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2012年10月25日 (木)

「バランス面でおかしい(by三井厚労相)」という点には完全に同意します

本日の本題に入る前に、昨日書きました震災予測に対する刑事罰の問題にも絡んで、先日出ていましたこんなニュースを紹介してみましょう。

北関東道で逆走、正面衝突 2人けが 前橋(2012年10月19日産経ニュース)

 19日午前9時10分ごろ、前橋市徳丸町の北関東自動車道(東行き)で、逆走していた乗用車が別の乗用車に正面衝突した。

 群馬県警高速隊によると、逆走した乗用車の群馬県伊勢崎市北千木町、新井健一さん(78)が意識不明の重体、別の乗用車の前橋市石倉町、会社員、平石勝彦さん(30)も重傷。

 現場は片側2車線の直線。反対車線との間には中央分離帯があり、逆走した原因を調べる。

 北関東自動車道は前橋南-駒形インターチェンジが通行止めになった。

こうした高速道路の逆走事件はたびたび発生していて、今回のように運転手が高齢者であるケースもあることから認知症検査などでチェックすべきだといった意見もありますが、実際のところは若年者も逆走して事故を起こしているケースもあるわけですから高齢者ばかりが悪いとも言い切れません。
最近はてんかん患者の事故など重大事故が発生するたびに「すぐに規制の強化を!」という声が挙がりますが、先日の話からするとこれまたリスクの適切な評価を行った上で、それにふさわしい妥当な対策を講じないことにはかえって社会的不利益が増すというもので、例えば逆走を防ぐために進入路にゲートを作って一台一台チェックしていたのでは何の為の高速道路か判らないというものですよね。
自己責任という考え方が徹底しているアメリカなどではそのあたりの感覚もかなり割り切ったものがあるようで、一方通行の道では逆走するとタイヤがパンクするようなスパイクを植え込むといったことをしているのですが、日本ではこんな安上がりで確実な対策をしてしまうとまたぞろ危ないの何のと文句をつけてくる人がいるでしょうか。

それはさておきようやく本日の本題ですが、生活保護受給者が過去最高を更新し続ける中でその対策も緊急に必要だという声が高まってきている中で、特に医療の面では「過剰診療」と言われるように一般患者と比べて生保受給者が割高な医療費を使っているという事実が明らかになってきているところですよね。
この理由は様々にありますけれども、何しろ医療費は完全無料で自己負担がない、しかも入院でもしようものならその間の保護費もどんどん貯まっていくというおいしい構造になっていることに加え、一部の医療機関側からしても生保患者と言えばレセプトにケチをつけられるリスクも少なく好き放題出来る上顧客として捉えている面が否定出来ません。
そんな中でかねて各方面から言われている「生保受給者への後発医薬品使用義務づけ」案ですけれども、先日の高齢者医療費自己負担是正問題でも特権温存を主張した三井厚労相がここでも抵抗勢力として君臨しているようです。

後発医薬品の義務化困難=生活保護見直し案に反論-三井厚労相(2012年10月23日時事ドットコム)

 三井辨雄厚生労働相は23日の閣議後記者会見で、財務省が後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用を生活保護受給者に義務付ける方針を打ち出したことについて、「一般医療で義務化されていないものを生活保護者だけに義務付けるのは困難。バランス面でおかしい」と反論した。
(略)

すでに皆さんご存知の通りこの三井大臣、地元では病院や介護施設を経営している医療法人のトップですからまさしく直接的な当事者で、これまた日医と同様当事者がわざわざ顧客の反感を買い営業成績にも響きかねないような政策に対して必至に抵抗しているという構図です。
まあそれでも一般医療と比べて不公平になると言って反論しているのですから、これはこれで是非は別として一つ筋を通した意見であると読めなくはないんですが、そうなると問題になってくるのが同じ三井厚労相が同じ日に主張しているこちら生保患者への医療扶助の問題ですよね。

