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2012年9月24日 (月)

史上初の快挙!?大学病院が保険指定取り消し

こういうこともあるんだなというニュースが全国を駆け巡っていますが、これは処分する方もよく思い切ったなと思いますね。

東京医大茨城医療センター、保険指定取り消し(2012年9月22日読売新聞)

 厚生労働省関東信越厚生局は21日、総合病院「東京医科大茨城医療センター」(茨城県阿見町)が診療報酬約8285万円を不正請求していたとして、同病院の保険医療機関指定を取り消す処分を発表した。

 期間は12月1日から5年間。厚労省によると、記録が確認できる1998年以降、大学病院の指定取り消しは初めてという。

 同局の発表によると、同病院は2008年4月~09年5月、必要な基準を満たさずに入院や手術に伴う診療報酬の加算分を算定したり、実際に働いていない事務作業員を配置しているように偽ったりして、診療報酬を不正に請求した。

 同病院は501床、29診療科を擁し、外来患者は1日平均1000人。県の地域がん診療連携拠点病院などに指定され、救急車も年間約3300台を受け入れるなど地域医療の中核を担っている。保険診療ができなくなると、患者側の自己負担額が大幅に増えるため、転院せざるを得なくなる入院・外来患者が相次ぐことが予想される。地域医療への影響が大きいことから、県は対策を検討する。

東京医大指定取り消し 県南部の医療影響大(2012年9月22日読売新聞)

 東京医科大茨城医療センター(阿見町)が診療報酬不正請求により、関東信越厚生局から保険医療機関の指定取り消し処分を受けたことで、県南部の地域医療に影響が出そうだ。12月以降、保険診療ができなくなると、転院を余儀なくされる入院・外来患者が相次ぐ可能性がある。県は「地域医療に影響が出ないよう、週明けにもセンター側と協議を始めたい」としている。

 不正発覚は2009年7月。センター側が自ら公表した。21日、県庁で記者会見した松崎靖司・同センター病院長は、保険医療機関の取り消しについて、「考えていなかったと言えばうそになる。覚悟はしていた」と述べ、想定内の処分内容との認識を示した。今後の対応については「我々は処分を受けた立場。県や関係機関の指示で動かざるを得ない」と明言を避けた。

 県の医療関係者も、「センターが不正を自ら公表したので、情状酌量があると楽観していた。保険医療機関の指定取り消しは非常に厳しい」と困惑気味だ。だが、不正発覚から3年、最悪のケースが想定できたにもかかわらず、センターも県も、具体的な善後策を検討してこなかった

 12月以降は、このままの形でのセンター存続は難しくなるとみられる。周辺の病院も受け入れ態勢に限界があり、400人の入院患者や1日平均1000人の外来患者は行き場を失う恐れもある。

 過去の事例では、経営権の移譲、あるいは処分期間の短縮など特例を求めることで、影響を最小限に抑える可能性も残されてはいるが、県保健福祉部の森戸久雄次長はこの日、「病院の現状維持を目指したい」と述べるのにとどめ、具体的な方策は示さなかった

 センターを利用する患者からは驚きの声が上がった。内科に通院する阿見町の無職男性(77)は「医療費全額が自己負担になると家計がパンクする」と困惑し、糖尿病治療で入院している牛久市の主婦(60)は「3年前の不祥事の責任を、今の医師たちに負わせるのは納得できない」と話した。

 阿見町の天田富司男町長は「多くの町民が通う大事な病院。このままでは地域医療が崩壊する。取り消し期間を短くしてほしいと国にお願いしたい」と話した。

東京医大茨城医療センター不正請求:指定取り消し 「医療成り立たない」 県、処分までに対応検討 /茨城(2012年9月22日毎日新聞)

 県南地域の主要な医療20+件機関として多くの患者を受け入れている大学病院が、極めて異例の保険医療機関指定取り消し処分を受けた。今回処分を受けた東京医科大茨城医療センター(阿見町中央3)は、がんや肝炎の診療病院にも指定されている地域の拠点病院。保険診療ができなくなれば、患者が全額自己負担することになり、病院の存在意義はないも同然となる。県の森戸久雄保健福祉部次長は記者会見で「患者が必要な医療を受けられるよう全力を尽くす」と述べ、処分が実施される12月1日に間に合うよう対応策を早急に検討する姿勢を強調した。【酒井雅浩、鈴木敬子、杣谷健太】
(略)

