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2012年7月 3日 (火)

厚労省が病院の情報開示を規制?!

本日の本題に入る前に、先日こんな記事が出ていましたが、なんだかんだで今のご時世夢を追うことが出来る人はやはり経済的に余裕があるということなんでしょうかね?

「医者になる夢叶えたければ…」 裏口入学仲介料名目で3000万円詐欺/東京(2012年6月28日産経ニュース)

 「有名私立大学の医学部に裏口入学できる」と持ち掛け、東京都杉並区の50代の男性から仲介料名目で現金3千万円をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は28日、詐欺の疑いで、住所不定、不動産コンサルタント会社役員、永江七三男(54)と、石川県白山市笠間新、無職、藤島峰一(48)、東京都港区北青山、会社員、野沢仁(56)の3容疑者を逮捕した。いずれも容疑を否認している。

 同課によると、男性は医者を目指し十数年勉強していたが、医学部に合格できなかったため裏口入学を模索。知人を通じて知り合った永江容疑者らから医学部系予備校の実質経営者に引き合わせられ、裏口入学を持ち掛けられたという。

 逮捕容疑は平成20年6月、男性に対し「私大医学部入学にはこの(実質経営者を通じた)ルートしかない」などと言って、都内の有名私大医学部への裏口入学仲介料として3千万円を永江容疑者の口座に振り込ませ、だまし取ったとしている。

 実際にはこの実質経営者は裏口入学に関与しておらず、男性が20年12月に警視庁に告訴していた。男性は別の男ら数人からも同様の手口で現金2千万円をだまし取られているといい、同課が捜査している。

もちろんだまし取る方が悪いのは言うまでもないのですが、しかしすでに50代で十数年間受験失敗を繰り返しているということは失礼ながらちょっと無理目ではと思える状況で、それをお金で何とかしようと考えてしまう時点でどうなのかということです。
このご時世にぽんとこれだけのお金を出せるくらいですから、あるいは社会的にある程度功成り名を遂げた方で後は名誉なりステータスなりが欲しかったということなのかも知れませんが、この調子では仮に合格していたとしても卒業し医師免許を取得するまで一体幾らのお金がかかったものか判りませんよね。
近ごろでは時折偽医者騒動などもありますから、非正規ルートとは言えあくまで医師免許を取ることにはこだわった分良心的だったという考え方も出来ますが、それにしても正直その努力とお金を別な方面に振り向けていればもっと有効活用出来たのではないかと思えてなりません。
とにもかくにも医師という商売がそれほど魅力的なものだと考える人が世の中に結構いるものだと言うことなんでしょうが、当事者にしてみればそんなに恵まれたものではないと言う声もあるようで、例えばこんな記事が出てきていますよね。

国立病院の勤務医が給与削減に反発 「人材流出と医療崩壊を招く」(2012年7月1日産経ニュース)

 政府が国家公務員の給与削減に合わせ、国立大付属病院や国立病院にも給与引き下げを求めているのに対し、勤務医らが「民間より低い水準をさらに引き下げると、人材流出と医療崩壊を招く」と反発。現場の医師は慢性的な人手不足や過重労働の中でがん治療などの高度医療や地域の救急医療を担っていると訴えており、交渉は難航しそうだ。

 国家公務員の給与は、大震災の復興費に充てるため、4月分から平均7・8%減に。政府は5月、削減対象を国立大や国立病院を含む独立行政法人の職員にも拡大すると表明。国立大付属病院でつくる病院長会議などによると、国立大病院の医師の平均年収は、40代の助教で822万円(平成20年度)。国立病院の勤務医の平均年収は、厚生労働省調査で1468万円(22年度)。民間病院の勤務医の平均年収は1550万円で、開業医は2755万円(22年度)。病院長会議は「格差が開けば、国立離れに拍車が掛かる」と危機感を募らせている。

