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2012年10月 3日 (水)

福島リスクに祟られ続ける双葉病院

すでに一部報道等にてご存知のところだと思いますが、かつて「患者を置き去りにして逃げだしたトンデモ病院!」との捏造報道でマスコミ諸社から散々バッシングされた福島県は双葉病院から、こんなニュースが出てきています。

双葉病院が責任否定、原発避難で50人死亡 調査結果公表/福島(2012年9月30日産経ニュース)

 東京電力福島第1原発事故の避難中に患者ら50人が死亡した双葉病院(福島県大熊町、鈴木市郎院長)が30日、独自に避難経過を調べた調査結果を遺族らに公表した。同病院は政府の事故調査委員会と同様に病院側の責任を否定し、県、国、自衛隊や町の連絡不足を指摘。原子力損害賠償法に基づいて遺族が東電に請求する支援をしていく考えを示した。

 会見した担当弁護士は「国や県、自衛隊などの大きなシステムの問題で、個別の病院には限界がある」とし、県が当初、「院長らが患者を置いて逃げた」と発表した点には、「県から虚報だとする謝罪があった」とした。避難指示が出た昨年3月12日、双葉病院と系列の介護施設「ドーヴィル双葉」には患者ら約440人がいたが、満足な設備のないまま避難が続き、50人が死亡した。

院長「謝罪の必要ない」 怒りの遺族、退席相次ぐ 双葉病院50人死亡/福島(2012年9月30日産経ニュース)

 政府事故調の報告に続き、双葉病院は病院側の責任を否定したが、鈴木市郎院長(78)が「謝罪の必要はない」と話すなどしたことに遺族側は激高。途中で退席する遺族が相次いだ。

 「亡くなったことに対しては謝罪はなかった」。ドーヴィル双葉にいた姉=当時(79)=を亡くした会津美里町の男性会社員(67)はそう憤る。男性会社員によると、説明会で鈴木院長は「謝罪の必要はない」「家族が病院側に安否を問い合わせるべきだ」と神経を逆なでするような発言をしたという。男性会社員は公開質問状の提出を検討する考えを示した。

 浪江町の主婦(53)は双葉病院にいた兄=当時(62)=を亡くした。事故後1カ月以上たってから来た電話は兄が転院先で死亡したという連絡だった。「もう少し早く連絡がほしかった。誠意がない」と吐き捨てた

 同病院で弟=当時(65)=を亡くした埼玉県越谷市の主婦(68)は1時間余りで説明会を途中退席した。「今までの経過説明だけ。新しい話はなかった」と不満を漏らした。

 また、ドーヴィル双葉で祖父=当時(92)と祖母=同(88)=を亡くした大熊町の男性会社員(33)は「どういう経緯で亡くなったか聞きたかったが、何もない。墓前に報告したかったが…」と不満そうに話した。

 さらに「同じような震災があったときにまた患者をたらい回しにしないためにも、今回の教訓を生かすべきだ」と指摘した。

 説明会後、記者会見した鈴木院長は「名誉回復を果たせたと思ったが、『説明よりも謝ってほしい』といわれてショックだった」と話し、以後は口をつぐんだままだった。

不幸にして亡くなられた方々に哀悼の意を表しますけれども、震災からかなり時間のたったこの時期の発表になったことも難しい状況を現しているのでしょうか。
この双葉病院問題、元々は福島県当局が火をつけ、政治家マスコミが煽りに煽って大騒ぎになった経緯については当「ぐり研」でも何度か取り上げて来たところですが、行政やマスコミ総掛かりでの誤報合戦と印象操作もさることながら、それが何故捏造であったと日の目を見るようになったかという経緯は非常に教訓的ですので、こちらの記事から状況を引用させていただきましょう。

“双葉病院の患者置き去り”誤報はなぜ起きたのか 「災害時の混乱」では済まされない(2011年11月2日健康ニュース)

 福島第一原子力発電所の事故による周辺住民の避難劇の中、5日もの間入院患者の救出が行われず、揚げ句に院長らが“患者見殺し”と筋違いのバッシングを浴びる事件が起きた。いわゆる「双葉病院事件」である。全住民が避難する中、なぜ双葉病院の患者だけが置き去りにされ、再三の救援要請は無視されたのか。なぜ大誤報がつくられたのか。10月29日に東京都で開かれたシンポジウム「東日本大震災被災医師の行動」(医療制度研究会主催)では、同院医師の杉山健志氏や誤報を暴いたノンフィクション作家の森功氏らが登壇し、「災害がもたらしたシステムエラーでは済まされない」と真相究明を訴えた。

