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2012年6月12日 (火)

妊娠出産は避けるべきリスク?

本日まずはこちらの記事から紹介させていただきましょう。

代理出産など生殖医療のあり方、日産婦が検討(2012年6月9日読売新聞)

 日本産科婦人科学会(日産婦)は9日、東京都内で記者会見し、卵子提供や精子提供、代理出産など第三者が関わる生殖医療のあり方について検討する作業部会を作ったことを明らかにした。

 この問題に関する法案の素案をまとめた自民党有志議員から、問題点などを指摘してほしいとの依頼があり、対応した。生まれた子どもが出自を知る権利、親子関係の法的位置づけなどについて、夏ごろまでに意見をまとめる。

 メンバーは前理事長の吉村泰典・慶大教授ら5人。

 第三者が関わる生殖医療を巡っては、厚生労働省の部会が2003年、精子や卵子の提供者の個人情報を全面開示するなどとした報告書をまとめたが、法制化に至っていない

<代理出産>容認を検討 自民議員有志が法案素案(2012年6月10日毎日新聞)

 卵子提供や代理出産など第三者がかかわる生殖補助医療について、自民党の議員有志がこれらを条件付きで容認する内容の法案の素案をまとめた。これを受けて日本産科婦人科学会(日産婦、小西郁生理事長)は9日、学会内に作業班を設置して素案の内容を検討することを明らかにした。夏までに見解をまとめる。

 生殖補助医療には公的な規制がなく、日産婦は指針で、提供者の負担が大きい卵子提供や、親子関係が複雑になる代理出産を認めていない。しかし実際には提供卵子を使って体外受精を受け出産することや、夫婦の受精卵を第三者が妊娠、出産する代理出産が国内外で行われている

 素案は、こうした現状に一定のルールを設けるため、自民党の一部議員が勉強会を作り検討してきた。素案では、提供された精子、卵子、受精卵を使った体外受精を認める一方で、代理出産は原則として認めないが、子宮がないなど医学的に妊娠能力のない夫婦に限り、家庭裁判所の許可を得た上で実施する−−などとしている。営利目的の卵子、精子の提供や代理出産には罰則を設ける。また「母」の定義について卵子提供の場合は産んだ女性、代理出産では依頼夫婦の妻とするとの特例を民法に設けることも検討している。

 日産婦の吉村泰典理事は9日の記者会見で「親子関係についての法整備が必要なことでは学会内で一致しているが、素案に不備がないか、改善すべき点があるかどうかを意見集約する」と述べた。

 第三者が関わる生殖補助医療をめぐっては、厚生労働省の部会が条件付きで容認した。日本学術会議も代理出産を試行的に認める報告書をまとめたが、法整備は進んでいない。有志議員らは日産婦など関連学会の意見を反映させた上で議員立法を目指し、党内で調整している。【斎藤広子、久野華代】

この件に関してはすでに現実的にあちこちで行われている以上、学会や政治にしても何らかのルール作りもしないままではいられないのは理解できるところで、まずは議論を進め母子が医学的、法的な不利益を受けないようにしていただきたいところですね。
さて、そもそもこうした生殖医療に関しては医学的観点の他に社会的・倫理的観点から様々な議論があることは周知の通りですが、以前から当「ぐり研」でも取り上げていますように妊娠には生物学的に明確な適齢期というものがある一方で、日本人の結婚年齢がますます高齢化を続けているという社会的な現実があります。
厚労省が先日発表した2011年のデータでは女性が生涯に産む子供の数を反映する合計特殊出生率が1.39と相変わらず低い値を続けていることに加えて、とうとう女性の初産年齢が30歳を越えたということが報じられていましたが、一方で男性も5人に1人は生涯結婚しない計算になるなど結婚と出産を取り巻く状況は一向に上向く気配がありません。
そんな中で特に昨今急増する高齢出産と言うことに関連して、産みたいが産めないという夫婦に対する生殖医療の充実が社会的にも求められている一方で、しょせん生殖医療で産める数などたかが知れている、そんなことに大金を投じるなら産める環境を整備した方がいいのではないかという声もあるようです。

例えば先日各企業1439社を対象とした調査によれば、 「妊娠した女性社員は育児休暇を取得せずに、退職してほしい」 と考えている企業がなんと全体の25%にも達すると言うデータがあって、これには各方面から「むしろ正直な企業が25%しかないってことだろう」などと揶揄する声が挙がっているように、実際の職場の空気というものは「戦力にならないお荷物など不要」という殺伐としたものになっているようです。
むろんどこの会社もコスト削減が叫ばれる折、最小限の人数で回している以上一人でも抜けると残った人達が大いに迷惑するということは理解できることであって、こちらが穴埋めで死ぬような多忙さの中にあるのに育児を名目に同僚はのんびりしている、たとえ育児休暇から復帰してきたところで以前と同じ顔で接することが出来そうにないなどという同僚女性の声すらあるようですね。
ただ生物学的な出産適齢期をただでさえ超過しかねないほど晩婚化が進んでいる以上、こうした社会的な問題への対応も同時進行で行わなければならないのは当然なのですが、これらは相互に複雑に絡み合っているのだろうなと思わされるのが先日報道された有名人の妊娠にまつわる一連の報道ではないでしょうか。

