« 忙しいなら他人を使うことも考えるべきでは | トップページ | あり得ない?!ワトソン容疑者に「二枚目のレッドカード」 »

2012年9月19日 (水)

パワハラが成立する愛媛大医学部

少し以前にこういうニュースが出ていたのですが、ご記憶でしょうか?

「長時間労働のうえ暴力」 院生が愛媛大を提訴/愛媛(2012年8月10日長崎新聞)

 長時間勤務を強要され、暴力をふるわれた結果うつ病になったとして、愛媛大大学院の男子学生(31)が愛媛大と指導担当医師の准教授に慰謝料など計1800万円の損害賠償を求め、10日までに松山地裁に提訴した。

 訴状によると、男性は准教授に早朝から深夜までの労働を強制され、帰宅できず大学病院のいすで寝ることもあった

 准教授は男性の腹部を蹴ったり頭を殴ったりしたほか、2009年6月ごろ、男性のミスを理由に支払いの義務がないのに、実験で使う器具や試薬の費用計約25万円を無理やり支払わせた

確かにこうして書くとなんとも酷い扱いだなと思う一方で、それぞれ見ていきますとなんだ、一昔前なら当たり前にあったことばかりじゃないかという気がしないでもないというニュースで、こういうことがきっちり裁判にまでなっているあたりに時代の変化を感じたものでした。
もちろんパワハラ、アカハラが許されざる行為であることは言うまでもありませんが、もともと外科系などではアホ、バカ、シネが日常茶飯事で手の代わりに足が出る(手は消毒しているため)などと言われたくらいですし、院生が法的?根拠の怪しい研究費なるものを徴収されるのもお約束です。
そうした訳でこういう裁判になるのも昔であればなかったことなのかも知れませんが、ともあれ先日その裁判の初公判が開かれたということでこれまた記事から引用してみましょう。

暴力振るわれ、うつ病に…パワハラ訴訟初公判 愛媛大准教授vs学生/愛媛(2012年9月18日産経ニュース)

 長時間勤務を強いられた上、暴力を振るわれ、うつ病になったとして、愛媛大大学院医学系研究科の男子学生(31)が、愛媛大と指導担当医師の准教授を相手に計1800万円の損害賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論が18日、松山地裁(加島滋人裁判長)で開かれる。

 訴えによると、学生は入学後、付属病院で医療実務に関わり、医局員としても大学に雇用されている

 学生側は、准教授に早朝から深夜までの労働を強制されたほか、腹を蹴られたり頭を殴られたりしたと主張。さらに2009年6月ごろには、支払いの義務がないのに、実験器具などの費用約25万円を無理やり支払わされた、としている。

 学生はうつ病と診断され、09年8月から休学している。

はっきり口座名は出ていないということでここでも特に明らかにしないまま話を進めますけれども、愛媛大医学部と言えばつい先年も女性研究員との間にアカハラ問題で訴訟沙汰になったばかりで、しかも当の女性研究員を雇い止めした大学側は「問題とは思っていないので謝罪はしていない」の迷言?を吐いたことでも注目されたものでした。
ただ愛媛大学の名誉のために弁護するならば、少しばかりググってみれば全国実に多くの大学で同種の問題が報じられていることも事実であって、特に学閥内での人間関係が将来を左右しかねないような状況にあっては隠れた同種の事件が幾ら存在しているものやら想像もつきませんよね。
一方で今回の事件を見てみますと大学病院での勤務をしていることから被害者も医師であったはずなんですが、そうなると一般的なアカハラ問題とは少しばかり状況が違うんじゃないかと感じる人もいるかも知れません。

一般にハラスメントが成立する条件として特殊な例外を除けば「耐え難い苦痛があるけれども逃げ出すことも難しい」という二律背反があるはずなんですが、そもそも今どき大学離れ著しい医療の世界でここまでの仕打ちを受けてうつ病で休学になるまで追い込まれてもまだ大学に固執していたという点で「それってどうなの?」と思ってしまいますよね。
それも入局希望者の殺到して狭き門になっている名門大学などというのであればまだしも話は判るのですが、よりにもよって失礼ながら医局員を集めるのにも四苦八苦していそうな愛媛大にと言われると誰しも「え?なんで?」と疑問に感じざるをえないのではないでしょうか。
一昔前であれば医局の権威というのはまだしも相応なものがあり、その権威に裏付けられた強制力があったからこそ僻地医療などもきちんと医師が派遣されていたという実態があるわけですが、今どきちょっとでも医局員の気に沿わないことを言い出せば「あ、それじゃボク医局辞めますから」でさっさと逃散していくという時代に、むしろこれだけの権威を未だ保持している愛媛大も偉いと捉えるべきでしょうか?