医療扶助の一部自己負担に慎重姿勢- 三井厚労相 (2012年10月23日CBニュース)

 三井辨雄厚生労働相は23日の閣議後の記者会見で、生活保護受給者に医療扶助の一部自己負担を求めることについて、受診抑制の可能性があるとして、慎重な姿勢を示した

 来年度の予算編成に向け議論している財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)の財政制度分科会は22日、生活保護を取り上げた。財務省はこの中で、生活保護受給者1人当たりの医療費が、市町村国保の被保険者などと比べて高いことなどを理由に、適正化のための取り組みを強化すべきだと提案。一例として、医療扶助の一部を自己負担にしたり、いったん負担を求めた後で償還したりする制度の導入を挙げ、委員からおおむね賛同を得ていた

 三井厚労相は会見で、生活保護制度の見直しについては、財政審だけでなく、社会保障審議会の「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の議論も踏まえて検討する考えを強調。さらに、「(生活保護受給者には)金銭的な事情もある。受診を抑制する恐れがあるので、より慎重な検討が必要だ」と述べた。【佐藤貴彦】

いやいやいや、ジェネリック使用義務付けを「一般患者と差別するのは反対」と主張するのであれば、この自己負担免除問題にしても老人医療費1割負担の問題にしても「一般患者と差別するのは反対」で3割負担にすべきであると主張するのが筋というものではありませんか?
自らお金を出さないで100%公費での医療を受けるのなら同じ成分同じ効果(苦笑)の安いジェネリックを使うのが当然であって、例えば今検討されているように保護費を現物支給するに当たって「服は全てブランド品に限る」だの「肉はA-5クラスの国産和牛で」なんて馬鹿げた注文がまかり通るはずがないのと同じことですよね。
どうもこの三井厚労相の言うことを聞いていますと当事者意識が目立つなという印象ばかりを抱いてしまうのですが、単に何でも反対という某日医的な抵抗勢力というのでなければ、世間にしろ学識経験者にしろ揃って早急に是正すべしと主張している諸問題にことごとく反対、反対で通していることに納得出来る説明をする必要があるのではないでしょうか?
もちろん自らの医療法人が損をするからとも言えないでしょうし、まさか近々予想される解散・総選挙に向けて少しでも票が減る政策など全部潰す気だとも言えないでしょうが、大臣個人の利害関係に絡んだ横槍でここまで政策が停滞するのであれば、そもそも諮問機関などが存在する意味がありません。

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コメント

生活保護見直し 「医療」自己負担を財務省提言
★ 生活保護見直し 「医療」自己負担を財務省提言

 来年度の予算編成に向けて生活保護の見直しを巡る攻防が激しくなってきた。
社会保障関係費の効率化を最優先の課題とする財務省は生活保護費(3.7兆円)の約半分を占める
医療扶助に自己負担の導入を提言した。価格が安い後発医薬品の使用を受給者に義務付けることも求めた。
ただ日本医師会などの反発は必至で、年末をヤマ場とする調整は難航しそうだ。

 財務省は22日に開かれた財政制度等審議会の分科会に提案した。
政府は8月に概算要求基準を定める際、生活保護費の扱いについても「聖域視しない」との文書を閣議決定した。
財務省はこの文書を出発点と考えてきた半面、これまで具体論に踏み込んでいなかった。
 今の制度では生活保護受給者の通院や入院にかかる費用は全額公費負担となる。
試算によれば、30~39歳の世代で生活保護1人あたりの医療費(外来)は年間で12.7万円で、一般の人の2.7倍に達している。
 財務省は個人への負担を求めていないことが、医療機関による「過剰診療」や医療費の膨張につながっていると分析する。
診療をあらかじめ抑制する効果を見込み、一部自己負担の導入を提言。最大で医療費の1割の支払いを窓口で求める制度を想定している。
受診のためにタクシーを利用し、交通費を請求する人が多い状況も指摘し、改善を求めた。
 価格の安い後発医薬品に関しては、一般の人と比較すると、生活保護受給者の使用率が低い。
この現状も、動機づけがないことに加えて自己負担がないことで「医師が積極的に後発薬を処方しようとしない背景がある」とみている。
 制度見直しの決定権を持つ厚生労働省では慎重論が根強い。三井辨雄厚労相が今月初めの就任後、
自己負担の導入にいったん前向きな姿勢を示したものの、直後に訂正。厚労相は現在「慎重に検討したい」との答弁に終始する。