医師職の相場から比較して額面で安いことも以前から言われている問題なのですが、格差があると言っても800万もあるなら十分恵まれているじゃないかと考えると現場の不満を理解することが出来ません。
大学や国立病院の場合は常勤に入り込んでしまえば公務員としてそれなりの給料がもらえるのですが、実は非常に多くの医師が無給ないしは極めて厳しい待遇のままに留め置かれているという現実があり、高度医療を提供する基幹病院としての激務と相まって医師達から不評を買う大きな原因になっているのですね。
この理由として公務員扱いであることでスタッフの定員が決まっていて、しかもその定員というものが法定の定数を元に算出された数ですから実際に現場を支えるには到底足りない、それでは不足する分をどうするかと言えば例えば多くの医師を書類上は日雇いの非常勤扱いにしてただ同然で働かせているわけです。
無論こんなブラック企業めいたことが長年の伝統となっている以上今どき医師の間でも不人気になってくるのは当然ですし、不当労働行為の是正という観点からもこうした病院からはどんどん離れていただいた方がよろしいんじゃないかとも思うのですが、もちろんそうした待遇で働かせている側にしてみればまた別な考え方もあることでしょう。
本来独立行政法人というのはこのあたりの人事面で裁量をふるいやすいようにということで国立からの移行が図られてきたのだと思っていたのですが、幾ら現場が不満をため込み逃散したところで頬被りを決め込んでいながら、自分たちの尻に火がつけば大騒ぎし始めるというのではますます国立離れに拍車が掛かるだけに終わるんじゃないかと言う気がします。

ま、今どきそうした奴隷病院で働きたい人は一部の奇特な考え方の持ち主だという意見もありますから、まだしも残っていた真っ当な常識の持ち主がまともな労働環境に移行し不良医療機関が淘汰される方が医療全体にとってはプラスだと思いますが、いずれにせよ今の時代病院も経営上手でなければ優秀なスタッフを数多く好待遇で抱え込むことなど出来ず、またスタッフを集められない施設は経営も失敗するということです。
その点で患者以上に医師にとっても病院の行う医療の質は気になることで、ろくなスタッフもいなければ低レベルの医療しかやっていない病院に今どきまともな医師が集まるはずもなく、逆に優秀な医師が呼び水となって熱心な医師が次々集まってくる病院ともなれば医療レベルも上がりますから、医師が競って働きたがるような病院ほど患者にとってもよい病院であるとも言えそうですよね。
待遇面にしろ診療内容にしろ病院はそれぞれに違うもので決して同じではない、それを認めるからこそ不当に待遇の悪いところでは改善しなければという話にもなるし、しっかりした医療をしてスタッフの士気も高い病院であれば自分もそこで働きたいと言う気にもなり、結果として誰にとってもよろしくないブラック病院が淘汰されていくということにつながる道理です。
その際に近場の施設であれば噂話や学会等での発表を見ていればそれなりに情報も集まるにしても、あまり伝手のない遠方の病院に就職したいとなった時にやはり医師も患者と同様ネット情報などを真っ先に集めたくなるというものですが、そうした情報集めを妨害するかのように先日厚労省からこんなガイドライン案が出てきたということが報じられています。

「手術件数日本一」事実でも掲載控えて- 医療機関のHP、8月にもGL通知(2012年6月29日CBニュース)

 厚生労働省は29日、「医療情報の提供のあり方等に関する検討会」の会合に、医療機関がホームページに記載する内容のあり方を定めるガイドラインの案を提示し、大筋で了承を得た。同案では、たとえ事実であっても、「肺がんの手術件数が日本一」といった、ほかの医療機関と実績を比べて優位を示そうとする事項などを、ホームページに掲載すべきでないとしている。厚労省は、8月にも局長通知でガイドラインを示す。

 厚労省案がガイドラインの対象としているのは、医療機関のホームページや、そのページとリンクしている個人のブログなど。「日本一」などの文言のほか、「芸能プロダクションと提携している」といった、ほかの医療機関より優れているとの誤解を患者に与えかねない表現は、事実であっても掲載を控えるよう求める
 また、▽手術結果をよく見せるため、光の条件を変えて撮影したり、撮影後に加工したりした手術前後の患者写真▽「一日で全ての治療が終わる」「どんな難しい症例でも必ず成功する」などの、客観的に事実だと証明できない表現▽「こんな症状が出ていると、命にかかわるので今すぐ受診を」といった、科学的根拠が乏しい情報に基づいて過度に不安をあおる表現▽「期間限定の半額キャンペーン」などの、早急に受診する必要性や費用の安さを過度に強調する表現-などを、掲載すべきでない事項として挙げている。

