« 救急医療 誰だってスーパードクターにあこがれるものです | トップページ | 生保問題よりワープア問題の解消を »

2012年7月19日 (木)

最近は公立病院が景気いい?!

最近は公務員の優遇、官民格差ということが非常に社会的にも注目を浴びるようになってきていて、マスコミなどでも「ここにもこんな格差が!」としばしばニュースとして取り上げられますよね。
それはそれでいいとして、見ていますとどうも実感と異なる「官民格差」があるという報道も出ているようで、先日こうした記事が出ていたのをご存知でしょうか。

年収官民格差 医師は公務員1541万円、民間は1169万円(2012年7月15日NEWSポストセブン)

 国家公務員の実年収は808万5000円で、民間サラリーマンの平均412万円(2010年の国税庁の民間給与実態統計調査)と比較し、約2倍との指摘もあるが、同一職業の官民格差を見てみよう。医療従事者の例を比較する。

【職種/公務員/民間】
医師/1541万5675円/1169万2100円
歯科医師/1541万5675円/750万4800円
薬剤師/595万3275円 /500万3000円
看護師/566万2003円/474万5000円

公務員は「地方公務員給与実態調査」(総務省・平成23年)
民間は「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省・平成23年)

んん?公務員医師の方が民間よりもずっと平均給与が高い?
それは確かに永年勤続の万年公務員医師なら年功序列でそれなりの金額になるでしょうが、医療の世界の常識として看護師や事務はともかく医師の給与は明らかに公立<民間だとされてきたものですから、これは激しく違和感を抱く報道ですよね。
少し調べて見ましたらこの「地方公務員給与実態調査」なるもの、「地方公務員の給与の実態を明らかにし、あわせて地方公務員の給与に関する制度の基礎資料を得ること」を目的としたもので、その調査規則第三条には調査対象についてこんなことが書いてあります。

第三条  調査の対象となる地方公務員は、特別職及び一般職に属する都道府県(都道府県の加入する一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)、市町村(特別区並びに市、特別区又は町村の加入する一部事務組合及び広域連合で都道府県の加入しないもの並びに財産区を含む。以下同じ。)及び特定地方独立行政法人の職員のうち、次の各号に掲げる者以外の者(以下「職員」という。)とする。
(略)
二  一般職に属する者で臨時又は非常勤のもの
(略)

ちなみにこの一般職とは特別職以外の者という意味で、特別職とは自治体の議会や委員会の中の人や独立行政法人の役員などですから、公募された雇われ院長などを除いていわゆる公務員として働いている医師らは一般職扱いになる理屈ですが、要するに常勤医だけを取り出して平均値を出しているというだけのことですよね。
一方の「賃金構造基本統計調査」の方は少しややこしいようで、一般労働者と短時間労働者に分けて統計を取っているのですが、後者は「同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い又は1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者」の意味で、正社員と同じ時間帯で働く契約社員は一般労働者扱いにされているようです。
いずれにしても公務員、民間ともに常勤医師を対象にした結果だと言うことになるのでしょうが、ご存知のように国公立病院においては実際の勤務医の数に対して職員定数と言うものが低く抑えられていて、「帳簿の上では日雇い非常勤だが実際にはフルタイム勤務」なんて無茶をさせられている医師達が数多くいるからこそ成り立っている実態があるのに、彼らを無視して「公務員医師の給与は恵まれている!」もないですよね。
週ポスさんがわざわざ突っ込まれるような数字を挙げてきたのが偶然なのか、それとも何らかの意図が隠されているのかは何とも言えませんが、他に行き場がないとかそれこそ聖地・尾鷲のような特殊なケースを除いて給与が高いからと民間よりも公立の病院を選ぶ人もそうはいないんじゃないでしょうか?
そういう目で見ますとこちらのニュースも何やら胡散臭く感じてしまうのですが、まずは記事から紹介してみましょう。

自治体病院、2年連続で黒字が過半数- 全自病調査(2012年7月12日CBニュース)

