« 新専門医制度 厚労省検討会中間まとめ出る | トップページ | 新型インフルエンザ対策 どこまで踏み込めるか »

2012年8月 8日 (水)

代替医療をどう規制すべきか

ひところ「ハンドパワー」なるものを売り文句に大人気になったマジシャンがいましたが、あれも誕生の経緯はなかなかに興味深いものがあったようで言ってみればプロによる方便というものですけれども、実際に何かしら超自然的な力が存在すると称して一般人からお金を巻き上げるとなると穏やかではありませんよね。

「ハンド・パワー」受講料70万円…損賠提訴(2012年7月27日読売新聞)

 気功療法のセミナー企画会社「アースハート」(福岡県篠栗町)に、病気が治る「ハンド・パワー」の習得費名目で高額の受講料などを払わされたとして、男女21人が27日、同社と役員2人に、計約3300万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。

 原告は福岡、長崎、大分、宮崎、愛知、岡山6県の19人(20~70歳代)と遺族2人。訴状などによると、同社側は原告らに「ハンド・パワー」や「マインドパワー」と呼ばれる手かざしで病気が治ると説明。セミナーに参加すれば、誰でもパワーを習得できると勧誘し、2003年から11年に1人あたり70万円の受講料を集めた。原告は自身や家族が難病の人が多く、同社幹部らによる「治療」を受け、その費用を支払った人もいた。
(略)

この手の詐欺は昔から絶えた試しがありませんけれども、それだけ信じ込む人々が多いということですからよほどに商売上手でもあるのでしょうし、また藁をもすがる思いの需要が世の中に少なからずあるということですよね。
しかし世の中どこからが詐欺なのかはっきりしないというケースが多いのも事実で、特にそれなりに権威のありそうな団体がバックについていますとついつい信用してしまうと言う事がありがちですから要注意です。
最近は怪しげな代替医療の方々も決して従来の医学も軽視していませんよというポーズを取るために「統合医療(=代替医療+従来医療)」という言葉を好むようですが、結局のところその根底にあるのは従来医療は駄目だというアンチ思想であることは明白で、しかも一見すると普通の医療従事者のような顔をして商売をしているというのですから困ったものですね。

「西洋医学は限界」、自然治癒力の見直しを(2012年7月20日CBニュース)

一般社団法人「国家ビジョン研究会」が20日に開いたシンポジウムでは、医師や看護師らが参加したパネルディスカッションが行われ、統合医療や看護、臨床研修制度など、幅広いテーマで意見が交わされた。シンポジストからは、「西洋医学は限界に達している」との声が上がり、薬に頼らない食事療法や、患者を内面から支える看護ケアなど、自然治癒力を高める治療の効果を見直す必要があるとの意見が出た。

東京都新宿区の丹羽クリニック院長で、同区医師会理事の丹羽正幸氏は、治療法におけるパラダイムシフトの必要性を繰り返し強調した。開業後、4万人以上の難治性疾患患者を診察してきたという丹羽氏は、西洋医学だけの治療法が限界に達しているとした上で、「自然治癒能力がこれからのテーマになる」と指摘。体の各組織や精神までを多面的に治療する「融合医療」で、可能な限り医薬品を使用しないことが望ましいとした。

また、社団法人「生命科学振興会」理事長の渡邊昌氏は、日本の医療費が増え続ける中で、経済的な観点から「食べること」の意義を指摘。糖尿病や高血圧など生活習慣病の治療では、食生活の改善の方が、医薬品の投与よりも効果が高い場合がある上、それが医療費の節約にもつながるとし、「患者が自己の治癒力を知ることが大事だ」と述べた。
(略)

しかし以前にもホメオパシー騒動の際に助産師会看護協会とホメオパシーとの親密な関係がささやかれていたところですが、医療関係者の中にも相当にこうした代替医療の類が入り込んでいるんだなということを改めて実感しますね。
こうした方々の言っていること自体はそれぞれ一文一文を取り上げてみれば必ずしも間違いとばかりも言い切れないのが面倒なところですが、その当たり前のことが何故そういう斜め上の結論につながる?!と言うもので、結局のところここでもエヴィデンスに基づく医療という基本中の基本が問われることにはなりそうです。
ちなみにこの国家ビジョン研究会なるもの、「超党派政策シンクタンク」を称して各分野の政策提言を行っていくことを目指すというのですが、その「医療・看護・介護問題分科会」の方針を見ますと「人間の病気治療を自動車の部品を取り換えるごとく、単なる物質として処理する現代西洋医学に対して、人間の心の尊厳を重視した医療・看護・介護のあるべき姿を探る。」なんてことを書いてあります。
そういう方々が開催した今回のシンポでおもしろいなと思ったのは、代替医療と言えば何ら効果のないもので高いお金を取る悪徳商売だとして批判されてきたわけですが、それが医療費削減という観点から売り込みをかけてきているということで、それは確かに薬を飲むよりは砂糖玉をなめていた方が原価は安くつきそうには思われますよね(売値ではどうか知りませんが)。

