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2012年8月25日 (土)

ネット実名制は是か非か? お隣韓国の実例から

最近何かと騒がしいのがお隣韓国ですが、かの国は以前からネット普及率の高い国としても知られていて、それだけに「ネチズン」などと呼ばれる過激なネットユーザーの行動がしばしば問題になっていたのは日本などと同様の現象です。
その韓国で先年ネット利用に際して実名を以てするという法律が成立し注目されていたのですが、このたびその法律に対して違憲判決が出たということです。

インターネット実名制に憲法裁判所が「違憲」=韓国(2012年8月23日聯合ニュース)

【ソウル聯合ニュース】韓国の憲法裁判所が23日、「インターネット実名制」に違憲決定を出した。

 「情報通信網の利用促進および情報保護などに関する法律」の44条1項は、1日の平均利用者数が10万人以上のサイトの掲示板について、個人事項の登録など本人確認を経なければ書き込みをできないよう定めている。悪意のある書き込みなどによる社会的な弊害を防止する目的で2007年に導入された。しかし複数の請求人が表現の自由などを侵害するものとして、2010年に憲法訴願審判を請求。これに対し、憲法裁判所は裁判官8人の全員一致で、同条項を違憲と判断した。

 憲法裁判所は「表現の自由を事前に制限しようとするならば、公益の効果が明確でなければらない」とした上で、制度の施行後にむしろ利用者が海外サイトに流れるようになったこと、韓国内外の事業者間に逆差別が生じたことなどを踏まえると、公益を達成しているとは見なし難いとの見解を示した。また、自由な意思の表現を萎縮させ、住民登録番号を持たない外国人の利用を難しくした点や、掲示板情報の外部流出の可能性が増している点を挙げ、「不利益が公益より小さいとは言えず、法益の均衡性も認められない」と説明した。

 本人確認制の基となるこの条項が、過剰禁止の原則に背き、表現の自由や個人情報の自己決定権、言論の自由など、請求人の基本権を侵害すると指摘した。

 この判断により、インターネット実名制は廃止されることになりそうだ

ここでは韓国の憲法裁判所が表現の自由を制限することが正当化される大前提として「公益の効果が明確であること」を挙げているという点に留意いただきたいと思います。
このネット利用は実名で行うべきか匿名を認めるべきかという問題は日本でも久しく議論されていて、特にネットからの匿名での攻撃にさらされる機会の多い(苦笑)一部業界方面では「匿名では誹謗中傷などが横行し健全なネット利用が妨げられる!」と実名制推進論者が多い印象がありますね。
ひと頃は実名制を前提としたSNSサービスが日本にもどんどん流入してきて、いよいよ日本のネットサービスも実名制の時代に入ったかとも言われていましたけれども、結局のところ「馬鹿発見器」などとも言われてしまうほど炎上が相次いだせいか実名の堅苦しさが嫌われたのか、今もって匿名性前提のサービスが主流であると言う点は日本のネット利用の一つの特徴でもあります。
現状の日本では犯罪行為が絡む場合など随時プロバイダーへの開示請求も可能であり、普段は匿名で何かあればリアルにまで踏み込んで追跡できるというシステムは程良い自由度なのではないかと思うのですが、それでも匿名での放言し放題なのはケシカランと主張する方々は実名主義を採用した結果韓国ではどんな効果があったかという話を参照いただきたいと思います。

実名制がコメント荒らしを解決できない、驚くほど確かな証拠(2012年7月30日TechCrunch)

YouTubeは、ユーザーに実名の使用を強制することでコメント欄の「荒らし」を減らせると考える、多くのソーシャルメディア会社の仲間入りをした。しかし、実名ポリシーがコメント欄の粛清に驚くほど役立たないという十分な証拠が韓国にある。2007年、韓国は利用者10万人以上のサイトすべてに対して、一時的に実名使用を強制した。しかし、後にこれが罵倒や悪意のあるコメントの一掃に効果がないと分かり、廃止する(このポリシーによって減少した迷惑コメントは0.9%だった)。なぜこの重要な証拠が、実名制に関する国民的議論で無視されているのかは知らないが、YouTube、Facebook、Googleなど、人目がオンライン行動が改善すると仮定している会社にとって、これは重要な教訓である。

先週YouTubeはユーザーに対して、Google+経由で実名登録することを要求するポリシーを開始した。拒否する場合は「私のチャンネルは番組やキャラクターのためだから」など、正当な理由を示さなくてはならない。このポリシーはGoogleによる、ソーシャルメディア・エコシステムに承認済みアイデンティティー導入しようという大規模な計画の一環であり、古くから透明性が素行を改善すると信じるFacebookの立場に倣うものだ。

インターネットの匿名性はなくなるべきだと私は思う」、と元Facebookのマーケティング・ディレクター、Randi Zuckerbergは主張した。「実名を曝した時の方が人はずっと素行がよい・・・匿名性の陰に隠れると、人は扉の後ろで何を言ってもいいと感じるのだと思う」。匿名性はプライバシーの基本的権利であり、反体制活動にとって必須であるという論者と、オンラインいじめやコミュニティーに対する荒らしの影響を心配するソーシャルネットワークとの間で、長い間国民的議論が戦わされてきた。

