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2012年9月27日 (木)

特定看護師問題 安全の担保が錦の御旗化?

先日もじわじわと議論が進んでいるということを紹介した特定看護師問題ですが、ここに来て再び振り出しに戻ったかのような一進一退の状況になっているようです。

特定行為、在宅医療での安全管理が課題に- 厚労省・看護業務WG(2012年9月24日CBニュース)

 厚生労働省の「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」(WG、座長=有賀徹・昭和大医学部教授)は24日に会合を開き、いわゆる「特定看護師」が担う特定の医療行為(特定行為)の実施体制について議論した。委員からは、医師が常駐しない在宅医療の現場で、どのように安全管理体制を確保するかが課題として指摘された。

 看護師の能力認証に関する厚労省の試案では、同省が指定する研修機関での研修を修了した「特定看護師」について、医師の包括的な指示(入院診療計画書など)で特定行為を実施できるとする一方、それ以外の看護師の場合は、医療機関側が実施体制(院内での研修を含む)を整備した上で、医師の具体的な指示によって、特定行為の実施が可能とされている。

 医療法では、診療所や病院などの安全管理体制について、▽指針を整備する▽医療の安全管理に関する委員会を開く▽職員研修を実施する▽医療安全を確保する目的で、事故報告など改善のための方策を講じる―ことを求めている。

 星北斗委員(財団法人星総合病院・理事長)は、「起こり得る危険性や、その後の対応はどちらも同じと考えるべきだ」と述べ、能力認証の有無に関わらず、安全管理体制を構築する必要性を指摘する一方、在宅医療に関しては、医療機関とは異なる視点で検討する必要性を示した。
 在宅医療に従事する英裕雄委員(医療法人社団三育会・理事長)は、「診療所や病院のように、チームがしっかりいる体制に比べると、(在宅医療の現場では)かなり希薄な状況の中でやらざるを得ないのが実情だ」とし、医療法による体制の整備を在宅医療に導入することに懸念を表明。その上で、「院内の場合と、院外の連携によってつくる場合、(医療機関の)財政も少し考えて、多岐にわたるシチュエーション(状況)を考慮した上で、考える必要があると思う」と述べた。
 神野正博委員(社会医療法人財団董仙会・理事長)は、「在宅の患者さんへの指示は、かなり具体的になるのではないか」とし、「院内や訪問看護ステーションでの研修や安全管理体制を充実させれば、具体的指示で(特定行為の)かなりの範囲をカバーするのではないか」と問題提起した。

 一方、大滝純司委員(東京医科大教授)は、「安全管理の面も大事だが、研修の内容について、どのくらい習得できたかどうかの確認が、在宅も含めて重要になるのではないか」と述べた。
(略)

どうも制度設計を見ていますと医師もあまりいないような環境で半ば独立して働く看護師には特定看護師を取得させて自主的に特定行為を行わせる、一方で身近に医師が揃っている病院内では体制整備の上で一般看護師に特定行為を行わせるということを考えているようにも見えます。
しかし在宅であれ今どき何かあれば医師に電話をして具体的な指示を受けることが可能なのですから、それなら特定看護師の必要性などないのでは?という話にもなってしまいかねませんね。
一般看護師であっても体制整備と「具体的指示で特定行為のかなりの範囲をカバーする」ということになれば、特定看護師の存在意義とはそれこそ医師の いない環境での医介補的準医師ということになりますが、医療現場の需要を見ると院内での業務を看護師にしっかり務めてもらいたいという要求も大きいはずですから、両者を不可分のもののように議論していくことはどうなんでしょう?
まして今までの議論を見ると特定看護師資格を取得するためにはかなりの学歴が必要になりそうですから、どうも大学など大きな施設の看護師が資格を取得しに行きそうな印象を持っているのですが、実際のところ需要と供給のミスマッチが発生しないのかです。

いずれにしても今回も安全性が大きな議論になっているように、特定看護師制度導入への反対意見としてどうしてもこの安全性問題が最大の懸案となっているのは確かであって、この部分が最初から最後まで大きなハードルとなっていることは間違いありません。
しかし仮に何らかの対策を講じたとして、それで安全性が担保出来るのか?と言われれば、逆にどうすれば安全性が担保出来るのか、今看護師がやっている行為なら絶対に安全なのかという話になってしまい、最終的には点滴採血全部医者がやれの世界になってしまいますから、業務分担を進めていく上ではどこかで割り切りということが必要になるはずです。
とりわけ昨今医療現場は慢性的に人手不足で各人が出来ることをやっていかないことには仕事が回らない状況ですが、リスク云々を言うなら特定看護師ばかりではなく他にもリスク要因は幾らでもあるということは承知しておかなければならないですよね。