保険医療機関取り消しへ 東京医大茨城(2012年9月22日朝日新聞)

 地域の中核病院で保険診療ができなくなる――。東京医科大茨城医療センター(阿見町)の保険医療機関の指定が、12月1日に取り消されることが21日発表された。「保険が使えなければもう来られない。路頭に迷うよ」と困惑する患者たち。県は「地域医療が途切れないよう全力を尽くす」と言うが、具体策は示されていない

 この日、処分をする側の厚生労働省関東信越厚生局と、される側の茨城医療センターの幹部らが、相次いで県庁で会見した。

 不正請求が明らかになったのは2009年。約3年後の取り消し処分決定について、厚生局は「入院患者が全県にわたり、資料も膨大。多くの人に聴取しなければならなかった」としたうえで、「故意による不正請求を重視した」と説明した。

 医療センターの松崎靖司病院長は「患者や家族、地域、関係者らに多大なるご迷惑をかけ、心よりおわび申し上げる」と陳謝した。

 患者らにはおわびの文書を院内に掲示して知らせるほか、問い合わせ対応に専念するスタッフ10人を配置したという。

 取り消し後、原則5年間は再指定できない。このままなら患者は12月1日から医療費を全額自己負担しなければならなくなる。

 医療センターは現在、外来患者が1日1千人、入院患者は1カ月でのべ1万1千人。救急車の受け入れは年3300台に上る。

 県の森戸久雄・保健福祉部次長は「具体的なことは現時点で何も言えないが、関係機関と相談しながら、センターの医療を維持できるよう最善の努力をする」と語った。

判っていて悪事を働いたことで当事者の側に同情の余地はないとは言え、実際問題として医師らスタッフはその気になればどこの病院にでも働き口はあるわけですから、病院への処分と言いつつ何も知らずにいた患者側だけが迷惑を被る形になるのは何とも釈然としません(まさか大学内に澱む○○職員を一掃するため、などという裏目的でもあったのなら別ですが…)。
とはいえ、いずれにしてもひとたび保険指定を外されると原則5年間は再指定されず、その間は保険診療が行えないわけですから、「センターの医療を維持できるよう最善の努力をする」と言われたところで具体的にどのような努力が出来るのかです。
特に大学病院ということになれば高度な医療を必要とする難症例が集まってくるはずなのですが、保険が使えないということは単に窓口での負担金額が数倍になるのみならず、高額医療費の上限も当てはまらなくなってくる訳ですから、下手をすると毎月数百万、数千万という単位での請求が届く患者さんも出てくるということですよね。
当然多くの患者さんはそんな医療についていけるはずもなく、単に大学病院の受け入れ能力が事実上消滅するのみならず多数の患者が逆紹介されてくることは必至で、地域の診療体制に絶対的な影響を与えずにはいられないだろうと予想される大変な事態なのですが、実際のところどういう不正をやったのかということをCBニュースから引用してみましょう。

東京医大茨城医療センター、指定取り消しへ- 保険医療機関、大学病院では異例 (2012年9月20日CBニュース)より抜粋

(略)
 問題になっているのは、08年4月から09年5月ごろにわたる診療報酬の不正請求。「医師事務作業補助体制加算」や「入院時医学管理加算」など3つの加算を、要件を満たさないのに請求したというもので、同センターでは同年7月、不正請求額を約1億1870万円と発表した。

 「医師事務作業補助体制加算」では、医師の指示で事務を行う職員は「専従」が算定要件だが、申請した7人はいずれも専従ではなかった。「入院時医学管理加算」については、治癒したかどうか分からない退院患者についても「治癒」と数え、算定要件である治癒患者の割合を大幅に水増ししていた。
(略)

