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2012年5月17日 (木)

広まっていく生保包囲網

本日まずは考えようによってはいまさらとも言えそうな話題から紹介してみましょう。

生活保護費、25年度5・2兆円 厚労省試算、本年度比40%増(2012年5月13日中国新聞)

 過去最多の更新が続く生活保護費が、2012年度の3兆7千億円から25年度には40%増の5兆2千億円に増大するとの厚生労働省試算が12日、判明した。10年前の02年度には2兆2千億円だったが、ほぼ右肩上がりに増え続けており、歯止めがかからない状況になっている。医療費が大きく伸びることが要因とみられる。

 受給者に対する自立支援策の拡充や、不正受給対策の強化など制度見直しの議論が加速するのは必至だ。

 試算によると、年間の生活保護費は15年度に4兆1千億円、20年度に4兆6千億円、25年度に5兆2千億円に達する。国内総生産(GDP)に対する比率は12年度の0・8%から25年度には0・9%に増える

 生活保護費の約半分を占めるのは、生活保護を受けている人の医療費に相当する「医療扶助」だ。全額公費で賄うため受給者が受診しても窓口負担がなく、過剰受診を招きやすいとの指摘がある。試算でも12年度に1兆7千億円だった医療扶助が25年度には2兆6千億円に急増する。

 試算は、12年度当初予算ベースの保護費を出発点にし、医療扶助は厚労省の医療費の将来推計に比例して増えると仮定。「住宅扶助」など医療扶助以外はGDPの伸びに応じて増加するとの前提で単純計算した。

 厚労省によると、10年度の生活保護の不正受給額は128億円に上り、過去最多となった。

 全国の受給者数は11年7月以降、過去最多の更新が続いている。それまでは1951年度(月平均)の204万6646人が戦後の混乱の余波で最も多かった。今年1月時点では209万1902人。高齢者が多いが、リーマン・ショックを機に失業者など働ける年齢層の増加が目立っている。

歯止めがかからない増加ぶりと言いますが、マスコミ諸社は今まで生保受給に歯止めをかけようとする行政側の自助努力をさんざんに叩いてきたわけですから、一体どの口が言っているのかという気がしないでもない記事ではありますよね。
生活保護(以下生保)関連で最近話題になっているのが、年収5000万円と言う売れっ子芸人が「タダでもらえるんなら、もろとけばいいんや!」と母親に生保を受給させていた問題で、一部国会議員までも調査に乗り出したと言うにも関わらずさっぱり報道も進まない中で一部では例によって陰謀説までささやかれているらしいですけれども、その背後には生保受給の認定が甘すぎるという指摘もあるようです。
無論一部には実際に生活に困窮しているにも関わらず生保を受けることなく孤独死するようなケースも報道されますが、一説には200万人余りの受給者のうち不正受給者は0.4%ともいい(本当にそれだけで済んでいるのか疑問の余地無しとはしませんが)、実際に不正受給当事者が数々のノウハウがあるのだと告白もしているようです。
よく言われるように生保申請の段階で揉めることはあっても一度申請が通れば継続はほぼフリーパスであるだけに、生保受給者になるとそのぬるま湯から抜け出せなくなることも問題だと言われていて、最近では橋下大阪市長の元でチェックを厳格化するようになった大阪で受給者が慌てて職探しに駆け回っているという話も漏れ聞こえて来ます。

いずれにしても各方面から財政支出の削減が叫ばれる中で今や国家予算の9%を占めるという生保支給も見直しが進められるのは当然で、例えば預金隠し対策に行われていた自治体からの要請による預金口座調査も今までの支店単位から全店一括で実施するよう銀行業界のルールが改められるなど、関連業界による協力体制作りも急がれているわけです。
となれば当然のことながら、生保支給額のおよそ半数を占める医療費に対しても更なる圧縮の期待がかかってくることは当たり前の流れなのですが、その一環としてかねて言われてきたことがいよいよ実施されるのか?と言う話にもなりつつあるようですね。

医療産業懇  生活保護受給者に後発品一律使用求める意見(2012年4月13日日刊薬業)

 医薬品などの医療産業を考える超党派の勉強会「医療産業懇話会」は12日開かれ、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の長野健一理事長から、後発医薬品をめぐる現状と課題について話を聞いた。後発品の使用促進に向けGE薬協は、医療関係者や国民・患者への後発品の理解を深めるため政府側の積極的な広報活動を要望した。一方、出席議員からは、生活保護受給者は一律に後発品を使用することなどの提案が上がった

