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2012年6月20日 (水)

この夏計画停電の影響は

停止したままの原発が再稼働するかどうかも長く議論されていますが、長期的なエネルギー政策の行方もさることながらとりあえず目前に迫ったこの夏をどう乗り切るかが非常に重要な時期です。
日本の電力供給は非常に安定した高品質だと定評がありましたが、このところはむしろ停電リスクというものが話題に上るようになってきているのは困ったものですね。

計画停電備え優先業務設定/高松市(2012年6月19日四国新聞)

 今夏の厳しい電力需給に伴って計画停電が実施された場合に備え、高松市は18日、業務に混乱が生じないよう「業務継続計画」をまとめた。防災無線など情報伝達機器やパソコンのデータ保存、エレベーターの閉じ込め防止対策などを優先し、計画停電終了後に対応できる業務は、停電中は行わない

 計画は、業務時間帯の午前8時半から午後5時15分の間に、2時間程度の停電が起こることを想定して設定。各課ごとに停電時に対応する「応急対策業務」と、市民生活上で必要性が高く、停電時でも継続する「継続業務」の計164業務を選定した。

 応急対策業務では、危機管理課が本部体制を敷き、非常用防災無線を自家発電装置で稼働させるほか、ホームページや有線放送などで、市民に具体的な停電時間の周知などを行う。市消防局では、エレベーター内の閉じ込め事故の発生に備え、平常時より処理可能件数を引き上げる

 継続業務では、市民病院などで自家発電装置を活用し、通常通り業務を行うほか、こども園運営課では、園児らへの給食提供を調理時間などを変更して対応する。戸籍や印鑑登録などの窓口業務は、受け付けのみ行う

ちなみに無停電電源装置やノートPCを使っている人はまだしもですが、こういう状況になってきますといつどこで電気が途絶えるか判りませんから、くれぐれも小まめなデータの保存だけは行うようにしておいた方がよさそうです。
先頃は国から関係各社に向けて電球はもう売らないでくれ、これからはLEDに切り替えてくれなんていじましい要請まで出ていましたが、その直後に今度はLED電球が実は額面よりも暗かったなんて記事が出たものですから、国民からすればおいちょっと待ってくれという話ですよね。
そうでなくとも社会全体がこれだけの対応を強いられている状況が続けばいずれ誰だってこれは困るぞと思い始めることでしょうが、電気などエネルギーというものはおよそこれだけは必要だという場所では固定経費を削減するためにも大きな無駄は省かれているもので、それだけに計画停電です、皆で頑張って節電しましょうとなればどうしても産業やインフラ等社会生活上必要な部分に制約が来ることは免れません。
火事だけれども計画停電中だから消防車は出せません、泥棒が入ったけれども警察は出動できませんなんてことはまさかないとは思いますけれども、ある意味でそれと同等以上に困ったことになりそうな話が実際に起こってしまいそうだと懸念されているのが医療業界です。

26病院「代替電源なし」…大阪府が装備要請(2012年6月17日読売新聞)

 大阪府は13日、今夏、電力需給の逼迫(ひっぱく)によって計画停電が行われた場合、府内の病院や社会福祉施設が受ける影響について、調査結果を発表した。

 人工呼吸器など、生命維持に電力を必要とする医療機器を使用しているにもかかわらず、自家発電機やバッテリーなどの代替電源を装備していない病院が26施設に上った。府は各病院に対し、早急な装備を要請した。

 府は5月22日から31日まで、府内の全病院538施設を調査し、485施設から回答があった(回答率90%)。

 自家発電機やバッテリーを装備していなかったのは、回答した病院の5%にあたる26施設。装備済みと回答しても、一部の病棟や医療機器にしか対応していない病院が、414施設(回答した病院の85%)に上った。自家発電機の対応時間が3時間未満と回答した病院も、118施設(同24%)あった。

 病院からは「計画停電すると、救急搬送された患者をMRI(磁気共鳴画像)で検査したり、エレベーターで搬送したりすることができない」などの意見があったという。府は、装備済みと回答した病院にも、装置の点検や燃料の確保を要請。未回答の病院にも今後、対応を求めていく。

