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2012年5月18日 (金)

低成長時代の高齢者医療

いまさらマニフェストに反している!などと言うつもりもありませんが、結局はそういうことになったかというのがこちらのニュースです。

またマニフェスト棚上げ 「後期高齢者医療」廃止せず、名称変え微修正(2012年5月16日産経新聞)

 75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度で、政府が今国会への提出を検討している見直し法案の概要が15日、明らかになった。2案を軸に検討しているが、いずれも当面は現行制度の存続を前提に、名称を「高齢者医療制度」(仮称)に変更する微修正にとどめている。民主党は平成22年の参院選マニフェスト(政権公約)で、後期高齢者医療制度の「25年度廃止」を掲げていたが、これを事実上棚上げする内容だ。

 民主党マニフェストの目玉政策の破綻を受け、現行制度の維持を主張する自民党などが勢いづくのは確実。消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革をめぐる与野党協議にも影響が出そうだ。

 政府がまとめた一体改革大綱では、後期高齢者医療制度の見直し法案を今国会に提出することが盛り込まれている。見直し法案について、具体的な検討状況が明らかになるのは初めて。

 それによると、両案とも、現在は市区町村のみが運営主体となっている高齢者医療制度の広域連合に、都道府県の加入を可能にして財政の安定化を図ることを“改革”の眼目に据えている

 その上で、A案は将来の制度廃止を見据え、75歳以上の人のうち企業などで働く本人だけ(約33万人)を勤務先の健康保険に移す。逆に、その家族も含め、制度対象者の98%はそのまま現在の制度に残る。

 B案では現在の制度に75歳以上の全員が残ることを前提としている。一方、財政が逼迫(ひっぱく)する国民健康保険(国保)を支援するため、国保の都道府県単位での運営を推進。市区町村によっては国保の保険料負担が軽減するメリットがある。

 ただ、A案を実施する場合、国の財政負担が約300億円増加し、中小企業の社員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は約200億円の負担増となる。企業などの事業主負担も約400億円増える。B案はシステム改修費の約40億円のほかに、都道府県の負担が増える見通しだ。

 A案では負担増となる事業主、B案では都道府県の反発が必至。政府は全国知事会に対して1500億円の財政支援を打診したが、知事会側は拒否している。

 このため最終的には事業主、都道府県の双方に配慮し、高齢者医療の広域連合に都道府県が加入できるだけの“看板掛け替え”案となる可能性が高い

【用語解説】後期高齢者医療制度

 平成20年に当時の自公政権が導入。高齢者医療の負担のあり方を明確化するため、75歳以上を独立した保険に移行させた。民主党は「平成のうば捨て山」と批判。75歳以上の勤め人(家族を含む)を勤務先の健康保険、残りを国民健康保険に戻す案をまとめていた。

とりあえずマニフェスト云々の話は抜きにしますが、振り返ると民主党政権発足後の2010年末に厚労省から(1)現在1割の70~74歳の医療費窓口負担割合を2割にアップ(2)最大9割となっている75歳以上の低所得者への保険料軽減措置を最大7割に縮小といった高齢者負担増の内容を含む新制度の叩き台が出てきたものを選挙に影響があると民主党側が蹴って以来、政府からははっきりした代案が出ていなかったわけです。
そもそも高齢者を国保に移行させると言っても当の国保が破綻寸前とも言われているのですから嫌われるのは当然で、これに対して市町村単位から都道府県単位へと国保の広域化を図って財源を安定させますと言ったところで、もともと国保が低所得~無収入層を受け入れている以上安定確実な収入のある健保に比べて足腰が弱くなるのは決まっている話です。
何より当初から公聴会などで出ていた「後期高齢者医療制度廃止で現役世代の負担が過重にならないのか?」という声に対する根本的な対策はなく、企業の負担金や公的資金(これも元をたどれば現役世帯の払った税金ですが)などの投入で下支えするに留まるというのですから目先の話ばかりに終始していると言われてもやむなしですが、あるいはこうした態度には民主党にしてもいざ政権の座について勉強するほどに問題点が理解できてきたと前向きに捉えるべきなのでしょうか。

