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2012年8月28日 (火)

続く福島からの医師流出

今日の本題に入る前に、ちょうど今日本でU-20の女子ワールドカップ(昔で言うところのワールドユース)が開催されていますけれども、この試合場においてサポーター有志の方々がこんな活動をしています。

U20女子W杯盛り上げ隊 出場各国の言葉で「支援ありがとう」(2012年8月26日東京新聞)

 東日本大震災で世界中から受けた支援のお礼を日本人として伝えたい-。インターネットの交流サイト「フェイスブック」でつながる有志が、U-20(二十歳以下)女子ワールドカップ(W杯)の試合会場や練習場で感謝の横断幕を掲げている。

 東京など国内五都市で開催中のW杯。全国の約七百人からなる「U-20女子ワールドカップ盛り上げ隊」は出場チームが各都市を訪れるたびに、その国の言語で「たくさんの支援ありがとう」と掲げる。その様子が国際サッカー連盟のサイトで紹介されたり、チームとの交流にも発展。二十六日に国立競技場(東京都新宿区)に登場する韓国チームには握手のイラスト入り横断幕を準備したという。

 有志は試合中、相手国への声援も送って会場を盛り上げる。「W杯の会場が静まり返っていたらつまらない。みんなで盛り上がろう」とメンバーの板谷浩男さん(33)=東京都国分寺市=は期待する。

この活動、せっかく日本で開催される大会なのだから是非サポーターの力で試合を盛り上げようと自主的に企画されたもので、女子しかもユースの試合ということでともすれば注目度が低くなりがちな今回の大会を大いに盛り上げるとともに、諸外国からも非常に好印象で迎えられているようです。
一例として先日の日本vsスイス戦ではホームの日本代表が4-0で快勝したわけですが、試合後に負けたスイス代表に対して観客席から健闘を称える歓声が挙がり、アウェーチームの選手と観客とが握手をしたりユニフォームを交換するという非常に珍しい光景がありました。
スイス代表とすれば試合には負けるわ、決勝トーナメントに進出できずに敗退するわで試合後はおもしろくない気持ちになっていても全くおかしくない状況だったのですが、自らも観客とのユニフォーム交換に応じたスイス代表監督は日本代表のユニフォーム(レプリカですが)を着たまま会見場に現れ、こう語ったそうです。

「試合後、日本のファンの方からユニホーム交換を申し込まれて、喜んで受け入れた。サイズはちょっと小さいのだけれど(笑)、ありがたく受け取ったよ。今日の試合後も、日本の観客から、たくさんの拍手と激励をいただいた。私は5歳からサッカーを始め、37年間サッカーに携わってきたが、今回の日本での経験が最も感動的で素晴らしい瞬間だった。FIFA(国際サッカー連盟)、そして日本全国の方々にお礼を申し上げたい」

こうした話を聞くと今を去ること10年前の2002年W杯をどうしても思い出すのですが、決勝トーナメント初戦で日本代表がおしくもトルコ代表に敗れた後、試合場を一周する両チームの選手に満員の観客が分け隔てなく万雷の拍手を送っていた光景はやはり長年サッカーに携わってきた諸外国の人々に強い印象を与えたと言います。
決勝トーナメントに向けて無事1位通過を果たしたU-20女子代表は30日には準々決勝でお隣韓国と対戦するということで、今度は何しろゴールデンタイムでの放送もありますから今まで以上に注目を集めることになると思いますけれども、会場に足を運ぶサポーターの方々にも選手達への応援のみならずホスト国としての責任と誇りを持って試合を盛り上げていただきたいものだと思いますね。
さて、余談はそれくらいにしておくとして、東日本大震災と何より原発事故の影響もあって人口流出が続いている福島県から、予想通り医師の流出が留まるところを知らないというニュースが届いています。

医師流出止まらず /福島(2012年8月25日朝日新聞)

 ●県中地域で深刻化

 原発事故の影響による県内の医師数減少に歯止めがかかっていない。2024人いた病院の常勤医は8月現在で79人減少し、特に県中地域では医師の流出が深刻化している。救急医療への影響も懸念され、県外に流出した医師やその家族に対する安心確保策が急務となっている。

 県内の医療関係者が参加して23日に開かれた県地域医療対策協議会で、県が明らかにした。県の調査によると、8月1日時点で県内の病院に勤務する常勤医数は1945人で、原発事故前の2024人から79人減った。原発事故前と比較した減少数は、昨年8月時点が46人の減少、昨年12月時点が71人の減少と拡大。今年4月は64人減と改善の兆しが見えたが、8月にはさらに15人が減少した。

 地域別にみると、減少数が最も多いのは相双地区の46人だが、大半が避難区域で休止中の病院に勤務していた双葉郡の医師。相馬やいわきの医師数はほぼ震災前まで回復したという。一方、県中地域では31人の減少と医師不足が深刻化している。この日の協議会では「診療科によっては今にも崩壊しそうな病院がある」などの訴えが相次いだ。