緊急度判定支援システムの指導者を育成- 医師ら対象に講習会(2012年9月24日CBニュース)

 病院の救命救急部門を中心に導入が進んでいる緊急度判定支援システム「JTAS(Japan Triage and Acuity Scale)」の指導者講習会が23日、東京都内で開催された。同システムの指導者を育成するコースの開催は初めてで、修了者は今後、JTASの普及や、医療関係者への教育を担うという。

 緊急度判定(院内トリアージ)は、診察前の患者の症状を評価し、緊急度・重症度を見極め、治療の優先順位を判断すること。救命救急の医療現場では、患者が到着した際、専門的な教育を受けた経験豊富な看護師らが、(1)現在の症状を評価し、緊急度を決定する(2)患者の緊急度判定のカテゴリーに当てはめる(3)適切な治療を受けるまでの過程を決定する(4)効果的・効率的な業務遂行のため、適切な人的医療資源を割り当てる―などを迅速に行う必要がある。判定をするスタッフには、対外的な業務、問診、記録、批判的思考法、コミュニケーション能力などのトリアージ業務に必要な看護技法の理解が不可欠とされている。

 こうした一連の医療業務を支援しようと、日本臨床救急医学会の奥寺敬理事(富山大医学部教授)らが中心となり、医療現場にトリアージを積極的に取り入れているカナダのCTAS(Canadian Triage and Acuity Scale)を参考に、熱中症などの日本国内の特徴を加味して、病院内で使う緊急度判定支援システムを構築。今年4月から、iPodやパソコンで専用サイトにアクセスが可能な体制を整えるとともに、各地で講習会を開き、専門知識を持ったインストラクターが、医療関係者らに重症度・緊急度の判定方法やJTASの使い方などを教えている。

 この日行われた講習会では、まず、5段階の緊急度判定レベルなどについて、インストラクターが受講者に解説。レベル1(蘇生)、同2(緊急)、同3(準緊急)、同4(低緊急)、同5(非緊急)の分類や、患者到着から治療室へ移動するまでの過程、緊急度判定を行うスタッフの専門職としての役割について、「いかに分かりやすく伝えるかが重要」と強調した。

 さらに、緊急度判定を実施する利点や、混雑時の緊急判定度の重要性と限界の理解、救急患者の特徴などについて、受講者はグループに分かれて指導方法を学習。その後、インストラクターから「患者の状態から症状を探る」「定義をしっかりと理解した上で判定する」などと助言を受けながら、実際にiPodを使って治療判定に挑戦した。

 「18歳の女性、エンジンがかかったままの車内で発見された。視線も合わさず、質問に対する返答もしない。来院時主訴は?」などといった例題について、画面に映し出された呼吸障害などの項目の中から、患者に当てはまりそうな症例を選択。「重度:過度の呼吸努力のため疲労、チアノーゼ、単語のみ話せる状態」「中等度:呼吸努力が増加した状態、とぎれとぎれの会話」「軽度:呼吸苦、頻呼吸、労作時息切れ、呼吸努力の増加は認められない」との判定度が画面に現れると、受講者はそれぞれの所見に基づき、患者の具体的な障害レベルを選定した。

 JTASに対する参加者の期待は大きく、武蔵野赤十字病院救命救急センターの西塔依久美救急看護認定看護師は、「今までは、現場の看護師らが経験則で症例を判定してきたが、このシステムを使えば、経験の浅い若い看護師でも判定が可能」と評価。また、近江八幡市立総合医療センター救命救急センターの鶴田宏史救急診療科部長は、「地元の滋賀県内で広めたいと考え、参加した。講習で指導する際のコツが具体的に学べて参考になった」とし、日本医科大付属病院高度救命救急センターの佐藤憲明看護師長は、「システム的には、よくまとまっている。判定の履歴をデータとして保存し、判定のプロセスが後で検証できればなお良い」と感想を述べた。

