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2012年9月11日 (火)

医師の労働環境はまだ改善の余地あり

先日こういう記事が出ていましたが、ご覧になりましたでしょうか。

病院病床数、1年で1万床近く減少- 医療施設動態調査6月末概数(2012年9月3日CBニュース)

厚生労働省が3日に発表した医療施設動態調査(6月末概数)によると、全国の病院の6月末現在の病床数は157万8502床で、前月から623床減った。前年同月からは9760床の減だった。

病床数を種類別に見ると、一般病床が89万7394床(前月比115床減)、精神病床が34万2818床(16床減)、療養病床が32万9112床(470床減)、結核病床が7390床(20床減)、感染症病床が1788床(2床減)と、前月から軒並み減っていた
診療所の病床数は、前月から393床減って12万7717床。前年同月からは5200床の減だった。

全国の病院数は8567施設、診療所の数は10万112施設で、前年同月からはそれぞれ63施設の減と167施設の増。前月からは、▽一般病院が1施設減▽有床診療所が31施設減▽無床診療所が73施設増-だった。(略)

厚生労働白書によると病院は減り続けている一方で一病院当たりの病床数は徐々に増加する傾向にあるようで、単純に読めば小病院が淘汰され大病院中心になってきているということなのですが、それ以上に医師がどんどん増えている中でベッド数が減れば医師一人当たりの入院患者数は減っていく計算です。
となると近年世間を賑わせてきた医師の過労問題は解消しつつあるのか?と言うことになるのですが、実際のところはまだまだ大変らしいというニュースが最近出ていました。

過酷な「勤務医」の実態--4割が"週60時間以上"労働、半数が年休"3日以下"(2012年9月6日マイナビニュース)

労働政策研究・研修機構(JILPT)は5日、全国の20床以上の病院に勤務する24歳以上の医師(医院・クリニックの院長は除外)を対象に実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」の結果を発表した。同調査は、2011年12月1日~9日の期間にインターネット上で行われ、3,467名から有効回答を得た。

それによると、職場の医師の不足感について、68.6%が「感じる」(「非常に感じる」27.8%、「まあ感じる」40.8%)と回答。一方、「感じない」(「ほとんど感じない」11.5%、「あまり感じない」2.7%)は14.2%だった。

診療科別に見てみると、「感じる」の割合が最も多かったのは「麻酔科」で81.7%。以下、「救急科」77.8%、「小児科」70.7%、「整形外科」70.6%と続いた。また、過疎地域かどうかの別で見た場合、過疎地域に所在する病院に勤めている医師の方が「感じる」と答えた割合が高く、78.5%を占めた。

主たる勤務先での1週間当たりの実際の労働時間は、平均46.6時間。詳細は、「60時間以上」が27.4%(「60~70時間未満」15.5%、「70~80時間未満」6.6%、「80時間以上」5.3%)、「40~50時間未満」が26.6%、「50~60時間未満」が23.5%、「60~70時間未満」が15.5%となっている。

他の勤務先を含めた1週間当たりの全労働時間の平均は53.2時間で、「60時間以上」の割合は40.0%(「60~70時間未満」20.0%、「70~80時間未満」10.0%、「80時間以上」10.0%)に上った。このほか、「50~60時間未満」が24.4%、「40~50時間未満」が21.8%、「60~70時間未満」が20.0%となった。

主たる勤務先の週当たり労働時間と他の就労先を含めた週当たり全労働時間(出典:労働政策研究・研修機構Webサイト)

昨年1年間に実際に取得した年次有給休暇の取得日数は、「4~6日」が25.8%でトップ。次いで、「1~3日」が24.9%、「0日」が22.3%となり、約半数の47.2%が「3日以下」(「0日」22.3%、「1~3日」24.9%)と回答した。

医師のうち、60.3%が「疲労感」を、45.5%が「睡眠不足感」を、49.2%が「健康不安」を感じていることが判明。さらに、医療事故につながりかねないような「ひやり」あるいは「はっと」した体験「ヒヤリ・ハット体験」があるか尋ねると、68.0%が「ときどきそうである」、8.9%が「ほとんどそうである」と回答し、合わせて76.9%が「何らかのヒヤリ・ハット体験がある」と答えたことが分かった。睡眠不足感に対する認識別にみても、睡眠不足を感じている医師ほど「ほとんどそうである」の割合が高く、15.2%に上った。

