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2012年8月 4日 (土)

就職先としての医療業界

医療業界と言えば何となく司令塔役の医師を頂点としたヒエラルキーが形成されているように思えますが、各職種それぞれが独立した国家資格職であるわけですから当然ながら各々に独自の需給バランスがあるのは当然ですね。
最近は医師や看護師の不足が言われる機会が多くなりましたが、同じ職場で働く医療従事者同士と言っても職種によってこれだけの差がついてきているというのは驚きますよね。

「儲かる時代はとうに終わった」赤貧・歯科医の告白(2012年7月3日プレジデント)より抜粋

■コンビニの数より多い……

「投資に失敗したなどの理由ではなく、本業の赤字で夜逃げする歯科医が現れました。多くの歯科医院が内部留保を取り崩すジリ貧の状態です」

悲愴感を漂わせるのは、都内に歯科医院を開業したばかりの若手歯科医、山崎拓哉さん(仮名、33歳)だ。

「2009年に参加したお寿司チェーン『すしざんまい』での歯科医師の親睦会で、同業者は口々に『保険診療だけなら、1日30人の患者を治療しないと赤字』と話していました。実際に、きちんと治療しようと思えば、一人の歯科医師では1日7~8人が限界です。このままでは経営が成り立ちません」

歯科医師を取り巻く現状は厳しい。1990年におよそ7万4000人だった歯科医師数は、2006年には9万7000人に増加。それも都会に集中し、「コンビニより歯科医院が多い」と言われるほどになった。

一方、健康保険の対象となる治療に対して歯科医院に支払われる診療報酬のうち73項目の価格が、この20年間据え置きされている。歯科医療費全体も、この10年間停滞中。その間も歯科医師数は増加しているため、一人当たりの収入はドンドン目減りした。歯科医療白書によれば、歯科医の5人に1人は年収300万円以下だという。

山崎さんも、その5人に1人の“負け組”だ。私立歯科大を卒業後、都心の大手歯科医院に勤務中、周囲から結婚を勧められ、お見合いパーティーで知り合った女性との結婚をきっかけに開業することになった。実情を知らない周囲からは「うらやましい」と言われることも多いが、薄給だった勤務医時代よりも最近のほうが経済的に追い込まれているという。

「恥ずかしい話ですが、この年まで女性と付き合ったことがなく、初めての女性に舞いあがって、結婚を急いでしまった。妻や、妻の両親は歯医者が金持ちだと誤解していて、『すぐ開業したほうがいい(=もっと儲けろ!)』と迫られました。そのときは妻のため、と思って一念発起したのですが、診療機器のリース料と家賃、妻の実家に強いられて建てた自宅の住宅ローンの支払いに追われています。義父によると『開業して儲けたお金で遊びに行かないようにローンを組ませた』とのことですが、女性と遊んだりする経済的余裕などありませんよ」

■昔は歯医者にマルサが来た

歯科医院の経営状態がよかったのは、80年代までだという。日本に歯科医師が少なかった70年ごろ、歯科医療の画期的な技術革新が起こり、いち早く新技術を身に付けた歯科医のもとに多くの患者が集まった。さらに、その治療が保険適用の診療になるまでのタイムラグで、多くの患者が良質な歯科医療を受けるために、自費での自由診療による治療を選択し、歯科医院は大きな利益を上げることができたのだ。
(略)
そんな歯科医の黄金時代は、保険制度の変化とともに終焉。先述のベテラン歯科医は「81年、健康保険の1割の自己負担が導入されたことが、終わりの始まりでしょう。それまで保険治療はタダでしたから、患者は1割でも非常に大きな負担に感じたと思います。それが、97年には2割、今では3割負担です。病気になれば病院に行こうと思うでしょうが、歯が少し痛むくらいでは歯医者には行かなくなってしまった。目新しい技術革新もないまま、バブルが崩壊してずっと不景気。日歯連による自民党橋本派への巨額の不正献金事件が発覚し、社会的地位も著しく下がってしまった」と説明する。

健康保険法の改正の一方で、国は医師および歯科医師を増加させる政策を実施した。医大、歯科大の新設ラッシュが起こり、大幅に定員増。医師も、歯科医も急激に増加した。特に歯科医は「儲かる」イメージが強い割に、医学部よりは偏差値も低く、希望者が殺到することになった。

「僕もだまされたクチですね」と山崎さん。

僕が受験したころにはもう、歯科医が儲かる時代は終わっていました。学生時代は忙しくてそんなことも知らず、勤務医のころも、毎日の仕事に追われて、世の中が変わったことに気がつかなかった。開業すれば、先輩の先生方みたいに銀座で豪遊できると信じきっていました
(略)
先月、山崎さんは妻の誕生日に、苦しい家計の中から、3万円の宝飾品を贈った。

「値段をネットで調べたのでしょう。次の日から不機嫌に。『去年までのプレゼントは5万円だった。あんたのせいで私は不幸よ!』って。そのとき頭をよぎったのは、はじめから1万円のものをあげていたら3万円で喜んだのではと考えました。地獄です」

