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2012年8月29日 (水)

事件は診察室の中だけで起こってるんじゃない

今どきそれはちょっとどうなのよ?と思ってしまう事件があったようです。

暴力団関係者と偽り女性が医師恐喝 1千万円脅し取った容疑/茨城(2012年8月27日産経新聞)

 茨城県警石岡署は27日、男性開業医から1千万円を脅し取ったとして、恐喝の疑いで同県かすみがうら市宍倉、無職、橘和子容疑者(62)を逮捕した。

 逮捕容疑は2005年10月、自らを暴力団関係者と偽り、同居の男性=当時(53)=を診療していた同県石岡市の医師(50)に「病気が悪くなったのは治療ミス。家族に危害を加えるのは簡単だ」などと言い、1千万円を脅し取った疑い。橘容疑者は「お金はもらったが脅していない」と容疑を否認している。

 石岡署によると、同居の男性は06年に病死した。

警察が動いたくらいですから通報はしているんでしょうけれども、何故1000万を払ってから通報したのか、そして何故7年もたってから警察沙汰になったのか、色々と物語があったんだろうなと想像が膨らんでしまいますね。
昨今では暴対法なども厳しくなってきていて、こういうストレートな要求はむしろ珍しくなっていますけれども、具体的なことは言わずに「謝罪が足りない」「誠意を見せろ」などと繰り返す手合いは未だに結構いるようです。
さらにはどういうつもりなのか何らの要求もなくひたすら迷惑行為だけを繰り返す方々もいて、このあたりどうも最近流行りのステマなどと同じような構図も見られるのですが、いずれにせよ特に零細クリニックなどではクレーマーに対して頭を悩ませている先生方も多いのではないでしょうか。
大阪で医療機関のトラブル相談に乗っている尾内康彦氏は「「トラブルはあってはならないことだ」「患者とトラブルを起こすのは職員の対応に至らない部分があるから…」。組織にこのような誤った考えがまかり通っていると、初期対応がおろそかになり、患者トラブルの解決まで時間がかかったり、こじれたりしやすい」と指摘し、「起きたこと」ではなく「解決しないこと」が問題だとしてこういう実例を紹介しています。

院長の誤解がハードクレーマーをのさばらせる(2012年8月27日日経メディカル)より抜粋

(略)
【ケーススタディー】
何年もクリニックの悪口を言い続ける女性患者

「本当にどうしたらいいのか。主人も最近は体調を崩してしまっているんです。その女性患者はここ何年も、待っている間に受付の職員や、ほかの患者さんにずっとクリニックの悪口を言い続けていて…。もう来てほしくないのに、今でも毎日のようにやって来るんです」

 相談を寄せてきたのは、大阪府南部にあるGクリニックの院長夫人。クリニックの事務長も兼任しているとのことだった。落ち着いた感じの声色であったものの、言葉の端々からは、精神的に相当まいっている様子が伝わってきた。何とその患者の問題行動は、4~5年も続いているのだという。早速、詳しく話を聞いてみることにした。

 患者のE子は40代の前半。夫も子どももいるそうで、開業1年後ぐらいから、Gクリニックにかかるようになった。
「最初の頃、E子さんとの間に何かトラブルはありませんでしたか」
 私はまず、相手が嫌がらせをするようになった原因に心当たりがないか尋ねてみた。だが、夫人の答えは「ノー」。診療所側に思い当たる理由は何もないとのことだった。
(略)
 ただ、話を聞く限り、接遇をおろそかにしているわけではないことも分かった。何より、「あそこの診療所は対応がいい」という評判を聞きつけ、やって来る患者が多いというのが、その証しといえる。職員の態度が本当に悪いのならいざ知らず、どうもそうではない。こうなると、残る可能性はただ1つ。迷惑行為を意図的に繰り返す、単なる“困った患者”だということ。

どの診療所でも待合で悪口を言いふらすE子

 この読みに従って、さらに夫人に質問を続けた。
「E子さんが通院している診療所は、ほかにもありますか?」
今はうちだけのようです。少し前に近所のドクター何人かに聞いてみたのですが、E子さんのことを知っていました。どうも、どの診療所でも、同じように待合で悪口を言いふらしていたようです。よそでは職員が注意したら来院しなくなったようですが、うちでは邪険に扱うのもどうかと思って……」