 会合は非公開で行われた。会合終了後に記者会見した事務局の松浪健太衆院議員(自民)によるとGE薬協は、2012年度診療報酬改定での使用促進策により、数量シェアを年度内に30%以上とする政府目標を達成できることに期待を示した。30%に達すれば事実上、後発品に切り替えられる医薬品の半分が後発品に置き換わることになるとし、そのころには医療関係者らの後発品への抵抗感も軽減されているのではないかと見通したという。

 一方、出席議員からは、生活保護受給者は一律に後発品を使用するなどの提案があったという。松浪議員は「受給者はさまざまな生活が制約されている。受給条件の一つとして後発品の問題が入ってもいいのではないかという認識は自民党議員の中でも高まっている」とし、受給者への後発品の一律使用を支持する考えを示した。

 懇話会は今後、調剤ポイントの問題や一般用医薬品をテーマに取り上げ、関係団体などからヒアリングを行うことを予定している。

昨年末頃より診療報酬改定作業も絡んで厚労省から様々なマスコミ向けの情報発信(と言うよりも、誘導でしょうか)が続いていた中で、生保受給者には2日に1回以上の高頻度で3か月以上続けて通院した「頻回通院者」が全国で1万8217人に上るという話題もあり、これを受けてマスコミ各社が一斉に「医療業界にとって生保受給者はボロ儲けの上顧客」と報じたことは記憶に新しいところです。
要するに厚労省にすれば生保が目立って医療費を浪費しているからこれを抑制すべきだという話に持っていきたいし、政治家としても昨今橋下市長が生保見直しで大きく支持率を稼いでいる状況も横目に見ているのでしょうか、今回の一律後発品(ジェネリック)使用という提案についても「自民党内でも反対する意見はほとんど存在しない」という声もあるようですね。
全額公費負担で価格によるインセンティブが働きがたい生保受給者では国が強制しないと切り替えが進まないという意見はもっともではあるでしょうし、厚労省の試算では後発品の切り替えで保護費が140億削減できる見込みだと言うのですから悪くない話だとも思えますが、一方で過去に厚労省から切り替えの通達が出された際にも「差別じゃないか!」という批判を受けて撤回されたという経緯もあるわけです。
ただ今回がかつてと違うというのは先にも示したように政治家にしても生保対策が直接票に結びつくのだという実例が示されている点、そして冒頭の記事に見られるように生保対策は急ぐべき課題であるという認識がマスコミの間にも広まっているという点で、どうも今までほどの反対論は盛り上がらないんじゃないかという気もしています。

ジェネリック問題に関しては当ぐり研においても過去繰り返し取り上げてきた通りで、少なくとも「同じ成分・同じ効き目」という売り文句は明らかな嘘であると思いますけれども、一方でその差が投与量調節などで加減できる範疇であれば、単に切り替えるのが面倒くさいといった手間暇の問題以外で積極的に反対すべきほどのものでもないかなとも感じています。
もちろん今まで安定していた患者がジェネリックに切り替えた途端に具合が悪くなったというケースを経験すれば、それはどんな医者だって「あんな安物誰が使うか」と思いたくもなるでしょうけれども、薬が合う、合わないということは先発品、後発品を問わず起こりえることですから、例えば何かの病気で今回初めて治療を始めるというケースで敢えて先発品指定で処方を開始する意味もないんじゃないかとも思いますね。
結局のところものは考えようで、限られたお金を各方面で分配して使わなければいけないというケースで何かを削り、その分を他の大事なところに回す必要があるのだとすれば、先発品にこだわって少なからずのお金を浪費するくらいならもっとこだわるべき重要なところが、とりわけ日々人の命を預かっている医療という分野には多々あるんじゃないかなということです。
もっとも今の世の中ですとせっかくそうやって節約したお金を、それこそどぶに捨てるような無駄金として浪費されかねないことが非常に危惧されてもいるわけなんですけれどもね…

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心と体」カテゴリの記事

コメント

 ファンのみなさま 関係者各位  株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー

河本準一に関する一部報道について

 現在、弊社所属タレントの「河本準一」に関し、河本の親族が生活保護費の不正受給を受けている
かのような週刊誌の記事やインターネット上の風説が流布されており、これについて、世耕弘成、
片山さつき両参議院議員が問題視しているなどの報道がございます。

 弊社としては、河本の親族が生活保護費の受給を受けているという重大なプライバシー情報が
報道されていること自体、重大な人権侵害であると考えており、河本の親族の生活状況や河本の
収入の状況、親族への扶養の内容等の詳細な事情についての説明は、ご容赦いただきたいものと
考えております。
http://www.yoshimoto.co.jp/cmslight/resources/1/108/120516.pdf