 このほか、自由診療を行っている医療機関に限り、治療の平均的な内容や費用、治療のリスクなどの記載を促す。

 同案は、同検討会が3月までにまとめた医療情報提供に関する報告書を基に、厚労省が作成した。この日の会合で、同検討会の委員からは、「ガイドラインが目指しているのが、(患者とのトラブルが問題視されている美容医療などの)自由診療のホームページをきちっと規制していくことだという文言を、明確に加えてほしい」(加納繁照・日本医療法人協会副会長)などの意見が出た。厚労省は修正を検討した上で、7月中にパブリックコメント(意見公募)を行う方針だ。

 ガイドラインは、あくまで医療機関の自主的な取り組みを求めるものだが、ホームページの掲載内容に問題があった場合、「これを基に、都道府県が指導することができる」(厚労省の担当者)という。【佐藤貴彦】

見ていただきますと判る通り自由診療クリなどの規制を主体に考えたらしい文言が多く並んでいますが、無論保険診療の一般医療についても深く関わってくる部分も少なからずあり、特に注目されるのが「たとえ事実であっても、「肺がんの手術件数が日本一」といった、ほかの医療機関と実績を比べて優位を示そうとする事項などを、ホームページに掲載すべきでない」といった言及があることです。
ご存知のように近年では医療に限らずランキング本というものが非常に盛んで全国○○に強い病院なんて本が市中に氾濫している、そして何より患者の自己決定権を重視するというのであれば情報開示が重要であるとして、各地の病院でも治療成績などがどんどん公開されるようになってきたという流れがあったわけですね。
最近は美容整形など自由診療のクリニックによる広告なども増えてきていて、元々医療法によって広告が厳しく規制されてきた医療業界でどこまでが許容されるべきかということが議論になってきましたけれども、もちろん医学的に根拠のない主観的な表現などはともかくとしても、治療件数など客観的に数字が出るものまで規制するというのはずいぶん厳しいんじゃないかという印象を抱きます。

手術などは年に10件しかやらない施設よりも年に100件やっている施設の方が手慣れていて上達もするだろうと誰でも判る話で、手術件数が多いということはそれなりの医療水準を担保する大きな目安になると思うのですが、事実をもってアピールするのもケシカランと言うのは要するに他よりも優れている、劣っていると比較すること自体がいけないということですよね。
こうした話が出てきた背景を想像してみるのですが、国民皆保険制度というものは日本全国どこの医療機関でも同じ質の医療が提供されているという非常に空想的な前提に立って成立していて、逆に言えば施設間で医療の内容やレベルに差があるかのようなことを言うのは皆保険制度の崩壊につながると、以前から一部方面の方々が熱心に主張してきた経緯があります。
こうした方々にしてみれば医療機関の間で差があると認めるなどとんでもないと言うことになるのでしょうが、そうであるなら同じ事をやっている以上は待遇面でも同じであることをも要求していくべきであるのに、そちらに対しては自分達はすでに楽して儲かる立場に安住しているから面倒くさいことは近くの国立病院に丸投げしておけばいいやで放置しているというのもおかしな話でしょう。
無論、見た目の実績を向上させるために難しい患者は引き受けないなど一部に実績優先主義の弊害も見られるのは確かですけれども、医療機関に明らかな差があることを認めて真っ当な競争意識を芽生えさせることが診療の質を引き上げ、そして一部で続いている不当な奴隷労働強要を改善していくための一番の近道になるんじゃないかという気がします。