薬学部生は空前の売り手市場(2012年4月26日読売新聞)

 大学生が厳しい就職環境にあえぐ中、薬学部生が空前の売り手市場となっている。

 6年制移行のために2010年、11年に卒業生が途絶え、人材供給が止まっていたためだ。今春卒業した6年制の1期生には求人が殺到。大学からは「特需はいつまで?」といぶかる声も上がるが、ドラッグストア業界や調剤薬局の採用熱はまだ高い

 日本大薬学部(千葉県船橋市)では今春の卒業生の就職率はほぼ100%。6年制移行前は8、9割だったが、今年は4月に入っても、沖縄県など人手不足の地方の病院などから求人が来るという。担当者は「2年間のブランクのためで、特需のようなもの」と語る。

 他大学も事情は同様。横浜薬科大(横浜市)の担当者は「就職先に人気があるのは、病院などだが、規模を拡大しているドラッグストアの求人が多く、薬剤師免許を取って職に就けない学生はいない」と話す。

 城西国際大薬学部(千葉県東金市)でも、3月に就職活動を始めた学生が、4月から職に就けた。教授の一人は「世間の就職情勢からすれば別世界」と驚く。

 今月、大手ドラッグストアの面接を受けた昭和薬科大の学生(23)は「4月前で5年生なのに、就職先が事実上決まった薬学部生もいる。人気のある製薬会社は別にしても、就職試験で落ちるのがおかしいぐらい」と話す。

 大学の薬学部は06年入学生から6年制になった。このため、薬剤師国家試験合格者は4年制最後の入学生の大半が卒業した09年に1万1301人を数えたが、10年が3787人、11年が1455人と激減した。

まあしかし、何の商売をしていてもたちの悪いところに引っかかる人はいるんでしょうが、それにしてもねえ…
ちなみに医学部卒業生は不況でも安定して仕事があると近年さらに人気が高まっていると言い、とりあえず偏差値さえ高ければ医学部にという傾向が高まっているようですが、一昔前に医療事故報道が相次いでいた頃のように「本当に熱意ある人に医師になって欲しい」なんて贅沢を言っていられた時代が今となっては懐かしく思い出されますね。
そうした余談はともかくとして、やはり同じ世界で一緒に働いている間柄でもこれだけ勝ち組、負け組的な差がついてくるとなればどうしたっておもしろくないのが人間と言うものですが、さすがに子供の尻を叩くにしても今から歯学部を目指すくらいならもうちょっと頑張って医学部に行った方が、と考えてしまうのも当然の親心かも知れません。
先日は医療従事者の間で「子供を医療従事者にしたいか?」という調査が行われているのですが、見ていますと職種間での認識の差異なども垣間見えてなかなかおもしろい結果になったようなんですね。

同じ医療従事者でも職業観大違い、「わが子を医師にしたい」看護師33%、薬剤師60%(2012年7月25日産経ニュース)
より抜粋

株式会社QLife(キューライフ/本社:東京都世田谷区、代表取締役:山内善行)と株式会社エス・エム・エス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:諸藤周平)は、「医師」「看護師」「薬剤師」「患者」の4者に対して、「わが子を医療従事者にしたいか」を調査した結果を発表した。

それによると、同じ医療従事者でも属性によって職業観が大きく異なることがわかった。例えば、「わが子を医師にしたい」率は医師、薬剤師は高いが、看護師や患者からの人気は必ずしも高くない。また看護師、患者は薬剤師志向が強いが当の薬剤師本人や医師はそうでもない。
(略)

【調査結果概要】

■「医師」の70%以上が自分の子どもが医師を目指すことに対し「とてもなって欲しい」「なって欲しい」と回答。「やりがいのある仕事だから」「人のためになる職業だから」というコメントが多く見られた。「薬剤師」にも医師志向は強い。一方、「看護師」「患者」は過半数が「医師にあまりなってほしくない」と回答。看護師からは「勤務が苛酷」といった労働環境面の懸念が多く見られたほか、患者からは「医師になるためのハードルが高い」「学費が高そう」といったコメントが見られた。

■看護師については、「医師」「看護師」「薬剤師」「患者」のすべてにおいて、過半数が「あまりなって欲しくない」「決してなって欲しくない」と回答。看護師自身も約6割が自身の子どもが看護師を目指すことに消極的だった。「収入が安定している」と評価する声もある一方、勤務の苛酷さや、それに対し「報われない」といった声が多く寄せられた

■薬剤師については、「看護師」「患者」の60%以上が「なって欲しい」と回答。「手に職があるので、安定している」「夜勤などが無く、健康的に働ける」といった声が多く見られた。ところが薬剤師自身は対照的に、自身の子どもが薬剤師を目指すことに消極的。薬学部が6年制になったことを指摘している声が多く「同じ6年大学に行かせるなら、医師を目指したほうがいい」といった意見も見られた。
(略)

