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2012年7月 4日 (水)

健康格差 誰もが望み、その手段も手にしているのに

本日の本題に入る前に全く関係はないのですが少しばかり驚いたと言うのでしょうか、ちょっと意外性のあるこちらのニュースを紹介しておきましょう。

共産集会 医師会・JA幹部、初参加/茨城(2012年07月02日朝日新聞)

 次期衆院選へ向けた共産党の決起集会が1日、つくば市であり、県医師会の斎藤浩会長とJA県中央会の秋山豊専務が出席し、環太平洋経済連携協定(TPP)反対での協力を訴えた。党県委員会によると、県医師会、JA県中央会のトップ級が党の大規模な集会に参加するのは初めて

 来賓あいさつで斎藤会長と秋山専務はTPPについて、「イデオロギーの壁を越えて共闘を」と連携を呼びかけた。

 次いで茨城3、4、5区の立候補予定者があいさつ。志位和夫党委員長がTPPや消費増税への反対演説で締めくくった。

ご存知のように茨城県医師会と言えば先の総選挙では真っ先に反自民の狼煙を上げたところで、もともと革新系に対する理解があるということなのかも知れませんが、JA共々幾ら呉越同舟とは言え何やら違和感を感じないではいられないニュースではあります。
共産党と言えば医療費削減には反対しているところですし、地域医療に対するスタンスなどもともと医師会とも相通じるところがあるのかも知れませんが、しかし実際に彼らが傘下病院でどういう医療を行わせているかと考えて見ますと、どうもねえ…
ま、そういう余談はともかくとして、これまたある意味で共産党あたりの好きそうなテーマではあるのですが、まずはこちらの記事を見ていただきましょう。

ついに寿命もおカネで買う時代に? 運動習慣から垣間見える健康格差のメカニズム(2012年7月2日日経ビジネス)より抜粋

(略)
 今日、「健康格差」に関する研究が進んでいる。30年に及ぶ研究の蓄積の結果明らかになってきたことは、「豊かな人ほど健康で長生きする」という傾向である。この統計上の相関は「健康格差」と呼ばれ、世界各地で年齢性別を超えて報告されている。所得と死亡率に基づく分析がもっともオーソドックスだが、所得の代わりに資産、学歴、階級、人種などを使っても、死亡率の代わりに寿命、慢性疾患や鬱病の有無、自殺率などを使っても、同様の傾向が観察されることが大半である。WHO(世界保健機構)からは健康格差に関する報告書がたびたび出版されている。日本でも日本福祉大学の近藤克則教授(社会疫学)らの研究を筆頭に研究の蓄積が進みつつあるが、そこでは「富裕層は明るく、よく眠り、転びにくい」ということまで報告されている。健康格差は、世界レベルの疑いようのない事実として確立されつつあるといえるだろう。

 このため研究者の関心は「健康格差は存在するのか」から、「なぜ健康格差があるのか」という健康格差のメカニズムの解明に移りつつある。残念ながら、問題のスケールの大きさと複雑さのため、はっきりとした事実の解明はまだこれからであるが、本稿では主立った有力な仮説を紹介しよう。

 健康格差の理解への第1の鍵は、何が原因で何が結果かという「因果関係」にある。因果関係についての様々な議論は次の3つの仮説に整理できる。

 仮説(1):豊かさが健康に大きく影響している。
 社会疫学における基本的な立場である。まず国によって医療サービスはお金がかかるので、低所得者は満足な医療を受けられない。日本のような国民皆保険制度がある国も多いが、それでも普通は一定の自己負担が存在し、低所得者の健康の足かせになっている。そのうえ困窮すればするほどストレスは大きく、食べ物の質が落ち、住環境が悪化し、従って健康を害するというストーリーである。

