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2012年5月 7日 (月)

お客様の声は神の声、でしょうか?

本題に入る前の小ネタとして、ブログやツイッターを称して何とかの発見器という言葉がありますが、先日また一人発見されたと話題になっているのがこちらの一件です。

キム兄・木村祐一 新幹線の車掌の対応に苦言を呈する(2012年5月3日アメーバニュース)

 キム兄ことお笑いタレントの木村祐一(49)が、自身が乗った新幹線の車掌に対してブログで苦言を呈している。

 新幹線で窓際に座っていたという木村。車掌がおしぼりを持ってきたのだが、その車掌は木村の隣の通路側の席に誰もいないのにもかかわらず、身を乗り出さずにおしぼりを手渡したとのこと。手が届かなかい距離だったが、木村は「うーん??ま、えぇか」と不快に思いながらも、「背もたれ(そんなに倒してませんよ)から身を起こし、おしぼりを頂きました」と説明。

 その数分後にまた同じ車掌が乗車券のチェックに来たのだが、今度は座ったまま切符を出したところ、半歩踏み込んで受け取ってくれたとのこと。

「あぁ、良かった」と木村も思ったようだが、車掌が切符を返す時に、また同じように身を乗り出さずに切符を返してきたため「いやいやいや、手が届きません。私が身を乗り出し、貰わなければならないのでしょうか?」と不快に思い、座ったまま手だけを出したと言う。

 しかし、車掌は何も気づかず不思議そうに木村の顔を見るだけだったため、「お前が手ェ伸ばせ」と木村節が炸裂。「言わなきゃよかった」と木村自身の後悔しているようだが、「無理でした」と明かしており、「あの車掌はあかんやろ!」と苦言を呈している

ある意味典型的とも言えるこの症例に関して敢えて詳細な論評は控えますが、こういう話を聞きながら思うことにクレーマー気質に必須の条件とは自己の正当性、無謬性に対する強固な確信と共に、自らの行動様式が社会一般のそれから逸脱していることに気づかない自己客観視能力の不足なのかなという気がします。
別にJRの接遇問題で何をどう感じようがそれは個人の自由ではあるのですが、少なくとも芸を売り物にする客商売に関わる人間がそれを実名で発信してしまうというのは全く笑えないというものですし、芸人にもプライベートがあるというならそれを芸人の顔で表に出すべきではなかったのです。
幸いにもと言うべきなのでしょうか、この記事に接した多くの人々が「さすがにこれはおかしいやろ」と素朴な憤りを感じているらしいという点が救われるのですが、こういう行為をむしろ自慢げに世に晒せる人が確かに存在していて、あちらでもこちらでもごく普通の社会人のような顔で歩いていると考えると暮らしにくい世の中になってきたなと感じてしまいます。

それはそれとして、クレーマーならずとも何かと他人の仕事ぶりには気になる点は見つかるもので、中にはそれがお客様の声として業務内容に反映されていくという場合もあるわけですが、もちろんあまりに的外れ過ぎて反映しようのない声というのも少なからずあるわけですよね。
企業なども大手になってきますと顧客窓口担当の人もその道のプロフェッショナルですから、こうした数々の声を捌き適切に対応することには慣れているのでしょうが、その種の対応慣れしていない人が対応せざるを得ない場合には往々にしてちょっとずれた答えが出てくることもあるものです。
場合によってはそうしたうっかりした返答を言質としてつけ込んでくる悪質顧客もあるだけに困ったことにもなりかねないのですが、いずれにしても顧客の声を過剰に気にするあまり場当たり的な対応に終始して、最終的に本来の業務目的を歪められていくようなことがあっては困るのは当然でしょう。

関越バス事故 「群馬DMAT」初出動 現場到着は2時間半後/群馬(2012年5月1日東京新聞)

 藤岡市の関越自動車道で七人が死亡、三十九人が重軽傷を負った高速ツアーバスの事故。救急医療チーム「群馬DMAT」が県内で発生した事故や災害では初めて出動したが、現場に到着したのは事故発生の二時間半後だった。もっと短縮できなかったのだろうか。初動をたどった。 (伊藤弘喜)

 DMATは、大規模な事故や災害で多くのけが人が発生した際、緊急対応できるよう訓練を受けた医療チーム。県内では二〇〇九年七月に十五病院で二十五チームが発足した。

 県のDMATの運用要綱によると、原則、県が消防から出動依頼を受け、依頼内容に適した病院に出動要請することになっている。

 今回、県は運用要綱に従う形で、高崎市等広域消防局から出動依頼を受けてから前橋赤十字病院(前橋市)に出動要請した。

 消防が事故を覚知したのは午前四時五十一分。十九分後の五時十分、各地の関係機関に「負傷者十数名いる模様」と伝達。DMATを管轄する県医務課や災害拠点病院の前橋赤十字病院も「事故の第一報」として受け取った。

