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2012年5月16日 (水)

福島が18歳以下の医療費無料化を決定

すでに報道等でもご存知の通り、福島県で18歳以下の医療費無料化がこのたび正式決定されたということです。

子ども医療10月から無料化 福島県が正式決定/福島(2012年5月14日日本経済新聞)

 福島県は14日、東京電力福島第1原発事故を受けた18歳以下の医療費無料化を10月1日に始めると正式決定した。約47億円の補正予算案を6月議会に提出する。

 子育てしやすい環境を整備し、人口減少を食い止めるのが狙いで、これまで秋からの実施方針は固まっていた。18歳以下の子どもは約36万人

 県によると、既に全市町村で小学3年までは医療費が無料化されており、県は小学4年から高校3年について、各市町村に全額補助する。県外避難している1万7千人余りの子どもも対象とする。財源には県民健康管理基金を活用する方針。

 18歳以下の医療費無料化をめぐっては、政府が国費負担を断念。福島県が独自に取り組むと決めていた。〔共同〕

無料化10月から、正式に/福島(2012年05月15日朝日新聞)

 ●県内外18歳以下医療 住民登録対象

 佐藤雄平知事が県独自の施策として導入を表明していた子どもの医療費無料化について、県は14日、10月1日から事業を開始することを正式に決めた。県外への避難者を含め、県内に住民票を置く18歳以下の子どもを対象に、医療費を県や市町村が負担する。

 18歳以下の医療費無料化を都道府県で導入するのは全国で初めて。県内の市町村には、小学3年以下や高校3年以下を対象に独自の無料化策を持っている自治体もある。県は小学4年以上の医療費を全額補助し、県と市町村の既存の制度とあわせて、通院費や入院費の自己負担分を無料にする

 公的保険がきく病気の治療が対象で、窓口での支払い方法は、住民票を置く市町村の制度が引き継がれる予定。県外の病院での自己負担分は領収書などでの事後精算を想定している。

 新制度の導入による県の負担は年間約47億円の見通し。財源には、原発事故後の県民の健康維持のため創設された健康管理基金をあてるが、積立額3400億円のうち、8割以上が除染費などで取り崩される予定で、福島特措法による将来の財源確保にも不透明さが残る。事業の期間についても「継続性を可能な限り図る」との表現にとどめた。

 また、中学3年までに限れば、東京都や群馬県など、県内からの避難者がいる自治体にも無料化制度があり、効果は未知数だ。このため、県は今年、内部被曝(ひばく)検査や子どもの心のケアなど総額642億円の関連予算を組み、子育て支援重視の姿勢を打ち出す

福島の18歳未満3万人が避難 流出抑制へ医療費無料化/福島(2012年5月15日河北新報)

 福島第1原発事故などで、福島県の18歳未満者約3万人が避難していることが14日、県の集計で分かった。県外への避難者が6割を占めるなど子どもの流出が深刻となっているため、県は10月から18歳以下の県民の医療費を無料化する。県によると、18歳以下の一律無料化は全国の都道府県で初めて
 県によると、4月1日現在の18歳未満の避難者は表の通り。県内59市町村中、48市町村の計3万109人が避難している。このうち県外が1万7895人で59.4%を占める。市町村別で最多は南相馬市の5606人で、いわき市3641人、浪江町3298人と続いた。
 18歳以上も含めた県民の総避難者数は現在、約16万人。その2割近くが18歳未満の子どもで、特に県外避難者は18歳未満者が3割近くを占めた。子を被ばくさせたくない親が避難させているのが主因とみられ、県子育て支援課は「かなり大きな比率で、危機的状況にある」と話す。
 県外流出を食い止める施策の一環として県は14日、10月から18歳以下の医療費無料化を実施する方針を正式に発表した。
 県議会6月定例会に本年度分の事業費10数億円の補正予算案を提出する。
 対象は、県内に住所がある小学4年生から18歳以下の人で県外避難者も含む。実施主体は市町村で、県が東京電力の賠償金などを基に創設した県民健康管理基金から全額補助する。小学3年生までは県内の全59市町村で既に無料化が図られており、県の事業との組み合わせで18歳までが一律無料化となる。
 佐藤雄平知事は「日本一、子どもを生み育てやすい県づくりの象徴となる事業。県を挙げて取り組む」と話している。

過去の経緯はすでに何度か取り上げてきたところですが、復習しますと昨年11月に総理官邸を訪れた佐藤知事から緊急要望書の主要課題として医療費無料化が取り上げられ、首相もその場では検討するという話ではあったものが結局は国の施策としては断念する旨を返答していたところ、福島県側で独自に予算をつけて行うことにしたということです。
この件についてはまさに首相筋からの指示を受けて政府関係各所でも検討された通り、国の施策としては福島県内外での差別的待遇ということへの説明がつきにくいことに加えて、何よりもただでさえ逼迫していると言われる現地の医療供給に対して更なる需要の増大が深刻なダメージを与えかねないと懸念され、財源問題などとも併せて国からは断られたという経緯であったわけですね。
無料と言えば誰でもうれしいでしょうし、医療財政も緊縮が続き経営も厳しい折にお上がお金を出して顧客を増やしてくれるというのですから医療機関としても歓迎すべきところなのでしょうが、それでも医療現場からはやめておいた方がいいんじゃないかという声が少なからずあるという現実をどう捉えるかです。
無論福島が独自にお金を出してやることだから自治体の勝手だろうという考え方もあるにせよ、ご存知のように福島と言えばかねて聖地とも言われるほど医療に関しては数々の課題を抱える土地柄だけに、今回の独自の施策が現地の医療事情にさらなる悪影響を及ぼすのではないかと懸念されるわけですね。