 背景には関係団体からの強い反対がある。
日本医師会は自己負担の導入について「今の状況では行き過ぎだ」との見方を示している。
 医療費の大小とは別の観点から生活保護を議論すべきだとの意見も根強い。
弁護士らでつくる生活保護問題対策全国会議代表幹事の尾藤広喜弁護士は「自己負担の導入で最低限の生活保障を下回ることになり、憲法違反だ」と語る。
 衆院選が近づくほど、政府・与党内で「改革よりも配慮」を求める声が大きくなるのは確実だ。
だが中途半端な見直しや問題の先送りにとどまれば、「聖域なき見直し」の看板は色あせる。

投稿: 抵抗勢力 | 2012年10月25日 (木) 09時21分

高齢者にしろ生活保護にしろ、自己負担増は、医療法人の経営に直接的な悪影響があり得るので、代表者が反対するのは理解できるのですが、
生活保護へのジェネリック義務化は、別に医療法人が損をする話でもないので一連の話で括ってよいのか考えてみたのですが、
(多分)大変なことに気付きました。
それは生保の入院患者の場合です。
通常 病院は 同一成分の薬なら、先発なら先発、ジェネリックならジェネリックの一種類の薬しか在庫していません。
(というか、医療機関の「後発医薬品使用体制加算」の考え方からすれば両方在庫するのは不可かもしれません)
もし生保の入院患者にもジェネリックが義務化されれば、病院としては2つの薬を在庫するか、先発の在庫をやめるか どちらかということになりますが、
前者であれば病院の収支を悪化させる要因になります。経営にシビアな病院なら後者を選ぶでしょう。
実はこの問題、具体的内容によっては、生活保護を受けていない者にとっても関係ない話ではないのではないでしょうか。

投稿: JSJ | 2012年10月25日 (木) 09時56分

なんつうか、まるめの療養じゃ当たり前にジェネリック強要されてるのが問題視されてないんだからして、生保患者だけ人権侵害だみたいなこと言われるのも釈然とせんのですが

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年10月25日 (木) 10時45分

>自己負担の導入にいったん前向きな姿勢を示したものの、直後に訂正。厚労相は現在「慎重に検討したい」との答弁に終始する。

日医が生保のためそこまで強行に主張するものなのか、厚労省にそこまでの影響力があるのかが疑問なんですが
高齢者医療なら票に直結するが生保の票を心配しているのか、それとも誰か他にも代弁者がいる?人権派弁護士?

投稿: 朝霧 | 2012年10月25日 (木) 11時05分

生保受給者も増えていますから票田としてはそこそこうまみはあるかも知れませんね。
ただ彼らをまとめて投票行動にまで走らせるのも大変だと思いますが。

投稿: 管理人nobu | 2012年10月25日 (木) 11時28分

医療機関の経営者として反対の姿勢を取るのであれば、厚生労働大臣を辞任していただきたいと思います。

国全体の医療介護制度を改革しなければいけないこの時期に、既得権的に反対をするのは、国の行く末を考えるべき大臣がとる行動ではありません。まあ、ミンスにはそういった人材はいないでしょうが。

ちなみに私は既得権を置いておきたい開業医ですが。

投稿: | 2012年10月25日 (木) 11時48分

バカ大臣がなに言ったところでどうせすぐ辞めるから無問題ww

投稿: aaa | 2012年10月25日 (木) 12時26分

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