« クレーマー対策はまず最初の一歩から | トップページ | 代替医療をどう規制すべきか »

2012年8月 7日 (火)

新専門医制度 厚労省検討会中間まとめ出る

先日も取り上げました医療機関の消費税による損税問題ですが、別ソースによれば財務相らはこんなことを言っているようです。

病院・診療所の消費税(損税) 医療界ゼロ税率要求 財務相「税収失われる」と拒否(2012年8月6日しんぶん赤旗)より抜粋

 病院や診療所が転嫁できずにかぶっている消費税(損税)は、日本医師会(横倉義武会長、会員16万6千人)の試算で2330億円(2010年度推計値)にのぼります。

 政府は、損税の問題点は認めたうえで、消費税の10%への増税後も「診療報酬で対応していく」(安住淳財務相)としています。診療報酬とは、医療機関に支払われる医療の値段のことで、国が決めています。診療報酬を一定程度引き上げることで、損税分を手当てする方針です。
(略)
 安住財務相は、「とても病院を経営していられない」という声があるのを認めつつ、「(医療機関に)適切なある程度の負担だけはぜひお願いしたいという気持ちもある」と発(7月25日、参院社会保障・税特別委員会)。損税の完全な解消を放棄する姿勢を示しています。

 7月27日の中医協の分科会では診療側の委員から、「最初から負担をかぶらなきゃいけないという会であれば、席に座っていづらい」と反発の声があがりました。

 日本医師会は、仕入れにかかった税の控除ができる税制を要望しています。全国保険医団体連合会(住江憲勇会長、会員10万4千人)や日本共産党などは、その具体策として医療費の「ゼロ税率」導入を求めています。ゼロ税率にすると、仕入れにかかった消費税が還付されます。患者も、消費税負担を一切負わずにすみます

 

輸出企業の場合、輸出品に転嫁できない消費税分が戻し税として還付されています。医療機関が払う消費税も還付すべきだという医療界の要求は、当然です。

 しかし政府は「兆円単位の税収が失われる」(安住財務相)として拒否しています。

しかし赤旗が案外医療報道がいいという話は聞いていましたが、診療報酬を「医療機関に支払われる医療の値段」と表記するなど、地味に勉強してますね。
なにしろ日本で現在放っておけばどんどん急成長してしまう(苦笑)という数少ない超優良産業ですし、現段階でも完全100%内需だけで30兆円超規模の一大産業なのですから黙って泥をかぶれと言うのも国の本音ではあるのでしょうが、しかし公の立場でそれを言っちゃあおしめえよと言うものでもありますからねえ…
ま、そういう方針でいるとなりますと当然ながら中医協の場ではきっちり消費税分を取り返すべきだという声が上がると思われますが、こうなりますと本当に最初のボタンの掛け違いが後々まで面倒の尾を引いたという格好ですかね。
余談はそれまでとして、本日の本題として先日これまた取り上げた専門医の新認定機関問題で厚労省検討会の中間まとめが出たという話題を取り上げてみましょう。

専門医認定の第三者機関設立と総合医養成を- 厚労省検討会が中間まとめ(2012年8月3日CBニュース)

 新たな専門医制度の大きな方向性が3日、まとまった。学会がそれぞれ運営している現行制度を改め、専門医認定を担う第三者機関を設置することと、いわゆる「総合医」を専門医制度の中に位置付けることを柱とする中間まとめを、厚生労働省の検討会が了承した。一方、学会が認定した既存の専門医と、第三者機関が認定する新たな専門医の関係は整理されておらず、年度内にまとめる最終報告に向けて議論になりそうだ。

 中間まとめを了承したのは、厚労省の「専門医の在り方に関する検討会」(座長=高久史麿・日本医学会長)。同省ではこれを踏まえ、来年度にも第三者機関を設立する方針で、来年度予算の概算要求に盛り込むことも検討しているという。

 第三者機関の設置は、各診療領域の専門医認定に統一性を持たせることで、専門医の質を担保することが狙い。専門医の認定と、その養成プログラムの評価・認定の2つの機能を第三者機関が担う
 新制度ではまた、専門医認定を「2段階制」に再編。「外科専門医」「小児科専門医」などの基本領域の専門医資格を取得した上で、「循環器専門医」「消化器外科専門医」などといったサブスペシャリティ領域の認定を受ける仕組みを基本とする。

 中間まとめではさらに、総合的な診療能力を持つ医師、いわゆる「総合医」や「総合診療医」について、「基本領域の専門医の一つとして加えるべき」と提言した。総合医の養成が必要な理由として、高齢化により、臓器別ではなく総合的に診療できる医師のニーズが増えると見込まれることや、複数の臓器別に、別々の医師が診療するよりも、総合医が診療した方が効率的なことを挙げている。

