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2012年8月 1日 (水)

いよいよ待ったなしの消費税損税問題 その抵抗勢力とは

政府が改めて「日本成長戦略」なるものを公表し、「環境、医療・介護、農林漁業などの成長分野で、中小企業の活力向上や規制緩和などを通じて100兆円超の新市場を創出し、480万人以上の雇用を生み出す」と言っているのですが、いずれにしても今までの重厚長大型産業重視からの方針転換は必要な時期だとは思います。
その意味では大方針としてはまあそれはそれでありなのかなと思うのですが、正直報道だけをみていますと単に先の「新成長戦略」の焼き直しに留まっている印象も強く、そんなことよりも実際に何が出来るのか、出来ることなら何故すぐに取りかからないのかと言いたい人々も多いんじゃないでしょうか。
特にマスコミ諸社も挙げての増税増税という大合唱の中ですでに既定路線と化しつつあるのが消費税増税問題ですが、増税自体の是非はともかくとして医療をそんなに重視するというのであれば真っ先に解消してもらいたいと多くの関係者が願っているのが消費税損税問題でしょう。

医療機関の消費税、「損金解消」を 「払いっぱなし」もう限界(2012年7月29日J-CASTニュース)

 病院や診療所が多額の消費税に苦しんでおり、訴訟も起きていることは、ほとんどの国民に知られていない。神奈川県保険医協会は会員 (医師) だけでなく患者にも関心を持ってほしいと待合室に張るポスターを配付したりしている。2012年 7月24日には、訴訟の原告を招いての講演会を開催した。

大病院では経営圧迫要因に

   講演したのは兵庫県民間病院協会副会長でもある吉田静雄・尼崎中央病院理事長。事業者は売り上げで預かった消費税から仕入れで払った消費税の差額を税務署に納める。ところが医療費は非課税のため、患者から消費税を取ることができず、医薬品や医療機器、材料、備品購入時や建設時などかかる消費税の多くが払いっ放しになっている。また、医療費は公定価格のため、その分の値上げもできず、結局は医療機関の損金になっている。

   そこで尼崎中央病院など兵庫県協会の4病院は2010年 9月、消費税は憲法の平等原則や財産権などの侵害にあたるとし、国に払いずみの消費税の一部(各病院1000万円)を払えとの訴訟を起こした。その一審判決が今年10月16日に予定されている。

   吉田さんによると、公判で国は「 3%導入時の1989年に12項目、 5%に上げた1997年に24項目の診療報酬で消費税分を補填した」「多少の負担は厚生労働省の裁量権の範囲」などと説明している。

   しかし、病院ごとで違う消費税をわずかな項目で解消できるわけはなく、現に大学病院や大病院では年に億円単位の損金が出ており、経営を圧迫している、との調査がいくつも出ている。外国でも非課税の国はあるが、ほとんどが公立病院だったり、特別な制度で対応したりしている。

   吉田さんは、同じく消費税が取れない輸出業者には払い戻しがあるように、国は医療機関にも払い戻せる制度 (仕入税額控除) を作るべきで、判決のいかんにかかわらず医療機関が団結して要求していくように訴えた。

医療機関の消費税問題解消へ、医師会と連携- 日病・堺会長(2012年7月30日CBニュース)

 日本病院会(日病)の堺常雄会長は30日の定例記者会見で、「特に消費税問題については、病院団体だけでなく、医師会との連携が非常に重要だ」と述べ、医療界全体が一つになり、消費税率引き上げ時の医療機関の負担解消に取り組んでいくべきだと訴えた。

 医療機関の社会保険診療には、原則として課税が認められていない。このため、医薬品の仕入れなどに掛かる消費税が、そのまま医療機関の負担になっている
 政府は、消費税率(現在5%)を段階的に10%まで引き上げる法案を国会に提出。引き上げによる医療機関の負担増に対しては、過去の消費税導入時(3%)や、5%への引き上げ時と同じく、主に診療報酬の上乗せで解消する方向性を示している。しかし、医療現場では、その時の上乗せ分の効果を疑問視し、診療報酬以外での対応を求める意見も出ている。

 堺会長は会見で、日病として、保険診療の課税化を求める考えを示した上で、「課税するにしても、患者に負担の掛からない方向で道を探したい」と述べた。
 また、医療機関の負担増の解消に向けた国への働き掛けについては、日病単独よりも、日病を含む4つの病院団体で構成する四病院団体協議会(四病協)として行動するほか、日本医師会とも認識を共有するとした。
(略)