 県医務課はDMAT出動に踏み切るための情報を得ようと消防に何度も電話したが、ホットラインもなく、つながらない。約三十分後の五時四十分ごろ、ようやく通じ「死傷者数人、負傷者多数」と確認県が前橋赤十字病院に出動を正式要請したのは、さらに一時間近くたった六時三十五分で、初動救護班が現場に到着したのは七時十五分。すでに治療の優先度を決めるトリアージは終わり、重傷者は救急搬送された後だった。

 川原武男県医務課長は「現場の情報がないと出動の判断が難しいが、たとえ必要性のない空振りに終わっても一報の時点で出動させるべきかもしれない。検証したい」と話している。

「群馬DMAT」への出動要請 知事、県の対応遅れ認める/群馬(2012年5月3日産経新聞)

 ■手続きの迅速化検討

 藤岡市の関越自動車道の高速ツアーバス事故で、県から救命医療チーム「群馬DMAT」への出動要請が発生の約2時間後となった問題について、大沢正明知事は2日の記者会見で「消防本部から(県に)要請があった時間と出動した時間にタイムラグがあったのは事実だ」と述べ、県の対応の遅れを認めた。

 DMATの活動要領によると、DMATは原則的に災害や事故が発生した都道府県の要請を受けて活動することになっている。

 大沢知事は「事故対応は1分1秒を争うもの。できるだけ簡素に連携がとられるべきだ。しっかりと整備していく必要がある」と述べ、出動手続きの迅速化を検討する考えを示した。

 県医務課によると、高崎市等広域消防局から県広域災害救急医療情報システムに情報が入ったのは事故から約30分後の4月29日午前5時10分。県がDMATに出動を要請したのは6時35分だった。DMATは6時55分に出動、現場に到着したのは7時15分となった。

 

県が出動要請をするまでの間、DMATを統括する前橋赤十字病院は緊急対策本部を設け、スタッフ招集などを進めていたという。
(略)

ちなみに群馬DMATは今回が初出動だったそうですが、先の震災で有名になったこのDMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)なるもの、DMAT事務局のHPから引用しますと「災害急性期に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム」として定義されています。
日本では阪神大震災を契機にこうした組織の必要性が認識され、平成17年に「大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チーム」として組織されたのが始まりですから、本来は既存の医療救急体制が崩壊したような災害現場に派遣される非常用の組織であるのは明白です。
そうなると大きなバス事故とは言え何故普通の救急活動も行われているような状況で出動することになったのかと思うところですが、自然災害のみならず航空機や列車事故など大規模な事故の際にもとりあえず便利使いできる救急組織があれば便利だという発想でしょうか、特に都道府県レベルのDMATにおいては現場の判断でより柔軟に出動要請する方向になってきているようです。

無論、事故現場からすれば制度上のことは何でもいいから専門家チームが早く来てくれた方が助かるのは言うまでもないことですが、そもそもの定義に「おおむね48時間以内」などという妙に半端な「機動性」を持ったチームと定義されているように、このDMATという組織は別に消防救急のように常設のチームとして常時災害に備えて待機しているようなものではありません。
かくいう管理人の友人も某施設でDMATに所属していますが、群馬県のDMAT配備施設を見ていただいても判る通り多忙な基幹病院の中で、多忙な日常診療に従事しているごく普通の臨床家ばかりでしょうから、むしろ今回出動要請からわずか20分後に出動していったという報道に驚いている程です。
それが今回いわば本来目的からは外れた副業と言うべきバス事故でかり出され出動が遅いとこれだけ叩かれた、そして知事や医務課長が必要がなくともどんどん出すべきだ、もっと迅速に対応出来るよう整備していきますと公言してしまった以上、今後は今まで以上に救急現場での医療活動に活躍が求められるようになるだろうし、各施設も迅速確実に要請に対応することを求められるようになるということでしょう。
無論そうしたチームがあれば救急現場としては便利でありがたいのは当然理解出来るのですが、そもそも滅多にない大規模災害に対応するためという名目でスタッフを指名して組織したものを、例えば近所で車三台が絡む多重事故発生と出動を求められるようになってくると、果たして永続的なシステムとして破綻せずに済むだろうかという疑念が出てきますね。

