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2012年8月16日 (木)

医学部地域枠 ますます締め付けは厳しく

最近は不景気かつ就職難ということで、単なるステータスのみならず食いっぱぐれがないという実利的な面からも医療職の人気が高まっているということです。
しかし親からすれば手堅い商売に見えても、当事者である学生達は案外冷静に情報を収集して進路を決めているのかなとも思える様子もあって、うまい話には裏があるという格言が生きているということなんでしょうかね?

医学部志望の高校生支援 /宮城(2012年8月3日読売新聞)

 県教委が、将来的に県内の地域医療に携わる医師を増やそうと、医学部を志す高校生向けの進学支援に取り組んでいる。県内では震災後、医師不足が深刻化しており、県医療整備課は「他県でも医師は不足しているため、県内で育成する必要がある」と対策の重要性を訴えている。
 県立高の1年生111人が7月30、31日の2日間、東北大医学部(仙台市青葉区)を訪れ、塩釜市内の病院に勤務する医師の講演を聞いたり、救命活動の実践や細胞の観察実験などを行ったりした。人形を使った救命実践では、慣れない手つきで自動体外式除細動器(AED)を使い、同大の医学部生の指導で心臓マッサージを体験した。
 県内の人口10万人あたりの医師数は2010年末現在、222・9人と、全国平均230・4人を下回った。特に登米圏内は101・2人と大幅に少ない。大学を卒業して臨床研修を受ける医師も今春は98人と、04年度の制度開始以来、初めて100人を割り込んだ。
 県教委は10年度から、医学部進学希望者向けに、医学生や現場の医師による講演会、受験に向けた学力向上合宿などを行っている。県教委高校教育課は「夢を共有する仲間を作ることも目的の一つ」という。
 県は、県内の指定病院に勤務することを条件に返還を免除する奨学金制度を設けている。気仙沼、栗原、登米、南三陸の4市町も同様の奨学金制度があり、医師確保に力を入れている。
 県内で唯一医学部を持つ東北大は、12年度の医学部の定員が125人と、4年間で25人増えた。ただ、東北大には全国から学生が集まるため、卒業後に県内に残らない学生も多く、県内の他大学にも医学部の新設が必要との声もある。
 今春、県内の高校生で医学部に現役合格した29人のうち、県の支援事業に参加した生徒は9人だった。現役合格者は事業開始前の09年度より7人増えており、同課は今後の成果に期待を寄せている。

学費援助 伸びぬ利用/三重(2012年8月8日朝日新聞)

■亀山市の看護師確保策

 亀山市は、市立医療センターで働いてもらう看護師の確保に向けて、看護師をめざす学生を対象に月額6万円の修学金支援を続けている。最長4年間で、同センターで働けば返済を免除されるが、1988年の創設当初からの利用者は延べ22人と伸び悩んでいる

 制度は、90年に開設したセンターの看護師を確保する目的で創設した。看護を学ぶ大学生、短大生、専門学校生が対象。これまでに支援を受けた22人のうち、同センターに就職したのは18人。残る4人は返済し、別の医療機関へ進んだ。また、18人のうち今もセンターに在籍しているのは5人にとどまる。センターの看護師は現在58人で人員不足が解消されないため、市は7月31日に発表した来年度の職員採用予定でも、看護師7人の採用を計画している。

 市は看護体制を充実させようと今年2月6~17日、20人の看護師を募集したが、応募はゼロ。昨年4月から修学金を月額3万円から6万円に倍増していただけに、厳しい結果だった。

 市人材育成室の山本伸治室長は「センターの看護師は待遇面で他市と見劣りしないと思うが、なぜ充足されないのか。原因を分析して対処しなければ」と話している。(佐野登)

まあしかし、逃げ出したり期間が終わればさっさと退職したりと定着率がこうまで低いという現実に対しては、理由も理解していなければ何一つ対策を講じている気配もなさそうですよねえ…
この学費を支援する代わりに一定期間指定された場所で働けと言う制度、ひと頃マスコミがさんざんバッシングしてきた看護師の御礼奉公制度と何が違うのかといつも思うのですけれども、一方は打破されるべき旧世紀の遺物扱いであるのに対して、こちらは時代の最先端を行く医療職確保対策だと言うのですからどうなっているんだと言う気がします。
いずれにしてもこのご時世に学ぶお金も出し資格を取らせてくれ就職先まで面倒を見てくれるとなればどんな桃源郷かと言う考え方もあっていいはずなんですが、実際には募集定員に達しないだとか、せっかく入学しても当初の話と違って残ってくれなかったという話がありふれているようで、学生も馬鹿ばかりではないということなんでしょうかね?
ただし何事も契約と言うものがあればそれに伴う義務もあるということで、楽が出来そうだからと一時の誘惑に駆られて安易に契約を結んでしまうと後々困ったことになるというのはここでも同じことのようです。

医学科出願要件、青森県内勤務を厳格化…弘大AO入試/青森(2012年8月14日読売新聞)

 地域医療の担い手を確保しようと弘前大学は、2013年度医学部医学科のAO入試の出願要件に、卒業後すぐに同大付属病院など青森県内で勤務することを盛り込むことを決めた。

