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2012年4月 4日 (水)

国の老人虐めが深刻化?!

生活保護(生保)受給者が史上最多を更新し続ける中、久しく続くデフレの影響もあってか若年世代を中心とするワープア層との逆転現象が社会的にも注目を浴びるようになっています。
先日は野党・自民党が生保給付の引き下げなどの改革案を衆院選公約に掲げたというニュースも出ていましたが、それだけ選挙の争点にもなるほど社会的関心を集めるようになっているとも言える中で、ちょうどこんなニュースが出ていました。

老齢加算の原告勝訴見直しか 最高裁、審理差し戻し(2012年4月2日中国新聞)

 国の生活保護制度見直しで「老齢加算」を廃止したのは違憲、違法として、北九州市の男女39人が市の生活保護変更決定の取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美ちば・かつみ裁判長)は2日、全員の減額処分を取り消した二審判決を破棄、審理を福岡高裁に差し戻した。原告勝訴が見直される公算が大きい

 判決は「老齢加算の廃止は、支給の必要性の有無に関する判断や、廃止方法について国に技術的、専門的な見地からの裁量権がある」との枠組みを提示。裁判では、廃止の過程や手続きに誤りがあるかどうかを統計などの客観的数値や専門的知見との整合性から判断するべきだと指摘した。

 二審判決はこうした観点に基づく判断をしていないとして、審理をやり直すべきだとした。

 二審は原告勝訴の理由を「廃止決定は国の専門委員会の意見を踏まえた検討がされていない」としていた。しかし最高裁は「意見に法的拘束力はなく、考慮要素の一つにすぎない。内容も高齢者に老齢加算支給の特別な需要はないと廃止を妥当とし、激変緩和措置を講じることを求めたものだ」と逆の見解を示した。

 また死亡した原告4人については訴訟終結を宣言した。

 福岡高裁判決は、全国9カ所で起こされた同種訴訟で唯一の原告側勝訴だった。最高裁は2月、東京都内の原告らが起こした訴訟の判決で「廃止判断に誤りはなく、憲法にも反しない」とし、原告敗訴が確定している。

 北九州市の訴訟で一審福岡地裁は廃止決定を妥当としたが、高裁判決は「受給者の不利益を具体的に検討して減額幅が決められた形跡はなく、生活水準への配慮も見られない」と判断。

 廃止による減額幅が単身世帯では20%近くになり「明らかに合理性を欠く」とし、廃止に伴う減額は正当な理由のない不利益変更で生活保護法に反するとしていた。

しかしこういうニュースも一昔前であれば「なんという不当判決!」「弱者を虐める悪政だ!」などと新聞やテレビも盛り上がっていたんでしょうけれども、今や大手マスコミですら何か遠慮がちに報道しているくらいですからねえ…
記事にもあるように先日は東京都での訴訟の判決においても合憲判断が出るなど原告の訴えを退ける判決が相次いでいて、唯一残っていたこの北九州の訴訟も差し戻しが決まったということは老齢加算に関する司法判断が事実上確定したと見てよさそうですね。
世間の「相場」を越えて優遇するというのであればそれなりの根拠が必要ですが、報道を見ている限りでは原告側にも客観的データを添えてそれを示しているというわけではどうやらないようで、実際に彼ら受給者が切々と「健康で文化的な最低限度の生活を下回っている」と訴えても「ふ~ん、で、それが何か?」「俺よりよっぽどいい暮らししてんだなw」といった反応が返ってくるだけなのが現実と言うものです。
健康保険や医療費などの支払い免除も含めて、同程度の収入であれば生保受給者全般が若年低賃金労働者よりもずっといい待遇にあるというのはすでに世間でも周知の事実となっている、しかも実際には生保よりもはるかに低い収入に甘んじている人々が多数必死に歯を食いしばって働いているわけですから、さすがに自分は弱者であると声高に主張するだけでこれ以上の優遇を是認されるのは無理があったということでしょう。
生保に限らず特別に高齢者を虐めようとかいう話ではなく、ただ今まで特にこれといった根拠もなく優遇されてきた高齢者にも応分の負担を求めようという動きは生保以外にも広がっていますが、こちらは与党・民主党の岡田副総理の口からしびれを切らしたかのような言葉が出てきたというニュースがあります。

70~74歳の医療費負担「2割に」 岡田副総理(2012年3月31日朝日新聞)

 岡田克也副総理は31日、70~74歳の医療費の窓口負担について「暫定的に1割になっているが、2割に戻させていただきたい」と語り、2013年度以降に引き上げるべきだとの認識を示した。青森市で開かれた消費増税と社会保障の一体改革の対話集会で語った。

 70~74歳の医療費負担は、自公政権時代に1割から2割への引き上げを決めたものの、高齢者への配慮などから実施しないまま凍結。毎年2千億円を超す予算を投じ、1割負担で据え置いている。野田政権は12年度から2割に引き上げる方向で当初検討したが、民主党内の反発を受けて見送っていた。岡田氏は集会後、「政府としての議論はこれからだ。ただ、私(の考え)は早期に戻すべきだ」と記者団に述べた。