大学院ということですから研究希望であればあったで幾らでも研究する先は選べる立場でしょうし、将来その世界で生きていく希望があったにしても愛媛大に留まるよりは(重ね重ね失礼)よりよい選択は幾らでもあったと思うのですが、新臨床研修制度導入以来こうした損得勘定には長けているはずの若い先生にしては昔気質であった方なのでしょうか。
年齢的には外の病院でしばらく臨床をやってから大学に戻ってきたのでしょうか、ほとぼりを冷ますためにもしばらく臨床をやってから改めて研究生活に戻っても全く遅くないと思うのですけれども、異常な環境の中でそうした視野が確保出来なかったというのであれば残念なことだったと言うしかありませんね。
大学側が今後どのような主張を展開するのか公判の行方を見守るしかありませんけれども、こういう話を聞くと医者も白い巨塔にばかり籠もっていないで広く世間に出て見聞を広めるべきだという意見にも、それなりに首肯すべき点はあるんだろうなと思ってしまいます。

|

« 忙しいなら他人を使うことも考えるべきでは | トップページ | あり得ない?!ワトソン容疑者に「二枚目のレッドカード」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

研修医が死んだのは関西医大だっけ?
どっちも上等な大学じゃないね

投稿: あららドロン | 2012年9月19日 (水) 08時48分

研修医は多分どこでも死んでるんじゃ裁判沙汰になってないだけで…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年9月19日 (水) 09時30分

まあ、研究用の試薬や機材は高いですからねぇ。
私も大学院時代、1本10万円、なんて試薬をバカスカ使ってました。学費のもとは取ったよな(笑)

でも、本筋から派生する実験をちょっとしたい、なんて言っても、メインの実験で予算(一応大雑把なものがあって、自分の実験プログラムから予算を立てて、一応その範囲内で、と言われる)がおおむね決まってたりするんで、時々ポケットマネーで支払ってました。
あれって支払い義務はなかったんだ。

まあ、義務がないと言えば、院生が臨床をする義務もないはずですけどねぇ。

投稿: | 2012年9月19日 (水) 09時45分

大学院の問題は突き詰めれば幾らでもネタは転がってますよね。
以前にニュースにも取り上げられてた学位取得の謝礼なんて未だに公然とやってる医局もあるようですし。
私などボスと折り合いの悪かったこともあってびた一文どころか菓子折りも出しませんでしたけど。

投稿: ぽん太 | 2012年9月19日 (水) 10時00分

>院生が臨床をする義務もないはずですけどねぇ。

このあたり大学、医局によって違うんじゃないですか?
院生はバイトだけで大学の仕事は免除というところもあるようですが。
いずれにしてもそのあたりの労働環境もこれからはきちんと事前に話をつけておかなければいけないところでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2012年9月19日 (水) 10時48分

研究費取られたことはなかったが貧乏講座なんで研究予算もろくになかった記憶が
自費で金出してでもいい実験するのとどっちがよかったんだろう?と思ったけど、そんな貧乏講座に入った自分が一番バカだったんだなw

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年9月19日 (水) 11時10分

15年ほど前大学院へ行きましたが、最初の1年と最後の1年は臨床業務をやらされました。最後の1年は関連病院出向だったので大変でした。
2年目と3年目も非常勤で週2日別々の病院で外来とかしてました。臨床経験と生活の意味では助かりましたね。
今考えれば、臨床医に学位など必要だったんだろうか?と思います。
パワーハラスメントは55~70歳の年代の医者なら普通にやりかねないですので、もし被害に遭ったら即トンズラしかないですね。
今の時代、下手に我慢したり、裁判で争うなどは不毛で時間のムダだと思うのですが。
若い時期は1つの職場環境に固執することはないと思います。まして大学病院のような伏魔殿は精神的によくないですからね。

投稿: 元神経内科 | 2012年9月19日 (水) 16時30分

臨床医は卒後すぐ大学院行かない方がいいのでは?と後輩にも言ってます
先に臨床研修受けてからの方がスムースに仕事が回せるので研究やるにも効率いいですから
いちばん要領の悪い卒後すぐの新米が研究も臨床も同時にやるのは無理ですよ

投稿: 蒲田 | 2012年9月19日 (水) 17時21分

愛大に通院している患者です。愛大の外科系の医師は患者にも対応が激しいです。
声を荒げる、セカンドオピニオンを要求すると機嫌を損ねて「どこに書けばいいんですかっ!」と騒ぐ、それはもう大変でした。
愛媛では大学病院がひとつしかないので、王様気取りなんでしょうか。。。
わざわざ病院に怒られにいくのもしんどいので、医者を変えました。
今は、患者も権利を主張できる時代ですし、勤務する方も愛大に固執する必要はありません。
膝では有名な三浦教授がトップの愛大ですが、整形外科も入局希望者を集めるのにかなり苦戦しています。

投稿: hana | 2016年5月 3日 (火) 17時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/55687203

この記事へのトラックバック一覧です: パワハラが成立する愛媛大医学部:

« 忙しいなら他人を使うことも考えるべきでは | トップページ | あり得ない?!ワトソン容疑者に「二枚目のレッドカード」 »