 背景には、今春卒業した医学科の推薦入学者のうち2割が“県外流出”した問題がある。

 推薦入試を含め従来の出願要件は「卒業後は同大医学部などで勤務することを確約できる者」だったが、「卒業後直ちに同大医学部の臨床研修プログラムを行い、引き続き付属病院で勤務することを確約できる者」に変えた。

 同大医学科は2006年度、県内の医師不足解消につなげようと卒業後に県内での就業を約束する「県定着枠」の推薦入試を導入。その後、推薦入学をとりやめ、09年度には現在のAO入試を取り入れた。しかし、06年度に推薦入学し今春卒業した医学部生18人のうち、4人が同大ではなく県外大学の初期臨床研修を選択したという。

 4人が研修終了後、県内に帰ってくる可能性は残されているが、出願要件段階で卒業後の県内就業をより明確にすることで、歯止めとしたい考えだ。

 教育担当理事の中根明夫副学長は「入学後も、面談など様々な取り組みを検討している。地域医療を支える人材を育成したい」としている。問い合わせは、医学研究科学務グループ学務担当(0172・39・5204)。

いやしかし、日限が限られていなければ「いや、もう何十年か修行してから青森に戻るつもりなんですよ」といった言い訳が通用してしまうわけですから、これは契約の文言の隙間をついたうまいことを考えた人間がいたものだなと感心しますけれども、今度はこの要件の変更によって希望者数がどのように変化するかにも注目ですし、くれぐれもよく考えてから願書を出していただきたいと思いますね。
むろん県や大学と言えば法律などの専門家にもいくらでも伝手はあるでしょうから抜け道塞ぎなどお手の物なのでしょうが、基本的に21世紀にもなってお金で他人の人生を縛ることが倫理的に許されるのかという議論を抜きにして、単に需要があるからと話がどんどん進められていくのもどうなのかという疑問を感じています。
「そうは言ってもお金がなくて進学をあきらめた学生にとってもよい救済策じゃないか」という意見もあるでしょうが、もともと奨学金や授業料免除など勉学面で努力していれば相応の支援が得られるシステムがある上に自分で働いて稼ぐ道もあるわけですから、本当に努力しているのに経済面から断念せざるを得ないという人がどれくらいいるのかです(超高額なコストを要する私学などに行く人は別として)。
そう考えて見れば結局のところあくまで自治体など集める側の都合で設定された制度であるわけで、本当に他の制度よりもメリットがあるのかどうかをきちんと比較検討した上で選ばないと、単に進路指導担当者から「楽に医学部に入れる道があるよ~」などとそそのかされて願書を出してしまっては後で後悔する可能性も高くなるのは当然でしょう。

そして何よりこうした制度が今ひとつ機能していないという話を見るたびに感じるのですが、何故逃散紛いの逃避行が続出しているのかという検討が何もなくただ義務を強化することしか考えていないというのは、昨今大学病院での初期研修に人気がないことに対して「研修プログラムを変えてみました」などと的外れな対策を講じているのと同じくらいに現場の声に耳を傾けていない気配が濃厚ですよね。
そうした見ざる聞かざるな人々が采配を振るっている地域の医療機関がどのような労働環境にあるのか、もともと医療過疎であるからこそこうした制度を整備しているのだとすればスタートラインに立った時点でネガティブなバイアスがかかっていると思われるだけに、本来それを振り払うために人一倍世間の評判も気にしていてしかるべきだと思うのですがね。
ちなみに前出の御礼奉公に関してはある程度判例も集まっていまして、「一定期間の勤務をしなかった場合お金を返還せよ」という契約は無効ですが、「一定期間勤務をすれば返還義務を免除する」という契約はありというところまで確定しているそうですが、今後契約の当事者間でこのあたりの文言を巡っての争いが増えてくるのかも知れませんね。

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コメント

必要悪として一定数程度は残るんじゃないですか
いやなら拒否できるだけ研修や専門医で勤務先を縛るよりはまだしも良心的かも?

投稿: | 2012年8月16日 (木) 08時32分

そうなんです。
国がさらに強権的な政策を推進しているのでこっちはまだましに思えてしまうという。
全てに強制配置を徹底すれば待遇改善に頭や金を使う必要もなくなりますから楽でいいんですけどね。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月16日 (木) 09時51分

まともにやったらボーダーラインにも届かず特例でしか入学出来なかった連中がツケ払わされてるだけだろw

投稿: aaa | 2012年8月16日 (木) 11時07分

ドイツやイングランドのような医師強制配置システムは日本ではどうなんでしょうね?
三重とかは名古屋に何もかも吸収されて何もないし、弘前とか冬は豪雪で生活すら大変だし。
同じ仕事するなら便利な都会のほうがいいに決まってる。年をとればとるほどそう感じるわけで。

投稿: 元神経内科 | 2012年8月17日 (金) 16時48分

コンパクトシティ化して年寄り集めた方がよっぽど安上がりで早いと思う
若いのはどうせ車で隣町の病院まで行くんだし

投稿: | 2012年8月17日 (金) 19時21分

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