 この答えにようやく私は合点がいった。やはりE子はいわゆる世間でいうところの「ハードクレーマー」とみていい。診療所にかかっては、ささいなことに文句をつけ、注意されたら近所にあるほかの診療所を新たに受診して、同じ行為を繰り返す。運悪くターゲットにされてしまったのがGクリニックだった、というのが恐らく真相だろう。

 一方、Gクリニックが、悪口を言い続ける患者を長年にわたって放置してきたのも問題だ。そのことを夫人に問うと「家も近くですし、何か言って診療拒否と騒がれても困るので…」との答えが返ってきた。

 患者を不快にさせない接遇を心がけるのはいい。しかし、患者の要望を何でもかんでも聞く必要はない。そうした過剰な接遇を患者が「当然のこと」と思うようになると、少しでも事務的な扱いをされた時、逆にキレやすくなる。E子は、「Gクリニックは患者に優しい医療機関だから、診療拒否などできるわけない」と足元を見透かしていたのに対し、クリニック側はすっかり臆病になっていた。
(略)

このケースに対してある程度分析が出来たところで尾内氏はどう助言したかと言えば、1)最寄りの警察署に被害届を出す、2)警察官に巡回してもらう、の2点を指示、実際にその通りに行ってみたところ警察の方でも問題のクレーマーから直接事情聴取を行ってくれたりした結果、以後同クリニックを訪れることはなくなったと言います。
昔から警察には民事不介入の原則がありますが、最近では医療機関のモンスター問題に警察OBを雇ったり警察が対応を指導しに来院するなど交流が広がっている、そしてストーカー被害なども社会問題化しこうした相手に対して警察は積極的に動くべきだと言う世論も盛り上がっているからでしょうか、本件でも相談してみれば思いがけずトントン拍子に進んだということのようですね。
ただ尾内氏の分析を見ても判る通り、当該クレーマーは近隣医療機関をあちこちさすらった挙げ句このクリニックが一番の狙い目であると確信し居座っていた訳ですから、やはりハードクレーマーにそうさせるだけの居心地の良さがあったと言うことでしょう。

問題患者に対して問題があると認識していたにも関わらず、言ってみれば何ら積極的な対応をすることもなく漫然と長期間放置していたことが一番よくなかったということは明らかですが、他院では早期に対応した結果職員が注意した程度で問題が解決していることに比べて、こちらは警察のご厄介になるまでこじれてしまったということはお互いにとっての不利益と言うしかないでしょうね。
しばしばこうした問題患者が次々と集まってくる施設というものは知られていて、しかも彼ら問題患者同士であそこは狙い目だと情報を共有しているという場合もあるようなのですが、やはり初期対応を誤り「このくらいなら我慢すればいいことだ」と見過ごしていると結局後で何倍にもなってツケを支払う羽目になります。
特に問題顧客の情報共有、拾い上げの重要性は尾内氏も強調していることですが、多くのクレーマーは必ずしも全ての相手に同じように問題ある態度を取る訳ではなく、特にこうしたクリニックなどでは医師である院長に対しては善良な患者らしい態度を装っているケースもままある訳ですから、今回のようにたまたま院長夫人が事務方も兼任していたということがなければ問題そのものにトップが気付かないこともあり得るでしょう。
大きな組織で誰も責任を持って問題解決に当たらず放置されているケースももちろん問題なのですが、こうした小さな組織においても平素から職員相互の風通しを良くしておかないと、診察室の中のことにだけしか目が行っていないトップに対しては部下達も給料分以上の忠誠心を発揮しようという気にはならないでしょうね。

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コメント

事務方がしっかりしてるかどうかでストレスもぜんぜん違いますからね
悪い輩になると話をこじらせてからこっちに丸投げしてきやがるし

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年8月29日 (水) 10時19分

こういう金って医賠責で出るんだろうか?
出ないんだったら裁判にしたほうが安上がりでは

投稿: 鉄也 | 2012年8月29日 (水) 11時42分

当事者同士で勝手に決めたら普通保険は出ないのでは。
談合で不正し放題になります。

投稿: ぽん太 | 2012年8月29日 (水) 15時59分

書いていて思ったのですが、問題患者の情報共有はすでにちゃんと行われつつあるのですから、うまくいった対処法もついでに共有できればいいでしょうにね。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月30日 (木) 10時21分

警察OBを雇うのは、暴力団に守ってもらうのと発想がほとんど変わらないような気がして、乗り気になれない・・・

投稿: クマ | 2012年8月30日 (木) 21時22分

そこまで言うw

投稿: | 2012年8月31日 (金) 08時34分

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