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2012年9月 5日 (水)

消費税増税 弱者虐待にならないために

そろそろ総選挙も近いかという時期で、各党とも選挙を睨んだ政策というものを用意している時期だと思いますけれども、近来の政策上のトピックスと言えばやはり消費税増税問題になるのかという気がします。
基本的に社会保障の財源として増税は必要であるという認識はそれなりに多くの人々が共有しているものの、相変わらず支出の方を削減するという話は全く進んでいないだけに、このままですと新たなバラマキを繰り返すことになるだけでは?という声は当然ながら根強いものがありますよね。
特に負担だけが増える一方で給付の面では一向に顧みられることのない若年世代において、今やその我慢も限界に達しつつあるという状況にあるようです。

若者の負担、もはや限界に 高齢者のスリム化を(2012年9月3日産経ニュース)

 若い世代の生活が安定しない。文部科学省の学校基本調査(速報値)によると、今春大学を卒業した人のうち、22・9%もが非正規雇用や進路未定だ。実数にして約12万8千人である。4人に1人が安定した職に就いていない異常な事態となっている。
 内訳は、派遣や契約などが2万1990人、アルバイトといった一時的な仕事が1万9596人、進学も就職もしていない進路未定者は8万6638人だ。さらに、進路未定者のうち3万3584人は進学、就職のどちらの準備もしていない「ニート」である。
 職が安定しなければ、結婚は難しい。厚生労働省が2010(平成22)年に実施した「社会保障を支える世代に関する意識等調査」によると、非正規雇用の30代男性の75・6%が未婚だ。前回2004年の45・5%に比べ、30ポイントも増加した。正規雇用者の未婚率は30・7%だから、明らかに不安定な雇用が結婚を遠のかせている

大命題は置き去り

 若者が生き生きと暮らすことができない社会は活力が生まれない。税収は落ち込み、社会保険料を負担することがままならない人も出てくる。すでに国民年金の保険料納付率は低下し、生活保護に頼る若者も増えている
 消費税増税法が成立したことで、社会保障財源は一息つくことになったが、若者の雇用環境が改善されなければ、やはり制度は続かない。
 そうでなくとも、今回の社会保障と税の一体改革は増税を優先し、「年金、医療、介護費をいかに抑制していくのか」という、社会保障制度改革に求められていた大命題は置き去りにされた。むしろ、有権者の反発を恐れてサービスの拡充を図った。それどころか、消費税増税による税収増を当て込んで、「防災・減災」の名の下に公共事業を増やそうとさえしている。改革の方向が反対になりつつあるのだ。
 このまま、社会保障の膨張を加速させたり、公共事業に大盤振る舞いしたのでは、再増税の時期が早まる。若い世代の負担は限界に近付きつつある。ただでさえ、少子化で社会の支え手が減っているのに、その足腰は脆弱(ぜいじゃく)なのだ。少しでも再増税の引き上げ幅を抑える必要がある。

高齢者のスリム化

 いますべきことは、はっきりしている。「支えられる側」である高齢者をスリム化することだ。
 現在の社会保障給付費の70%は高齢者向けで、子供や子育ては4%にすぎない。高齢者向けのサービスに切り込まない限り、社会保障制度は維持できなくなるのである。
 具体的な切り込み策については、「社会保障制度改革国民会議」で議論することになるが、今回の一体改革で棚上げにされた抑制策を実現することから始めることだ。
 手始めに、年金支給開始年齢の引き上げや、デフレ経済下でも年金額を減らす自動調整制度を導入する。政治判断で本来より2・5%高止まりしている年金支給額も直ちに本来の水準に戻さなくてはならない。これだけで累計7・5兆円である。
 70~74歳の医療費窓口負担も2割に引き上げるべきだが、さらに踏み込んで、負担割合を現行のような「年齢」でなく、「所得水準」で区分するよう改めたらよい。若者よりも所得が多い高齢者は少なくない。高所得の高齢者にはしっかり負担してもらい、所得の少ない若者の負担は軽くするのだ。
 間違っても、次期衆院選での社会保障のバラマキ競争などあってはならない。(論説委員兼政治部編集委員)