 全国自治体病院協議会(全自病)は12日、都道府県や市町村などが運営する病院の2011年度決算見込額の調査結果を公表した。それによると、地方公営企業法が適用される497病院のうち、経常損益が黒字だったのは277病院で、前年度に比べて5病院増となり、2年連続で黒字の病院数が赤字病院を上回った

 調査は今年5月、全自病の会員病院のうち、地方公営企業法が適用される868病院(全部適用、一部適用)と、地方独立行政法人が設置する59病院を対象に実施。このうち、回答のあった517病院(独法病院は20施設)の3月31日現在の決算見込額などを集計した。

 法適用病院で黒字だった277病院のうち、一般病院は267病院で、10年度決算額に比べて4病院の増加。精神病院では10病院(前年度決算比1病院増)が黒字だった。また、10年度決算額で黒字だった272病院のうち、11年度決算でも黒字を見込んでいるのは233病院。一方、10年度決算額で赤字だった225病院のうち、11年度に黒字を見込んでいるのは44病院だった。
 これを病床規模別で見ると、200-299床に占める黒字の割合は、10年度決算額に比べて10.2ポイント高い49.0%。100-199床では、48.3%(前年度決算比2.6ポイント増)で、300床未満の病院で赤字の改善傾向が見られた。
 さらに、1病院当たりの1日の平均患者数では、入院193.7人(前年度決算比0.9%減)、外来468.9人(同1.1%減)で、精神病院を除き、軒並み減少したが、患者1人当たりの1日の平均診療収入では、入院4万2688円(同2.7%増)、外来1万1375円(同3.7%増)だった。

 一方、独法病院は15病院が黒字で、こちらは10年度決算と同数。同年度決算額で黒字だった15病院のうち、11年度決算でも黒字を見込んでいるのは14病院で、10年度決算額で赤字だった5病院のうち、11年度に黒字に転じる見込みなのは1病院だった。【敦賀陽平】

んん?万年赤字の垂れ流しだと言われ、地方議会でもたびたび話題になってきた自治体病院がいつの間にそんなに黒字に?
どうも嘘くさいなと思って調べて見ましたら国保病院も含まれた自治体病院の収支についての2010年のデータが出てきて、今回もほぼ前年度並みということで大差はない数字なんだと思うのですが、確かに半数ほどの病院が経常黒字を計上しているものの、よく見てみますとその大部分が自治体からの繰入金(いわゆる補助金ですよね)を込みでの数字なんですね。
全国900余りの自治体病院のうち、この繰入金を除いて黒字を計上しているのは自分の見たところこれら28病院しかないのですが、こういう結果を半数が黒字と表現するか、民間基準であればほぼ例外なく赤字と言うべきなのかは極めて微妙だということでしょうか(数字は経常利益及び繰越金。単位千円)。

北海道         名寄東病院                         987(78)    
青森県         南部町国保名川病院            104,051(99,732)    
新潟県         南魚沼市ゆきぐに大和病院    120,646(112,795)    
新潟県         南部郷厚生病院                   115,767(31,180)
石川県         小松市民病院                      469,292(420,580)    
石川県         国保能美市立病院                205,490(191,790)
石川県         石川県中央病院                  16,019,043(385,528)
茨城県         東海病院                           27,087(24,197)    
静岡県         焼津市立総合病院              898,376(880,907)    
愛知県         小牧市民病院                     1,251,419(1,048,568)    
愛知県         国保東栄病院                    61,666(1,004)    
岐阜県         大垣市民病院                    1,947,643(530,492)    
岐阜県         美濃病院                          278,837(133,419)    
岡山県         鏡野町国保病院                 55,350(41,721)
徳島県         国保勝浦病院                    18,224(3,450)    
香川県         坂出市市立病院                 135,988(55,009)
香川県         綾川町国民健康保険陶病院   96,396(38,687)
愛媛県         西予市立宇和病院               77,007(74,494)    
愛媛県         西予市立野村病院               138,099(119,515)    
長崎県         佐世保市立総合病院           1,045,252(630,443)
長崎県         上五島病院                       198,368(135,189)    
長崎県         対馬いづはら病院               226,159(165,215)    
熊本県         水俣市国保総合医療センター 840,925(294,595)
大分県         中津市民病院                     496,137(257,119)
鹿児島県      鹿児島市立病院                 409,453(318,897)    
鹿児島県      垂水中央病院                    50,909(32,412)
鹿児島県      霧島市医師会医療センター    348,953(70,741)
沖縄県         中部病院                            739,121(700,597)   

