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2012年10月 8日 (月)

高齢者医療費自己負担 特例は廃止か存続か?

特権とか既得権益というものが目の敵にされるようになって久しい時代ですが、この時代にあってもあえて特権の擁護者として活動しておられる方々もいるようです。

日医会長、高齢者の医療費1割負担継続を(2012年10月3日日本経済新聞)

 日本医師会(日医)の横倉義武会長は3日の記者会見で、70~74歳の医療費の自己負担割合について「非常に重篤な病気を起こしやすくなる年齢で、1割の負担で受けられる状況を続けてほしい」と述べた。本則は2割だが、特例で1割にする措置の継続を求めた

 1日に就任した三井辨雄厚生労働相も負担割合の引き上げに慎重な考えを示している。一方、70~74歳の自己負担を本則の2割に戻すべきだとの声も政府内にはある。

 全額公費で賄っている生活保護受給者の医療費には「(受給者から)負担金を取るのは、今の状況では行きすぎだ」と指摘した。全額公費のため過剰な診療や投薬が起きやすい問題が一部で起きているが、横倉氏は「十分チェックされ、適切な医療をしている」と主張した。3.7兆円の生活保護費(2012年度)のうち医療費は半分程度を占める。厚労省は圧縮策を検討している。

日医にすれば患者本人だろうが保険者だろうがどこからお金が出ても収入は収入ですし、下手に自己負担を増やされて開業医の顧客が目減りでもすれば大変なことになりますから理解できる主張なのですが、まさかこういう主張をすることが「国民のための日医」であるための必要条件だと考えているのなら勘違いも甚だしいと思いますね。
今まさに若年世代が収入も先細りする一方で四苦八苦していて、世間では保険料も支払えない無保険者の増加が問題になっていますけれども、結局のところは本当に困っている人に回るべきお金が不要なところに回されているからだとも言える話です。
無保険だろうが未払い常習だろうが市民サマの受診をお断りするなんてとんでもないという公的病院の奴隷勤務医と違って、熱心な日医会員たるような皆様方はお金も暇も十分に持ち合わせた高齢者の方々だけを得意先にしていれば経営安泰なのかも知れませんが、こうした特例によって逼迫した医療財政が誰の負担で支えられているかということにも時には思いを致すべきではないでしょうかね?

とはいえ、日医の場合はあくまでも業界団体である以上その利権を代弁することは全くもって正当な行為で、彼らの目線に立って考えるならばこうした主張をしなければ存在価値がないとも言えるわけですが、当然ながら為政者などにはもう少し社会全体を見回しての見識が必要なはずです。
高齢者の自己負担1割というのはあくまでも暫定的な処置であって、本来こうした特定階層だけを対象とした特権がいつまでも残っていること自体がおかしな話ですし、実際に政界の各方面からもとっくに止めると決まっていることをいつまでも続けているのはおかしいという声も久しく前から出ている訳ですよね。
野田内閣においても小宮山厚労相が今度こそ廃止しますと言っていたはずなんですが、先の内閣改造で登場した新厚労相の口からまたしてもそれを翻すような先延ばし論が出てきたというのですから驚くしかありません。

“高齢者医療費の負担引き上げ難しい”(2012年10月5日NHK)

三井厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、暫定的に1割に据え置かれている、70歳から74歳までの高齢者の医療費の窓口負担について、本来の2割負担に戻すのは難しいという認識を示しました。

厚生労働省は、暫定的に1割に据え置かれている70歳から74歳までの高齢者の医療費の窓口負担について、来年度予算案を編成する過程で、本来の2割負担に戻すかどうか検討することにしています。
これについて、三井厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、「当然、今の状況でお年寄りの窓口負担を引き上げるのは難しいのではないかと思う。現状の1割を継続していただきたいと考えている」と述べ、本来の2割負担に戻すのは難しいという認識を示しました。
その一方で、三井大臣は「世代間の公平性や財源の問題がある。党内のさまざまな意見を聞きながら検討を進めていきたい」とも述べ、世代間の公平性などを考慮しながら、負担の在り方を慎重に判断する考えを示しました。
このほか、みずからが医療法人の理事長を務めていることについて、「利害関係もあるので、厚生労働大臣が医療法人の理事長を務めているのはおかしい」と述べ、辞任する考えを示しました。