特に注目していただきたいのが社会保障関連の支出の大半が高齢者向けに用いられていて、若年者向けの支出は極めて限られているという現状ですが、世代間の所得格差がますます拡大し若年層の所得が減り続ける一方で、現役時代に高度成長やバブルで稼ぎまくり今また手厚い高齢者保護政策の恩恵に浴する高齢者が本当に弱者なのか?ということです。
記事にもあるように先日は30代非正規労働者の実に3/4が未婚のままであるという調査がありましたが、若年世代が求める子育て関連の支出への補助に比べて高齢者向けの医療や介護、年金などが圧倒的に充実したまま是正される気配もない中で、さらに負担ばかりが増えていくというのは若年世代には到底納得出来る状況にはありませんよね。
そしてその負担が「本来よりも高い」年金支給額だとか、「本来よりも割安な」医療費窓口負担に消えていくとなれば、せめて世代間の不公平くらいは是正して平等な負担にしてくれよと言いたくもなるでしょう。
特に今の若年層は90年代以降の不景気にどっぷりと浸かりきって人生に何ら良いことがないまま生きてきた年代などと自虐的に言う人もいますが、自分達の知らないところで老人達が既得権益を強固に守るシステムを作り上げてきた世の中でこれからずっと彼らの為に一生奴隷働きをして行けと言われれば、それは勤労意欲も湧きようがないはずです。
いずれにせよ次に選挙があればこうした世代間格差の是正、利権の打破といったことも大きな争点にならざるを得ない状況だと思いますが、そんな中で新たな利権の温床になりかねないとも一部方面でささやかれているのが先日以来日医が一生懸命是正を主張している消費税村税問題解消策についてです。

利権の場になりかねない消費税軽減税率(2012年8月31日日経ビジネス)

 景気と政局の成り行き次第でまた後戻りしかねないものの、ともかく方向は決まった消費税引き上げ。だが、道筋が見えたところで今度は、その「通り」の中で新たなぶつかりあいが激しさを増してきた。
 食料品など生活に密着した分野の消費税率を本則(2014年4月から8%、2015年10月から10%へ)とは別に低く抑える軽減税率の導入を巡る対立である。軽減税率は、食品などの消費は誰にも一定程度必要になるため、収入の低い人ほど、所得に対する消費税負担が重くなる逆進性対策になるとされているが、これが利権争いの舞台になりかねなくなってきたのだ。
 元々、民主党は野党時代から軽減税率とは別の逆進性対策である給付付き税額控除の導入を主張してきた。こちらは、消費税の税率をいじるのではなく、所得が一定の水準を下回る層への支援額を決め、その分の所得税を軽減する。所得税額が少なく、支援額に届かない場合は、その不足分を現金給付するというものだ。
 軽減税率は、(1)企業が取り引きをする際、税額が明示された仕入れ業者からのインボイス(送り状)が必要になる上に、仕入れ品の税率が複数になるため、事務負担が大きくなる、(2)消費税率1%に相当する2.5~3兆円もの消費税収が減少する、といった問題からこれを否定してきたのだ。

