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2012年9月25日 (火)

司法試験予備試験はホントは予備ではない?

先日司法試験の結果が発表されたのですが、今年は色々と変化の年であったようです。

司法試験:合格率25.1% 新試験導入後、初めて上昇に(2012年09月12日毎日新聞)

 法務省は11日、法科大学院7件修了者と予備試験合格者を対象とした司法試験の合格者を発表した。合格者数は06年に始まった新試験では過去最多の2102人(昨年比39人増)。全体の合格率は25.1%(昨年比1.6ポイント増)で新試験導入後、初めて上昇に転じた

 政府は02年の閣議決定で合格者の目標値を3000人としているが、今回も遠く及ばなかった

 新試験が導入されてから、新旧両試験が並行実施されてきたが、旧試験は昨年で終了。新試験7回目となる今回は予備試験の合格者が初めて新試験に挑み、58人が合格。合格率は68.2%だった。

 一方、法科大学院修了者は2044人が合格し、合格率は24.6%。政府の規制改革会議(当時)は09年、「予備試験合格者と法科大学院修了者の合格率を均衡させる」と提言しており、次回は予備試験自体の合格者数を増やすなどの調整がされるとみられる。

 修了者の合格者のうち、法学部出身者向けのコース(2年)の合格率は36.2%だったが、法学部出身者以外向けのコース(3年)は17.2%にとどまり、法科大学院制度が理念とする「多様な人材の確保」の難しさを示した。

司法試験、「予備試験」通過者は合格率68%(2012年9月11日読売新聞)

 法務省の司法試験委員会は11日、今年の司法試験合格者を発表した。

 合格者は前年比39人増の2102人。法科大学院修了生の合格率が24・62%にとどまる一方で、法科大学院を修了しなくても受験資格が得られる予備試験を通過した受験生は68・23%と高い合格率を記録した。構想段階で7~8割の合格率が想定されていた法科大学院に対し、一層失望感が広がる可能性がある。

 予備試験ルートの受験生が参加したのは今回が初めて。合格者は、2006年から始まった法科大学院修了生を対象とした新司法試験では最多。全体の合格率は前年比1・53ポイント増の25・06%と、5年連続で更新した過去最低に歯止めがかかった

 今年の受験者は、昨年より378人少ない8387人で、新試験開始以降、初めて減少した。学生の法科大学院離れを反映し、定員を削減した大学院が増えたことが原因で、これが合格率の微増にもつながった。

 大学院別に見ると、全74校中、最も合格者が多かったのは中央大の202人で、東京大の194人、慶応大の186人が続いた。上位10校の合格者数が全体の約6割を占めた。

記事にもありますように旧試験はもう終了したということで、すでに合格者過剰も言われ始めている中で過去最高の人数が合格したという点も注目なのですが、今回初めて予備試験合格者からの合格者が出たという点に留意いただきたいと思います。
この予備試験なるもの、本来は経済的事情等から法科大学院を受験できない人に対する救済措置として、これに合格すれば司法試験の受験資格を与えるということになっているわけですが、今回初めて参加した予備試験組の合格率は実に法科大学院の3倍近くと、非常に高率であったことが明らかになったわけですね。
もちろん様々な制約もある中でそれでも司法試験を目指したいという人々の方がより向学心に燃えているといった事情もあるのかも知れませんが、どうも内情を見てみますとそうした単純な話ばかりでもないようです。

新司法試験 法科大学院離れ拍車(2012年9月24日東京新聞)

 十一日に合格発表があった新司法試験で、法科大学院修了を受験の条件としない予備試験組の合格率が68%に上り、関係者に衝撃を与えている。経済的事情などを考慮して設けられた「例外ルート」だが、どの法科大学院よりも高かったからだ。これをきっかけに法科大学院離れが進み経営悪化に拍車が掛かるとの見方も出ている。

 「厳しい結果だ。優秀な人材が予備試験を目指す流れができかねない」。文部科学省の幹部は暗い表情でつぶやいた。

 二〇一二年度の法科大学院受験者は、制度が始まった〇四年度の約四割。七十三校中六十三校で定員割れとなり、地方を中心に経営を圧迫している。今年は合格率10%未満の学校が二十校に上り、厳しい現状に追い打ちを掛けた。

 予備試験の目的は、学費が払えない、仕事を辞められないといった事情で法科大学院に通えない人の救済。初めて行われた昨年は六千四百七十七人が受験し百十六人が通過。うち八十五人が今年の司法試験を受け、五十八人が合格。狭き門をくぐり抜けた受験者とはいえ、合格率はトップの一橋大(57%)を10ポイント以上上回った

 予想外だったのは、五十八人のうち二十六人が大学生、八人が法科大学院生だったことだ。法務省幹部は「合格率が高いことは予想できたが、学生がこれほど多いとは…」と驚きを隠さない。

 政府が法曹養成の中核と位置付ける法科大学院は「人間的に豊かな法曹」を育てるのが目的とされるが、生き残りをかけて受験対策に重点を置いたため「予備校化」している大学も散見される。

 今回の試験結果は、そうした現状の法科大学院すら迂回(うかい)し、予備試験を「金と時間を節約する抜け道」(法務省幹部)として利用した受験生がいる可能性を浮かび上がらせた。