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コメント

>たとえ事実であっても、「肺がんの手術件数が日本一」といった、ほかの医療機関と実績を比べて優位を示そうとする事項などを、ホームページに掲載すべきでない

基本美容がターゲットのはずが例が肺癌なものだから妙なことになってしまってるような。
でも美容だけ表示ダメで保険診療ならいいってのもおかしいですしどうするんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2012年7月 3日 (火) 08時47分

減給が嫌なら辞めろw
代わりがいるかどうかなんて知ったことじゃない

投稿: aaa | 2012年7月 3日 (火) 10時13分

確かに大学や国立の雁字搦めのシステムを何とかしようとするくらいならさっさと集団逃散して潰した方が早そうだと言う…

投稿: 管理人nobu | 2012年7月 3日 (火) 12時40分

最近の私学は金があっても合格させないんだね
昔はお布施さえたっぷりはずめば名前書くだけで合格だと言ってたのに

投稿: 柊 | 2012年7月 3日 (火) 13時51分

医療機関の広告に関しては制限が多いです。しかしながら​、根本的なところで無法地帯となっています。開業医の標​榜科です。

開業医で内科・外科・小児科となっている場合、​三科とも十分な経験はないのが実情です。
実際、経営上の観点からクオリティが保てないにも関わら​ず専門外を標榜していることが見受けられます。またこの​ことに関して法的な制限は無いに等しいです。

極端な例では、最近有罪判決となった山本病院院長。呼吸器外科医らしいですが、儲かるとい​って大阪で眼科を開業。診療レベルが低く、トラブル多発​で撤退。奈良で病院を開業、生活保護患者相手に専門外の​診療、不正請求繰り返す。

コンタクト店横の眼科クリニック、眼科医が足りずに内科​医も結構いたようです。

標榜科も、ある程度のクオリティが必要と考えます。専門​医でなくとも2年以上病院でのトレーニング無い科目​は標榜できないように制限は必要でしょう。それ以外は総​合科などと名乗るようにすればいい。

例えば外科医が開業の場合
内科・外科・小児科→外科・総合科
内科が開業の場合
内科・外科・小児科・放射線科・リハビリ科→内科・総合科

もし小児科も標榜したいのであれば、開業前にトレーニングすれ​ばよいのです。

投稿: ドロッポ医 | 2012年7月 3日 (火) 17時51分

標榜は数年前に制限されたんじゃなかったっけ?
新規開業だけだったかな?

投稿: 通りがかり | 2012年7月 3日 (火) 18時01分

近所に内科眼科歯科と掲げてる開業医がいるが、さすがに一人でやってるわけじゃないよな…

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年7月 3日 (火) 20時04分

自由標榜制見直しについて今年報告書が出るようです。
http://gurikenblog.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-29ee.html
例によって日医が強烈に反対しそうなテーマなので、成立するとしても新規開業に限定してのことになるのではと思いますが。
そもそも基幹病院での修行が必要な現行専門医制度と開業医の標榜診療科とは必ずしも折り合いが良くないですし、単純に専門医=標榜科と結びつけるのもどうかなという気もします。

投稿: 管理人nobu | 2012年7月 4日 (水) 11時24分

内科・外科・小児科ってのは元々は何科の先生になるん?

投稿: | 2012年7月 4日 (水) 13時14分

>そもそも基幹病院での修行が必要な現行専門医制度と開業医の標榜診療科とは必ずしも折り合いが良くないですし

基本私的な団体に過ぎない各学会が法的な制限をかけるってどうよ?って気がしますがかといって公的な厚労省に仕切らせるのは何故か悪い予感しかしないしw結局現状のがマシなんじゃ…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年7月 4日 (水) 14時38分

内科循環器科呼吸器科消化器科なんて看板を見ると確かに専門医なりは取ってるんでしょうけど、正直かえって何が専門なのか判りにくいですからねえ(このご時世にあれもこれもと引き受けてくれる感心な先生という考え方もありますが…)。
利用者の利便性からすれば主たる診療科一つを明確にするように、といったあたりが落としどころかなとも思ってます。

投稿: 管理人nobu | 2012年7月 5日 (木) 07時43分

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