 特別養護老人ホームなど社会福祉施設2253施設への調査では、1959施設が回答(回答率87%)。人工呼吸器や酸素吸入器などを常時使用し、代替電源を必要とする入所者は計2624人だった。府は、代替電源を装備していない施設数を調べていないが、いずれの施設も「バッテリーなどで対応する」と答えたという。

 また、在宅で人工呼吸器を使用している患者611人についても調査。バッテリーを保有していない患者は17人いたが、主治医にバッテリー貸与をするよう求め、全ての患者に行き渡ったとしている。

 府はこの日、経済産業省に対して、計画停電から病院や分娩(ぶんべん)施設などを除外するよう求める要請書を提出。松井知事は、定例記者会見で、「生命の危機に直面する人がゼロになるようにしたい」と述べた。(坊美生子)

ご存知のように医療機関というところは電気関係では非常にデリケートな場所で、最近は風向きが変わっているとは言えひと頃は院内では携帯電話使用禁止なんてことが厳重に指示されてきたことをご記憶の皆さんも多いと思いますけれども、とにもかくにも人工呼吸器などがいきなり停まってしまうと困ったことになるだろうなということは誰でも想像出来ることですよね。
病院と言えば自家発電装置くらいは当たり前についているものと誰しも思うでしょうが、実際には案外用意されていない施設も多いことに加えて、古い施設ですと一応あるにはあるが実際に動くかどうかは判らないという怪しい状況にあるケースもかなり多いようです。
これに加えて勘違いされやすいのですけれども、自家発電装置というものはあくまでも非常用に用意されているものですから院内全ての機械に電力を供給するなんて余裕はない(非常用電源のコンセントはそもそも数自体限られています)、すなわちどうしたって普段通りの診療は出来ないということになってしまいます。
そして夏の間停電が続くとなりますと燃料の備蓄も不足してくる上に燃料代をどうするかという問題も発生してきますが、例えば全国的に院内自家発電のモデルケースだと喧伝している島根大病院の例を見てみましょう。

島根大学病院は使用電力の最大52%を自家発電! エコのモデル病院(同院HP)

 島根大学出雲キャンパス(医学部)では2008年から電力使用量3,510kW(空調無し病院単独使用量2,000kW)のうち、中国電力との契約電力は2,040kWで、総必要電力の42%(1,470kW)は国立大初のESCO事業によるオンサイト発電すなわちLNGによる熱電併給システム(Cogeneration)で賄っています
 冷暖房などでピークカットが必要な場合には非常用発電機2号機(重油)を随時運転し720kWを供給しています。この場合最大使用電力4,230kWの52%を自家発電で賄っていることになります。
 Cogenerationにより空調に関しては大幅な節電効果も得られており、重油からLNG切り替えによりCO2大幅削減も達成しています。
 さらに災害等による停電時には非常用自家発電機 1号機(1,200kW)とピークカットに使用している2号機(800kW)を同時使用可能で、備蓄重油で2,000kW送電を最低3日継続可能です。最悪の場合はその後、新棟屋上発電機 300kWで8時間の送電が可能で最低限の手術室やICU機能維持が可能です。

要するに素晴らしい自家発電を備えていると自慢できるような島根大病院ですら使用電力の半分が自家発電でまかなえるに過ぎないというのすから、全国各地にあるごくごく一般的な病院のレベルを想像すると到底診療に影響がないとは言えない水準であることがお判りいただけるでしょうが、これだけの電気を自前で賄うには必ずその元手が必要であるわけです。
近ごろではせっかくの小笠原TSLが採算がとれないと運行しないまま解体されてしまう程に慢性的な燃料代の高騰が続いていますが、別に自家発電をしているからと言って診療報酬に色がつくというわけでもありませんからどうしても病院の持ち出しになるということで、もともと全国一律の公定価格で利益率の低い医療業界としては経営上の影響も懸念しないわけにはいきません。
ようやくこのところ自治体と交渉して優先的に燃料供給をしてもらおうだとか、電力会社にかけあって病院に対しては計画停電の対象外にしてもらおうという動きも出ていますけれども、当然ながらこれらは全ての医療機関が対象ではなく一部の基幹病院などについての話であって、数の上では大多数の中小医療機関は自助努力に励まなければならない理屈です。