「消費税で損をしてきた」と医師会

 ところが、消費税引き上げを通すために民主党が今年6月、自民、公明党と行った3党協議で軽減税率が急浮上。給付付き税額控除と合わせて、消費税引き上げ法案成立後にどちらを採用するか詰めることとなった。
 軽減税率を巡る水面下の暗闘は、この3党協議の頃から急激に激しくなっていった。1つは、マイナンバー制を導入しても、給付付き税額控除の前提となる個人の所得のうち、預金利子・株式投資の利益といった金融所得や、中小企業経営者らの所得を捕捉するのが難しいといった点が改めて指摘され始めたこと。2つ目は、軽減税率導入を見越したかのようにその適用に食品以外の分野からも名乗りが上がり始めたのである。
 とりわけ目立つのが、病院や開業医など医療機関の動き。診療費は現在、消費税が非課税となっているが、日本医師会は「これを課税扱いにした上で、ゼロ税率か軽減税率にすべき」(三上裕司・常任理事)と、強く主張し出したのだ。
 これも少し説明が必要だろう。診療費は消費税非課税だが、病院・開業医の仕入れや設備投資には当然、消費税がかかり、価格に含まれている。通常なら仕入れ税額分は価格に転嫁して、最終的に消費者に負担して貰うことになるのだが、医療や介護、学校教育などには消費税がかからないことになっている。
 ただし、診療費の場合はその分、「消費税導入(1989年)と、引き上げ時(97年)の診療報酬改定時に、薬価や診療報酬本体を引き上げることで対応している」(財務省)とされてきた。通常なら企業自身が価格に仕入れ税額を転嫁するところを、公定の診療報酬引き上げで賄っているというわけだ。
 だが、日医はこれに強く反発する。日医の調べによれば、医療機関が仕入れや設備投資で負担する消費税は収益の2.2%。一方、診療報酬で補填したとされる分は1.53%しかなく、「差額の0.67%分は持ち出し、“損税”になっている」(三上常務理事)というのである。
 だからこそ、診療費への消費税を現在の非課税から課税にすることで「仕入れ税額の還付を受けて“損税”を解消」(同)できるとし、税率も軽減税率かゼロ税率にすれば、患者負担も少なくなると主張する。

対立深める財務省と医師会

 この辺りはほとんど泥仕合の様相を呈している。日医はこれ以外にも、「仕入れにかかった消費税を診療費本体の引き上げに回したのは医療項目のうち、36項目だけであり、不透明」「一旦引き上げた報酬もその後、下げられたりしたものがある」などと反発を強めている。
 しかし、財務省側は「36項目は、仕入額が大きいもので仕入れ消費税額のほとんどをカバーできるものとして選ばれた」「その後、仕入れ消費税額分を診療報酬から下げたことはない。損税とされる部分は、デフレで価格が下がったことで診療報酬が下げられたり、医療機関の仕入れ構造が変わったことなどによるもの。かつて仕入れ消費税額に応じて引き上げた部分を下げたりしたことはない」と主張。両者の溝は深まり、広がるばかりだ。
 だが、こうした対立は引き上げが決まったばかりの消費税の税制構造に、新たな歪みと不透明さを増していきかねない。
 「(党の厚生労働部門会議などで)診療報酬引き上げの意見を言って欲しい」。昨年末、診療報酬改定議論がヤマ場を迎えようとする頃、日医本部や都道府県医師会から、民主党国会議員に徹底した陳情攻勢が行われた。日医自身は「通常の要請をしただけ」とするが、間もなく、多数の民主党議員が診療報酬引き上げを叫び始め、結果は引き上げとなっている。
 社会保障と税の一体改革で当初、社会保障の効率化対策として検討されていた「受診時定額負担制度」(外来窓口での受診時に、患者が100円を一律上乗せ負担する仕組み)や、70~74歳の高齢者の医療費の窓口負担を現在の1割から2割に引き上げる案などもこの時、次々と先送りされている。
 かつて自民党に強い影響力を持った日医が、再びその傾向を帯び始めているといわれ、今回も3党協議の段階から公明党、自民党に要請を繰り返していた。
 仮に消費税を非課税から課税に変えることとなれば、現在、診療報酬の中に含まれている仕入れ消費税額分は、次かその次の改定から引き下げざるを得なくなるはずだが、日医はそれでも問題はないと言い切る。軽減税率かゼロ税率化を獲得して、患者負担増による来院者減を防ぎながら、仕入れ消費税額の還付も得られるという自信の表れと見られるが、そうなれば影響は大きい。