勤務医の勤務環境を改善するための方策について聞いたところ、最多は「医師数の増加(非常勤・研修医を含む)」で55.4%。以下、「当直明けの休み・休憩時間の確保」53.4%、「他職種(看護師、薬剤師等)との役割分担の促進」50.8%、「診療以外の業務の負担軽減」45.9%と続いた。

どうも元データを当たっていないので恐縮なのですが、勤務医平均で総労働時間51時間というのは当直や研修を含めての数字というよりも除外しているのではないかという気がします。
例えば週40時間フルタイムで働いた上で週一回当直に入ればだいたい60時間になりますから、暇を持て余しそうな場末の病院であってもなかなかクリアが難しそうな数字と言えそうですし、実際に当直や研修のための時間を入れて平均週70時間という数字が出ているわけですから、この点は注意しておく必要があるでしょう。
しかし一昔前にはどうでもいい患者を「教育入院」などと称して大勢入院させてベッドを埋め「いやあ、ボクもう患者が多すぎてこれ以上は無理ですよハハハ」などと暇そうにしている剛の者?も見かけましたが、さすがに最近ではそういうことは許されない時代になりました。
何しろ病床数が減った中で平均在院日数を下げながら病床利用率を上げようとするとかなりシビアな入退院の管理が要求されますが、ご存知のように最近では患者さん一人入退院するだけで多種多様な書類を書かされる訳ですから、そうなりますとむしろ病床数にゆとりのあった頃よりも医師は多忙になりがちです。

日本だけで見ているとどうもイメージが湧きにくいのですが、主要国では医師の労働時間に上限を設けている国もあって、例えばEU諸国では年間平均で48時間とされていることもあってか日本の平均70時間に対してドイツ・フランスは40~50時間、また少し違った規制方法をとっているアメリカなどでも50時間と言いますから、日本人医師は全般に働きすぎと言えそうです。
その結果何が起こるか、例えば過労などによって引き起こされる自殺の発生率で医師は一般の3割増し、多くの医師が過労死水準を超える労働をこなしていると言われるのですから、やはり医療を行う側も働き方を自ら考えていかないことには患者さんの命以前に自分の命を守れません。
幸いにも近年ではあまりに過酷な職場からは逃散が進んだ結果、そうした職場の労働環境もようやく改善が進みつつあるようですが、医療の効率と言う点から考えても下手に延命させるよりも潰してしまってスタッフを再配置するということも一つの方法論という意見もあるでしょうね。

また昨今医師らの増員が続いていますが、医療現場が現在のままでは医師数を幾ら増やしても単に新たな需要を掘り起こすだけになりかねませんから、適正な医療とは果たしてどのようなものなのかという議論も今この時期にきちんと行っておかないと後々大変なことになりかねません。
日医などは「早期受診による早期発見が重症化を防ぐのだ!」と主張し何か感じたらすぐ病院へ行けと言い、また世間でも様々な方面で「万一のことがあるかも知れませんのでとりあえず医師に相談を」式の文言を見かけますが、医療がそうした需要のことごとくに答え続けることが本当に国民医療水準の向上を意味するのかということでしょう。
いずれにしても過労がミスを誘発するという厳然たる事実がある以上は業務改善として過労解消策を進めることはもちろんですが、まずは当事者が「これはおかしいのでは?」という問題意識を持たないと話にならないというものですから、「ワシらが若い頃はこんなものじゃなかった!」などと後ろ向きな事ばかり主張して改善の足を引っ張らないように注意しなければならないでしょうね。

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コメント

最近は診療業務よりも学生や研修医の教育業務が重いです。
ここをがんばらないと今後困るため一生懸命教えてますが・・・
教育に金と時間がかかることをなかなか理解してくれない人達が病院の上層部、特に医者じゃない人達に多いような気がします。

投稿: クマ | 2012年9月11日 (火) 08時07分

お客が来ない時は店員さんの勤務時間に含めない、なんてこと言えば誰でもおかしいことだって判るのに、医師の場合待機時間は勤務時間に含めないで通っちゃうんですよねえ…
でもちょうどドロップアウトとつり合いがとれててまだしばらくは医師過剰の心配はなさそうですね。
いずれは医師免許所持者ってだけでは価値がなくなって何が出来るか、何をやってるかで給料が決まる時代になりますかね?