大学病院の診療規模からすると約1年間で1億余という不正請求の金額事態は驚くほどのものでもないような気もしますが、記事にもあるように今回故意に不正請求をしたという事実を重視したようです。
時にこの不正請求による指定取り消しのニュースが流れてきますけれども、例えば同様に故意の不正によって今春指定取り消しとなった大阪の小規模病院のケースでは使っていない薬剤を請求した、高額な薬剤を使ったように見せかけたといった手口を使っていたということなんですが、その金額としては驚くことにわずか246万円だったと言うのですね。
無論、犯罪行為はやったかやらないかが重要で金額の大小は必ずしも重視すべきではないのかも知れませんが、こうして見ると従来の処分とバランスを取る形で周囲への影響には目をつぶってでも処分を下さざるを得ないというケースもあるいは多々あるのかも知れません。

ただ地域の中核病院が突然(実質的には、ですが)消えてしまったという現象面だけを見れば、例えば有名な銚子市立市民病院なども全く同様の状況であったとも言えますし、やや小ぶりながら岩槻脳神経外科病院の突然の閉鎖などもニュースになったことがあり、決して先行事例が存在しないというわけではありません。
少なくとも逆紹介の患者をどのようにさばくかといったことに関してはこれらの事例が参考になるはずですから、最高学府らしく過去の市中病院のケースよりもスマートにトラブルを解消していっていただけるものと期待しておいていいのでしょうか?
ちなみに一般的にはこうした指定取り消しの場合には経営母体を変えてしまうことで実質的な処分逃れをするというケースが多いようですが、今回大学側ではこのままの体制で行くつもりだと言っているようですから、こちらも今後どのような対応をしてくるつもりなのかには注目しておきたいですね。

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コメント

どうもよくわからないですね。
不正を覚悟の上でやったにしては自分から白状してる、ってことは内部捜査でもやってたってこと??
責任問題にもなりますからいったい誰が中心になってやっていたのか等々、きちんと調べて公表して欲しいですね。

投稿: ぽん太 | 2012年9月24日 (月) 09時57分

>いったい誰が中心になってやっていたのか等々、きちんと調べて公表して欲しいですね。

発見。
http://www.tokyo-med.ac.jp/news/news090914-1.pdf

投稿: JSJ | 2012年9月24日 (月) 11時58分

>JSJさん

さっそく資料ありがとうございます。
これを見ますと懲戒解雇になった松岡健前センター長がひたすら悪いということになりますね。
東京医大被害者遺族ネットさんでもさんざんな言われようです。
http://iryoujikonet.dtiblog.com/blog-category-0.html

しかし理事長が報告書にわざわざ

>なお、一部におきまして、内部通報者を、その報復として処分したとの趣旨の報道がありましたが、一切そのような事実はないことをお知らせいたします。

なんて書くくらいですから、逆にそういう風土であったということかと邪推したくなりますが…

投稿: 管理人nobu | 2012年9月24日 (月) 12時28分

トップにこういう人材を据えた弊害
大小の差はあれどこにでもある話なんじゃないかとも感じるが
独裁的強権は強力な指導力発揮と紙一重だけに難しいところもあるのかな

投稿: kan | 2012年9月24日 (月) 13時24分

処分した側に義があるともおもえない。
国民に面と向かって「ない袖は振れない」と政府が説明することを厭い、責任を転嫁するための「ルールの恣意的運用+見せしめつるしあげ」の表出でしょう。

介助保険制度について、夢から覚めて現実があからさまになったきっかけが、コムスンの摘発であったことを思い出します。

上に政策あれば、下に対策あり。


投稿: 感情的な医者 | 2012年9月29日 (土) 04時59分

この国の医療崩壊につながっている事例であると思うんです。
日本の医療制度を良い方向に改善していこうとしていると国が思っていることに大きな問題がある。
そこに関わる、官僚も代議士もみな自分のことしか考えていない。処分を下した、厚生局も自分の成績しか考えていない。
国は、今の医療の状態を良く把握していないため、こんな裁定をしたとしか思えない。
この裁定は茨城県民、茨城県政にとって決してプラスにはならないうえ、マイナスばかり大きく、あきれた裁定だと思っている。

投稿: | 2012年12月10日 (月) 06時20分

おー、検診で胃カメラ飲んだ結果が、なぜか治癒とういう理由がようわかった。

投稿: sironeko | 2013年1月11日 (金) 14時27分

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