おもしろいのはやはり子供の仕事を考えるとき誰しもリスクとリターンの兼ね合いということを考えるかと思うのですが、全般的には医師=ハイリスクハイリターン、看護師=ハイリスクローリターン、薬剤師=ローリスクハイリターンというおおまかな認識がありそうに思える中で、実際の職務上の付き合いの濃淡によってかなりな認識の差異がありそうに思えることでしょうか。
例えば医師と薬剤師との関係というのはあまり濃密なものではなく、基本的に処方箋という文字情報を介しての間接的な付き合いであるからかややイメージ先行なのかなという印象もあるのですが、おもしろいのは医師は子供にも医師になって欲しいと思っているのに対して周囲はやや及び腰である一方、薬剤師ではその逆の傾向があるということでしょうか。
一方、医師と看護師の場合は経験的にと言うことなのか互いの勤務状況についてかなり悲観的な評価をしているように思えますが、このあたりは近年の報道などにもよってか他職種や患者にも共有されつつある一方、そうしたリスクを踏まえた上でリターンをどう評価するかという点が医師自身は多くが子供に医師になって欲しいと考えている率が意外に高いという点に現れているのかも知れません。
ただ医師のコメントを見ていて思いますのは、今のご時世に「やりがい」だとか「人のためになる」などと言った(言葉は悪いですが)やや浮世離れした理由で子供の進路を考えていられる医師と言う仕事は相応に報われている人が多いということなんでしょうか、あるいはストレスに対する認容度の差というものも反映されているのかも知れませんが少し異彩を放っているのも確かですよね。

こうした調査を見ると逆説的にですが、これまで医師と言う人種はやりがいだの人のためだのと言った目に見えにくいものに大きな価値観を感じていたからこそ激務の中でも続けられていたということであれば、結果として国民世論の求めるところの「本当に熱意ある人」がやっていたとも言えるんじゃないかと言う気がします。
ただ今の親世代と言えばまだ医療が牧歌的であった時代を知っている人々でしょうから、ごく当たり前に職場環境などを比較して就職先を決めるという今の時代の医師達であればまた違った考え方もあるでしょうし、今後進学してくる子供達に対して「やりがいがある仕事だから激務でも我慢して働け」という言葉がどれほどの訴求力を持つかは未知数ですよね。
医師自身も安定的な後継者の確保を図るためには「過酷な医療現場は根性と体力のある奴隷を必要としている!」なんて身も蓋もないアピールばかりを続けていても仕方がないことで、むしろ遠回りなようでも研究職など避難先もそれなりにあることを周知し、せっかくの若手が燃え尽きてしまうことがないよう配慮することがあっていいかなと思います。
いずれにしても冒頭の歯科の例にも見られるように「おいしい話につられて来てみたら実際は全く違っていた」なんてことはどの業界でもままあることで、特に国家資格職が必須の医療業界では学生さん達も国の方針も考慮に入れながらの進路選択が必要になってくると頭に入れておいた方がよさそうですよね。

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コメント

私も子供には医師になってほしいですが理由は、「うまく立ち回ればオレみたく遊んで暮らせるから…」w
子供達はわかってくれませんww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年8月 4日 (土) 09時27分

70%以上って意外に高いかなって感じでしょうか。
医師免許一つ持っていればとりあえず食っていけるのは強みですしね。
同期にも趣味で食っていくほどの腕でもないからとりあえず医師になったって奴がいました。
意外にそういう奴の方がプロフェッショナルに徹していい仕事してたりするんですよね。

投稿: ぽん太 | 2012年8月 4日 (土) 09時53分

むしろ勤務医の待遇に関しては最近ようやく改善してきているという話もあります。
バブルも賃金上昇も全く無縁に30年間据え置きでしたから今さらとも言いますが。
一方で開業医はどうなんでしょう?零細老朽クリは今さら継承してもうまみがなさそうですが。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月 4日 (土) 10時12分

薬剤師の医師志向ワロスw
処方箋出すだけの楽なお仕事ですって考えてんだろなw

投稿: aaa | 2012年8月 4日 (土) 12時28分

>70%以上って意外に高いかなって感じでしょうか。

ガラにもなく真面目に考察を試みるに、医師は、医師以外の職業の事をまったく知らない人が多いからかなあ、と。私自身、親兄弟どころか一族郎党ほぼ医師なんでw例えば会社員が具体的に何をしているのか正直さっぱりイメージ出来ません。<まあ知りたいとも思ってませんがwだって関係ないしww

となると、メリットもデメリットも充分把握していて子弟に自信を持って薦められる職業は医師一択って事にまあなりますやね。

>一方で開業医はどうなんでしょう?零細老朽クリは今さら継承してもうまみがなさそうですが。

まるっきりの新規開業よりはマシかとw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年8月 4日 (土) 12時33分

baseball

投稿: 沖縄看護師求人 | 2012年8月11日 (土) 09時43分

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