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2012年7月30日 (月)

地域医療再編 志木市民病院小児科は結局消滅へ

地域医療の崩壊が言われる中で、最近は各地で市民団体による病院存続活動も盛んになってきていますけれども、市民の要望と医療行政とが必ずしも同じ方向を向いているとは限らないようです。

「病院機能の充実を」 栃木の病院統合 市民団体が要請/栃木(2012年7月21日下野新聞)

 市民団体「栃木地域の医療を考える会」は20日、下都賀総合病院など同市内の3病院統合について、総合病院的な機能の充実などを求めた要請書を県や栃木市、関係医療機関などに提出した。

 同会は一木明弁護士ら5人が代表世話人を務める。要請書は、同会が今年2月から独自に実施したアンケートの中間報告を基にした内容。アンケートは3千人を目標とし、同日までに1360人から回答を得たという。提出先には中間報告を添え、その内容の尊重も求めた

 アンケートを踏まえ「分娩ができる産婦人科と小児救急医療体制の充実」「初期対応が重要な脳血管疾患の専門的な救急医療体制確保」などが重要と指摘。3病院統合計画では救急窓口を第1病院の1カ所に絞ることになっているが、「第2病院にも救急体制が必要」としている。

 経営形態は「公立や公的病院を望む声が87%と圧倒的多数だった」という。その上で「診療科を多く備えた総合病院的な機能を求めている」としている。

再編:栃木・新病院の体制、アンケート尊重を要請??市民団体 /栃木(2012年7月21日毎日新聞)

 下都賀総合病院など栃木市の3病院が経営統合してできる新病院について、市民団体「栃木地域の医療を考える会」(代表世話人、一木明弁護士ら)は20日、同会のアンケート結果を尊重するよう求める要請書を福田富一知事や鈴木俊美市長らに提出した。

 同日、県庁で記者会見した一木弁護士らは「住民の意見を適切に反映する手段が十分に講じられていない」として、今年2〜6月、アンケートを実施。1360人から回答を得た。「充実を求める診療科」には、産婦人科(362人)と小児科(333人)との意見が多数を占めた。また、581人が「病床・病院数を縮小しないでほしい」と回答した。

 これを受け、同会は(1)分娩(ぶんべん)できる婦人科と小児救急体制の整備(2)脳血管疾患対応の救急体制の確保(3)病床350床前後の規模の確保−−などを求めた。【中村藍】

それはもちろん市民の立場にしてみれば、どこにでも救急受け入れ可能な病院がある方がいいだろうし病床を減らすなんてトンデモナイ、むしろ全診療科取りそろえた立派な総合病院で診療体制を充実し、しかも何かと我が儘も利く公立病院の方がいいという意見も理解は出来るのですけどね。
以前に当「ぐり研」でも岩手県での公立病院再編計画の話を何度も取り上げましたが、あの時にも全県的な反対運動が巻き起こり大騒ぎになっている中、もうこのままでは医療が持たないと知事が土下座までして再編を強行したという経緯がありました。
現民主党政権は医療主導による経済成長論を主張していますけれども、実際問題医療費の公的負担はこれ以上増やせないということが確定的である以上、少なくとも皆保険制度下による診療に関してはパイの大きさはすでに決定されてしまっているとも言え、限界なき拡大路線を前提にした医療から総量が決まっている医療資源をいかに効率よく配分するかを問われる医療へ軸足を移していく必要が出てきます。
ある方面へと資源を集中すれば別な方面では引き上げを行わなければならないのは自明の理ですが、冒頭の記事にもあるように市民の理解をいかにして得ていくかが最大の課題になりそうですね。

志木市民病院:小児科入院、今月で休止 2次救急医療は埼玉病院カバー /埼玉(2012年7月18日毎日新聞)

 志木市民病院が小児科の入院医療を今月いっぱいで休止する問題で、上田清司知事は17日、同病院が担当してきた毎週月、水曜日の2次救急医療について、独立行政法人国立病院機構埼玉病院(和光市)が引き受けることで合意したことを明らかにした。県庁で記者団の質問に答えた。