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コメント

いくつか検索してみましたが、県毎にDMATの出動基準を作ってあるのではないでしょうか。
群馬のDMATの出動基準は、毎日の記事がおさえてますね。
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20120503ddlk10040218000c.html
「死傷者が15人以上になる可能性があるとき」だそうで、
そうすると、今回は基準クリアということで問題なさそうです。

DMATの中の人は、今回の問題 どう思っているのでしょうね。

投稿: JSJ | 2012年5月 7日 (月) 09時55分

具体的に数字を決めると一人二人少ない時にどうして出なかったと叩かれそうだし、運用する側も難しいでしょうけどね。
ただ交通事故に出て行くチームにDMATと名付けるのも少し違和感は感じます。
一番いいのはもう少し小回りの利く事故派遣チームを別個に編成することなんでしょうけど。

投稿: ぽん太 | 2012年5月 7日 (月) 10時02分

>県毎にDMATの出動基準
例えば東京:重症者2名以上又は中等症者10名以上の負傷者が発生した場合
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/08/20k8k200.htm
福岡:地震などの自然災害や大規模交通事故等により、局地的に30名以上の負傷者が発生した場合又は発生が見込まれる場合
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/22/22599_51749_misc.pdf

投稿: JSJ | 2012年5月 7日 (月) 10時06分

おおぜいの死傷者が出てるんだからすぐ出動できる専門家が出ていくのは当然でしょ?なにが問題?

投稿: 庄司 | 2012年5月 7日 (月) 10時07分

国レベルのDMATに対して自治体レベルのDMATはもっと小回りの効いた運用をしたいのは理解出来ますし、実際に秋葉原通り魔事件でも東京DMATが出動しています。
今回も基準に従って出動しているのですからその意味では何も問題はないんですが、何と言うのでしょう違和感が拭えないのですよ。
たとえは悪いですが、河原で悪ガキ達が乱闘騒ぎを起こして自衛隊が出動したなんてニュースを聞けば誰だってびっくりするでしょう?
そしてDMATという耳慣れない言葉が「すぐ事故現場に駆けつけて当座の救命医療をやってくれる人達」という認識で世間に定着してしまうと、そんなつもりではいなかった医療現場は困るだろうなと感じているわけです。
実際に行う仕事も異なっている部分も多いのですから完全に別組織として、「大規模災害派遣医療団」だとか「事故現場レスキューチーム」だとか活動の実態も区別出来るような名称を日本語でつけた方が分かりやすいかなと思うのです。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月 7日 (月) 11時20分

日頃から交通事故程度で こまめに出動していたほうが、いざ大災害という時の予行演習になる、という考え方もあるでしょうし、
あまり便利遣いされては 疲弊する、という考えもあるかと思います。

また 私には分かりませんが、DMATやろう なんて思うような人には、ある程度の活躍の機会があったほうが、モチベーションが上がりそうな気もします。

しかし、既存の医療及び交通のインフラが機能しているのなら、DMATを要請するのが遅れたくらいのことを重大問題のように扱う必要はないと思います。

個々の事例の失敗・成功に大騒ぎすることなく、うまくバランスをとっていってほしいと思います。

投稿: JSJ | 2012年5月 7日 (月) 12時36分

DMATに選ばれてるような救急専門家は普段からさんざん使い倒されてそうだから、普通の事故で何度も呼ばれるようになれば不満はたまるだろうな
もうちょっとシンプルな構成で小規模事故にも対応できるチームがあれば便利ではありそうだが、人員が確保できるかどうか
そもそも派遣する人間がいるならそいつが病院に待ち構えて救急車受けた方が早いだろうし、東京のように重症者2名以上から派遣ってのもやりすぎな気はするが
インフラが存続してるなら受け入れをスムーズにした方が手っ取り早いだろうになあ

投稿: kan | 2012年5月 7日 (月) 13時18分

ただただ形式にこだわるのではなく、きちんと責任ある仕事をしてください。
わずかな遅れに大勢の市民の命がかかっているのですから。

投稿: | 2012年5月 7日 (月) 20時06分

小回りがきくDMATを作りたければ、消防署に常駐させるしかないのでは?
ただ、それをするくらいなら消防隊の質を向上させた方が早いですが・・・
もういっそのこと、救急車はすべてドクターカーにするくらい消防署に医師を配置しないと(夢物語)

投稿: クマ | 2012年5月 8日 (火) 08時22分

標準的なDMATの構成をみれば市中での交通事故に最適化しているとは言えませんしね。
多用途に使うのであれば少なくとも目的に応じたメンバーの柔軟な組み替えが必要になると思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月 8日 (火) 11時08分

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