基本的に医療が儲かっていた時代ならともかく、消費税導入後2000年から診療報酬引き下げが行われ長年の医療費削減政策が続いてきた中で、診療報酬に消費税分を上乗せしていますと言われても誰も納得出来るものではありませんよね。
一般に医業収入に対する材料費・委託費の比率は2割強だと言いますが、特に大学病院などでは平均原価率(ただしスタッフ人件費も含めたコスト)が100を越え疾患によっては200以上などと言いますからどれだけ高い道具を使っているのかという話で、それは毎年毎年巨額の損税を産んでいるのも当然でしょう。
平均利益率が1%という医療機関にとっては消費税が3%や5%でも大変だろうとは想像出来るのですが、今後これが10%から場合によってはさらに引き上げられるという話が実現しつつある時に、国も一体どこまで「多少の負担は厚生労働省の裁量権の範囲」などと言って済ませているつもりなのかということです。
この点で歪みを根本的に解消する一番の手段は素直に保険診療にも課税を認め、一般の商活動と同じように処理していくということだと思うのですが、病院側の権益を代表する日病がそうした主張を行うにあたりわざわざ日医との連携が非常に重要だと思わせぶりに言及しているという点について、実は明確な理由があるのですね。

医療機関の損税問題への対応、検討開始-厚労省・分科会が初会合(2012年6月20日CBニュース)

 厚生労働省は20日、診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(分科会長=田中滋・慶大大学院教授)の初会合を開き、2014年4月の消費税率引き上げに向け、診療報酬の非課税措置によって生じる医療機関の損税問題の対応の検討に入った。同省では今後、消費税課税の実態調査を行う方針で、その結果を踏まえ、12年度後半に中間整理を取りまとめた後、13年度中に8%引き上げ時の対応を決定する見通しだ。
 現在、診療報酬は消費税の課税が認められていないが、医薬品や医療機器などの仕入れ費用は課税対象となっているため、その分の税金が医療機関などの「損税」となっている。国は消費税が導入された1989年と、5%に引き上げた97年に診療報酬改定を行い、損税分を上乗せしたと主張しているが、2000年から診療報酬のマイナス改定が10年間続いたことから、病院団体などは「補てん分が不明確だ」と反発している。
 同分科会の開催は、「医療機関等の消費税の負担について、厚労省において定期的に検証する場を設ける」とする社会保障・税一体改革大綱を踏まえたもの。中央社会保険医療協議会や医薬品・材料の関係団体などに所属する18人の委員で構成されている。
(略)

■非課税措置の「矛盾点」の指摘相次ぐ
 委員からは、非課税措置によって生じる損税分を診療報酬で補てんした「矛盾点」を指摘する意見が相次いだ
 今村聡委員(日本医師会副会長)は、「患者さんに税の負担をさせないために非課税となっているが、診療報酬の中で負担するということは、結局その分を患者さんは負担している」と発言。現状では診療報酬への上乗せ分が不明確として、非課税措置に関する患者の現状認識も合わせて調査するよう求めた。
 また、白川修二委員(健康保険組合連合会専務理事)も、「ある意味で、国民をだましているのではないかと言いたくなるような仕組みだ」と同調し、今回の消費税率引き上げ以降の将来的な在り方についても、同分科会で提言する必要性を示した。
 一方、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「根底から見直す時期に来ている」と述べ、過去の診療報酬改定時の検証と、消費税課税に関する現状把握を優先的に行うよう要望。堀憲郎委員(日本歯科医師会常務理事)は、「はっきりと補てんの部分が分かるように、例えば、基本診療料に、加算として一括して補てんするような対応が望ましいのではないか」と指摘した。

■非課税要求、日医が“反省の弁”
 診療報酬の非課税措置をめぐっては、消費税導入時に日医の要求によって実現した経緯がある。この日の会合で今村委員は、「ゼロ税率と非課税の違いもよく分からない中で、患者さんの医療に税の負担をさせないということに強く配慮して、そのように主張したと理解している」との認識を示した。その上で、「(一時的にとりつくろう)弥縫策のような形で進めることは本当に良くないのではないかと思っているので、真摯に議論させていただければと、反省を含めて申し上げたい」と述べた。【敦賀陽平】