 「仕事を辞めることは全く考えていなかったので、予備試験があってよかった」。東京都文京区の投資運用会社社員(40)は、予備校の通信教育で勉強。法科大学院には通わず念願をかなえた。

 一方で「早く合格して、社会に出たかった」と予備試験を選んだ理由を話すのは東京大法科大学院の男子学生(22)。「法科大学院の授業は丁寧だけど、司法試験にはプラスにならない」と話す。

 司法試験向け予備校「伊藤塾」の佐藤修一執行役員は「大学生は在学中に予備試験に挑戦し、駄目なら法科大学院に行けばいいと考える。予備試験を目指す学生は今後増えるだろう」と分析。

 日弁連の中西一裕事務次長は危機感を募らせる。「法科大学院は、実務家のため必要な教育を行う場所。『早く受かりたい』という理由で予備試験を選ぶという態度は、制度の趣旨と懸け離れている」

ご存知のように新司法試験では受験資格として予備試験合格あるいは法科大学院修了を必要とするのですが、どちらも5年間で3回司法試験を受験出来ると言う決まりになっていて、しかもこの3回の受験に失敗してしまった場合は別な方法で受験資格を得ることが出来るというルールになっています。
すなわち法科大学院修了者であれば予備試験に合格を、予備試験合格者であれば法科大学院を終了すれば再び司法試験に挑むことが出来る理屈ですが、法科大学院を修了し3回の受験に失敗した上でさらに予備試験に合格してとなれば、年齢的にも経済的にも非常にハードルが高くなりそうだと想像出来ますよね。
ところがこの予備試験なるもの、「司法試験予備試験には,受験資格及び受験回数の制限はありません。(厚労省)」と言い切っているわけですからいつでも誰でも受けられるというわけで、しかも司法試験自体には前述の通り受験資格は二つだけで年齢等は問われていないということですから、その気になれば高校生でも弁護士になれるということでしょうか。
こうなると記事にもあるようにやる気も能力もある人間は学部生など早い段階で予備試験をクリアして3度の挑戦をしておき、それに通らなかった場合にはそのまま法科大学院に進んで新たな受験資格を得れば一番効率がいいということになるでしょうし、今年の合格率を見る限りでも今後予備試験経由での国試合格者の低年齢化は十分に考えられると思われますね。

司法制度改革というものはとにかく法曹人口を増やして司法に対する国民のアクセスを容易にしようというのがそもそもの理念であったそうで、司法試験の間口を広げるということはそのための手段であったわけですから合格者が増えるのは何も問題ないはずですが、不景気な時代である以上やはり大学院を出てまでダラダラと試験勉強を続けるのは経済的なプレッシャーも大きいはずですよね。
今後親のスネを囓ることが社会的にも許容される若年層がこの予備試験ルートでどんどん弁護士になっていくケースが増えるのだとすれば、当然そうした人々は若くて能力もある優秀な人材が多いのだろうし社会的には良いことなんでしょうけれども、現状ですら国試合格も覚束かず授業料詐欺だ!なんてことを言われている法科大学院に通う人達はいわば負け組としてますます肩身が狭くなりそうです。
しかしもともと新司法試験では合格率7割が目標だ!と言っていて、法科大学院組が相変わらず低迷しているのに反して予備試験組がそれに匹敵する数字を叩き出してしまったことは何とも象徴的に感じられるのですが、もし今後は予備試験ルート経由者の方がむしろ司法試験合格者の主流になっていくのだとすれば予備も何もないものですし、結局のところ法科大学院って何だったの?と言う話にもなりかねない気もします。

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コメント

そりゃ大学院の学費払わずにすむなら誰だってそうしたいですわ
もともとこれくらいの結果は予想してた人が多かったのに今さら驚くもないものだ

投稿: あめぽん | 2012年9月25日 (火) 09時34分

結果として旧司法試験に近いルートが用意されている形で法学部学生などにはありがたいのでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2012年9月25日 (火) 12時20分

つまりその気になれば小学生でも弁護士になれてしまうってことですか??
制度設計の際には誰も異論は出さなかったんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2012年9月25日 (火) 13時09分

年齢制限が無いのは旧司法試験一次試験も司法書士試験も同じでした。
心配しなくても小中学生の弁護士は現れません。
合格も登録も出来ないでしょう。

投稿: ヒヨコ鑑定士 | 2012年12月 7日 (金) 10時31分

制度設計と言う発想そのものが乏しいというか、はっきり言って皆無だったのだと思います。
思えば司法制度改革の旗振り役だった法務検察当局をはじめ最高裁にせよ日弁連にせよ、この業界の人たちは司法試験を通った法律家ではあっても政策立案・処理能力は全くないのだと思います。
法務省も検察官に牛耳られて他官庁のようなプロの行政官が全く育ちません。御存知の方も多いかと思いますが、法務事務次官の法務検察官僚内での格は東京高検検事長よりも下位に位置しております。大臣を戴く「省」の事務方トップが関東地方の検事の元締め役よりも立場が低いと言う異常な認識に囚われた役人集団にまともな制度設計などできるはずがありません。

投稿: しがない司法書士 | 2014年3月14日 (金) 13時19分

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