 仮説(2):健康が豊かさに影響する。
 仮説(1)とは逆の因果関係である。健康は人的資本・能力の一部であり、従ってその人の労働生産性を左右し所得水準を決定する。平たく言えば、病弱であるほど学業にも昇進にも支障が出やすく経済的成功のチャンスが小さくなる、という仮説である。比較的支持する経済学者が多い。

 仮説(3):豊かさと健康の間には直接の因果関係はなく、第3の因子によってもたらされる見せかけの相関である。
 「第3の因子」のもっともらしい例としては、遺伝子や生育環境があげられる。つまり、生まれながらに恵まれた人々が裕福かつ健康に生きているだけ、という説明である。
(略)
 健康に関する議論では、時間軸も重要になる。健康は日々の出来事を反映しながら長い時間をかけて推移していくからである。時間軸を導入した理論を説明するにあたり、まず興味深いデータをお見せしたい。生活習慣病に顕著に関わってくる運動習慣に関するデータである。筆者が住むオーストラリアのデータを用い、運動習慣が所得階層によってどう異なっているかを、運動量を加味して図にしてみた(運動量は運動時間と消費カロリーから換算)。

図1 所得階層別に見た運動習慣

 低所得層は学生・主婦・非正規雇用者が含まれるため若干結果にばらつきがあるが、図からはっきり分かるのは、所得が高いほど運動習慣があり、かつ運動量も上がっていくという点である(米国でも類似の報告がある)。

 一方、学歴・所得の低い層ほど健康診断を受けない、という報告が数多くある。これは健診が無料のケースでも観察される結果である。なぜ、豊かな人ほど運動をし、なぜ低所得層は健康診断を受けないのであろうか?ここで重要なのが、人々は現在だけでなく将来を見越して意思決定を行うという視点である。ミクロ経済学を使ってこの点を考察してみよう。

 ミクロ経済学では健康を「健康資本理論」という考え方で捉える。そこでは「健康という資本」は一般の資本財と同様、放っておくと時間と共に棄損していくが、「投資」によって維持・増進できると考える。この場合の投資というのは、病院に行って健康診断や治療を受ける、体に良いものを食べ運動する、といったことである。喫煙はマイナスの投資といえる。人々は、この投資のコストとリターンに基づいて最適な投資水準を決定する

 この理論の意味するところは明解だ。経済的に恵まれた環境にいて充実した人生を意欲的に送っている人は、長生きすることで得られる収入が大きく、また充実した余暇を過ごせるので、健康投資のリターンが大きい。従って、検診も積極的に受ければ、食べ物にも気を使い、運動も積極的にする。

 他方、努力しても良い仕事が見つけられない低学歴貧困層は、富裕層に比べ、積極的に健康に気をつけるインセンティブ(動機付け)に乏しい。このグループにとっては、正しい医学知識を身につけ酒やたばこをやめるという「投資」はコストに較べリターンに乏しいのである。この理論のもっとも皮肉な部分は、健康であればあるほど、1年余分に生きるリターンが大きく、従ってより健康に気をつける、という点である。投資のインセンティブの格差が健康格差をもたらし、その健康格差がさらなるインセンティブ格差をもたらすという意味で、健康資本理論においては、健康格差は自己拡大的なのである。
(略)

元記事はかなりの長文ですのでご一読いただきたいと思いますが、誰でも食うや食わずの生活もあり得る原始時代であれば食べ物の質・量的充実や生活の安楽さが健康に大きく関与するだろうとは誰しも想像出来るところですが、ある程度中産階級が形成されとりあえず皆がそこそこ食べられるようになった後で一体何が健康に寄与するのかですね。
記事中の記述によればイギリスにおいては18世紀までは貴族と庶民の健康格差は存在せず、また細菌学の発達する19世紀までは医師と一般人の家庭で乳児死亡率にも差はなかったと言いますが、この後から医学等様々な学問が急速に進歩し平均寿命が急に伸びるようになってくるにつれ健康格差も増大するようになってきたそうです。
この場合は何が健康によいかという情報量と、それを実際に実行出来るかどうかという面で格差があったということですが、ひるがえって現代日本では誰でもテレビや雑誌で日々健康のために必要な情報は得られますし、ごく平凡な庶民家庭でも有り余るほどの栄養も取れ、そして生活保護受給者もお金持ちと同じ医療を受けられるようになりました。
普通に考えれば健康格差は縮小しそうに思えますし、実際単に長生きという点に関しては庶民もお金持ちもそう変わりはないのかも知れませんが実際には格差が拡大しているという、そして先日も取り上げました健康寿命ということについて言えば歳をとっても年齢不相応なほど元気でやっている人は庶民よりは確かに富裕層に多いという印象がありますね。

