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2012年10月31日 (水)

「被害妄想」では済まない日医の凋落

医療業界における抵抗勢力の代表格として日本医師会(日医)が槍玉に挙げられるようになったのは昨日今日のことではありませんが、先日は未だ議論の続いているTPP交渉参加に強固な反対を続けている日医に対して、政界筋からとうとうこんな声が飛び出してきました。

民主・仙谷氏「日医は被害妄想」(2012年10月25日CBニュース)

 民主党の仙谷由人副代表は25日、医療経済フォーラム・ジャパン主催の公開シンポジウムで基調講演し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加に強く反対している日本医師会を、「米国型の医療保険や医療が持ち込まれるのではないかという、被害妄想にとらわれている」と批判した。その上で、「米大統領選では、非常に矛盾した医療保険の仕組みをどう変えるかが最大の争点と言っていいぐらいだ」「米国の医療保険システムを、今の段階で取り入れるなどというばかなことが、あり得るはずがない」などと訴えた。

 仙谷氏はまた、2009年の政権交代以降、2回の診療報酬改定で医療費が連続して引き上げられた結果、黒字病院の割合が増えていると成果を強調した。一方で、「特に市町村国保を中心として、財政的基盤が極度に劣る部門ができている」と懸念を表明。現在の国民皆保険制度を維持するためには、今後の状況を見極めた上で、消費増税に伴う新たな財源を投入するかどうかを判断する必要があるとの認識を示した。

■自民・鴨下氏「社会保障にカフェテリアプランを」
 シンポジウムでは仙谷氏のほか、鴨下一郎・自民党幹事長代理(元厚生労働副大臣)らが基調講演した。

 鴨下氏は、国民皆保険制度を維持する必要性を強調する一方、患者側が医療機関を自由に選択できる「フリーアクセス制」については、「野放図に維持するのは難しい」と指摘。診療所による「かかりつけ医機能」を強化したり、病院と診療所の役割分担をより明確にしたりして対応すべきだとの考えを示した。
 また、高齢者が十分な介護を受けるため、年金のサービスを介護に振り分けるなど、利用者側が必要に応じて社会保障サービスの組み合わせを選択する「カフェテリアプラン」の導入も提言した。

■公明・坂口氏「大学医学部の偏在解消策を」
 続いて基調講演した公明党の坂口力副代表(元厚労相)は、大学医学部が西日本に偏在する現状の解消策を検討すべきだと訴えた。
 東海・北陸から東側にある医学部の数は人口173万人に対して1校で、142万人に対し1校ある関西以西に比べて少ない。

 人口10万人当たり医師数が少ない埼玉や千葉には医学部も少なく、坂口氏は「各都道府県の医学部の数と医師の数に相関関係がある」と指摘。その上で、「医学が進歩しても、東北地方では受けられなくなる人が存在する」と強調し、東京周辺でも、高齢化が進めば十分な医療を受けられなくなりかねないとした。【兼松昭夫】

まあ日医の場合は被害妄想というか、高齢者の方々によくある症状という気がしないでもないですが…
このTPPに関しては米国側からは医療分野には口を出さないと言質を取ったかのような報道がある一方で、いや実は医療保険制度が取り上げられるのは既定路線であり政府もそれを知っていたのだという話もあって、いったい何が正しいのやら正直理解しがたい部分もなしとしませんから、仙谷氏の言うことを完全に信用するわけにもいかないのは言うまでもありません。
ただいずれにしてもTPPに強烈に反対しているのが農業と医療という日本における規制産業の双璧とも言える2業界であることは象徴的で、つまりはこれらは国の規制でがんじがらめになってきた国内市場に完全に適合した結果として世界標準のやり方にはついていけないのだと言うことでもあるのでしょうね。
もちろん国民が公的に資金を負担してこうした産業を保護していくというのも一つの考え方ですが、現実的に医療の世界でも内外から諸問題が山積していると長年指摘されているのに、それを改善する努力を放棄したまま現状の固守だけを主張する姿勢は世間の許容するところなのかどうかです。

例えばこれまた日医が長年強固にその固守を主張しているフリーアクセス制なども取り上げられていますが、すでに医療現場のマンパワーからみても「いつでもどこでも好きなときに好きな病院へ」というやり方は現実的ではないと言う声が挙がっている、そして実際に選定療養の導入などによってこれに制限をかけていくという方向が現場からも支持され実施されてきているわけです。
日医が断固反対と息巻くTPP交渉参加には過半数の現場医師が賛成していて、特に勤務医において支持派が多いという調査結果がありますが、会員間でも意見が割れているだろう大きなテーマを議論を行って妥協点を探ることすら認めないというのは成熟した民主主義的な態度とは到底言えないものだと感じますね。
それはともかく、日医としてもこの仙谷発言にはそれなりに思うところがあったということなのでしょうか、直後に徹底抗戦の意志表示を行ってきているようです。

日医「TPP反対は被害妄想」発言に行動- 国民世論への訴えかけ続ける(2012年10月29日CBニュース)

 民主党の仙谷由人副代表が、政府の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加に対し反対している日本医師会(日医)を、「被害妄想にとらわれている」などと発言したことをめぐり日医は、改めて国民世論に向けてTPP反対の考えを訴えていく方針を示した。日医が28日、東京都内の日医会館で開いた臨時代議員会で明らかにした。年末に日医をはじめとした医療団体による国民集会を開催する。