 県は昨年度、被災した医療関係者を雇用する病院への人件費補助などに3億1千万円を支出。県内病院への就職に結びつけるドクターバンク事業で4人が就業するなど対策に懸命だが、震災前の水準に届いていない。県病院協会の前原和平会長は「医師の家族の安心につながる対策や、復興への意欲を持つ医学生の育成に取り組むことが重要」と話した

原発事故前と比べて約4%の減少というのは意外と少ないと見るべきなのか微妙な数字なのですが、例えば福島県全体での人口は2010年の203万人から今年8月の時点で196万人までやはり4%弱ほど減少しているということですから、特に医師だけが流出超過になっているというわけでもないようですね。
福島と言えば放射線ということで、ちょうど先日は福島県内の小児を対象とした甲状腺検査で36%にしこりが見つかったというニュースが話題になっていましたが、何しろこれまでこうした小児を対象とした大規模データが存在しないものですから多いのか少ないのかを判断する比較対象もなく、政府も取り急ぎ全国他地域で同様の検査を行って対照群とすることに決めたということです。
いずれにしても放射線障害がどの程度現れるものなのかということは長期的に見ていかないことには何とも言えませんが、専門家の方々からも特に放射線感受性の高い若年世代は無理に福島に住むことはないのでは…という声もあるように、そもそも今まで通りの生活を再建することが絶対の正義なのかという点からもう一度考え直してみる必要はあるでしょう。
もともと同県では10年ほど前からすでに人口減少が始まっていて、とある試算では震災後30年で県人口は半減すると言いますが、同時に仮に震災被害がなかったとしても人口は2/3にまで減っていただろうと言うのですから、いずれにしても医療に限らず社会資本のあらゆる面において人口の大幅な減少を大前提にした再配分が必要になることは確実であるはずなのです。

そもそもこうした課題は震災がなくとも東北諸県にとっては以前から死活的と言うべき問題になっていて、同じく津波被害を被った岩手県などでは「このままでは医療がもたない」と知事が議会で土下座をしてまで県立病院再編を推し進めてきたことは記憶に新しいところですが、ひるがえって福島はそうした身を切るような努力をしてきたのかということです。
福島における医療と言えば、かの大野病院事件なども担当医にミスがあったかのような調査報告書に福島県立医大産科教授がおかしいと異議を唱えたところ「こう書かないと賠償金が出ないから」と県当局が押し切ったのがあの騒動の発端だとされ、また「医師が患者を置き去りにして逃げた!」と散々バッシングされた双葉病院にしても県当局が誤情報に基づいた発表を行ったからだと言うことが判明しています。
医師に対してそんな態度をとり続けてきた福島が震災後には18歳以下の医療費は全て無料にしろ(さすがにこれは国にも断られたそうですが)だとか、医師が来ないから国が送り込んでくれないと困るなどと言い出したところで「よし!困っている福島のためにひと肌脱いでやろう!」と考える医師がいるものかどうか、むしろ「福島だけは死んでも嫌!」と言われかねないというものではないでしょうか?
他人にあそこならちょっと無理してでも手助けしたい、力になりたいと思わせるものがあるかどうか、医師が逃げていく、全然福島には来てくれないと文句ばかりいっている前に、まずは何が相手の心に届くのかというホスト役としての心構えが問われているんじゃないかという気がしますね。

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コメント

福島ってwそれだけはないわww

投稿: | 2012年8月28日 (火) 08時47分

他ならぬ聖地福島で原発事故という偶然がなければもう少し違っていたかも。
ところで日韓戦でハデな事しようって呼びかけがされてるようですけど…

投稿: ぽん太 | 2012年8月28日 (火) 10時00分

>日韓戦でハデな事しようって呼びかけがされてる

誰それの馬鹿ぶりが気に入らないから俺達も同じくらい馬鹿な事しようぜ!って方々が世の中いらっしゃるわけですよ。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月28日 (火) 10時46分

いつも勉強させてもらってます。
暴走するサポーターもなんですが、視聴率いいらしいのでオリンピックみたいにマスコミに利用されないか心配で。


テレビにいじられる五輪選手の姿 もう見たくないと女性作家
http://www.news-postseven.com/archives/20120825_139083.html

投稿: アテナ | 2012年8月28日 (火) 14時25分

何か事があればすべて医師に責任丸投げの県の体質+チェルノブイリを超える原発事故の深刻極まりない放射能汚染。
よほどのマゾヒストでない限りここでは働きたいと思わないでしょうな。
今後福島医大は入学者激減しそうですね。

投稿: 元神経内科 | 2012年8月29日 (水) 14時20分

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