そもそも近年では小児医療費無料化が各地で拡大してきていますが、現場からはこれがただでさえ疲弊している小児科医にさらなる負担を強いるものであると言う声が挙がっている一方、自治体側から見れば手軽に住民の支持率を期待出来る、若年世帯の定住も得られやすいといい事ずくめのようにも見える施策であるわけです。
すでにアメリカでの政府主導による社会実験によっても医療費無料化はモラルハザードを招くという結果が明示されていますが、卑近の例としては先日いわき市長の「原発避難者は働かずパチンコばかり」発言でも注目されたように、医療費窓口負担が免除される避難者が避難先で医療機関に押し寄せパンクさせてしまうという事態が実際に起こっていると言います。
避難先の住民としては軒先を貸して母屋を取られたような心境でしょうが、もともと医療資源が不足している東北の中でもことに聖地と崇められる福島だけに医療需給バランスはただでさえ需要過多に傾き現場が疲弊していたところに、この上需要ばかりを増やすようなやり方が現場にどう受け止められるかはきちんと検討されているのでしょうか。

特に今回注目されるのが小児医療費無料化といいながら実際には18歳までが対象ということで、社会的には確かに18歳は未成年ですが医療の世界では小児科ではなく内科、外科と言った一般診療科の対象となる大人ですから、小児科だけが輪をかけて忙しくなるではすまない広範な影響があるだろうと予想されますし、あまり無茶ばかり押しつけて医療体制が破綻してしまえば医療費無料化の効果など簡単に相殺されて多額のおつりが来るというものですよね。
先の原発対応であれだけ叩かれながらも国が無料化を見送った背景にもそうした医療現場に与える影響への常識的な判断が働いたと思われますが、大野病院事件での報告書でっち上げ騒動しかり、原発事故の際の「患者を置き去りにして逃げた許せない病院」なる捏造発表しかりで、福島というところはどうもお上が医療現場に余計な負担をかけずにはいられない土地柄なんでしょうか?
当初の目的であるという定住促進への効果ももちろんですが、機材も乏しい仮設診療所に応援医師を招いて何とかやりくりしてきただろう福島の医療現場にこれがどんな影響を与えるかも、今後注目していきたいところですね。

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コメント

高校生はそんなに病気ないし勉強で忙しいからポーズだけになりそうですけどね。
ただ調子にのって何でもすぐに病院に通わせる親は出るのかな?
飲食店でも無料券やクーポン客が大勢来ると客層が悪くなるって聞きますけど。

投稿: ぽん太 | 2012年5月16日 (水) 08時46分

未だに福島で働いてるような○○な医者はクソ喰うのが好きな変態だからしてほっといていいかとw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年5月16日 (水) 10時26分

まあそれを言っちゃあ、なんですが…
ただ情報がこれだけ素早く広汎に流通する時代にあって、自らその情報を収集し吟味することなく突き進む人間も医師としての適性上どうなのかとは思います。
そういう人は薬や機材の問題でメーカーから警告が出されても全然チェックして無さそうって思ってしまいますからね。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月16日 (水) 10時29分

無料なのは「時間内」の受診に限るべきです。そうでないと、時間外の「コンビニ受診」で救急医療が破綻するでしょうね。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年5月16日 (水) 10時48分

非常識な患者に対してはなんらかの抑制策が望まれるね
しかしこういう記事を選んでるせいもあるんだろうが、福島という地域には限りある医療資源を保護しようって発想はないのかな?
聞こえてくる記事全部がさらに働けとむち打つような話ばかりに思えるんだが

投稿: kan | 2012年5月16日 (水) 11時00分

医療費を無料化しても福島の放射線が安全になるわけではない。
ウクライナの基準でいえば、子供達を福島に留まらせてること自体が危険ではないかと。
親の自己判断で西日本や北海道などに疎開しているというのが現実ですからね。
今の日本の価値観ではタダほど高くつくものはないと思います。
医療費の患者負担があまりに安すぎるからコンビニ受診が増え、必要外の救急要請、救急患者は増えているのでは?
福島から医者が逃散するのを促進するだけにしかならないのでは?

投稿: 元神経内科 | 2012年5月16日 (水) 12時06分

あえて言えばこれも壮大な社会実験として後代に貴重なデータを残すかも知れないってことですかねえ?
現段階でわざわざ危険地帯に放射線感受性の高い人達を呼び込む意味がわからんです

投稿: 柊 | 2012年5月16日 (水) 12時17分

最近読んだ「なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか」に、”医者が逃げた”報道の元になったプレスリリースを出した福島県庁の災対本部救援班長が実名で特定されてました。その本人にインタビューもなされてるんですが、そのくだりを読むと、

>福島というところはどうもお上が医療現場に余計な負担をかけずにはいられない土地柄

それそのものって感じです。

投稿: そういえば | 2012年5月16日 (水) 18時21分

>ただ情報がこれだけ素早く広汎に流通する時代にあって、自らその情報を収集し吟味することなく突き進む人間も医師としての適性上どうなのかとは思います。

福島に相応しい人材と言えようw

>「なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか」

仮に逃げたとしてそれが何か?って話ですがね本来は。まあこの院長も福島に相応すぐる人材と言えますなあw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年5月17日 (木) 10時11分

無料化からモラルハザードへ直結しないためにも、何かしら歯止め策くらいは用意してもらいたいんですが、何しろ聖地福島ですからね。
これも壮大な社会実験としてどうなるか生暖かく見守っていきたいです。

投稿: 管理人nobu | 2012年5月17日 (木) 11時14分

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