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2012年5月28日 (月)

鉄は熱いうちに

日経メディカルに連載中の開業医夫人のコラムで、先日こんなことを書いていました。

◆はりきり院長夫人の“七転び八起き”「私だって重症だ! 何で後回しにする!」(2012年5月24日日経メディカル)より抜粋

 モンスターペイシェントという言葉を聞くようになってだいぶ経つ。多分に漏れず、当院でも問題患者は依然として多い

 一番多いのは、身勝手な理由で「診察順を繰り上げてほしい」とごねる人。先日も、急患が多く込み合っていた際、症状が安定している患者に、「急患の方が何人かいらっしゃいますのでしばらくお待ちいただくことになります。すみません」とわびると、「私だって重症だ! 何で後回しにする!」と、突然大声で怒鳴られた

 自分の見立てと院長の診断が異なると、不機嫌になる患者も増えた。インターネットの普及などで医療知識の入手が容易になった結果だと思うが、それが原因で「ヤブだ!」などと言われるのはたまらない。

 初診で「この薬を処方してくれ。ただし、診察・検査は不要」という人も増えている。無診処方はできないので断ると、文句を言われる

 こうした患者に共通するのは、思い通りにならない事柄への耐性が非常に低いこと。患者は皆、何らかの不安を抱えているわけで、こちらとしても可能な限り要望は受け入れようと思っている。ただ、最近は、疾患への不安が理由ではなく、ストレス発散が目的であるかのようなクレームも多い。背景には、医療不信もあるのだろう。
(略)
 「自分さえよければそれでいい」「損はしたくない」「特別扱いしてほしい」。そうした自分本位な患者に対してであっても、まず大切なのは、相手の言い分への傾聴の姿勢。じっくり聞き、落ち度があれば素直に謝り、改善への教えを請う。きちんと聞く前に不用意に反論すれば、まとまるものもまとまらない。

 ただし、理不尽な要求には、毅然とした態度で臨むことも大切だ。以前は、患者のクレームが原因で、窓口のスタッフがしばしば泣いていた。そこで院長が、「言いがかりのような内容で君たちを責める患者がいたら、遠慮なく自分を呼んでくれ。私がきちんと対応する」とスタッフに伝えたところ、彼女たちが泣く場面は減った。

 「院長の心強い一言で、毅然と対応できるようになりました。そのせいか、ヘンなクレームも減ってきたように思います」と彼女たち。理不尽な要望を安易に受け入れると、さらなる理不尽な要望を招き、結果的に他の患者に迷惑が及ぶ。それを防止するのも、立派な患者サービスだと思っている。

このモンスターペイシェントの特質の一つとして挙げられている「特別扱いしてほしい」というのは大変に重要なポイントで、ほとんどのケースで彼らの要求には多かれ少なかれこうした部分があるということは確かだと思うのですが、彼らがそうした行動を常習化させてきた背景というものも考えてみなければならないでしょうね。
究極的には昨今流行のトリアージという考え方に行き着くように、医療現場においては元々「具合の悪そうな患者は優先して対応しましょう」という暗黙のルールが存在していましたが、モンスター素因を持つ人々にとってこうした現場の対応は非常につけ込みやすいものであるということは想像に難くないでしょう。
医療に限らず客商売に従事する方であれば顧客に善意で便宜を図ったところ後でつけ込まれるという経験はあるものだと思いますが、医療現場においてこうした成功体験の積み重ねが彼らをさらに巨大なモンスターへと育て上げ、「早く診てもらいたいなら救急車を呼べばいいんだよ」などという馬鹿げた考えを固定化してきたとも言えそうです。
その意味で理不尽な要望に対しては毅然とした対応をしなければさらなる理不尽な要望を招くということは全くその通りで、自分が我慢出来るからと唯々諾々とモンスターを助長させる行為は他の患者や周辺同業者にとっても大いなる迷惑であるということですね。

さて、医療現場にモンスターペイシェントがあれば教育現場にはモンスターペアレンツありと言いますが、先日なかなか面白いことをやっているなと興味深く拝見したこちらの記事も、根っこの部分ではモンスター問題とも関係してくるようです。

クラス円満席替えソフト 神戸の教諭開発/兵庫(2012年5月25日神戸新聞)

 学校での席替えは、子どもにとっても教師にとっても重大な関心事。授業をスムーズに行うため自分で決めたい教師に対し、児童や生徒が不満を募らせることもある。双方が納得できる席替えにするため、神戸市の中学教諭がルーレット方式で席を決めるコンピューターソフトを開発した。生徒の評判も上々という。(吹田 仲、田中伸明)

 パソコンの画面に席の配置が浮かぶ。男子生徒が自分の名前を選んでボタンを押すと、空いた席の中を名前がルーレットのように動く。再びボタンを押すと、後ろから2列目の右端に名前が止まった。生徒は「おっ、やった!」と大声を上げた。「ええなあ」「くそっ」。画面は黒板にも映し出され、クラス全員が結果に一喜一憂する。

 神戸市立本庄中学校(同市東灘区)では毎月1回、朝のホームルームで席替えがある。寄木康彦教諭(51)が担任する2年生のクラスでは、同教諭が制作したパソコンソフトで席順を決める。

 席替えの目的は気持ちや人間関係の切り替えだが、寄木教諭が決める際に重視するのは「生徒の納得性」。それがないと円滑な授業がしにくくなるという。くじやあみだも試したが、前任校時代の10年ほど前にこのソフトを開発し、以来自分のクラスで利用している。