院内での診療への影響もさることながら、近所の病院が停電しているともなれば患者も電気の通っている一部大病院に集中することにもなりかねませんから、今から各施設はきちんと起こるべき状況を想定して対応を定めておかないと無用な混乱を招きかねないですね。
患者さんにも協力をいただかないことにはどうしようもない話ですが、とりあえず停電中は不要不急の受診は控えていただく、健診や定期検査等で先送り出来るものは涼しくなってきてからにするなど、いじましい努力を積み重ねていくしかないのでしょうか。

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コメント

あーうちのボロ病院に非常電源なんてないわ
DNRの爺ちゃん婆ちゃんばっかだから問題ないようなもんだけど

投稿: てっちゃん | 2012年6月20日 (水) 08時44分

いまのうちに発電機をしっかりメンテナンスしておくべきですね。
停電は判っていることなのでスタッフ教育もいるはずなんですが当院では全く話すらなくて、危機感が足りないんでしょうか。

投稿: ぽん太 | 2012年6月20日 (水) 10時25分

節電のためにテレビ消せとは絶対に言わない件について。

参考:http://www.nri.co.jp/news/2011/110415_1.html

投稿: 名無子 | 2012年6月20日 (水) 11時50分

>節電のためにテレビ消せとは絶対に言わない件について。

ああ、そのネタ今度取り上げようと思ってたのに…

投稿: 管理人nobu | 2012年6月20日 (水) 12時08分

去年の3月にかかりつけ患者が脳卒中を発症した時は計画停電中でMRI検査ができないということで、10km以内の医療機関はどこも受けてもらえず、はるか20kmほど離れた病院にようやく入院。1ヶ月間、家族が遠路遥々往復一日ががりで通院しなければなりませんでした。

特に夏や冬の午後から節電のためCTもMRIもストップする医療機関が増え、特定の病院に患者が殺到してパニックになるだろうと予想されます。
昨年の計画停電のときのように対応遅れで助からないケースも増えるでしょう。
医療機関を守ろうなどという意識などゼロですから、今後は電気の採算に失敗した医療機関は破産もありうるかもしれません。
消費税も上がって電気代も上がって、病院経営はますます火の車になり、医療崩壊から荒廃へとシフトするのは間違いないでしょう。

投稿: 元神経内科 | 2012年6月20日 (水) 14時03分

非常用の電源といっても気休めだし、電子カルテが動かなかったらどうしょうもないですね。
出来ることのみ、しゅくしゅくとやって、出来ないことは出来ないってことで。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年6月20日 (水) 15時00分

逆説的に言えば一通り医療崩壊騒動を経験した後の停電騒ぎだからこの程度で済んでるんじゃないかと
昔ながらの医療のままだったら出来もしないことまで安請け合いしてかえって重大事故が発生していたでしょ
今は出来ないことは出来ないとはっきり言うようになったから

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年6月20日 (水) 15時35分

電子カルテ動かなかったらぜんぜん診察できない?

投稿: | 2012年6月20日 (水) 16時46分

たいていの病院は停電時のマニュアルがある
非効率で限定的な診療にはなるけどね

投稿: 鉄五郎 | 2012年6月20日 (水) 22時44分

施設によって対応が異なるのでしょうが、例えば当座紙伝票での運用などが考えられますね。
検査機械がどの程度使えるかは施設によると思いますが、通常は予備電力に余裕がないので生命維持に関わるもの以外は可能な限り使わないようお達しが出るのでは?
万一にもブレーカーが落ちたりすると困りますしね。

投稿: 管理人nobu | 2012年6月21日 (木) 07時39分

まずテレビ局の節電が大切かもしれませんね、

投稿: よし@リーダシップ | 2012年9月18日 (火) 23時57分

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