投稿: ぽん太 | 2012年9月11日 (火) 08時48分

フリーアクセス絶対死守を叫ぶ日医の会員達は盆暮れ正月患者も放り出して優雅に海外逃避している現実w

投稿: aaa | 2012年9月11日 (火) 10時15分

格差を感じて腹立たしくなるのは仕方ないですが、本来休みの日には休めるのが当たり前ですので。
人並みの生活はケシカラン!俺と同じくらい奴隷労働しろ!ってのはちと不毛ではないかなと。

投稿: 管理人nobu | 2012年9月11日 (火) 11時34分

法律は一般労働者のためにあるもので医者や技術者は同列に語れない
高いコストかけて技術者育てて週40時間きっちりしか働かないんじゃ社会損失だろjk

投稿: takehiro | 2012年9月11日 (火) 13時01分

>法律は一般労働者のためにあるもので医者や技術者は同列に語れない

そんな恣意的に労基法の対象を選別していいなんてはずないでしょ。
どうして医師の労働環境がうるさく言われるようになったのかちゃんと勉強しておけば、何が本当の社会的損失なのか判るはずですよ。
旅客機パイロットほど厳しく規制しろとまでは言わないが、人並みのゆとりくらいないと患者さんに迷惑かけますよってことでしょ。

投稿: ぽん太 | 2012年9月11日 (火) 14時22分

>高いコストかけて技術者育てて週40時間きっちりしか働かないんじゃ社会損失だろjk

ここまでアカラサマな「嫌なら辞めろ委員会」は、久々にお目に掛かりましたね。
彦根の方でしょうか? それとも金木?

投稿: 福山の京都人 | 2012年9月11日 (火) 16時08分

大阪2病院で医師9人、集団辞表…経営体制巡り
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120911-OYT1T00717.htm

 医療法人亀広記念医学会(大阪府枚方市、亀広摩弥理事長)が運営する「関西記念病院」(枚方市)と「関西サナトリウム」(泉佐野市)の
医師計9人が11日、集団で辞表を提出した。
 同会では8月に理事長や理事のほとんどが交代し、両病院の院長も代わった。辞表を出した医師らは、「理事長らの交代後、混乱が続いている」と説明、
病院経営の体制を交代前に戻すよう求め、午後に記者会見を開くという。辞表を出したのは、関西記念病院では9人の常勤医師のうち8人、
関西サナトリウムでは3人の常勤医師のうち1人。
 府によると、両病院とも精神科と心療内科が中心で、関西記念病院は316床、関西サナトリウムは192床。府は、実態を確認し、
医療法で定められた人数の医師が確保できない事態になれば患者の転院などを指導する。

投稿: 大阪で逃散発生 | 2012年9月12日 (水) 08時54分

元の体制に戻せと要求しているあたり、逃散と言うより通常の労働争議かなと思えます。
ただこういう形で医師自らきちんと要求を出せるようになってきたのは良い傾向ですね。

投稿: 管理人nobu | 2012年9月12日 (水) 10時52分

フリーアクセス(開業医ではなく病院)を絶対死守していることがそもそも諸悪の根源。
病院がさながら24時間営業のスーパーマーケットかコンビニみたいになっていますね。
救急医療を維持するためには百害あって一利なしの時間外フリーアクセスは即中止してほしい。
かつて田舎の病院で夜間当直していたら深夜1時間ごとに緊急性のない精神科通院中の患者が入れ替わり歩いて何人も来院。
なぜ精神科の救急をハードな内科救急の合間にやらなければならんのか?意味不明で馬鹿馬鹿しくなってここからは逃散。

投稿: 元神経内科 | 2012年9月12日 (水) 11時27分

きちんと法律守るためにはマンパワー集約して交代勤務制や当直明け休みの導入が必要でしょ。
でも当の医師達が反対してるんですよね。同じ職場の看護師達はずっとそれでやってるのに。

投稿: ぽん太 | 2012年9月12日 (水) 11時53分

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