要するにお馬鹿な日医がいつものように患者本位の医療(苦笑)を目指してか消費税課税措置に反対した結果が回り回って今の損税問題をここまで重症化させているわけですが、その日医が形ばかりとはいえ反省などという言葉を使っているというのも前非を悔いたということなんでしょうか。
ただし改めてこうして議論する場を設けるというのはもちろん必要なことなのですが、未だに診療報酬に加算云々などと面倒なばかりで実効性が不明確な措置を主張する委員が含まれているというのはどうしたものかで、何故素直に病院窓口でも消費税をいただきますと言えないのかということですよね。
仮に今後消費税大幅増税が行われ、万一にもその分を診療報酬で補填するという形になれば診療報酬大幅増がにわかに実現するということになりますが、その場合急に窓口での支払いが大幅に高くなったことについて病院職員がクレーム対応と説明の嵐に追われることになるのは自明のことだと思うのですが…
このあたりを敢えて曖昧なままにしておきたいと言う方々が今も一定数いらっしゃるのだとすれば、なぜわざわざ「国民をだましている」ような方法論をいつまでも継続させようとするのかの説明も求められる時期ではないでしょうか?

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コメント

表向きには非課税にして国民のために頑張ったといい顔したいんでしょうかね?>医師会。
でも消費税分を診療報酬で補填させるのなら結局国民に負担させるのは同じことじゃないかと。
昔の医師会はもっと計算高い団体ってイメージがあったんですけど、今は目先のことだけしか見えてないんですかね…

投稿: ぽん太 | 2012年8月 1日 (水) 09時41分

こいつらこそ医療界のガンだ

投稿: 日医はアホ | 2012年8月 1日 (水) 10時57分

コストの半分以上が人件費なのに患者から消費税とるってぼったくりじゃね?

投稿: | 2012年8月 1日 (水) 12時44分

物品やサービスなどの消費行動に対してかかる税金なので消費税とっても何ら問題ありません。
飲食業界なども仕入れ原価は3~4割ですが普通に消費税取ってることに誰も違和感もたないでしょう?
ただ日医らがそうした勘違いからくる批判を考慮していた可能性はあるかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月 1日 (水) 13時10分

参考までに医師会の見解がこちらに出てます
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120201.pdf

しかし相変わらず患者サマにご迷惑をかけないようにの一点張りですか
この人達って医師の業界団体じゃなかったでしたっけ?

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年8月 1日 (水) 13時23分

最初に3%の消費税が導入された時、医療費は非課税にする代わりにと、診療報酬の3%UPがされました。
これは医師会の馬鹿ジジィどもが悪かったんですよ。で、その後どうなったかは御存じのとおりです。
全国の病院の平均利益率が3%を切っている現在、このまま消費税10%になったら、倒産する病院も多いでしょう。
個人開業医の利権集団である医師会の意見だけで動けば、医療崩壊は更に進行するでしょうね。

医療費に消費税を乗せても、高額医療費の免除制度があるのだから問題ないと思いますよ。
結局、月の医療費の上限は変わらないんですからね。
それが嫌なら、戻し税制度を導入してもらいたいものです。
ト○タとイ○ンばっかりが儲けている制度は欠陥だらけですよ。

投稿: | 2012年8月 1日 (水) 22時49分

窓口で消費税を頂くことになった場合、現状の3割負担+消費税1割(10%)負担で実質4割を窓口で支払うことになるかもしれませんよ。
具体的には、初診料270点だけの場合を例にすると、今までの3割負担分810円と消費税(2,700円の10%分)270円の合わせて1,080円を窓口で支払うことになるということです。
1,080÷2,700=0.4
4割負担ですね。受診抑制になって、財務省、厚労省大喜びです。きちんと試算しないと、また煮え湯を飲まされますよ。中医協委員の方々は分かっているのでしょうか、不安ですね。

投稿: | 2012年8月 2日 (木) 17時42分

2012年8月 2日 (木) 17時42分の投稿者です。
計算の訂正です。
10割負担の場合に支払わなければならない額を分母とすべきでした。
ですから分母は2,700円+270円(税10%)でした。
したがって、
1,080÷2,970=0.3636
3.6割負担でした。何れにせよ自己負担割合増です。

窓口での消費税徴収なら、現状自己負担額810円の1割増である891円に増えるだけと考えがちですが、そうとは限らないということです。

投稿: | 2012年8月 2日 (木) 19時54分

医療だけ消費税払わなくていいのは不公平だ
窓口ではしっかりお支払いいただきましょう

投稿: | 2012年8月 3日 (金) 20時44分

消費税窓口で取ることになったら診療報酬の加算分は廃止になるんだよね?
1.何パーセントだかハンパな数字だったから今度は増収になるわけだ?

投稿: 曙 | 2012年8月 4日 (土) 21時01分

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