以前にも取り上げましたように治療法の進歩に伴い月々1000万以上の医療費を使っている患者が22年で10倍以上に増えたといい、自己負担額上限があるとは言えこれから一生そんな負担を続けていかなければならないのか…と思い悩んでいる時に代替医療の存在をささやかれれば、思わず転向を考えてしまう人が出てしまうことは想像に難くありません。
要するに代替医療問題というのは様々な側面があって、新生児のビタミンK欠乏性出血症による死亡事件のように正しい医療を行わないことによる有害性、あるいは代替医療そのものに関するリスクももちろん重要な問題ではあるのですが、逆に言えばしょせん砂糖玉などに大した効果もなければ目立った副作用もないだろうと考えると、それだけの観点から規制を検討しても効果は限定的なんだろうなと言うことでしょう。
ところが国も最近になってようやくこの問題を議論する気になってきたのは良いことだとは思いますけれども、見ていますと単純に効果や安全性の観点で議論するばかりで、何故そうした怪しげなものがこうまで滲透しているのかという面からの対策が欠けているように見えることは危うさを感じずにはいられません。

統合医療の範囲、リスクの有無で整理を- 厚労省検討会で意見相次ぐ(2012年8月6日CBニュース)

 近代西洋医学と、漢方やはり・きゅうなどの相補・代替医療を組み合わせた「統合医療」の推進策を議論している厚生労働省の検討会が6日に開かれ、統合医療の範囲をめぐり議論した。この中で委員から、統合医療に含まれる可能性がある療法を、有効性や安全性が確立しているかどうかによって整理すべきだとの意見が相次いだ。

 6日に開かれた「統合医療」のあり方に関する検討会(座長=大島伸一・国立長寿医療研究センター総長)の会合では、これまでの会合で出された意見をまとめた資料を厚労省が提示した。この中で厚労省は、統合医療の範囲について「近代西洋医学とその他の療法を組み合わせたものとした上で、医師主導で行う医療と捉えてはどうか」などと提案。近代西洋医学と組み合わせる相補・代替医療の例として、▽はり・きゅう▽整体▽カイロプラクティック▽食事療法▽音楽療法▽ヨガ▽気功▽漢方―などを挙げた。

 これについて門田守人委員(がん研究会有明病院長)は、「エビデンスができつつある漢方と、そのほかのものを一緒にして話を進めるのは無理がある」と指摘。統合医療に含まれる可能性がある療法を、有効性や安全性が確立しているかどうかによって整理すべきだとの考えを示した。
 また、羽生田俊委員(日本医師会副会長)は、厚労省が例示した相補・代替医療の中に、患者の体に触れて処置を行うのに国家資格が必要ないものが含まれていることを問題視。脊柱などのゆがみを矯正するカイロプラクティックによって 脊髄損傷を起こしたケースもあるとした上で、「資格がなくても危害が加わらない療法と、危害が加わり得るものは、分けなければならない」との認識を示した。【高崎慎也】

もちろん効果がないばかりかリスクばかりのものを取り締まる必要があるのは言うまでもありませんが、患者の側に需要がある以上はあれも駄目、これも禁止とやっていくばかりでは最終的に安全な砂糖玉に人気が集まるということにもなりかねませんよね。
この点で一案ですが、例えばホメオパシー協会がしばしば彼ら自身の勝利の実例(笑)として取り上げるイギリスではホメオパシーを保険診療に組み込んでしまい、およそ人の命に関わるような疾患では医師の関与なしで勝手に砂糖玉を使ってはならないと規制をかけてしまっているわけですが、日本における対策を考える上でも参考になるという気がします。
結局彼らも商売でやっていることなのですから規制するにもお金の面から掣肘を加えていくのが最も有効だろうとも思われ、例えば代替医療を保険診療に組み込んだ場合には到底儲けなど出ないような診療報酬・薬価を設定してしまう、あるいは後になって査定で切りまくると言った「手慣れたやり方」でコントロールすることが出来るのかどうかを検討してみるのもおもしろいかも知れません。
折しも先日は財務大臣自ら「税収が減るから医療機関の損税問題は解消するつもりはありません」なんてすごいことを言い切ってしまったわけですが、医療主導の国家成長戦略を思い描きそこまで医療業界からの税収を当てにしているのであれば、その範疇が一層拡大することも国にとっては基本的にウェルカムであるはずですしね。

|

« 新専門医制度 厚労省検討会中間まとめ出る | トップページ | 新型インフルエンザ対策 どこまで踏み込めるか »

