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2012年4月23日 (月)

新司法試験導入は無理筋だったそうですが

先日総務省からこんな勧告が出されたことを御覧になりましたでしょうか。

司法試験の合格者数、年3千人は無理…総務省(2012年4月20日読売新聞)

 総務省は20日午前、司法試験合格者数を「年3000人程度」に引き上げるとの政府の目標に関し、「目標と実績の乖離(かいり)が大きく、近い将来の達成は困難」として、引き下げを含め見直しを検討するよう、法務、文部科学両省に勧告した。法科大学院については定員削減や統廃合の検討も求めた。

 司法制度改革の施策に関する総務省の勧告は初めて。同省は、法務、文科両省のほか、最高裁や法科大学院(38校)、全国22の弁護士会などを対象に調査した。政策目標自体の見直しを求めるのは異例だ。

 調査では、政府が2002年に閣議決定した司法制度改革推進計画で、司法試験の合格者数を「10年頃に年3000人程度」とした目標に関し、法曹人口が11年は3万5159人となり、01年(2万1864人)の約1・6倍に増加したことを挙げながら、「一定の効果があった」と分析した。

 そのうえで、司法試験合格者は10年は2074人、11年も2063人にとどまっていることを踏まえ、「現状でも国民への大きな支障はない」「弁護士の就職難が発生し、質の低下も懸念される」などと指摘。数値目標の見直しも含めた検討を勧告した。

弁護士、深刻さ増す就職難 日弁連は勧告歓迎 司法試験合格目標見直し(2012年4月20日日本経済新聞)

 年間3千人としてきた司法試験数の政府目標の見直しを求めた20日の総務省勧告は法曹関係者の間で波紋を広げている。弁護士の仕事が増えない中で法曹人口が急増したため、弁護士の就職難は深刻さを増すばかり。合格者数削減を求めてきた日本弁護士連合会は歓迎する一方、入学定員の削減を求められた法科大学院は反発を強めている

 「民間企業に就職した方が安全と判断した」。2008年に都内の法科大学院を修了した男性(31)は一度も新司法試験を受験せず、民間企業に就職した。新人弁護士の厳しい就職事情に加え、当初の触れ込みより低い合格率に尻込みした。

 「60以上の弁護士事務所に履歴書を送り、ようやく1つから内定をもらった」。都内で司法修習中の男性(27)は胸をなで下ろす。同期の修習生のうち内定を獲得できたのは半分に満たない。「弁護士事務所への就職をあきらめる修習生も出始めている」と話す。

 日弁連によると、11年に卒業試験に合格した司法修習生1991人のうち就職先が見つからず、弁護士会費などが払えないなどの理由で弁護士登録しなかった人数は約400人に達した。

 そのため一度も弁護士事務所で働かず、いきなり独立する「即独」や固定給なしで事務所のスペースだけを借りる「ノキ弁」と呼ばれる弁護士も増えている

 実務経験不足の弁護士が増えることを危惧して合格者数の目標を1500人まで減らすよう求める日弁連の海渡雄一事務総長は「弁護士が供給過剰で就職難に陥っており、政府目標だった3千人に達していない現状でも国民生活に大きな支障は起きていない。定数削減には賛成」と今回の勧告を評価する。

 企業や官公庁など弁護士の活躍の場を広げて「身近で利用しやすい司法の実現」を目指した司法制度改革。法曹人口はこの10年間で約2万1千人から約3万5千人に急拡大したものの、働き口は思ったように増えず、弁護士は慢性的な供給過剰に陥っている。

 一方、新司法試験の合格率が低迷する法科大学院に対し、今回の勧告は教育の質の向上と、志願者数の少ない学校にはさらなる入学定員の削減を求めた。都内の法科大学院で教員を務める男性弁護士は「行政や弁護士会が法曹に対するニーズを開拓する努力をせず、がんばっている学生の首を絞めるような合格者数削減は安易な発想で認められない」と反発する。

 今回の勧告を法務省幹部は「勧告で指摘された内容は私たちも十分に認識している」と冷静に受け止める。「今後、政府の法曹の養成に関するフォーラムで適正な合格者数について議論を深めたい」と話す。