第1子がダウン症候群の可能性…理子「運命受け入れる覚悟できてる」(2012年6月3日スポニチ)

 妊娠5カ月のプロゴルファー、東尾理子(36)が3日、自身のブログを更新し、11月に出産予定の第1子がダウン症候群の可能性があることを告白した。

 「クアトロテスト血液検査」を受けたことを明らかにし、「一つだけ陽性反応が出たのがあったんだ それはね、ダウン症候群」と説明。担当医には「82分の1の可能性」と説明を受けたという。

 担当医から100%の結果が判明する検査「羊水染色体分析」の受診を打診されたことも報告。「主人とゆっくり話した結果、受けない事にしました」と夫で俳優の石田純一(58)と相談し、検査を受けないことを決めたという。

 「だってどんなにユニークでも、私達を選んでくれた大切な我が子だから」とお腹に宿る新しい命へのいとおしい思いを吐露。3月に同ブログで待望のおめでたを公表した際と同様「最初から全ての運命を受け入れる覚悟も出来てる」と気丈につづり、最後は「母親が強いってのが少しずつ分かってくる気がするね」と力強く結んでいる。

石田純一 妻理子はダウン症の可能性でも「産む」(2012年6月8日デイリースポーツ)

 俳優の石田純一が8日、都内でファッションイベント「スーパークールビズコレクション」に、モデルの舞川あいく、近藤しづからと登場した。
(略)
 また、妻の東尾理子が11月出産予定の第1子にダウン症の可能性があることを、ブログで明かしたことには、「反響が大きくて本人もビックリしてます。なんとしてでも産むと強く思っているので、元気な赤ちゃんが生まれたらうれしいです」と願っていた。

高齢出産とダウン症のリスクに関してはよく知られているところで、20歳と比べると40歳では100倍にも上昇すると言いますが、東尾氏夫妻の場合はあくまで一般的リスクよりも高率であるということが判った段階であって、決して確定したというわけではないことは留意いただきたいところです。
いずれにしても高齢出産と共に各種生殖医療の発達した結果ダウン症に限らず母子共に様々なリスクが上昇しつつあることは確かであって、例えば卵子提供により妊娠高血圧のリスクが6倍に上昇するほか子宮内胎児発育不全も高率に見られるなど、様々な弊害が知られるようになってきました。
一方で高齢出産、不妊医療ということに社会の注目が極めて高まっているということもまた事実であって、例えば政治家の野田聖子氏も多くの障害を持って生まれた自身のご子息に関する一連の闘病記を公表するなど、社会に求められる時代だからこそ公人としてその真実を知らしめるべきであるという姿勢でご子息共々頑張っておられるようです。
今回高齢出産となった東尾理子氏夫妻の公表もそうした公人としての使命感のようなものも背景にあってのことなのだろうと想像するのですが、これに対して別な著名人からはこうした声も出ているということを紹介しておきたいですね。

東尾理子の告白にダウン症の子を持つ松野明美が複雑胸中吐露(2012年6月7日NEWSポストセブン)

 6月3日、現在妊娠5か月の東尾理子(36才)が自身のブログで、不妊治療の末授かった赤ちゃんにダウン症候群の可能性があることを告白した。医師からは、「羊水染色体分析をすれば、100%の結果がわかりますがどうしますか?」と聞かれたが、東尾は夫の石田純一(58才)と相談したうえで、羊水検査を受けないことを決めたという。

 そんな彼女の選択に、<強い女性ですね><勇気づけられました>など、ブログには応援コメントが3000以上も寄せられた。

 しかしその一方で、インターネットの掲示板などには、東尾の発表自体を疑問視する声も少なくはない

 元マラソンランナーで現熊本市議会議員の松野明美さん(44才)も、「公表するようなものではないと、私は思いました…」と複雑な思いをにじませた。

「東尾さんのブログを読まれて“がんばろう”と思われるかたもいらっしゃると思います。いろんな立場のかたがいるから、いろんな意見があると思う。でも子供が生まれる前から“可能性があります”というのは、何がいいたいのかなって思うんです。ダウン症の子を持つ母としては、正直少し怒りがこみあげてきました

 松野さんの次男・健太郎くん(8才)はダウン症だが、「私の元気なイメージが崩れる」「ダウン症を受け入れられなかった」などの理由で、しばらくは公にしなかった

「私の場合、妊娠8か月のときに息子に心臓病があると医師にいわれました。でもその後、羊水検査は受けませんでした。そして出産後、生後10日目で、息子がダウン症であることがわかったんです。医療は進歩しましたけど、個人的には出生前診断は余計なお節介だと思うんです。出産するとき、障がいの有無にこだわってほしくないです」(前出・松野さん)