 長年にわたり、医療現場における緊急度判定システムの普及に取り組んできた奥寺理事は、「病院に院内トリアージがあることを前提に、救急救命システムが変わろうとしている。少しでも多くの患者の命を救うため、JTASのような判定支援システムが普及することが重要。より多くの指導者を育成し、普及を図っていきたい」と話している。【新井哉】

日常診療の救急外来でも行列待ちが出てきた場合、重症を後回しにして順番通り軽症患者を延々と診察しているというケースはままあるもので、それだけに緊急事態に限らず患者の振り分け作業とは治療行為そのものと同等以上に重要になってくる仕事です。
しかし難しいのは一見重症に見えても意外に軽症である場合、また軽症に見えても重症である場合が入り乱れていることに加え、それを判断する人間によって重症、軽症の基準が異なるということで、早い話が医師が明らかに重症だと考えて誰かを優先しようとしても「そんな奴たいしたことないじゃないか!俺は脚の骨が折れてるかも知れないんだぞ!」なんて騒ぎ出す人が必ずいるということですね。
まずは医師の前に連れてこないことには治療が始まらないことを考えれば、誰を先に連れて行くかこそは最も重要な医療行為とも言えるはずですが、夜間救急が混雑するような大きな病院ほど受付の事務や専門的トレーニングを受けていない看護師などが「経験則で症例を判定」してきたというのは、考えようによってはこれ以上ない危険な状況ではないでしょうか?

無論、「だからトリアージから治療まで医療の全ての過程を医師が自ら責任を持ってやるべきだ」なんてことを言い出せばそれこそ現場を知らない空論になってしまいますが、医療行為のどこまではスタッフに委任しても安全だという線引きなど実際にはほとんど不可能であって、また現実的に線引きが曖昧なまま今も日常臨床が行われているという事実を抜きに重箱の隅ばかり突いていても仕方がないというものでしょう。
最終的にはまずは限定的に試行してみて、その結果のデータ解析を元にフィードバックしていくということを繰り返していかなければ何が安全で何が危険なのかは判らないはずですが、特に一部医療機関の現状を見ていると恐らくこのくらいまでは大丈夫なのでは…という段階のはるか手前で「もしかしたら危険なのかも知れないから」とストップがかけられているようで、医師にとって大きな心身のストレスとなっているのも事実でしょう。
無論、看護師も医師同様多忙で人材不足なのが実情ですから、看護師業務のうち専門的知識、技能をさほど要求しないものを非専門職にどんどん移譲していく作業も並行して進めていく必要がありますけれども、まずは特定地域なり施設なりに限定してでも実際にやってみないことには議論の結論など出ようがない問題じゃないかと思いますね。

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コメント

てか看護師にみてもらいたい患者がいるかどうかを一番最初に確認しておかなきゃ
どうせ料金もたいして変わりゃしないんでしょ?

投稿: ゼンダマン | 2012年9月27日 (木) 10時23分

むしろ加算が付いて医師より高くついたりしてなw

投稿: aaa | 2012年9月27日 (木) 10時45分

>医師より高くついたり

ピチピチのべっぴんさんが下の始末してくれるんだったら少しくらい割高でも(+_+)\バキッ!

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年9月27日 (木) 11時13分

もともと日本の診療報酬じゃ技術料は雀の涙ですから値段は大差ないでしょうね。
施設に方に何か加算が入るのかも知れませんけど。
特定行為が出来るようになることの方がずっと意味は大きいと思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年9月27日 (木) 12時05分

点滴くらいやってくれ

投稿: | 2012年9月27日 (木) 16時12分

>ピチピチのべっぴんさんが下の始末

それは特定看護師な必要ないですねw

>点滴くらいやってくれ

今時そんな病院に勤めてる奴は自己責任かとww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年9月28日 (金) 09時41分

仕事 学歴で プログ検索中です
看護師さん 大切な 大変なしごとですね。
人は そんなに 綺麗でないかなぁ。
人は 美しいのかなぁ
院内でみる 人の人間模様と人の体~
看護士さん 出会いとかあるのかなぁ~
看護士さん 水準の高い異性?がタイプかなぁ
仕事研究会(名前検討中 恋愛研究会(名前検討中

投稿: 村石太Ⅷ | 2012年9月28日 (金) 21時26分

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