ちょうど以前に「新小児科医のつぶやき」さんが2006年度分の同様のデータを取り上げられていて、この時点では900余の自治体病院のうち繰入金抜きで黒字を達成しているのが14病院だったと言うことですから実に倍増しているじゃないか!と言うべきか、それとも全体の1.5%が3%に増えただけで大勢に変化はないと考えるべきか、果たしていずれでしょうか?
もちろん公立と民間とに関わらず、日本では病院というものは営利を追求してはならないという決まりになっていて、その中でも公立病院は民間では無理な不採算部門を担うという責務があるわけですから、基本的に大きく黒字を計上するということはまずないのは当然ではあるわけです。
しかし自治体からすれば病院を維持する必要(あるいは意志)があって毎年少なからぬ損失分を補填しているわけで、それを補助金を出していれば黒字になっている、だから経営は改善されつつあるし問題ないじゃないかと言われては立つ瀬がなさ過ぎるというものでしょう。
この全国自治体病院協議会なる組織は「合理的かつ効率的な病院経営に努めることにより、健全で自立した経営基盤を確立する」ことを行動指針に掲げているくらいですから、経営努力を重ねれば公立病院も黒字化出来るんだよということを言いたいのかも知れませんが、これまた恣意的にも使い勝手の良さそうなニュースではないかと思えますね。

|

« 救急医療 誰だってスーパードクターにあこがれるものです | トップページ | 生保問題よりワープア問題の解消を »

心と体」カテゴリの記事

コメント

なんで官民比較のサンプルが医者なんだ?

投稿: aaa | 2012年7月19日 (木) 08時56分

これで一気に公立病院から逃散が進むかな?

退職金、最大4割増しで調整=公務員の早期退職を促進―政府
時事通信 7月14日(土)2時33分配信

 定年前に自主退職する国家公務員向けの退職金優遇制度について、政府が対象を現行の「50歳以上」から「45歳以上」まで拡大する方向で調整を進めていることが、13日分かった。退職金の割増率も現行の最大20%から、40%程度まで引き上げ、給与水準が高い中高年職員の退職を促す。国家公務員の総人件費削減策の一環で、来週以降、職員労働組合に正式提案する。
 現行の早期退職特例措置は、勤続25年、50歳以上の職員を対象に、個別の職員に辞職を促す「勧奨」などで退職する場合に、退職金を定年までの残年数1年につき2%加算する仕組み。50歳で退職すれば、退職金が20%上乗せされる。新制度では、50歳で25%、45歳で40%程度の割り増しとする見通しだ。 

投稿: | 2012年7月19日 (木) 10時26分

病院の医師募集の求人情報をきる限り、管理職以外の自治体病院の給料の安さには驚きます。
ただこういう数字は内情を何も知らない一般人向けですから、レトリックで何とでも操作できるでしょうね。
数年前に患者側からよく聞いた意見としては「自治体病院はDrもコメディカルもドライでサービス精神ゼロで人間味がなく雰囲気も暗い」
日本の多くの地域が民間病院はないに等しく事実上自治体病院しか存在しないですから、嫌応でも住民はそこにお世話になるしかない。
そこに競争原理は一切存在しない。電力会社がやりたい放題なのと何ら変わらない構図です。
親方は市町村で事務長も院長も大概役所とか地方の大学病院などからの天下りポストですから、
この地域の病院を良くしようなどという情熱や責任感など持てるか甚だ疑問です。
現実的には給与や待遇で問題があるので診療科医師全員が逃散して閉鎖など日本各地では日常茶飯事でしょうね。あまり報道されませんが。