三井厚労相、高齢者の医療費負担増急がず 2割には慎重 (2012年10月5日日本経済新聞)

 三井辨雄厚生労働相は2日に記者会見し、1割に据え置いている70~74歳の医療費自己負担割合を2割に引き上げることについて「性急にやるべきものではない」と述べた。民主党が看板政策として掲げる最低保障年金の創設と後期高齢者医療制度の廃止は、自民・公明と設置する社会保障制度改革国民会議の議論に委ねる方針を示した。

 70~74歳の医療費自己負担割合は、法律では2割となっているのに、毎年2000億円の予算を投じて1割に据え置いている。岡田克也副総理や小宮山洋子前厚労相は2013年度からの引き上げに意欲を示していた。

 13年度の予算編成で本来の2割に戻すのかが焦点だ。ただ三井厚労相は「消費増税の負担、負担で、国民は納得がいかないだろう。世代間の公平も必要だが、簡単に上げる問題ではない」と語り、引き上げに慎重な姿勢を示した。
(略)

いや、医療財政が緊迫の度を年々高めている中でそこは是非にも急げよと思うのですが、すでにはるか昔からやると決まっているはずの特権的待遇是正策をこうしてずるずると先延ばしにしてきていることには当然遠くない将来に見込まれる総選挙対策等々、各方面で様々な思惑があるはずです。
来月の誕生日には70歳になるという三井厚労相としても、まさか自分が直接の当事者になるからと特例撤廃を拒否しているわけでもないでしょうが、何しろご自身が療養型の病院や老健等高齢者対象の商売で儲けている医療法人のトップともなれば、この方面の議論にはひどく敏感であっても仕方がないところなのかも知れませんね。
この件では民主党内でも岡田氏などのように1割はあくまで一時的な特例であって本来の2割に戻すのが当然だとする一方、根強い反対論もあるなど足並みの乱れがあるのは理解できるのですが、それにしてもこの1割継続会見の直後にこんな一幕があったと言うのですからこの大臣で大丈夫かと心配になってきます。

医療費:三井厚労相がまた発言撤回(2012年10月5日毎日新聞)

 三井辨雄(わきお)厚生労働相は5日の記者会見で、特例で1割に軽減している70〜74歳の医療費窓口負担(法律上は2割)について「1割を継続していただきたい」と述べた。しかし、直後に「世代間の公平性(の問題)がある」と補い、「1割継続」発言を事実上撤回した。三井氏は2日にもいったん生活保護の医療費に自己負担を求める考えを示し、訂正したばかり。厚労省の重要政策でトップの発言が混乱を続けている。

 「1割継続」の特例に関し、岡田克也副総理や小宮山洋子前厚労相は13年度から2割に戻すべきだと主張していた。これに対し、三井氏は5日、路線転換を示唆した。ところが事務方から資料を手渡されると発言を後退させ、その後も「1割という思いではなく、皆さんの声を聞きながら進めていきたい」とあいまいな態度に終始した。【鈴木直】

大臣の問題はさておくとしても、こういう話を聞くと医療費だけに限らないことですが、まさに近年各方面で問題化している高齢者特権の見直し問題はこの「世代間の公平性」ということがキーワードになりつつあるようです。
現代日本の個人金融資産が高齢者に偏りすぎているというデータがありますが、ワープアだと言われながらひたすら額に汗して働いている若年世代のお金がこうした社会的特権によってお金持ちの高齢者の懐にばかり入っていく、そしてそういう特権世代が毎年増え続けさらに発言力を強化していくばかりだという不満が社会に蔓延しつつあるわけです。
百万歩譲って貧乏人がお金持ちにお金を吸い上げられる構図までは既得権益で仕方がないと諦めるにしても、高齢者がお金をどんどん社会に還元して金回りがよくなっているというのであればまだしも、将来不安に備えて等々の名目でひたすら地中深く埋められる一方では経済活動が停滞してしまうのも当然と言えば当然ですよね。
現在は高齢者の貯め込んだお金を社会に還元していくシステムとしてほぼ相続税のみになっているのも問題で、これを何とか世の中に灌流させ若者に回すという意味では近年言われる直接税から間接税へ税収の中心を移行すべきだという議論も意味があるはずですが、結局お金を集めてもまた高齢者にばかり還元したのでは何の意味もないことでしょう。