 一方、引き続き議論が必要な事項には、▽既存の専門医と新たな専門医の関係▽第三者機関の運営資金に公的な性格を持たせることの是非▽「総合的な診療能力を有する医師」の名称の統一▽専門医資格の更新の在り方―などを挙げた。
 池田康夫委員(日本専門医制評価・認定機構理事長)は、既存の専門医が新たな専門医制度に参画できるような移行措置が、今後の重要な検討課題になるとした上で、「リーズナブルな移行措置を考えていなければならない」と強調した。【高崎慎也】

いや、「学会が認定した既存の専門医と、第三者機関が認定する新たな専門医の関係は整理されておらず」って、そこが一番かんじんなところなんじゃないかと思いますが、基本的に表向きのタテマエはともかく専門医をダシにして医師配置を采配しようというアイデアなのですから、別ルートで勝手に専門医など取られてしまっては困るというものでしょう。
こうなりますと気になりますのが既存の学会専門医と今後出来てくるだろう第三者機関による専門医とで、医師達は果たしてどちらにより重きを置くことになるのだろうかということですが、ある程度歳のいった先生方にとってはほとんど名誉階級のようなものですから、よほど向学心にあふれていなければわざわざ苦労して新しい専門医制度に関わっていくという人も少ないのではないでしょうか。
となると今後医療を担っていく若手の動向がどうなのかと言うことになりますが、仮に新設される第三者機関によって認定される研修施設が既存学会において認定されていたそれと異なるといったことにでもなれば、専門医取得を見越した就労先の選択において根本的な見直しを強いられるということにもなりかねませんよね。
逆にそうした面倒を避けるために既存の認定施設は今まで通り認定しますということになれば何の為に新たな制度を作るのか判らないということにもなりかねず、やはり既存制度とのすりあわせは一番の難点になりかねません。
ところで記事中にもありますように、いわゆる総合医というものを専門医制度の中に新たに位置づけるということが既定路線として語られていますが、この総合医というものの導入を正当化する上でキーワードになっているのが効率的な診療ということであるようです。

「総合診療医」養成を提言…厚労省研究班 高齢化対応、医師需要は算出せず(2012年8月2日読売新聞)

高齢化対応、医師需要は算出せず

 医師の必要数の把握を目的とした厚生労働省の「医師需給研究班」(代表者=大島伸一・国立長寿医療研究センター総長)は、従来行われてきた医師需要の算出をやめ、代わりに患者を幅広く診ることのできる「総合診療医」の養成などを提言する報告書をまとめた。

 高齢社会に対応した医療の構造転換なしに、医師の頭数だけの推計は困難だとしたもので、医療改革論議にも影響を与えそうだ。

 報告書は、ケアを必要とする高齢者の数は2010年の500万人から、30年には900万人に達すると推計。急激な高齢化の進展に対し、新人医師の養成では間に合わないとして、勤務医から人材を見いだし、総合診療医として活躍してもらうためのトレーニングを早急に開始する必要があるとした。

 また、現在の医療計画の区分である「2次医療圏」は、面積や人口構成に差が大きいことから、都市部や郊外などの地域の実情にあった分類に改め、なかでも高齢者の急増が予測される大都市郊外の対策が急務だとした。出産・育児のため30歳前後で職を離れがちな女性医師の支援や、高齢者に必要なリハビリ医の養成なども提言した。

 医師需給に関する厚労省検討会は06年、医師の需給は22年には均衡し、必要数は満たされるとの見通しを示した。だがその後、医師不足が叫ばれ、政府は08年、医学部定員を増やす方策を打ち出している。

 大島総長は「中身の議論を抜きに単に医師の頭数を増減させても何の意味もない。高齢社会に対応できる体制を作ることが最優先の課題だ」としている。

こういう話を見ますと要するに国がイメージしている総合医とは少ない数で何にでも対応できる便利屋なんだなと思うのですが、同じ疾患に対して言えば本来専門医の方が知識も経験も豊富な分だけ無駄なく質が高い効率的な医療が出来るはずで、このあたりの長期的なコストパフォーマンスはどうなのか一度比較検討しておく必要があるかなという気がします。
例えば1人の専門医と1人の総合医とを比べれば引き出しが多い分総合医の方に分があっても、10人の分業した専門医と10人の連携していない総合医では前者の方が高度かつ効率的ということであれば、結局は医師過疎地域における安かろう悪かろうの医療ということに終わってしまいかねないわけですよね。
また多少の質の低下は甘受しても一般的疾患の診療においてはコストを優先すべきだと言うのであれば、今度は特定看護師制度などとコストパフォーマンスを比較しなければならないという話にもなりますから、概念的にはともかく実際のエヴィデンスをもって総合医の明確な位置づけをしようと言うのは案外面倒くさいものなのかも知れません。