ご存知のようにこの話、とっくの昔に廃止になると決まった優遇政策を相変わらず是正しないまま凍結してきた政治の怠惰も問われる一件なんですが、さすがに消費税を値上げしなければもう国が保たないとまで公言しているくらいに財政も逼迫している中で、党内反対勢力がいつまで意地を張っていられるかが注目されるところですよね。
ネット上の声などを見ていますともう年齢に関係なく三割負担でいいじゃないかという意見も多いようですし、貧乏な若年世代からお金をむしり取って一番お金を持っている高齢者世代ばかり何故優遇を続けるのかと言う声は根強いものがありますから、所得格差是正という国の持つ基本的役割から考えても特に根拠がある訳でもない高齢者優遇政策はこれから順次廃止されていく流れになっていくのでしょうか。
ただ是正反対派がそうした主張を続けるのも彼ら自身が多くの場合優遇を受ける側であるのみならず、政治家として見てもその方がより多くの票に結びつくという現実があるからに他ならないでしょうから、結局のところは選挙などの場できちんと意志を示していかないことには何も変わらないというのは民主主義の基本だと言うことでしょうね。

ただ国と国民という二元論で見るとそれで済む話なのですが、これに対して第三局として位置してきたマスコミというもののスタンスがどうなのかということも気になりますよね。
先日も書きましたように、近年マスコミと言えばとかく「若者の○○離れ」などと貧困化する若者を追い撃つかのように過酷なバッシングを繰り返すことに熱心で、若者側も単に憤慨するのみならずこれを切り返してささやかな反撃に転じているという状況にありますが、前述のような「老人虐め」に対してかつてほどの感情的な(ま、客観的データがないので当然そうなるのですが)反発を並べ立てずに静観している印象があります。
朝日などこうした差し戻しの判断が出れば当然のように「だがちょっと待って欲しい」とばかりに超法規的な老人優遇の継続を主張しかねない印象にありましたが、見てみましても今のところ特に言及もないようで、彼らが世間に漂う空気を読んだというほとんどあり得ないような状況でなければ、どうも弱者の味方という以前からの彼らの表看板との整合性が取れていない印象は受けますよね。
以前にも消費税増税などトンデモナイと主張してきたマスコミ各社が一斉に手のひらを返して増税やむ無しと言い始めた背景を紹介したことがありますが、基本的に叩いて反撃がない、あるいはメリットがある対象を叩くという彼らのスタンスを逆に考えてみると、この場合は何かしら憚るべき裏の事情でもあったということなんでしょうか。

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コメント

すでに決まっていることですし、高齢者医療制度に反対してきた民主党が自ら始末をつけるとなれば国民も納得せざるを得ないでしょう。
あわせてワーキングプアの無保険問題への対策も急いで欲しいです。

投稿: ぽん太 | 2012年4月 4日 (水) 08時46分

高齢者負担引き上げは民主党がどう扱うかだな
これ以上支持率は下げられないとまた先送りするのか、もはや破れかぶれで筋を通すのか
他にも特権は数多いからこれくらいさっさと片付けてもらわないと困るんだが

投稿: | 2012年4月 4日 (水) 10時45分

と言いますか、別に何の政策であってもやると決まったことをいつまでも先送りありってのはおかしな気がします。
ただ今はもうそれどころじゃないというのも正直なところなんでしょうけど。

投稿: 管理人nobu | 2012年4月 4日 (水) 12時07分

これから高齢者が急速に増加する状況で今後さらに医療費が馬鹿にならないほどになるでしょうから、今から先手を打っているのでしょう。
今さら急に尊厳死の法制化、看取り促進、ジェネリック促進とか言いはじめましたね。
高齢者に延命・濃厚医療するようなカネは日本にはもうないよと言うことなのでしょう。
日本の場合は患者側が直接文句を言うのは厚労省ではなく、医療現場の人間ですし、トラブルのリスクを負うのも同じく現場です。
実際の医療現場でジェネリック促進で薬害被害を被ろうが、看取り関連で揉めて訴訟になろうが、知ったことかという感じでしょう。
欧米のように高齢者の死をすんなり受容できない今の日本人に対して「国にカネがないから医療にもカネかけるな」と誘導するのはリスキー。

投稿: 元神経内科 | 2012年4月 5日 (木) 12時31分

そういう状況だからこそ保険診療の上限を厳しく制限していくべきでは?
なんでも定額でやってくれるからこそどこまでやるべきかという葛藤もあるし、何故やってくれないの?というクレームもくるのだから
ブラックジャックよろしく希望があればなんでもやります、ただしここから先はオプション料金になりますがよろしいですか?でいいと思うんだけど
特に寝たきり超高齢者に化学療法から透析まで全部保険でやるのはおかしいと誰でも思ってるはずでしょ?

投稿: 横入り内科医 | 2012年4月 5日 (木) 21時31分

国がそう誘導するんだから国がきっちり説明して納得させろよ現場に丸投げスンナ!って事かと。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年4月 6日 (金) 10時09分

まあ現状でももうちょっとこれ使えばいけそうなのに保険診療上の制約で出来ないってことはままありますから、そこは素直に国が認めてませんで押し通すしかないと思います。
ただそこで切られるのも覚悟でやってしまうかどうかは医療側の問題で、特に保険のしばりがきつくなるほど経営上の判断との板挟みは多くなっていくでしょうね。
担当医によって判断が異なるというのは不信感を招きかねませんから、少なくとも施設内での方針のすりあわせは行っておくべきかも知れません。

あと現実問題として自分に関わることでもないのに保険診療の制約がこれこれでなどと漠然と説明しても一般国民は誰も聞きませんから、結局その時になって誰かが説明するしかないと思います。
ただそこで納得出来ないという方々を医師が説得すべきかどうかは議論の余地のあるところで、医学的に妥当なのに保険上の制約(というより、病院の経営方針?)で出来ないということであれば事務方に説明させる道もありそうですけどね。

投稿: 管理人nobu | 2012年4月 6日 (金) 14時12分

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