この新司法試験導入後の弁護士急増問題はかねて当「ぐり研」でも取り上げてきたところですが、とにもかくにも数が限定されてきた高度専門職を一気に増やすとどのようなことになるのか、同様に歯学部量産で一気に崩壊してしまった歯科領域とも併せて非常に興味深い実例ではないかと思います。
もちろん文系エリートとして高給取りの代名詞の一つであった弁護士業界がこれだけ破綻してきていることで、一部には「メシウマw」だとか「これで幾らでも安く買い叩けるな」などと言う声もあるのは事実ですが、すでに一部では懸念されていた通りに質的低下が顕在化しているだとか、グレーゾーンに敢えて踏み込む弁護士も出てきているという話も耳にします。
もともと諸外国と違って司法関連業務が弁護士以外にも幾つかの資格専門職によって分担されている日本で、諸外国並みの数を目標に設定するのが妥当なのかという声もあったわけですが、面白いのはこの問題も大学などの偉い先生方はいやそんなことはない、弁護士はもっと増やすべきだとおっしゃっていることで、どこかの世界と同様に他人を使う側には使う側独自の論理があるのでしょう。

ともかくすでに先行する各業界でこのような急激な人員増加とそれに続く崩壊現象が起こっている、そして注目すべきはその結果利用者である国民にとって何かしら目立って良くなった点というのが全く聞こえてこないという共通点がある中で、それでもとにかく医師を増やせ、医学部も新設しろと熱心に主張する一派が健在であるのは周知の通りです。
すでに毎年の国試合格者は大幅に増えていて、しかも各大学とも「定員増はもう無理、質的にも量的にも限界」と悲鳴を挙げている状況の中でさすがにこれ以上の定員増は無理だと考えるしかないのでしょう、昨今では医学部新設ということがにわかに現実味を帯びて語られていますけれども、特に政治の立場にある方々がこれをおっしゃる場合には非常に注意が必要だと思います。
ご存知のように各都道府県の医学部定員と人口など医療需要とはかなり乖離している場合もあって、特に一部都道府県では人口が増え続けているのに医学部が一つしかないということで大変な苦労をされているのは判りますが、そのせいかどうも医学部を新たに設置するということがかつての田舎自治体首長が町立病院を誘致しましたなんて話と同様、お手軽に世論に訴えるポイントにもなってきている気配もあるようですね。
そんな中で先日は神奈川県知事がこの医学部新設を打ち出してきたと話題になっていますが、各方面から専門家を招いての有識者会議で議論している最中に知事が横やりを入れた形になったことがそもそもの紛糾を招いた原因の一つだったようですが、どうも知事の方ではかなり独特な構想をお持ちであったようなんですね。

黒岩知事:医学部新設構想 県医師会が反対「増員を」 /神奈川(2012年4月20日毎日新聞)

 黒岩祐治知事が医師不足対策として打ち出した医学部新設構想について、県医師会は19日、理事会を開き、「医師不足対策にならない。学部の増員で対応すべきだ」として反対していくことを合意した。ただ、抗議などはせず、今後の成り行きを見守るとしている。県医師会の大久保吉修会長が理事会後、毎日新聞の取材に答えた。

 県が17日に公表した構想では、医療分野の国際競争力を高める目的で昨年末に指定された「ライフイノベーション国際戦略総合特区」(横浜・川崎臨海部)に新たに医学部を設置し、国際的な医療人材を育成するとしている。

 医師不足対策を巡っては、有識者会議の協議中に黒岩知事が国に医学部新設を要望したことで、医師会が委員派遣を取りやめる騒動に発展。知事が謝罪して、最終報告で現行の医学部定員増との両論併記に収めた経緯がある。

 大久保会長は「国際的な人材を育成しても海外への流出で、県の医師不足は解消しない。将来の『医師余り』を考えると、調整がしやすい増員で対応すべきだ」としている。【北川仁士】

医師不足対策 「メーンでない」(2012年4月20日朝日新聞)

 医学部新設の構想について、黒岩祐治知事は19日、「医師不足対策が主な目的ではない。特区を利用し、日本の医療に風穴を開けることがメーンだ」と述べた。朝日新聞の取材にこたえた。

 医学部新設は、17日に発表した県の「医療のグランドデザイン案」では、医師不足対策の一つとして掲げていた。この点について黒岩知事は「切り分けた方がわかりやすかったかもしれない」と認めた。ただ、「特区の医師が将来、特区の外に出て行けば、医師不足が補われる」とも話した。

 県の構想によると、新設する医学部では英語で講義や実習をし、付属病院には外国人の医師や看護師を積極的に招く。黒岩知事は「日本の医師や医学部生らと交流することで、日本の医療を変える起爆剤にしたい」と述べた。特区として、日本の医師免許や看護師免許を英語で取得できる規制緩和も検討しているという。