この出生前診断の是非ということも非常に議論となっている問題で、妊婦にほぼルーチンで行われてきた超音波検査も出生前診断であり、その実施に当たっては十分な説明と同意を得ることという指針を昨年産科学会が打ち出してきたことは以前にご紹介しました通りです。
松野氏の意見もこれまた一方の主流派の代表例とも言えるものであって、これはこれで全くごもっともと言うしかないものではあるのですが、しかし冒頭の育児休暇の記事にも見られるように本来自分も同じ立場に立ち得る同僚女性が最も大きな反感を抱いているが如き現状と併せて考えてみると、本来ならこれも同じ悩みを共有し得る先輩として最も強力に支援する立場にも立てたはずなのに…とも考えてしまうのは自分だけでしょうか。
およそ何でもそうですが物事がうまく回っている時は人間心にも余裕がありちょっとした手助けや配慮も出来るものですが、状況が悪くなってくるとついつい人付き合いもギスギスしてしまうということはままあるもので、今はごく少数の例外的ケースで済んでいますけれども、今後さらに妊婦高齢化が進み様々なリスクが大々的に顕在化してきた時、妊娠出産そのものが何か悪いことのように扱われてしまう危惧すらないとは言えません。
いわゆる男尊女卑的な考え方の根幹にあるものが「男は産まない性である」と指摘する人がいますが、様々なリスクを乗り越え産むということが何やら後ろめたく不利益なことのような風潮が蔓延してしまうと、出生率も上がるどころか「何故自分がそんな面倒を引き受けないといけないの?」と言い出す人が増えてしまうかも知れませんね。

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コメント

少し話がずれますが、著名人がブログやツイッターでなんでも公開してしまうのは後でトラブルを招く元でしょう。
うっかり本音をしゃべったばかりに離婚に結びついた人もいたので注意した方がいいですね。

投稿: ぽん太 | 2012年6月12日 (火) 08時46分

社会人として仕事をしていくならぜったい産まない方がいいでしょ
専業主婦化できるメリットがあるからこそ女にも産む意味があったので、核家族で共働き前提なら産むだけ損ですよ

投稿: 柊 | 2012年6月12日 (火) 10時53分

子供一人大学出るまで育てるのに全部国公立だとしても3000万かかる
これで育つのはよくてワープア下手すりゃニートで一生パラサイト
奇跡的に何1000万も稼ぐ身になっても親に援助もしない時代だぜ?

こんな割の合わない投資誰が手を出すって?w

投稿: | 2012年6月12日 (火) 11時14分

経済的に考えれば収支が引き合わなくなってきているのは確かでしょうね。
フランスなどは人口増加策がうまくいっていると言いますが、彼の国では子を産み育てることが投資としても割にあうのだと考えることも出来るわけですから。
日本も少子化対策を追求するなら、今後はそうした経済的な視点も不可欠になってくるのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2012年6月12日 (火) 12時33分

不妊治療も併用した高齢出産が増えてくると、たとえ障害児のリスクがあっても産まざるを得ないケースも出てくるはずです
子供を持ちたいのならいつでも産みたくなったときにじゃなく、ちゃんと計画をたてて産むべきです

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年6月12日 (火) 14時47分

こういうのもある
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120612/plt1206120707001-n1.htm

投稿: | 2012年6月12日 (火) 20時03分

中絶って大多数違法じゃね?
誰も突っ込まないって何で?

投稿: 金田 | 2012年6月12日 (火) 23時31分

産みたくなかった親に育てられる子の人生は悲惨なものになりそうなので、
里子・養子縁組みといったことを広めていかないといけないと思うのですが、
おそらく現代の不妊治療にも端的に現れている、遺伝子への執着が阻害しているのでしょうね。

投稿: JSJ | 2012年6月13日 (水) 08時30分

高学歴な人達ほど結婚が遅く子供も少ないですが、これらの人々は経済的余裕がある方も多いので養育力を有効活用したいですね。
アメリカの著名人が山ほど子供を預かって養育しているのを見ると日本も何か出来ないのかなと思います。

投稿: ぽん太 | 2012年6月13日 (水) 08時50分

>アメリカの著名人が山ほど子供を預かって養育しているのを見ると日本も何か出来ないのかなと思います。

アレ絶対ペット感覚だよなw?<悪い、と言ってるわけではありません、念のため。

投稿: 10年前にドロッポしました | 2012年6月13日 (水) 09時31分

敢えて多国籍に子供を取りそろえるところがアメリカらしいかなと思いますね。
日本だと親の方が気にして血液型とかまでチェックしそうな。

投稿: 管理人nobu | 2012年6月13日 (水) 11時11分

子供をもってもいいことがないから誰も欲しいと思わない
東南アジアでは一生に受けられる医療の上限が決まっていて、家族内で使い回しが出来る国があるらしいけど
年金など社会保障を家族内で使い回せるようにして大家族ほどメリットがあるようにしたらどうかな?

投稿: たま | 2012年6月13日 (水) 12時18分

>子供をもってもいいことがないから誰も欲しいと思わない

正常な本能の欠落した自分を基準にして

「誰も」とするのは、子供作れない自分の道連れを増やしたいから
卑怯な工作をしているのですか?

あなたは淘汰されるべき人間ですから
それでいいですが
他の人まで落とすことはないでしょう

投稿: | 2013年6月15日 (土) 09時36分

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