投稿: | 2012年5月17日 (木) 08時01分

医療面では外来においては重複処方を避けるための治療歴・投薬歴の厳格な管理、入院においては入院中の保護費支給の停止、この二点だけでもずいぶん違いそうに思うんですけど。
あとやはり現物支給なりチケット制なり専用支払いカードなりなんでもいいですが、ともかく本人には現金を持たせないようにしなければいけないでしょうね。
大阪で生保対策が始まったらしいですし、うまくいくようだと全国で導入されるんじゃないですか。

投稿: ぽん太 | 2012年5月17日 (木) 08時59分

生保対策というと今まではマスコミなどからさんざん叩かれて遠慮していたものが、大阪の件でなんだ、ふたを開けてみれば国民受けはすごくいいじゃないかとバレてしまいましたからね。
だいたい国としてはジェネリックも先発品も変わらないと一貫して主張してきたわけですから、生保は全員ジェネリック指定でやっても別に後ろ指さされるいわれはない理屈です。
逆に生保という一定の数がいる対象で先行していろいろとやってみることで、その後国民全般に拡大するための基礎データ集めにもなるでしょうし、何も悪い話じゃないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月17日 (木) 11時12分

 1か月ほど前からネットを騒がせている、次長課長・河本準一の母親の生活保護不正受給問題に
 新たな疑惑が浮上した。
 同問題に力を入れて取り組んでいる片山さつき参議院議員は、『Business Journal』のインタビューで
 この件に関心を持つようになったきっかけなどを語るとともに、新たな疑惑についても言及。その疑惑とは
 「河本の親族で生活保護を受けているのは、母親だけではない」というもの。母親を含む親族は7~8年に
 わたって支給を受けており、支給総額は1000万円規模になる可能性もあるらしい。

 これがすべて不正受給だとすれば、全額返還義務が生じるケースもあり、場合によっては3年以下の
 懲役や30万円以下の罰金が科せられる違法行為。さらに、河本は後輩芸人に「(生活保護を)タダで
 もらえるなら、もろうとけばいいんや!」と発言したと報じられており、これが事実なら犯罪の教唆にあたるという。

 また、片山議員は、吉本の代理人の弁護士と名乗る人物から連絡があったことを明かし、その人物から
 「河本には母親以外にも扶養しなければならない親族がいて、その親族は海外で治療を受けなければならない
 病気だからお金がかかる」という釈明を受けたとか。これについて片山議員は、「受給を正当化する理由には
 ならない」とバッサリと切り捨てている。

 この問題が波紋を広げる中、吉本興業は5月16日、公式サイトで『河本準一に関する一部報道に
 ついて』という声明を発表。「重大なプライバシー情報が報道されていること自体、重大な人権侵害である」
 「生活保護費の不正受給のそしりを受けるような違法行為は存在しない」との見解を示している。
 http://www.kon-katsu-news.com/news_aO4djWxQZs.html

投稿: | 2012年5月17日 (木) 11時48分

ナマポも思わず働きたくなるように待遇見直すべきだ

投稿: あっちゃん | 2012年5月17日 (木) 12時14分

マスコミでも確かに生保問題はよく取り上げられるようになった気がします(それもおおむねネガティブな論調で)。
世間の関心が向いて実態を掘り出せば幾らでもネタは転がってますしねえ…

投稿: 管理人nobu | 2012年5月18日 (金) 11時19分

テレビでナマポ=生保みたいに言ってたけど別もんだろ

投稿: あんな | 2012年5月18日 (金) 22時42分

石巻署は22日、東日本大震災で義援金を受け取ったため、生活保護費が出ないと説明した
東松島市の男性職員(32)に暴行を加え、脅したとして、公務執行妨害容疑で同市赤井の
無職、阿部幸雄容疑者(67)を逮捕した。

 逮捕容疑は4月18日午前11時ごろ、阿部容疑者方を訪れた市職員の胸ぐらをつかんで
持ち上げ、押し飛ばすなどの暴行を加え、ハサミを突きつけて「殺すぞ」と脅したとしている。
同署などによると、市職員は阿部容疑者が受け取った震災の義援金が収入にあたるとして、
翌月の生活保護費に限って出ないと説明。阿部容疑者は「それでは生活ができない」と激高したという。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/120523/myg12052302100000-n1.htm

×それでは生活が出来ない
○それではパチンコ酒三昧の生活が出来ない

投稿: | 2012年5月25日 (金) 11時26分

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