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2012年10月 9日 (火)

国立病院 人件費削減方針見直し?

本日の本題に入る前に、先日大学病院が保険指定取り消しを受けたと言う驚きのニュースが流れた東京医大茨城医療センターの続報をお伝えしておきましょう。

東京医大茨城医療センター 療養費払いを活用、適用者以外は病院負担(2012年10月6日茨城新聞)

診療報酬の不正請求により東京医科大茨城医療センター(阿見町中央)が12月から保険医療機関の指定を取り消される問題で、県と同センターは5日、国民健康保険(国保)の「療養費払い」制度を活用し、透析や化学療法を受ける患者負担を事実上、現行通りに抑える方針を固めた。近く、保険者の市町村に理解を求める。

同制度は、救急などやむを得ない理由で患者がいったん医療費を全額支払った後、保険者の市町村が保険負担分を払い戻す制度。

県と同医療センターはこの日、県庁で会合して方針を固め、9日開催する関係市町村等対策会議で阿見町や美浦村など地元10市町村に伝え、理解を求める予定だ。

10市町村以外や国保加入者以外の患者にも制度活用できるか検討する方針で、県保健福祉部の森戸久雄次長は「患者によって不均衡ができるだけ起こらないよう、対応していきたい」と話した。

ただ、制度適用は同医療センターでしか受けられない透析や化学療法、放射線治療の患者に限られるため、軽症者は近隣病院を紹介したり、一部の入院患者には転院を求める。その上で対応する制度適用外の患者については、同医療センターが保険医療費分を全額負担する方針

松崎靖司病院長によると、同医療センターには5日までに、「継続して治療が受けられるのか」など1900件を超える問い合わせが寄せられた。松崎病院長は「病院として可能な限り対応していきたい」と話している。

しかしこれはまた、何ともトラブルを招きそうな話ではありますかね…
当初からこうしたウルトラCは半ば予想されていたとは言え、実質的に保険指定というペナルティを取り消すにも等しい行為ですから、日医なども何かと言えば国民皆保険制度の原則を固守せよと主張しますけれども、こういうところにはクレームをつけないでいいのでしょうか?(苦笑)
とりあえずは最低限同院においてしか受けられない患者に限るということで、医業収入面では激減することは必至(というよりも、下手すると赤字医療ばかりが残ることになるかも知れませんね)で十分に行政罰の意味はあるという考え方もありますが、わずかばかりの不正請求でずいぶんと高いものについた形です。
前回コメント欄でご紹介いただいたように独裁的な権限をふるっていた前センター長一人が悪かったということで片をつけた形ですが、全てその通りであったにしても仮にも大学病院でこういうレベルの人物に権力を振るわせた経営陣の責任も今後問われることになるのでしょうか?

さて、東京医大の件は再び続報を待つとして、本日は同じく病院経営が絡んだこちらのニュースを紹介してみましょう。

国立・労災病院、総人件費抑制見直しを- 新法人制度在り方検討会で論点整理 ( 2012年10月04日CBニュース)

 厚生労働省は4日、国立病院と労災病院のそれぞれの運営法人が2014年度から移行する新法人制度の在り方を検討している検討会の会合に、現行の総人件費の抑制の見直しなどを提起する論点整理を示し、おおむね了承された。

 同省は11月、検討会に論点をまとめた報告書案を示し、年内にも報告書を取りまとめる。

 国は両法人を含むすべての独立行政法人に対し、06年度から11年度まで、前年度比1%の総人件費の削減目標を課した。しかし、病院を運営する法人をめぐっては、患者の診療環境を整えるため、医師や看護師らを雇う必要があり、一律の削減目標の設定を疑問視する声が上がっていた。
 4日の会合に厚労省が示した論点整理では、医療事業を行う法人の総人件費の管理は適切でないとする意見もあると指摘し、新しい法人制度では患者のために必要な人員配置を認める必要があると訴えた。

 また、国立病院と労災病院に新制度移行後も政策医療を担わせるほか、政策医療の定義を社会環境の変化に合わせて適宜見直すことを提案。新法人の役員については、医療事業を担う法人の特性を踏まえて、専門的な知識や経験を持つ人を着任させる方法を検討すべきとした。