 この日の代議員会では、都道府県医師会の代表者らが、25日に都内で開かれた講演会での仙谷氏の発言を問題視し、改めてTPP交渉参加への日医執行部の考えと、今後の運動方針を問う声が相次いだ。これに対して、日医の中川俊男副会長は、「日医は今年3月、情勢を分析するたびに日本の公的医療保険制度が危ういと分かり、改めてTPP交渉参加に反対を表明した。TPPは、日本の医療を営利市場として開放することを求めてくる。日医は、所得により受けられる医療に格差をもたらすTPPに明確に反対する」と強調した。

 中川氏が、「日医は国民皆保険の堅持が見えないTPPには断固反対する。医療・介護はこれからの日本を支える。そのために、医療・介護の効率化の視点を入れるのではなく、十分な財源を入れること。それが医療再生、ひいては日本再生を実現すると確信している。最も大切なのは、国民に発信していくこと」と述べると、会場から拍手がわき上がった。【君塚靖】

いやまあ、内輪褒めして盛り上がるのもご自由にという感じではあるのですが、しかし「医療・介護の効率化の視点を入れるのではなく、十分な財源を入れること」などという主張が当たり前のように出てくるというのも、到底国民の諸手を挙げての賛同を得られる主張だとも思えないのですけれどもねえ…
ちなみに仙谷氏自身は民主党の例の医療主導による経済成長戦略にも関わっていることでも判るように、診療・介護報酬をつけることで雇用が生まれるという立場に立っている人物ですから日医とスタンスが近いとも言えそうですが、その仙谷氏ですら日医の頑迷さには閉口しているということでしょうか。
先日日医は医師偏在解消のための提言を自ら行っていましたが、日医が長年主張してきた医療システムのあり方こそが現場での燃え尽きや逃散を大いに呼び寄せてきた現実を思うとき、「医師が勤務しやすい就業環境の整備」をなどと知ったような顔で主張する前にまずは率直な自己批判が必要なのではありませんか?
以前にとある新聞記者が書いていたように「日医が反対するからいい政策なんだろう」という考え方が医療現場にも広まってきているのでしょうか、このところ医師数がどんどん増えている中で日医は組織率のみならず会員数も減り始めていると言いますが、現状ではこの団体に加入することでどんなメリットがあるのかがさっぱり見えてきません。

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コメント

日医がと言うよりも若い人たちは団体に所属しなくてもフリーの立場で十分活動できることを知ってますから。
話もかみ合わないおじいちゃん達から医師の組織率向上を目指して団結しろって叫ばれると引いちゃいますよね。
いっそのこともっとゆるい連帯でやっていける新組織があったほうがいい気がします。

投稿: ぽん太 | 2012年10月31日 (水) 08時36分

>>現状ではこの団体に加入することでどんなメリットがあるのかがさっぱり見えてきません。

以前は、医師会に加入していると医師会の医賠責の保険料が安いとかメリットがありましたが 最近は学会の医賠責の方が
安かったりしますからね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年10月31日 (水) 09時36分

利益団体なら利益団体でそれらしく活動すればいいだけなんですが、「国民のための医療(キリッ」ですからね。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月31日 (水) 11時23分

TPPに関しては反対の団体一覧。
http://www.jacom.or.jp/column/nouseiron/nouseiron120528-16986.php
消費者団体、法律関係の団体もありますね。
あとTPPに参加してる国で米国とニュージーランド以外の国とは既にEPAを締結済みなんですよね。
得られる物と失うもののバランスをどう見積もるかの問題だと思います。

国民皆保険は色々変えないといけないと思いますが、TPP参加とは別問題かと。


投稿: 吉田 | 2012年10月31日 (水) 12時12分

日医執行部に会員すら信頼がない
あんな会員の意思も反映されない組織じゃ当然だけどさ

投稿: もんた | 2012年10月31日 (水) 14時12分

TPPがグローバルスタンダードなら反対しません。
現実にはアメリカンスタンダードだから反対するんです。

世界的に見て、アメリカの医療保険制度は大統領が認めて改革を訴えるくらいおかしいものです。

にもかかわらず、もし、TPP締結後に「日本のやり方はおかしいから、アメリカの保険会社の参入障壁だ」と言われて
国際訴訟になった場合、「アメリカの基準」で判定されることがわかっています。
それでいいんですか?ということなんですよね。

投稿: | 2012年11月 2日 (金) 10時02分

日本の医者とアメリカの医者
どっちが仕事がキツイの?
どっちの収入がいいの?
ねえどっち?

投稿: araki | 2012年11月 2日 (金) 10時45分

アメリカのやり方を真似すると、負け組の開業医が大量に発生するんですよ(笑)

投稿: | 2012年11月 2日 (金) 11時39分

まあ日本の医療が良かったと評価するのであれば、なぜ良かったのかという部分についても考察すべきだとは思いますね。
専門医が24時間365日いつでも無料で診てくれるなら確かに国民の満足度は最高になるとは思いますが、国民のための医療を目指す日医はそこを目標にしてるのかってことです。

投稿: 管理人nobu | 2012年11月 2日 (金) 11時43分

業界人に奴隷労働を強いる業界団体www

投稿: aaa | 2012年11月 2日 (金) 17時12分

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