記事では誰でも何が健康にいいかを知り、実行出来る環境にあるからこそ、それを実際にやるかどうかというインセンティブが所得の差によって生まれているのだと言っていますけれども、結局は「判っちゃいるけどやめられない」を「悪いことはやめておこう」に変えていけるかどうかが分かれ目と言うことであれば、明確なエビデンスによって自己を律することが出来るかどうかが非常に重要だと言う気がします。
韓国の研究では低学歴の者ほど喫煙率が高いといい、また東北での研究では学歴の高い者ほど運動習慣を持っていると言いますから学問は身を助けるということかと思ってしまいますが、これらはいずれも何がいいか悪いかということは誰でも知っていることばかりであって、学問的知見を日常生活においても尊重するという態度が実施率の差として現れ、ひいては健康に結びつくとも受け取れる話ですよね。
なんだ、結局は科学的に根拠のあること、エヴィデンスを尊重することが重要なんだなと言う当たり前の結論になりそうですが、そういう作業に慣れている理系高学歴人間が一番健康で裕福な生活を送れるということかなと思っておりましたら、実際に小学生の頃に算数が好きだったか否かが将来の年収に大きく影響するのだそうですから、世の親御さん達は子の将来を思えば算数教育には熱心であるべきかも知れません。
しかし健康情報を積極的に収集し実行するのはいいですが、テレビなどで紹介された怪しげな健康法でかえって健康を損ねたというケースもしばしばありますから、やはりここでも引用すべきソースの信憑性にも留意すべきであるという理系人間にとっては当たり前の作業が重要なのかなと思いますね。

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コメント

自称革新が一番保守的という不思議w

投稿: aaa | 2012年7月 4日 (水) 11時47分

これみると北茨城市の市長って共産党とツーカーだったんですね。
http://jcpushiku.jp/2012/07/04/718
しかし今さら民主自民という雰囲気でもなし、まさか次の選挙は共産党支援で行くなんてことはないですよね?>日医

投稿: ぽん太 | 2012年7月 4日 (水) 12時21分

茨城すげえわ
俺らの地区じゃ農協がアカとつるむなんて言ったら大騒ぎだわ
これで組合員は何も言わんてありえん

投稿: 田舎の小市民 | 2012年7月 4日 (水) 13時25分

金持ちが長生きするなら日本人の平均寿命は今後短くなるんか?

投稿: | 2012年7月 5日 (木) 06時18分

沖縄などは占領下の食の洋食化で一気に寿命が悪化してきたと言いますから、現代でも食生活の与える影響は過少評価すべきではないのでしょうね。
ただその方向性が昔のように貧しくて食べられなくなるというのではなくカロリー脂質過剰によるものだと考えると、ハンバーガーの代わりに蕎麦やうどんなど低資質食品がB級グルメの定番になれば寿命に好影響を与えそうなんですが。

投稿: 管理人nobu | 2012年7月 5日 (木) 07時43分

香川が最長寿県になるのか胸熱wwww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年7月 5日 (木) 10時21分

讃岐うどんなにそれ?
都道府県平均寿命ランキングトップの長野ディスってんの?
http://www.japan-now.com/article/187084210.html

投稿: 信州蕎麦最高 | 2012年7月 5日 (木) 12時15分

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