、賛成意見が50~60%(診療科により異なる)だったことを報告。今後の議論課題だとまとめた。

 他の演題では、患者の運転免許取得について「院外に第三者の相談機関を設けるべき」「車には必ずドライブレコーダーをつけるよう勧めている」とアイデアを出す会員もおり、患者の生活面での対応で、苦慮している医師の姿が見られた。【大島迪子】

こうして見ますとリスク回避の大原則からすれば、てんかんを否定出来ないケースではとりあえず専門医紹介がこれからのデフォになっていくのでしょうかね?
それはさておき先日の記事でもお伝えしましたように、警察庁などはわざわざ有識者会議を開いて罰則規定を検討するくらいですから現状に問題があること、世論が高まってきていることを認識していて、出来ればもう一段の規制強化を図りたいのだと推測されます。
その背景には現行法では明らかに問題があると思われるような患者でもきちんと規制が行えないという現場のジレンマがあると言い、今回医師による通報義務が検討されているというのもそのあたりの実務上の問題解消を図ってのことであるのでしょう。
ただ通報義務を任意化するといった場合、よく言われるように「正直者だけが不利益を被る」という可能性もあるわけですから、義務化しないなら自己申告するメリット、しないデメリットをきちんと用意していかないと何ら状況は改善しないはずで、どのような「アメ」が用意出来るのかという議論があまり進んでいないようなら結局隠す人間は後を絶たないと言うことにもなりかねません。
また事故の確率はごく低いのだから、下手に大規模な対策を講じるくらいならその巨額のコストを被害者補償に回す方がいいというやや極端な意見もありますが、どのような対策を講じるにしても最終的に被害者あるいは広く国民が納得出来るかどうかであるという点については留意しておく必要があると思いますね。

ただ繰り返しますように、てんかんだけに限らず糖尿病など事故リスクを引き上げると思われる疾患は幾らでもあるわけですから、患者数等の面からも各疾患のリスクをきちんと評価した上で規制を行っていかなければ特定疾患に対する差別だという声に反論できなくなってしまいますから、規制を強化するとすればきちんとした検査を行い客観的データに基づいて行われるべきでしょう。
現行で確認の簡単な視力障害だけが直接チェックの対象となっているのが問題であって、例えば免許取得の要件として必要と思われる一通りの検査を行った上で診断書の提出を義務づけるようにしてはどうか?など幾らでもアイデアはあるのでしょうが、医療の側から見れば新規取得者だけでも毎年百万単位で出ているような資格に限られたリソースでどこまできちんとした検査が出来るのか疑問に感じざるを得ません。
もちろん面倒な問題だからといって何もしないままでいていいわけもないのですから、クレーン車事故のようなリピーターを少しでも減らすためにも当面重大事故や疑わしい事故を起こした者に限って、ある程度掘り下げてのチェックを行うといったあたりから始めていくべきなのかなと思います。

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コメント

医療はつまるところ性善説で成り立ってるんでしょうね。
てんかんに限らずコンプライアンス不良な患者への対応は永遠の課題です。
先日の判例紹介ではさっさと手を切れみたいに言ってましたが、実際はなかなか…

投稿: ぽん太 | 2012年10月15日 (月) 10時56分

大多数の国民はこういう難しい議論よりも、どうして嘘ついて人に迷惑かけた人間にペナルティがないんだ?ってことに憤慨しているんだと思います。
こうなると飲酒運転厳罰化というのは良くも悪くも一つの基準のスタンダードになってしまいましたからね。
あれが厳しく扱われるのにこっちはどうして放置してるんだ?と言われると公平性の観点からはなかなか難しいものがありそうです。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月15日 (月) 12時20分

>このような悲惨な事故を減らす努力は、医師、患者、警察が協力して実行すべき緊急の課題

緊急の課題なんでしょ?
こんな悠長な対策じゃ事故なんて減らせるはずないと思うんですが?

投稿: akira | 2012年10月15日 (月) 13時30分

通報制度をつくるなら任意なんかにしちゃダメでしょう
通報しないという判断を下した医師が後で責任を問われることになりかねません

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年10月15日 (月) 16時07分

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