院長含め200人以上が取り残される

 事件については、今年7~8月に森氏が週刊紙「週刊ポスト」(小学館)に執筆した4回の集中連載に詳報されているので、ここでは杉山氏が説明した複雑な事実経過をなぞるにとどめる。
 3月11日の震災当時、双葉病院には認知症患者を多く含む340人の入院患者が、また近所の系列の介護老人保健施設「ドーヴィル双葉」には98人の入所者がいた。震災当日の夜、原発の状況を知ったスタッフらは町役場へ何度も出向いて病院の状態を伝え、避難対応を要請している。
 翌12日早朝には、大熊町の全町民避難が決まった。双葉病院には観光バス5台が回され、搬送に耐えられそうな患者209人と、杉山氏を含む付き添いのスタッフがすし詰め状態で乗り込んだ。これが第1陣の避難である。
 町は役場の職員を含めた全員が避難したが、双葉病院とドーヴィル双葉には依然として227人の患者・入所者が残されていた。双葉病院に残ったスタッフは鈴木市郎院長のみで、ドーヴィル双葉では施設長と事務課長の2人だけ。第1陣が出た直後に福島第一原発で水素爆発が起きたため、職員の命の保証ができないと判断したドーヴィル双葉では、ほかのスタッフを帰したのだ。後続の救出がすぐに来ると思っての判断だったが、救援は翌13日も来ない

14時間の移動、自衛隊員の乗り逃げ…

 第2陣の救出が行われたのは、14日午前6時半。ドーヴィル双葉の入所者全員(98人)と双葉病院の患者の一部(34人)が自衛隊の救出車両に分乗し、いわき市の高校体育館へ向かった。この第2陣は放射能の検査をするという理由で14時間、距離にして230キロの長距離移動をすることになる。結果、体育館到着までにバス内で3人が死亡、その後も搬送先の病院などで計24人が亡くなった。
 双葉病院にはまだ95人の患者が残っており、鈴木院長のほか、ドーヴィル双葉の施設長と事務課長、途中加わった医師や看護助手らが患者の看護に当たっていた。地元の双葉署から警察官も数人、自衛隊の輸送支援隊長1人も来て待機していた。そこへ2度目の水素爆発が起きた。直後、待機していた自衛隊の隊長は「指示を仰ぎに行く」という理由で事務課長の自家用車を借り、そのまま雲隠れした。
 その夜10時過ぎ、院長らスタッフは警察から緊急避難を指示され、事情も分からないまま警察車両に押し込まれた。原発の状況を受けての20キロ圏への移動であり、そのまま自衛隊と合流するまで山中で1泊するよう指示される。しかし、自衛隊とはすれ違いになった。翌15日午後になって残る患者が救出されたと聞いた院長らは、いわき市の系列病院へと移動した。
 最後に救出された95人が避難所にたどり着いたときには、7人が死亡していたという。最終的に、双葉病院の患者とドーヴィル双葉の入所者から50人が亡くなってしまった

でたらめの報道発表、マスコミも訂正せず

 この経過に筋違いの批判を浴びせたのが福島県の災害対策本部と、県の発表をうのみにしたマスコミだ。
 自衛隊が双葉病院に到着したときに医師がいなかったこと、患者の死亡が相次いだことを受けて、災害対策本部は鈴木院長らが患者を置いて先に逃げ、そのために患者が多数死亡したかのような報道発表を作成してメディアに配った
 事実経過だけでも間違った内容であり、取材を受けた鈴木院長が県に抗議したが、県は「病院の管理体制を調査する」と火に油を注ぐ方向の訂正を出す。3月18日の各紙朝刊には、院長らを批判する記事が掲載された。その後、記事訂正を出したのは時事通信社1社だけだったという。
 杉山氏は「第一原発から3~5キロ圏内には双葉病院とドーヴィル双葉以外にもいくつかの医療機関があるが、いずれも12日までに全員が救出されている。それだけに双葉病院が取り残されたいきさつは際立っていた」と指摘。
 (1)なぜ町は患者・入所者が残っていることを知りながら置き去りにしたのか、(2)県と町の連携エラーがあったのではないか、(3)車を乗り逃げした自衛隊員はどこにいったのか、(4)なぜ県災害対策本部は誤報を流したのか、(5)県は遺族に事実経過を説明すべきではないのか―など、検証されるべき点を挙げた。