一方で基幹病院において何科の患者かはっきりしない場合に総合医が担当してくれれば非常にスムーズに回りやすいのも事実なので、開業助産師と院内助産師の関係にも見られるように同じ総合医という名称を用いていても実際的には単一資格でよいのかという疑問は残ります。
まして助産師と違って総合医は専門医と同格の医師であるわけですから、専門医の下請けのような仕事に誇りを持てるかどうかは未知数であって、今後総合医のステータス向上に専門医資格の一角に名を連ねさせるだけでいいのかどうかですよね。
ともかく専門医と総合医とが対立概念でも上下の関係でもなんでもなく相互に有益な補完関係を築けるのだというコンセンサスは徐々に広まりつつあるようですし、実際のところ新たな専門医制度の中で総合医志望者がどの程度出てくるのかということが将来的な発言力と地位の向上につながってくるのだと思います。

|

« クレーマー対策はまず最初の一歩から | トップページ | 代替医療をどう規制すべきか »

心と体」カテゴリの記事

コメント

「第三者機関が認定する新たな専門医」を指導するのは誰か?と考えれば、「学会が認定した既存の専門医」はそのまま移行措置で「新たな専門医」に認定するしかないと思います。
この点に関しては、私は楽観しています。

私の予想では、「第三者機関が認定する新たな専門医」は、個々の医師が標榜できる診療科と連動することになる(内科専門医を持っていなければ内科医を標榜できない、等)ので、むしろ現在ある程度のキャリアがあるにもかかわらず何の専門医も持っていない人がどうなるのかが、むしろ気になります。
あるいは、これから「新たな専門医」を修めていく人達にしても、何の専門医も取ら(れ)なかったらどうなるんだろう?
開業医は診療科名のない、「○○医院」にするのか、とか
勤務医だと専門医を取るまでは良くてヒラ、下手すると非常勤扱いになるのかな、とか。

投稿: JSJ | 2012年8月 7日 (火) 08時38分

全く診療科の表示がなければ患者も困るので、一つ目の診療科は自由で二つ目以降に専門医資格が必要になるのかなと予想してます。
万一専門医がなければ何もしちゃいけないってことになると一気に医療崩壊ですよ。
ただし学会専門医からの移行を促すためにも新たな専門医資格がなければ○○はやってはいけないとは言い出すかも。
同時に総合診療医の取得を簡単なものにしておけばとりあえずの診療は回るんじゃないですか。

投稿: ぽん太 | 2012年8月 7日 (火) 08時56分

各学会の権威なしに専門医の認定も何もないはずですから、少なくとも学会と最低限の折り合いはつけないことには立ち上げられないでしょう。>新専門医
その過程で今までのシステムでやってきた人々に損にはならないものになるかなとは思うのですが、新卒はともかく中堅以上にとっては新規取得がややこしくなるかも知れませんね。
むしろ今ある学会に何らかの基準を提示して満足した場合に新システムに収束統合していくという形の方が簡単に思えます。

投稿: 管理人nobu | 2012年8月 7日 (火) 10時44分

なんだかすごいこと言ってますよ
日本もいよいよ統制医療の時代?

家庭医増に各科の医師数制限必要か議論-プライマリ・ケア連合学会夏セミでシンポ
http://news.livedoor.com/article/detail/6829898/

投稿: 明後日君 | 2012年8月 7日 (火) 11時24分

誰がお山の大将になるかでひともめするに1000点w

投稿: aaa | 2012年8月 7日 (火) 12時41分

「総合診療医」とかはただの便利屋ですね。店に例えればダイソーみたいな感じでしょうか?
それぞれの専門領域の医学知識が2~30年前とは比べモノにならないほど膨大になりかつ医学の進歩により新薬・新治療が続々と出てきている現在、総合診療医にあえてかかるメリットはほとんどないと思います。専門医に紹介せず自分で何でもかんでもやってしまうのは無理です。
専門医資格もっているDrと言ってもピンキリですが、やはり患者の求めているのは専門性だと思います。だからこそ病院に患者が殺到するわけで

投稿: 元神経内科 | 2012年8月 8日 (水) 13時56分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/55364224

この記事へのトラックバック一覧です: 新専門医制度 厚労省検討会中間まとめ出る:

« クレーマー対策はまず最初の一歩から | トップページ | 代替医療をどう規制すべきか »