 これに対し、堺秀人委員(慶大病院長補佐)は、「人員や人件費の縛りがあると、医療制度の変化に適応するのが難しくなり、結果として医療の提供が不十分になる可能性がある」と述べ、人件費に制限を設けないことが患者のためにもなると指摘した。また、夏目誠委員(成田国際空港会社社長)は、総人件費の抑制を外すことに賛同した上で、「必要な医療従事者を効率的に配置するには、仕組みづくりに知恵を絞らないと、医療現場にふさわしい形になっていかないのではないか」と述べ、新たな基準の設定を提案した。【佐藤貴彦】

一見すると国が法人の経営内容にまで口を出すというのは無茶な話で、それでは法人化の意味がないのではないかということなんですが、いささかこれがややこしい背景事情があるところなのですね。
ご存じのように国立病院の独法化が近年進んでいて、本来的な意味においては経営の柔軟性が増し万年赤字体質が改善される云々と言われてきましたが、実際徐々に経営改善が進んでいて独法化時には5割程度だった黒字病院の比率も、近頃では8割程度に伸びてきているとも言います。
昨年度の国立病院機構による業務実績自己評価ではこうした改善を反映してか経営改善をS評価するなど軒並み高い自己評価が並んだと言いますが、実際にはこの黒字化も例によって交付金込みでの収支ですから、まだまだ自前の収入だけで一本立ち出来ているとは到底言えないわけですね。
その理由となっていたのがかねて高すぎると言われていた人件費率で、健全経営のためには40%台が目安とされている中で国立病院では平気で60%超えなどがありふれていたわけですから、それは幾らマンパワー集約型産業だとは言ってもまともな経営が成り立つはずもありません。

こうした背景を元に前述の記事にもあるように独法化後人件費率削減が進められていて、事務外注化などの推進もあり国立病院機構全体で23年度にはなんと55.8%まで切り下げたと言いますから相当なものですが、問題は多くの国立病院が地域の基幹病院として高度医療を提供しているにも関わらず、医師ら専門職スタッフの給与まで切り詰められていることです。
以前にも法人化が進む国立大学病院で優秀なスタッフ確保のために外科医にインセンティブ手当を支払うことにしたという話を紹介しましたが、そもそも国公立病院では以前から正職員扱いとなればそこそこ給料は出るものの、実際にはスタッフ定員数の縛りから実質的に常勤として勤務しているにも関わらず名目非常勤で二束三文で働かされている奴隷医の存在が問題視されてきたものです。
本来であれば独法化によってこのあたりを実態に即して柔軟に対応し優秀な人材を確保することが医業収益増加に結びつくはずですが、お上の定める数字によって一律に人件費を削減するばかりではとても人材確保などままならぬという声があるのはそれなりに故なしとしないということですね。

ただそうした名目で人件費削減は柔軟にという主張にも一定の理はあるとして、それが自由化された結果正しく状況が改善するかと言えば必ずしもそうではないことが問題で、例えば昔から国公立病院では民間と比べて医師の給与は安く看護師は高め、そして事務職は非常に高いということが言われていて、仕事量ではその逆であるなどと揶揄されていたものでした。
それと言うのも人件費算出基準が対国家公務員比で算出されているかららしく、昨年度の数字でも事務職は一般国家公務員相当で年収600万円超と言いますからちょっと民間病院の水準とはかけ離れている一方で、医師などは仮に常勤であっても民間よりも割安なのですからよほどに情熱でもなければ長続きはしませんよね。
すなわち単純に総額で高い、低いと言うばかりではなく、この時代どこでも奪い合いになっている医療専門職にきちんとした待遇が用意出来るように、その中身の配分についてもこの際徹底的に見直さなければならないんじゃないでしょうか。

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コメント

意外に人件費の削減が進んでたんですね。
でも結局は職場としての魅力があるかないかでしょう。
近所の国立は一時最悪の評判でしたがやっと少し持ち直してきたみたいです。

投稿: ぽん太 | 2012年10月 9日 (火) 08時44分

結局は施設ごとにどういう方針でやっていくのかが大事なんですよね。
だからこそ国が一律に決めるようなものでもないだろうと思うのですが。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月 9日 (火) 13時06分

事務員に600万ねえ・・・・
よっぽどカネが余ってんだろね

投稿: 多摩照 | 2012年10月 9日 (火) 14時16分

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