他業界にも連鎖しかねない軽減税率

 「医療の軽減税率化が認められれば、介護や電気代、外食…など次々広がりかねない」(財務省のある官僚)からだ。軽減税率の利権化である。野党時代には、それを指摘して軽減税率に反対していた民主党も、党利党略の中で、自公の主張に理解を示し始めている。
 ただ、軽減税率の実施となると、前述のインボイス問題で中小企業が強く反発すると見られる。だから、「軽減税率の実施は難しい」(同)ということになるのか、医療など軽減税率要求業界にも中小企業にも損にならないような新たなバラマキに変わるのか。
 政治に弱くなる一方の官僚の抵抗力は限られるばかりだし、一部業界の理解者になる省庁・部局が少なくないことも考え合わせれば、後者に傾く恐れは否定できない。少なくとも歴史はそう動いてきた。
 消費税引き上げは起点に過ぎない。社会保障を初め、ここからニッポンの改革が本番を迎えなければならないはずだ。

最近は虐げられていると感じる人々を中心に何であれ「特例扱い」ということには非常に敏感になっていて、何かしら特権的待遇を持っていると言われ始めるとあっという間にバッシングが集中するようになっていますけれども、そんな時代にあって医療の分野は近年特権云々以上に虐げられ厳しい状況にあるのだということが理解されるようになっていました。
ひと頃は相次ぐ医療訴訟報道などでも「また藪医者が!」「医療は腐ってる!」などと言われたい放題でしたが、長年にわたって関係者が地道な啓蒙活動を続けてきた結果現場の実態が知れ渡り、そして何より司法やマスコミ報道の問題点も併せて理解されるようになってきたわけです。
最近ではネット上のBBS等の流れを見ていてもむしろ医療に理解があり過ぎるかのような意見ばかりが並んでいて逆に驚くのですが、こうしたことも医療がさんざん泥をかぶってきたからこそ、せめて世間並みの水準にまで是正されてしかるべきだろうという声に理解が高まってきたということの現れですよね。

そんな中で今回日医は敢えてゼロ税率などという特権的待遇を損税是正の方法論として主張しているわけですけれども、事務手続き上の複雑さ等もさることながらただでさえ世間的イメージが必ずしもよろしくない日医などがこんなことを言い出せば、必ず「また日医か!」などと言われる羽目になるのは容易に予想されることでしょう。
無論のこと、財務相自らが「(医療機関に)適切なある程度の負担だけはぜひお願いしたい」などと馬鹿げたことを言って損税解消に消極的であるだけに、損税問題解消は社会正義の上でも早急に果たさなければならない重要課題ですけれども、国が特別に医療機関だけに損を被らせようということに対して日医が医療機関だけは特例を認めろで対抗するというのも筋が通らない話ではないでしょうか?
別に何も面倒なことをせずとも、ただ単に医療も他の諸業界と全く平等に同じ扱いにしていただくよう主張するのみで損税問題など一気に解決するのですから、わざわざ世間の反感を買い現場に面倒を強いるようなことを求める意味が判りませんが、その目的が日医の言うように上得意であるお年寄りの患者様方の御負担を避けるためにということであれば、ますます世間の感覚とずれているとしか思えません。

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コメント

日本では昔から「働かざる者食うべからず」と申しますな。
勤労の精神を持ち自ら汗を流すものがもっともよい果実を手にするべきです。

投稿: 金平糖 | 2012年9月 5日 (水) 08時38分

世界的にみても若者の失業率は高止まり傾向にあるというが
日本だけの問題でないのなら単なる政策の失敗では説明がつかないのではないかなあ

投稿: kan | 2012年9月 5日 (水) 09時23分

先日こういう調査があったそうですが、今は自動車保険などもリスクや補償の内容に応じて保険料負担を選択するのが普通ですからね。
医療費をあまり使っていない若年世代が何故高い保険料を負担しなければならないのかと言われると逆方向からのサービス格差肯定論も出てきそうです。

所得で医療サービスに差、肯定が半数- 12年版厚生労働白書
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/37994.html

投稿: 管理人nobu | 2012年9月 5日 (水) 10時41分

こういう記事読むと今の医師会ってそんなに敵視されるほど影響力ないけどな…って思っちゃうけど
だいいちあの診療報酬改定を引き上げだったって言うの無理でしょ?

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年9月 5日 (水) 11時54分

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