理論はともかく、この議論の参考になる確かな証拠がある。韓国では4年にわたり厳格な実名コメントルールを課してきた。2003年に政治的ウェブサイトから始め、2007年には訪問者30万人以上のサイトにも拡大し、ある著名人の自殺に関してネット上の名誉棄損が言及された一年後には、年間訪問者10万人へと強化された。しかしこのポリシーは、韓国通信委員会の調査によって迷惑コメントが0.9%しか減っていないことがわかるとすぐに廃止が決定された。韓国サイトには、おそらく価値ある個人情報を求めてハッカーたちも殺到した。

カーネギーメロン大学のDaegon ChoとAllessandro Acquistiによる継続分析の結果、実名ポリシーは一部の利用者層において、罵りコメントの頻度をむしろ高めていることがわかった。同ポリシーは、罵倒や「反道徳的」行動を全体では最大30%減少させたが、個々のユーザーはたじろいでいない。1、2件のコメントを投稿する「ライト・ユーザー」は同ポリシーの影響を強く受けているが、「ヘビー」な連中(11~16コメント以上)はひるむ様子がない

委員会の推定によると悪質なコメントは全体の13%だけであることから、わずか30%の減少は、汚れたコメントシステムにとっては焼け石に水だろう。

こうした発見は、人々は行動をビデオに撮られていてもやがて無視するようになる、ということを以前から知っている社会科学者たちにとっては驚きではない。言い換えれば、仮想的見張り人の存在がわれわれの行動を改善することはない、ということだ。

要するに人間、それも達の悪い人間は実名であるからと言って別にお行儀よくなる訳ではないということが壮大な社会実験の結果示されてしまったということなんですが、これによって実名制を強要しようとしている方々はまた新たな理屈をこねてくる必要があるんじゃないかと言う気がしますね。
しばしば匿名では場が荒れる、単なる罵り合いに終始して建設的な議論など出来ないという声がありますが、誰しも名無しであることが大前提の某巨大掲示板などを見ていても一時的に荒れることはあっても長期的に見ていくと自然と自浄作用が発揮され、有意義なレスが尊重され議論が深まっていくという現象を考えると、こうした見解は物事のごく表層だけしか見ていないものなんじゃないかという器がします。
例えば翻訳エンジンが優秀なせいで日本と韓国との間では日常的にネットを介した舌戦が繰り広げられていますが、以前に韓国に超巨大台風が上陸するということになった時、日常的に罵詈雑言の応酬ばかりに見えた日韓交流掲示板で日本側から「とにかく真水を確保しておけ」といったアドバイスが次々と出され、韓国側からも謝意が伝えられたという事例が実際にありました。
日本人は議論慣れしていない人間が多いもので意見に対する批判と人格に対する批判とを区別出来ないとはしばしば言われることですけれども、単なる文字の羅列によってしかその背後に隠された人格を知るすべがないネットと言うツールにはまった人々だからこそ、そのあたりの切り替えが実社会のみしか知らない人々以上に発達してきているのかも知れませんね。

そもそも近年の世界各地で独裁などに反発する市民活動などもネットでのつぶやきがその発火点になったケースが多いですが、これが何か一つでもNGワードを書き込めば翌日には当局が家に押しかけてくるような社会ではおちおち自由な言論も発揮出来ないというものですよね(まさにそうした理由で実名制を推進したい方々もいらっしゃるのでしょうが)。
そしてもちろん「人肉捜索(中国)」なんて言葉もあるようにネット上での個人情報は非常に取り扱いが難しくなっている中で、それを敢えて公衆の前にさらすことを強いるというのは一部ネットユーザーが他人のプライバシーを晒して回っていることを公的に強要するようなものであるという考え方も出来るでしょう。
いずれにしてもいやしくも自由民主主義を標榜する国の人間がネット規制を進んでお上にお願いするなんてことは、まさしく自らを律することも出来ない未熟者であると公言しているようなもので本来大変恥ずかしい振る舞いであるはずなんですが、日本ではそうした主張を行う人間こそが健全で思慮分別のある正しい大人であるかのような顔をしているというのもどうなんでしょうね。

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コメント

なんだ実名の意味ないんだ

投稿: | 2012年8月25日 (土) 08時44分

「現状の日本では犯罪行為が絡む場合など随時プロバイダーへの開示請求も可能であり、普段は匿名で何かあればリアルにまで踏み込んで追跡できるというシステムは程良い自由度なのではないかと思うのですが、それでも匿名での放言し放題なのはケシカランと主張する方々」

の意図は,「(自分達にとって)気に入らないネット言論」を封じたいということ以外の何物でもないでしょう。
 
要するに,「ネット実名制」推進論とは,「フラット革命」の抵抗勢力の断末魔なのだと思います。

投稿: mskw | 2012年8月25日 (土) 11時13分

実名推進派涙目w

投稿: aaa | 2012年8月25日 (土) 12時18分

騒がしいお国ですね!
しかしSNSは広がってますね。
いつまで続くのか分かりませんが
facebookやtwitterなどソーシャルメディアを活用して、マーケティングにうまく繋げて日本の企業も活躍してほしいですね。

でも落とし穴もあると思い探してたら、面白い記事を発見しました!

http://bit.ly/M8CmOf

世界で利用者がいるのは明るい未来もありますが、影の部分を把握してうまく利用していきたいですね!

投稿: yusukeeeen | 2012年8月25日 (土) 14時17分

この種の規制にさして根拠がある訳でもないというのはお約束ですからね。
単に自由な権利の侵害だと言うだけでなく、こういう実例を挙げて反論した方がいいと思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月25日 (土) 16時46分

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