 朝霞、志木、和光、新座の4市の2次救急医療は毎週火、木〜日曜日については従来も埼玉病院が担当しており、志木市民病院の担当曜日分を合わせて、全曜日埼玉病院がカバーすることになる。【木村健二】

志木市民病院での1次小児救急休止 ◇朝霞地区医師会/埼玉(2012年7月27日朝日新聞)

 志木市立市民病院が当直医の不足を理由に、小児科の入院・2次救急診療を7月末で休止する問題で、朝霞地区医師会は26日までに、同病院で軽症患者を対象に続けてきた1次小児救急診療を7月末で休止することを決めた。今後は、志木・新座・朝霞・和光の4市域で唯一の2次小児救急機関となる国立病院機構埼玉病院(和光市)で行う方針だ。

 同医師会は2008年4月から、入院が必要な重症患者を診る2次小児救急機関である市民病院の常勤医を支える目的で、開業医が市民病院に出向き、平日と土曜の夜間の2時間、軽症の小児救急患者を診てきた。だが、市民病院の休止で、埼玉病院への支援に転換することにした。

地区医師会 医師派遣取りやめへ 志木市民病院 小児救急・入院休止で /埼玉(2012年7月27日東京新聞)

 志木市立市民病院が小児救急・入院患者受け入れを今月末で打ち切ることを受け、地元の朝霞地区医師会は今月いっぱいで、同病院への医師の応援派遣を取りやめることが二十六日、分かった。医師会は今後、和光市の国立病院機構埼玉病院に医師を派遣、二次救急医療圏の機能維持を図る方針だ。

 応援派遣は、市民病院の医師不足や地域の小児救急病院の減少に対応するため、二〇〇八年に始まった。現在、域内の小児科・内科の開業医ら約三十人が、輪番制で午前八時~午後十時に診療に当たっている。

 だが志木市は今月、市民病院の当直医が確保できないことを理由に、小児救急・入院を今月末で打ち切ると発表。長沼明市長は「医師が確保され次第、再開する」と説明しているが、県や周辺市からは「医師の確保は難しく、事実上の撤退になるだろう」とみられている。

 こうした事態を受け、医師会は対応を協議。小児救急・入院の維持ができない中での派遣は「所期の目的から逸脱し、開業医らの負担だけが増す」として、市民病院に対し二十五日、派遣取りやめを通知した。 (上田融)

埼玉県の連鎖的な小児科救急診療撤退問題は先日も取り上げたところで、特にこの志木市民病院の場合は近隣市町村からも多数の患者を引き受けているにも関わらず志木市だけが市立病院の赤字を一手に負担してきたという経緯もあり、経営方針の食い違いによる小児科医一斉離職と相まって一気に小児救急休止に追い込まれたという経緯があります。
地区医師会が常勤医のサポートを目的として病院に応援に出るということは志木市に限らず近年あちこちで見られるようになったやり方で、これ自体は厳しい労働環境から逃散相次ぐ勤務医の激務緩和策として相応に意味のある行為ですけれども、あくまでもいざというとき入院診療等を担当する常勤医がバックアップとして控えているからころ非常勤の応援で診療が回るのは当然のことですよね。
今まで同地区の小児科二次救急は月・水が市民病院、他を国立埼玉病院が担当していたということですが、今後埼玉病院に一極集中するということで今度は同病院が過負荷に追い込まれるかも知れず、母屋が崩壊したのに軒先だけ維持しても仕方がないと地区医師会が埼玉病院へ派遣先変更を決めたのは極めて合理的だったと言えますが、今まで市民病院小児救急を受診していた近隣住民がどう考えるかですね。
「今まであったものが無くなるとはどういうことだ!」「市民の命を見捨てるのか!」と市民団体なりから抗議の声が上がることは想像に難くありませんが、幸いにと言うべきか市民病院とは名ばかりと言っていいほど年間1万人以上の小児救急患者の8割は無関係な周辺市町村からの患者だったと言いますから、志木市としてもスポンサーたる市民の納得を得る努力はそれほど大変ではなく済むのかも知れません。

