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2012年6月16日 (土)

国内初 6歳以下からの脳死臓器移植

改正臓器移植法施行により今回初めて6歳未満の脳死判定が行われ、心臓他の移植手術が行われることになったと大いに話題になっています。

6歳未満初の脳死判定、臓器提供へ 両親「息子を誇りに思う」(2012年6月15日FNNニュース)

富山県の病院で、低酸素性脳症の6歳未満の男の子が脳死と判定された。判定基準がより厳しい6歳未満の脳死判定は初めてで、15日、臓器の提供と移植手術が行われることになった。
男の子の両親は14日夜、「このようなことを成しとげる息子を誇りに思っています」とのコメントを発表した。

14日午後7時、日本臓器移植ネットワークが会見を行った。
日本臓器移植ネットワークの芦刈 淳太郎医療本部長は「ドナー(提供者)の方の年齢ですが、6歳未満であります。性別は男児であります。原疾患ですが、低酸素性脳症であります」と話した。
富山県の富山大学付属病院で治療していた6歳未満の男の子が、14日午後2時すぎ、法的に脳死と判定され、臓器の移植に向けた準備が進んでいる。
臓器移植ネットワークによれば、男の子の家族には、1週間前の7日に、医師から病状が重篤との説明があり、その後、家族から臓器提供の要望があったという。
男児の家族は「本日、息子は私たちのもとから遠くへ飛び立っていきました。このことは私たちにとって大変悲しいことではありますが、大きな希望を残してくれました。息子が誰かの体の一部となって、長く生きてくれるのではないかと。そして、このようなことを成しとげる息子を誇りに思っています」とのコメントを発表した。

2010年7月、臓器移植法が改正されたことで、15歳未満でも家族の承諾があれば、臓器提供が可能になった
この結果、2011年4月には、10代前半の少年から、脳死判定ののち臓器提供と移植が行われている。
しかし、6歳未満の子どもについては、回復力が強いとされる。
2回の脳死判定は、24時間以上空けて行われる厳しいものになっており、今回は、この基準で初めて脳死と判断されたケースとなった。
日本臓器移植ネットワークの芦刈 淳太郎医療本部長は「ご家族による承諾臓器ですが、心臓、肺、肝臓、すい臓、腎臓、小腸、眼球であります」と語った。
摘出手術を15日に控え、国内初となる6歳未満の脳死移植は、さまざまな思いで受け止められている。

重い心臓病のため、2010年、カナダへ渡って心臓移植手術を受けた古家菜沙(なずな)ちゃん(9)。
これまでの治療で片腕を失ったものの、今は元気に学校へ通っている。
臓器提供を受ける立場として、母・美穂さんは、14日のニュースを複雑な気持ちで受け止めたという。
美穂さんは「ご両親に対しては、本当に敬意というか、やっぱりすごい決断をしていただいたことは、本当に、わたしたち患者にとっては、本当に救いの手だと思っているので、よく決断していただけたなっていう」と話した。

一方、1997年に娘・真理さん(当時21)が交通事故で脳死となり、臓器を提供した山口省一さん(62)は、自身の経験から、少年の家族に対する心のケアが重要だと訴える。
山口省一さんは「一部だけでもいいから、人様の体を変えてでもいいから(わが子を)生かしたい。それがほとんどの、その移植提供者の方の本音ですね。このあとが非常に苦しい思いをされるんじゃないかなというふうに思います。『本当によかったのか』と、そういう葛藤がこれから出てくると思います」と話した。

臓器移植のあり方を研究する東京海洋大学大学院生命倫理学の小松美彦教授は、子どもの救急医療体制が置き去りにされてきたと指摘する。
小松美彦教授は「脳死状態にならないような救急医療、救命医療の徹底。これを日本は拡充しなければならないと思っています。脳死状態になったお子さんも、それから臓器移植を待ってるお子さんも、両方とも救うような医療に、大きく医療にシフトしていかなければならないと思ってます」と述べた。
日本は、1歳から4歳までの死亡率が、先進14カ国の中でワースト2位となっている。
国は、子ども専門の救命救急施設「PICU(小児集中治療室)」について、診療報酬を加算するなど、2012年度から対策をスタートさせたばかり。

改正臓器移植法の施行からまもなく2年。
課題を抱えながら、子どもの移植医療は大きく動こうとしている。

「小児の移植、大きな意義」佐野俊二岡山大教授(2012年6月14日産経ニュース)

 世界的な小児心臓外科医で岡山大学の佐野俊二教授(60)は「過去の小児の脳死移植は10代であり、今回は本当の意味での小児の脳死移植となった。大きな意義がある」と評価する。