 また、黒岩知事は「特区でやる目的は、(医療・科学分野で)日本の経済を回していくということだ」として産業政策としての側面も強調した。付属病院では、公的医療保険が適用されない自由診療を積極的に行い、アジアなど外国の富裕層が患者として医療を受けるために日本に来る「医療ツーリズム」の受け皿としても整備したいという。

 県医師会の大久保吉修会長は「どういう医学部や付属病院になるのか、イメージがわかないので、コメントしようがない」と話している。
(略)

いやまあ、黒岩知事と言えば元々医療系ジャーナリストをもって任じていた方ですから一家言あるのは理解出来ますが、さすがに新設など無謀、どうしてもというなら地域の受給バランスも見てごく少数地域だけを厳選してやるべきだとある程度コンセンサスが固まりつつある状況で、「いやうちは単に日本の医療に風穴を開けたいだけですけどね」といきなり国際的な医学部の新設を打ち出されても、ねえ…
個人的に特区内で全国均一の保険診療から外れた斬新な医療を行っていくことは大いに賛成であるし、むしろ神奈川に限らず東北被災地あたりでもそうした試みをどんどん広げていくべきだと思うのですが、それにしてもまず先に医学部新設ありきではなく、そうした医療の場を用意する方が先ではないのか?という気がします。
国際的な医学教育と言えばかねて米軍系の病院がある沖縄などもそうした面で研修医の人気を集めているわけですし、近年では学部学生レベルでも普通に海外短期留学等も行うようになってきているわけですから、まずはそうしたインターナショナルな教育を受けた人材にドメスティック標準に留まらない医療を行える場を提供する事の方がよほど優先順位が高いのではないでしょうか?
その結果やはりどうしても対応出来るスタッフが不足している、自前で養成しなければ足りないというのであれば改めて新設を検討すればよいのであって、全国どこかに新設するとすれば是非我が県に!と血眼になって誘致のチャンスをうかがっている医師不足の深刻な各地自治体を押しのけてまで手を挙げる理由として、ちょっとこれは煮詰めが甘すぎるのではないかなという気がしてしまいます。
わざわざこの時期にこういうセンシティブな問題で虎の尾を踏むようなことを言い出すのですから、せっかくならもう少しガツンと来るような画期的アイデアの一つも出していただければよかったのですけどね。

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コメント

国のやっていることを国が改めろと勧告するのですから、法務文科の両省はメンツをつぶされた形ですよね。
それでもしおらしく受け入れるというのですから自覚はあったんでしょう。
どうせやってしまったことには一切責任は取らないはずですから、せめて今後同じ間違いを繰り返さないよう肝に銘じてもらいたいです。

投稿: ぽん太 | 2012年4月23日 (月) 09時18分

食い詰めた量産型弁護士と量産型医師がタッグを組めばさぞかし楽しい…もとい、困った事になりかねないワケで、いや殆ど残念ww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年4月23日 (月) 09時33分

空論ですね。
黒岩氏はやはり実務家ではないなという印象を受けます。
かつては医療現場の取材もしてきただろうに何を見ていたのか。
もうすこし空気読めってとこですか。

投稿: techan | 2012年4月23日 (月) 09時56分

このタイミングでこういうことを言い出すというのもちょっとどうなのかなとは思いました。
どちらにしても新設優先順位の中では最底辺に位置づけられることでしょうから実害はないかと。

投稿: 管理人nobu | 2012年4月24日 (火) 07時40分

民主政権が購読部数の減った左巻き新聞社救済の為、公立学校への税金を使った新聞購読を法制化し、馬鹿左翼新聞を救い、民主党への援護射撃報道をしてもらう制度を確立したのに続き第二段として、左翼狂人弁護士救済と民主党との間に互助制度を作るため、年間の司法試験合格者を削減するとか。今まで合格を夢見て頑張ってきた若い人達を切り捨てて、既得権を持ったダラ法曹人を守る制度。さすが民主党だな、社会主義そのものだ。弁護士なんかアメリカなみに増えていいんだよ。無能弁護士は淘汰され、優秀な社会の為になる弁護士のみ残る。自由競争はいかなる社会においても質を向上させる。あたりまえの話じゃないか。国民不在のところで民主党内左巻きと日弁連との互助会を作ってどうする。これに引き続き、次は日教組、日本年金機構との互助会作りか?

投稿: | 2012年8月 8日 (水) 16時20分

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