いずれにしても埼玉病院にしてもまさかに小児科医が暇を持て余していたとも思えず、今後週5から週7で輪番(と言うのか?)を引き受けることになれば今まで以上に患者が集中するはずなんですが、これを気に小児科医療資源を埼玉病院に一極集中させるべきなのか、それとも新たな拠点病院を用意して分散させるべきなのかも問題になってきます。
救急搬送などではここにしか送り先がないというケースの方が搬送先探しに手間取ることがないし、また一極集中で患者が殺到すれば救急が今まで以上に大混雑になるでしょうから結果として軽症者は自主的に受診を手控えるという効果も期待出来ますが、一方で市民からすればもっと近くで診てもらいたいといった要望が出てくることは当然予想できますよね。
その点でおもしろいのは埼玉県の上田知事のコメントなのですが、当面月・水の二次救急輪番に関して埼玉病院が引き受けると言質を得たと逝っている一方で10月以降は「富士見市のイムス(イムス富士見総合病院)に代わってきます」と説明しているものの、この病院は確かに小児科常勤医1名がいらっしゃるものの現在小児入院患者は受けていないというのですね。
そもそも常勤3人の市民病院も破綻したのに常勤一人の病院に代替を引き受けられるものかという疑問がありますが、このあたりどこまで病院側と話を詰めてしゃべっているのか、まさか後になって単にそうだったらいいなあという願望を口にしただけだったなんて言い訳をしなくて済むように、各方面にきちんとした根回しが必要となるはずです。

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コメント

開業医が30人いるなら輪番で夜間一次救急やればいいのと思ったんですが、スタッフのコストや検査等々考えると病院に集まる方が安上がりなんでしょうね。
それにしても開業医を締め付けてきたのもこうやって病院に根こそぎ動員するための布石だった、なんてことはないでしょうね?

投稿: ぽん太 | 2012年7月30日 (月) 08時42分

救急病院に応援で来た開業医が大量に外来を診て、次々に入院させる

常勤医は疲弊

開業医はそんなのお構いなく、必要性があるんだからと入院させる

応援を呼ばないと診きれないほどの外来体制から舞い込む重症入院を捌ききれる訳はなく、常勤医退職し開業へ

入院体制が維持できなくなり、救急病院を返上

退職後に開業した医師も合流し、開業医達は次の救急病院に集結

そちらの救急病院も救急体制崩壊へ

投稿: | 2012年7月30日 (月) 10時11分

いくら効率重視でも一次も二次も一カ所に集中じゃ相当な激務でしょうに応援の先生も体がもつかな?
市のHPでも特に受診を控えろとも呼びかけてないので、これ最初の一人二人が抜け出したら俺も俺もで一気に連鎖崩壊する気がしますな

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年7月30日 (月) 12時32分

>>開業医はそんなのお構いなく、必要性があるんだからと入院させる

そりゃあ、入院が必要な症例をうっかり帰宅させて何かあったらエライ目にあいますから、入院させますわな。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年7月30日 (月) 12時59分

外来と病棟とで担当者が異なると利害が対立するのはよくあることなので、結局は納得出来るだけのインセンティブを用意出来るかどうかだと思います。
ただこういう施設では外からのお客さまである開業医には手厚く報いても、釣った魚に餌をやることはそうそうないんじゃないかと。

投稿: 管理人nobu | 2012年7月30日 (月) 13時54分

患者が集中して破綻するのが先か、待ち時間の長さにコンビニ受診が減るのが先かw

投稿: aaa | 2012年7月30日 (月) 14時54分

イムス富士見総合病院の小児科の月水の外来に出ている清水先生というのは、志木市立の前院長でしょうか?
イムスのHPにも小児科拡充のため、保育士、看護師募集とあるので志木市立の小児科Drが10月以降に移動してくるのかもしれませんね。
だとしたら、待遇の悪い公立病院を辞めれれて良かったのかも(イムスの待遇はしりませんが)。

投稿: りゅう | 2012年7月31日 (火) 17時40分

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