投稿: 元神経内科 | 2012年7月19日 (木) 11時26分

どういう病院が黒字になってるか調べて見るとおもしろそうですけど
公立病院の職員のやる気の無さ傲慢ぶりは目に余りますが、それ以上に腹立つのはそいつらに文句つけるまともな医師よりもそういうDQN職員の方がずっと長く勤めていい給料もらってたっぷり退職金もらってるってこと
つまりは病院にとってああいったDQN職員の方がいい人材ってことですか?
もうそんな病院で働く気もさらさらないから関係ないっちゃないんだけど思い出しても腹立つよな~

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年7月19日 (木) 12時11分

>公立病院の職員のやる気の無さ傲慢ぶりは目に余りますが

それ本当ですか本当なんでしょうね。
自分のつたない経験では公立病院の医師の上から目線ぶりこそ日本一に思えます。
あんなに威張らなくてもいいのに。
はいはいって聞いてるけど録音されてるとか思わないのかなあ。

投稿: 黒字公立病院職員 | 2012年7月19日 (木) 20時40分

「拙い」ってのは、あまり経験を表現する場面では
使わないですよね、出来が悪い、へたっぴってニュアンスですから。
経験が不足している事を謙遜した表現にしたいなら
「寡聞」とかの方が、しっくり来る気がしますよね。
… 
でも なーんだか目に浮かびますよね、
こんな風に当たり前の事を穏当に指摘してるだけなのに、
村社会の住人達に「上から目線だ!偉そうだ!」って
影でボロクソに言われてる医師の絵が。

投稿: ああ なるほど | 2012年7月20日 (金) 07時23分

黒字公立病院職員さまへ
医者のほとんどは複数の病院での勤務経験があります。私の場合は週1回のバイトも含めれば11カ所です。
ですので、どうしても他の病院と比較してあれやこれや言ってしまう面は否定しません。
ただ、私の経験だと公立病院の医者の方がいばりちらしているという印象はありませんが・・・
もし民間病院での勤務経験が無いのなら、一度、民間病院で研修されることをお勧めします。

投稿: クマ | 2012年7月20日 (金) 07時57分

どこの職場であれ心ある人は皆何かおかしいと感じつつ仕事をしてるんだと思いますよ。
ただやはり医師はあちらこちらの仕事経験がありますから、どうしても民間と比較してしまうのは仕方ないですね。
医師、事務に限らず有能な人ならもっと給料のいい民間に引き抜かれるでしょうから、長年公立病院一筋でずっと勤務している人はそういう人なんだろうな…と偏見はもたれやすいとは思いますが。

投稿: 管理人nobu | 2012年7月20日 (金) 08時40分

ポストの記事はどうなんでしょう?官公どちらにもある仕事でバス運転手や清掃作業員を取り上げるのもいまさらですし、意図があってかどうか判断しかねますけど。
ところで公立病院の歯科医師がこれだけ高給が続いてるなら民間の相場より高いと思うんですけど、もしかしてポストの奪い合いになってるんでしょうか?

投稿: ぽん太 | 2012年7月20日 (金) 16時03分

ぽん太さまへ
この統計に出てくる歯科医師って、医系技官のことではないのでしょうかね?
あと、医師と歯科医師の年収が1円単位まで同じというのが解せません。

投稿: クマ | 2012年7月20日 (金) 23時03分

言われてみるとおかしいと思って資料をあたってみたのですが、国も地方自治体も発表している数字は「医師・歯科医師」というくくりでひとまとめになっているみたいです。
医師は総数が少ないので歯科医師と一緒に集計したんでしょうけど、ポストの書き方はまぎらわしいですね。

平成23年4月1日地方公務員給与実態調査結果
第2 統計表I1 一般職関係 第4表~第9表の4(PDF)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/h23_kyuuyo_1_03.pdf

投稿: ぽん太 | 2012年7月21日 (土) 08時42分

ぽん太さまへ
リンク張って頂いており有難うございます。”公立病院の統計資料”
2014年5月に新アドレスへ移転しました。データ集だけですが、必要があればご利用ください。
yychan

投稿: yychan | 2014年6月12日 (木) 12時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/55225613

この記事へのトラックバック一覧です: 最近は公立病院が景気いい?!:

« 救急医療 誰だってスーパードクターにあこがれるものです | トップページ | 生保問題よりワープア問題の解消を »