先日は生保受給者の増加に伴いその医療扶助(医療費)が際限なく増加していくことが問題視されているという件を紹介しましたが、医療費が無料であるということがそれ自体不要不急の需要を喚起しかねないもので、こうした層に対してどのように医療費抑制のインセンティブを働かせていくのかが課題とされていました。
後期高齢者医療制度にしてももともと増え続ける高齢者医療費に対して相も変わらず優遇措置ばかりを継続し何らの歯止めもかけられていないことから、まずは高齢者自身(と同時に、実際にお金を負担している現役世代)にどれほど医療費を使っているのかということを自覚してもらう、そしておそらく将来的に医療給付抑制のための対策に結びつけていくという話であったわけですね。
現役世代の個人は元より健保を支える企業の側でもこれ以上の負担増は保たないという声が高まりつつある中で、結局は支払いに誰の財布を当てにするかという議論ばかりに終始して、増え続ける一方の医療費に対する手当を放置したままにも見えるというのは昨今の財政状況を考えると極めて不自然なことに思えます。

無論現状で高齢者が一番お金も票も持っているわけですから、ちょっとでも高齢者への医療給付抑制と言えば政治家の首が危ないという事情もよく判るのですが、自然増を続ける需要に対して全く制限もなく丸々医療給付を認め続けるという形での医療費増加などもはや継続不可能であるということは、日医などからなんだかんだと言われながらもほぼ社会的にもコンセンサスを得てきたように見えます。
生まれたばかりの赤ん坊から寝たきり老人まで全国民が等しく平等であるとして同じ給付を続けるのであれば負担も同じにするのが筋でしょうし、逆に負担に差をつけるのであれば給付の方でも差をつけるというのでなければ、こっちはろくに病院に行く暇もないのに高い保険料ばかり取られると不満が爆発寸前の現役世代も納得できないでしょう。
医療給付の抑制というと「年寄りはさっさと死ねと言うことか?!」とすぐ激高する方もいらっしゃいますが、例えばお金が湯水のごとくかかる最新最先端の医療は避けてもらってごく標準的な(あるいは、枯れたと言ってもいいでしょうか)医療だけに留めていただくだけでも医療費は全く違ってきますし、現実に療養型病床などではこうした制限をすでに行っているわけですよね。
かつては後で何とかなるさとひたすらイケイケでやっていた時代もありましたが、今は現役世代は少しだけ辛抱してお金を負担する、これを受け取る高齢者の側も少しだけ我慢して給付を抑制すると、皆が少しずつ我慢して折り合いをつけていかないことには世の中が回って行かなくなってしまうのが、これからの低成長時代というものなんじゃないかと思います。

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コメント

ちょっと話はずれますけど、最近日本の政治って何事も決断が遅いって言うか、結局なにも決断できないまま流しちゃってませんか。
原発事故一つであれだけ右往左往して成すところを知らずだったら一朝事あるときはどうなるんだって思っちゃいます。
橋下さんがあれだけ人気があるのも主義主張よりなにより即断即決であるからこそなんじゃないですか。

投稿: ぽん太 | 2012年5月18日 (金) 09時18分

>ちょっと話はずれますけど、最近日本の政治って何事も決断が遅いって言うか、結局なにも決断できないまま流しちゃってませんか。

「最近」は要らないとオモw
*明治とか小泉政権時代のが例外ww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年5月18日 (金) 09時49分

独裁者が生まれにくいのが日本の政治の特色であるとは言いますけどね。
歴史的に独裁による弊害のケースがほぼ絶無なのに何かと独裁独裁と言いたがる人達もいますけど。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月18日 (金) 11時11分

結局民主党って何がやりたかったのか未だに判らないw

投稿: aaa | 2012年5月18日 (金) 14時25分

生保であれ高齢者であれ給付の抑制には医師会が全力で反対しそうだが
ただ応召義務付きで皆保険制度下でのフリーアクセス維持を望むのであれば、いずれは給付の面でも何らかのトリアージは必須になるだろうになあ

投稿: kan | 2012年5月18日 (金) 15時34分

>結局民主党って何がやりたかったのか未だに判らないw

え?分かりませんか?
売国ですよ、特亜に金を回して日本を滅ぼそうとしてるんですよ。
ネトウヨの主張ですが、間違ってるとは言えないと思えるから困るw

投稿: 通りすがり | 2012年5月19日 (土) 23時44分

国会での議員の水の飲み方について
http://unkar.org/r/korea/1316178346

投稿: 簡単な見分け方 | 2012年5月20日 (日) 08時40分

今は尖閣買い上げ問題も興味深い踏絵になっているようですね。
これだけ募金も集まると態度を明らかにせずにいる大部分の都議達にとっては悩ましいところでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月21日 (月) 11時26分

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