 目が悪かったり、授業を前で受けたかったりする生徒のため、あらかじめ配置条件を入れることもできる。「自分で選んだのでどこに決まっても文句は言いにくく、前向きに勉強に取り組める。このやり方が最も落ち着く」と寄木教諭。

 前寄りの席に決まった女子生徒は「先生との距離が近いので落ち着かないけれど、自分で押した結果だから」とあきらめ顔で話していた。

 「最近、席替えにますます神経を使うようになっている」。多くの教諭が口をそろえる。背景には、私語が多いなどで授業が成り立たない「学級崩壊」の引き金に、席替えがなり得るという事情がある。

 「生徒に選ばせるなんてあり得ない。にぎやかな生徒同士がくっつくだけ」と県内の20代女性教諭は断言する。「くじ」と称して、実は教師が席を決める例も多い。

 一方、思春期の子どもたちは席替えの「公平性」に敏感だ。教師側がコントロールしようとすると反発することが多い。加古川市の小学校で5年生を受け持つ30代男性教諭も「くじの結果は尊重する。そうしないと児童は納得しない」。

 席替えの効用を説く声もある。姫路市の中学校の40代女性教諭は「目標達成などクラスに良いことがあったら席替えをしている。全体のモチベーションを高められる」と強調する。

 一方、席替えに神経質になる理由には、保護者の関心の高さもある。ある女性教諭は「『あの子を隣にしないで』という苦情もある。席替えの結果は、学級通信で保護者にも必ず知らせています」と打ち明ける。

席替えというのもなかなかに重要なイベントで、もちろん物理的に黒板が見えにくいだとか言った諸条件は考慮すべきなのは仕方ないとしても、一昔前によくあった(今もあるのでしょうか?)「背が高いから後ろの席」なんて決め方は席順の固定化を招き、非常に大きな不公平感をもたらしがちなものです。
やはり生徒本人としては何よりもきちんと公平に決められているかということが気になるのは理解出来ますし、近ごろよく言う教室崩壊回避のために教師が席順をコントロールするなんてことが生徒の側にバレてしまった日には、不平不満もさることながら教師への不信から結局は教室がさらに荒れる原因ともなりかねません。
PCでの席順決めではもちろんその気になれば判らないように席順を操作することも出来るはずなんですが、ここで重要なのは実際に公平であるかどうかというよりも生徒の側から公平に見えるかどうかであって、その点では記事から刷ると今のところそれなりに信用を得ているようですね。

ただここで注目すべきなのは保護者が絡んで不公平な要求をしてくるようだと非常に話が面倒になってくるということで、特定個人を指して「あの子を隣にしないで」などと言ってくる方も来る方ですが、そういうことを受け入れているといずれ必ず生徒の側にも伝わっていくものです。
不肖管理人もかつては「あの子と同じクラスにしないで」と散々要望されてきた側だからと言うわけではありませんが、親がそうした態度に出て成功したとなれば子供もそれにならうものであって、あの親はクレーマーだから席順くらいなら言う通りにしておこうと事なかれ主義のつもりでいると、むしろかえって教室が手をつけられない状況になりかねません。
結局ここでも結局最重要となるキーワードは公平性だということは共通であって、理不尽な要求には毅然として対応するという大原則を貫くことが結局はさらなるクレームを減らし、教室環境を健全なまま維持するための大原則であると言えそうです。

そもそも子供達が何故公平性を重視するのかと言えば不公平な扱いをされるのが嫌なのであって、自分が得したと言うことは素直に受け入れても損をしたという事には敏感であるというのは、ともすれば人と同じ扱いは最低限の当たり前で、いずれ人よりもいい扱いをしてもらわなければ満足出来ないということにもつながっていきかねません。
とすれば、公平性を求める生徒達が将来不公平や依怙贔屓を要求する歪んだ大人に育っていかないようにするためにも、まずは学校現場において誰に対しても公平に扱うということを徹底して、理不尽な要求であろうが希望を強引に押し通すのが当然などという勘違いを起こさせないことが重要ではないでしょうか。

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コメント

この席替えソフトってようするにくじ引きと同じことですよね?
無理にプログラム組まなくてもよかったんじゃ…

投稿: ぽん太 | 2012年5月28日 (月) 09時11分

ヒント:子供騙しw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年5月28日 (月) 10時38分

我々の頃もくじ引きの順番を決めるくじ引きがあったりして一限まるまる潰してましたし、どうでもいいことに馬鹿馬鹿しい労力を傾注して大事にしてしまうって個人的には結構好きなんですけど(苦笑)。
ただ席を前側、後側に分けてくじ引きする等のやり方でも同じような効果はあるでしょうから、アナログ世代の先生方も悲観するには及ばないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月28日 (月) 12時08分

クレーマーの言いがかりにも言いなりになってるのって見てる方も気分が悪いです
だれだって理由があって来ているんだから依怙贔屓は困ります
診療契約って言葉もあるんだから契約の条件としてルールを定めることはできないんですか?

投稿: こだま | 2012年5月28日 (月) 16時36分

>診療契約って言葉もあるんだから契約の条件としてルールを定めることはできないんですか?

出来るでしょうし、実際提示してる医療機関もあるようですがそんなもんクレイマーが守ると思います?
個人的には応召義務を撤廃して、クレイマーは診療拒否出来るようにすれば済む事だと思うんですがねえ。

*罰則はない飾り法律だからして現時点でも関係者が腹括れば済む話ではありますが、医療関係者への精神的拘束力はそれなりにあるんで…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年5月29日 (火) 12時37分

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