心と体」カテゴリの記事

コメント

食事療法って現代医学でも普通にやりますけど・・・
代替医療推進派の方が考える食事療法と一般的な医師が考える食事療法は別物なのでしょうか?

投稿: クマ | 2012年8月 8日 (水) 07時47分

理屈は正直理解出来ないのですが、実際にどのような食事療法?が行われているかはこちらの実例をご参照ください。
自分であれば担当医からこういうことを指導されたら思わず病院をかわりたくなると思いますが。

http://ameblo.jp/cielo123/entry-11292820424.html
http://ameblo.jp/cielo123/theme-10056718918.html
カンジダアルビカンスは普段普通に人の口内や腸にいます。
普通は善玉菌が腸内でバランスをとってくれてるものが、
何らかの問題で腸内のバランスが崩れ、カンジダ菌が繁殖してくると
痒みや不調、カッテージチーズ状のおりものなど、たくさんの症状をあらわすようになります。
カンジダが異常発生する、誘因は、
・抗生物質・ホルモン剤・ストレスによる消化力低下、免疫低下、ピル
とにかく砂糖のとりすぎ!白い精製されたパンやごはんを摂り過ぎるときに危険が高まります。
で症状がでたら大体抗真菌剤で普通は治療するのですが、
腸内の常在菌のバランスがくずれて→症状がでるので、
菌を殺すよりも、土壌(腸内)のバランスを整えた方が絶対効率的。
薬で治しても土壌が同じならまた繁殖を繰り返します。
一度大発生してしまうと、今度はカンジダ自体が
餌である砂糖や炭水化物を要求するので、
『強烈にふわふわのパンが食べたい!! 』
とか『耐えられない!!甘い物とかビール飲みたい !』
って欲求になったりします。
でもそれ、本当は自分が欲してるのではなく、
菌がエサプリーズって言ってる状態。
甘い物中毒~でもなんだか痒くなる・・・
という人もカンジダ増産しちゃっているかもなのです。
そんな症状が出る前に予防が肝心。
『外敵(ウィルス・菌)だけたたくのではなく、土壌(免疫力)が肝心。』
つねに自然療法では土壌が重要です。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月 8日 (水) 08時46分

紹介されたところ読んできましたが、もう お腹いっぱいです。

投稿: JSJ | 2012年8月 8日 (水) 09時03分

こういうのって理屈が無茶苦茶でも一種の低炭水化物ダイエット法だからそれなりに効果はあるんだろうなあ
1%でも効果があれば全てが正しいみたいに宣伝されたんじゃ対策も難しいでしょうね

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年8月 8日 (水) 10時50分

>『強烈にふわふわのパンが食べたい!! 』
とか『耐えられない!!甘い物とかビール飲みたい !』
って欲求になったりします。
でもそれ、本当は自分が欲してるのではなく、
菌がエサプリーズって言ってる状態。

http://karapaia.livedoor.biz/archives/51364117.html

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年8月 8日 (水) 10時52分

>紹介されたところ読んできましたが、もう お腹いっぱいです。

一読しただけで満腹感が得られるダイエット
代替医療最強が証明されたなw

投稿: aaa | 2012年8月 8日 (水) 11時04分

これ、どういうつもりで作業をすすめてるんでしょうね?
単に皆で議論した結果やっぱり統合医療推進は時期尚早だったと言いたいがためのアリバイ作りだけならいいんですけど、本気で推進するつもりならさっさと止めないと大変じゃないんですか?
マスコミもぜんぜん突っ込まないままなのはやはり広告主やテレビの出演者としてお得意先だから?

投稿: ぽん太 | 2012年8月 8日 (水) 11時29分

なにこれ?DQNに国が金出すってこと?

投稿: | 2012年8月 8日 (水) 12時16分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/55370775

この記事へのトラックバック一覧です: 代替医療をどう規制すべきか:

« 新専門医制度 厚労省検討会中間まとめ出る | トップページ | 新型インフルエンザ対策 どこまで踏み込めるか »