 その上で「移植を待つには補助人工心臓が必要だが、国内では体重20キロ未満の患者が安全に使える補助人工心臓は承認されていない。このため、大人のように補助人工心臓をつけて移植を待つことができない子供は、海外へ渡航せざるを得ない現状がある。例えばわれわれの病院にも現在、移植を待つ子供がいるが、補助人工心臓をつけられない」と指摘。

 佐野教授は「小児の脳死移植と子供用の補助人工心臓はいわば車の両輪だ。今回のような小児の脳死移植が出始めた以上、早く補助人工心臓の承認、普及を進めるべきだ」と指摘する。

不幸にして脳死という状態に至ったお子様のご冥福をお祈りいたしますとともに、ご家族の決断に報いるためにも今回の一連の移植手術が滞りなく成功することを願ってやみません。
脳死判定や臓器移植という行為については未だに社会的な議論も続いているところで、今回の移植手術に関してもやはり一部には否定的な意見もあるようですし、市井の声を見ても「自分ならともかく、子供がそういう状況になったらとても提供するとは言えない」という率直な意見も根強いようです。
移植医療の現状に関しては以前から当「ぐり研」でも様々に取り上げてきましたが、その大前提として日本人は現に移植医療を受けているということ、そしてそのうち少なからざる部分を海外のドナーからの臓器提供に依存しているという現実があるわけですね。
世界的に臓器移植というものが広がってきていることを背景としてドナーは常に不足気味ですけれども、すでにWHOなども国内に移植用臓器が不足していることを理由として海外で臓器移植を受けることは望ましくないという勧告を出すなど、世界的にも自国民向けの臓器は自国内で賄うべきであるという臓器ナショナリズムとも言うべき考え方が一般化しつつあります。
特に日本人の場合は巨額の現金を手に世界中で臓器を買いあさっているという悪印象があるのでしょうか、法外な前払い金を要求され実質的に移植から締め出されたりといった事例も少なからずあることから、WHOや諸外国の期待の上でも移植待機患者の要望の上でも国内における移植医療推進が望まれた結果が先の臓器移植法改正であると言うことですね。

臓器移植に関してはこのように様々な問題も抱えており、また個人個人の考え方の相違も非常に大きいことから、改正臓器移植法がドナー、レシピエント及びその家族(そして担当医も)が十分に移植を受け入れる素地を整えている場合に限って移植を行うという方向で、非常に限定的なところからスタートしているということは当然のことではないかと思います。
最終的にはこうして限定的な状況からスタートし、次第に臓器移植というものが身近とは言わないまでも世の中でままある医療行為の一つとして一定の社会的認知を経た結果、日本人の移植医療に対する考え方というものが落ち着くべきところに落ち着いた頃合いを見計らって必要ならば再度の法改正なども行い、制度を社会の実情に適合する形で改めていくという作業が必要になるはずです。
その時点でも当然ながら断固として臓器移植はイヤだという意見もあるはずですから、平行して前述の記事にあるように機械的な人工臓器の改良を推し進めていく必要もあるでしょうし、昨今各地で研究が進められているように異種移植(これはこれで様々な議論を呼びそうですが)なども検討されることになるでしょう。
一方で臓器移植、とりわけ今回のような脳死による小児から臓器移植がまだ極めてレアなケースであることからやむを得ざるところも多々あるとは言え、社会的に見ると知る権利とプライバシー保護の二つが複雑に絡み合っているという現状でもあるようです。

両親「息子誇りに思う」 命のリレー、長く生きて(2012年6月14日産経ニュース)より抜粋

 脳死と判定され、移植される見通しとなった6歳未満の男児の臓器が、病に苦しむ命を救おうとしている。「このようなことを成し遂げる息子を誇りに思っています」。男児の両親は悲しみを希望に変えて、そうコメントした。命のリレーへの準備が着々と進んだ。

 「ドナーの方の年齢は6歳未満。性別は男児です」

 14日、東京・霞が関の厚生労働省。会見を行った日本臓器移植ネットワーク医療本部の芦刈(あしかり)淳太郎本部長は、声を震わせながら、こう告げた。
(略)
 会見では報道陣から「低酸素性脳症に至る経緯は」「事故なのか」などと矢継ぎ早に質問が飛んだが、芦刈本部長は「詳細については控えさせてもらう」と繰り返した

 18歳未満の提供時に確認が義務付けられている虐待の有無については、警察や児童相談所とも相談したことを明かし、「虐待防止委員会や倫理委員会でなかったと確認している」と強調した。芦刈本部長は、子供特有の臓器提供の難しさとして「家族の心情をくみ取るのに細心の注意を払った」と説明。ベテランのコーディネーターを家族のもとに派遣し、常に声がけをしながら家族の意向を確認しつつ、疑問点がないかどうか、意思の変化がないかなどを確かめ、慎重に進めたという。
(略)