「名誉回復より真相究明を」

 すべて病院の責任として収められそうだったこの事件が動き出したのは、森氏の取材がきっかけだ。知己からたまたま鈴木院長の紹介を受けた森氏は6月、東京で同院長を取材し、関係各機関への取材を始めた。
 「取材すればするほどおかしな点が出てきた。なぜ、患者は5日間もほったらかしにされたのか。なぜ、残された患者数まで知りながら、町は先に逃げたのか。自衛隊員の乗り逃げも筋の通らない説明しか得られない。災害時のシステムエラーでは済まされない経過だ。誤報についても、自衛隊から県へ報告された元情報、でたらめの報道発表を作成した県、裏付け取材をしないマスコミの問題がある」と森氏。
 森氏の記事と、医師らの名誉回復に協力する井上清成弁護士の働きかけを受けて、事件検証に向けた動きが今秋各所で始まっている。当時のテレビニュースの中で病院を批判する発言をした渡辺周・衆議院議員が、現・防衛副大臣という立場をもって自衛隊内での調査を約束したのだ。地元紙や地元テレビ局、NHKなども、検証記事や番組を続々と出し始めている。
 「報道被害によって傷つけられた名誉を回復するのはなかなか難しいものがあるが、真実が明らかになっていけば少しずつでも解消できるのではないか」と森氏。
 一方、シンポジウムを傍聴していた鈴木院長は弊社の取材に対し、「私自身は(77歳の高齢だから)名誉回復はいい。それよりも、なぜわれわれの病院だけ取り残されたのか、真実を知りたい。そこに何らかでもわれわれの誤りがあったのならば、それを受け止めたい」ともらした。

事情を知れば少なくとも地元行政当局がしたり顔で病院を批判出来るような話では全く無いのですが、状況もはっきりしない初期段階からわざわざ必要もない病院批判のコメントをマスコミ諸社に垂れ流してきた県当局の意図は何なのか、やはりここでも大野病院事件と同様に「自分達さえ責任をとらずにすめば事実などどうでもいい」とも言うべき福島の暗部を感じずにはいられません。
現在に至るも行政、マスコミからろくに謝罪もなされていないこの一大風評被害について、患者側関係者が当初のイメージそのままに病院側に不信感を抱いてしまうのは仕方のないところだと思いますけれども、こうした背後事情をすでに知っているはずであるにも関わらず何ら責任をとるでもなく、相変わらず対立関係を煽るだけに終始しているマスコミ側の姿勢は大いに糾弾されるべきでしょうね。
幸いにも今回病院側はきちんと弁護士を立てて対応しているということですし、何より今後は患者と同じ側に立って賠償請求を支援をしていくというのは正しい姿勢だと思いますから、いずれ行政マスコミの深く掘り下げた両者の溝も埋まっていくことを願ってやみません。

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コメント

他紙の報道ではずいぶん違ったニュアンスになってるんですよね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121001-00000012-fminpo-l07
産経はよほど思い入れでもあったんですかね?

投稿: ぽん太 | 2012年10月 3日 (水) 08時52分

老人を病院に放置した家族が一番r

投稿: アンデルセン | 2012年10月 3日 (水) 09時01分

>産経はよほど思い入れでもあったんですかね?

「遺族が東電に請求する支援をしていく考えを示した」
このあたりが琴線に触れたのかしらん?

投稿: JSJ | 2012年10月 3日 (水) 09時15分

つか、これで謝罪だ賠償だと言い出す家族はこの手の病院を利用すべきじゃないだろと

投稿: | 2012年10月 3日 (水) 09時19分

>つか、これで謝罪だ賠償だと言い出す家族はこの手の病院を利用すべきじゃないだろと

その見解はナイーヴすぎるというか理想主義に過ぎるかと存じます。
http://tapacyauri.wiki.fc2.com/wiki/死体換金

ちなみに、本件で現に損害賠償を係争中の事例があるのか否か、私は存じません。

投稿: JSJ | 2012年10月 3日 (水) 09時50分

紹介いただいた記事は地元紙だけに、現場の雰囲気として妥当な印象を受けますね。
JSJさんのおっしゃるような事情でもあるのか、産経だけに単なる天然で書いてる可能性も捨てきれない気もするのですが…

投稿: 管理人nobu | 2012年10月 3日 (水) 09時52分

弁護士もいるしすでにトラブってる悪寒

投稿: atoz | 2012年10月 3日 (水) 10時17分

今回のような案件だと、福島県側の担当者も説明会に同席してこれまでの経過について説明を行い、誤報により入院患者さんのご家族、ご遺族に誤解を与えてしまったことについて真摯に謝罪すべきではないかと考えます。

あと、もし私が遺族側弁護士の立場なら、東電に賠償請求するよりこの病院に賠償請求した方がとりやすそうだと考えます。おそらく東電に請求してもほとんどもらえないし、裁判を起こしても勝てる見込みがありません。病院相手なら、東電相手に裁判するより多少は勝ち目があるかな・・・と。

投稿: クマ | 2012年10月 3日 (水) 10時24分

ぴこーん!両方訴えればばばばww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年10月 3日 (水) 12時09分

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