高齢者の方々にも当然ながら言い分はあって、先々何歳まで生きるか判らない以上守銭奴にならざるを得ないから年金だけで食えるようにしろ、医療費もかかるんだから自己負担を安くしろと言う意見にも一理あるのですが、一定の資産がある多くの高齢者にまで手厚い保護を打ち出しても新たな貯蓄に回るだけで死に金になってしまいまうのは当然です。
現に貧困している低年金所得者や無年金者を含む無資産高齢者を考えれば現在の公的年金だけでは確かに不足ですが、年金というものは毎年幾らという固定経費ですから一律で幾ら増やしますと言えば財政上の負担も大変なもので、まずはきちんと対象を絞って本当の困窮者に対して手当をしなければ単なる強者過剰保護のバラマキになってしまいますよね。
扶養者のない困窮高齢者には国や自治体が生活費を十分に担保する、そのかわり亡くなった後は資産は国庫に収納するなり競売にかけるなりして新たな社会保障の財源にまわせというかなり極端な意見も出ていますが、誰も面倒を見ない人には公的にしっかり面倒を見るというのはやむなきところにしても、高齢者だからハナから出せるものも出さなくていいという理屈はもはや通用しない時代だということでしょう。

いずれにしても社会保障と医療政策とは相互に密接に関連していて、単に年齢が高くなったからというだけで誰にでも特権的地位を享受させられるようなゆとりは国にも自治体にも保険者にもないわけですから、医療費においても例えば資産や年金収入等々で自己負担軽減の認定を行うなど、特例はあくまで特例が必要な人に限って行うべきだとは思いますね。
また医療費自己負担にしても全ての診療項目で一律何割という考え方が正しいのかどうかですが、医師の裁量権等々様々な問題も絡むところではありますが年齢や状態に応じて求められる医療は変わっていくのも確かな事実ですから、医療費削減を毎年こうまで言うのであれば例えば後期高齢者であれば誤嚥性肺炎には手厚く癌診療は自己負担高めといった格差をつけることもありではないかなという気がします。
およそ人間ある程度のお年寄りになってくれば病院で調べればどこかに悪いところがあるのは事実なんですが、それではどうも調子が悪いとやって来た老人に片っ端から検査をし診断をつけてガイドライン通りに治療をしていくことが正しいのかどうか、このあたりは医療の側でも議論をしていかなければならないところでしょうか。

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コメント

これだけの大票田になれば無碍にも出来ないでしょうけどね>高齢者
団塊が本格的に高齢化してきたら絶対にこんなもんじゃ済まなくなりますよ
なにかやるなら今がラストチャンスなんでは?

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年10月 8日 (月) 15時00分

1割か2割かよりも上限をいくらにするかの方が重要じゃないかと

投稿: amen | 2012年10月 9日 (火) 11時13分

過剰受診の問題が高齢者や小児、生保受給者といった自己負担を抑えられている階層に発生していることは無視出来ないと思います。
自己負担等経済的な面から受診抑制をかけるべきではないという人たちは、それに代わる代案を示すべきではないでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月 9日 (火) 13時05分

老人代議士が老人に負担を強いる政策なんて打ち出すはずがないわなw
いっそのこと直接の利害関係者は法案審議に関与出来ないルールにしろよw

投稿: aaa | 2012年10月 9日 (火) 16時41分

>いっそのこと直接の利害関係者は法案審議に関与出来ないルールにしろよw

それをやると例えば医療関係の法案審議には医師は関与出来なくなりますから法案審議そのものが不可能に…、ならまだましですが、なんも知らん素人がとんでもなく明後日方向な法案をでっち上げちゃいそうな悪寒w

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年10月10日 (水) 09時50分

専門家や当事者の声を十分取り入れて決定は第三者ってのがいいんですかね。
政治家って本来そんな役回りだった気がしますけど今やすっかり当事者だし。

投稿: ぽん太 | 2012年10月10日 (水) 12時30分

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