6歳未満脳死判定 報道陣に退去求める(2012年6月14日産経ニュース)

 6歳未満の男児について、改正臓器移植法に基づき初の脳死判定を行った富山大病院(富山市)では、14日夕から記者やカメラマンが続々と集まり、担当の事務職員が慌ただしく対応に追われた。正面玄関前では、事務職員が「マスコミ関係の方へ」と題した院長名のチラシを報道陣に配布。病院敷地からの退去を求めるなど、厳戒態勢が敷かれた

 移植に関する記者からの相次ぐ質問に、担当者は「記者会見は明日以降開く。今はデータがないので何も言えない。把握していない」と、いらだった様子で繰り返した

特に小児の場合は本人の意志というのはほとんどの場合明確でないと考えられ、親族の判断によって提供がなされることが多いだけに、改正臓器移植法においても虐待等事件性はないのかという点が非常に重要なポイントとして挙げられていますけれども、この領域は虐待死事件のたびに「なぜ周囲は気づかなかったのか?!」と言われるほど客観性の担保が難しい部分でもあります。
その意味で前述のような小児脳死移植の希少性とも併せて現状で周囲の関心が集中するのは理解は出来るとしても、非常に受け入れが難しい状況の中で困難な決断を強いられる家族にとってもこうした個人情報の詮索と取材合戦が好影響を与えるとは到底考えられませんし、中には「あんなさらし者のような目に遭うならやめておこうか…」と考える人もいることでしょう。
現状で脳死臓器移植があくまでも科学的合理性に基づいた客観的な基準と、きちんとしたインフォームドコンセントに基づく自由意志によって推進されるべきであるのは異論のないところだと思うのですが、こうした周囲の圧力がその過程に影響を及ぼすということについても今後何らかの指針なりが必要になってくるかも知れませんね。

特にこうしたケースでどこまで個人情報を明らかにすべきかは微妙なところで、特定地域で特定年代の移植待ち患者というのはそう大勢はいないだけに、その気になれば結構誰であるかということは判ってしまうもので、下手すれば「あんな飲んだくれに肝移植?冗談だろう?」なんてことを言い出す人もいるかも知れませんよね。
今回もレシピエントの一人が60代で云々と報道されたところ「なぜせっかくの貴重な子供の臓器をそんな高齢者に…」と言う声が上がっているようですし、逆に海外などではレシピエント側が詳細な個人情報を公開した上で「どうか臓器をください」とフェイスブックなどで募集しているケースも増えていて(しかもかなり成功もしているようです)、これまた形を変えた臓器売買ではないかと懸念されるようなことも起こっています。
とかく当事者にとっても社会にとっても非常にデリケートな問題だけに情報管理がどうあるべきかということには引き続き議論が必要ですが、少なくとも知る権利だの報道の自由だのに名を借りた好き勝手な横暴や社会常識無視の行動が許されるようなものではないことだけは言うまでもないでしょう。

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コメント

移植手術は無事終了したそうで、経過が順調であればいいですが
国内で小児移植が出来るとなると寄付を募っての海外渡航は難しくなりますかね?

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年6月16日 (土) 10時06分

せっかく貴重な子供の臓器なんだから子供に提供すればいいんじゃないの?
一人のドナーで子供なら二人助かるんでしょ?


 慢性糸球体腎炎の60代の女性への腎臓移植が行われた富山県立中央病院(富山市)でも16日午前2時ごろ、約7時間半に及ぶ手術が終了。同病院によると、男児から提供された腎臓は2つで、通常は2人に1つずつ移植されるが、今回は幼児の小さい腎臓のため2つとも女性に移植した。

投稿: | 2012年6月16日 (土) 10時58分

移植対象の選定についてはこちらの記事が参考になりそうです。
基本的に小児からは小児へと言うのが原則で、腎臓だけ多少基準が違うようですね。

心臓・肝臓は「子供から子供へ」 患者選び 臓器ごと基準
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120615/scn12061521300012-n1.htm
 一方、腎臓は他の臓器とは事情が異なる。最も大きな要因は移植希望者数だ。5月1日現在の移植ネットの移植希望登録者者は心臓の212人、肝臓の402人に対し腎臓は1万2359人。待機期間も平成22年末時点で平均約14年と極めて長く、長期待機者が選定される傾向にあるという。

 子供の小さな腎臓は、2つとも同じ大人に移植することで対応も可能だ。腎臓は大人や子供に関係なく機能する。

 東邦大腎臓学講座の相川厚教授は「長期間移植を待った人はそれだけ苦しい時間を過ごしてきたことを理解してほしい」と説明している。

投稿: 管理人nobu | 2012年6月16日 (土) 15時08分

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