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2012年4月24日 (火)

千葉県救急ドミノ倒し ついに旭中央も危機的状況に

1000床クラスの基幹病院が救急制限をすればどうしたところで地域医療に支障を来さずにはいられませんが、とりわけその地域がどこかというのも問題になりそうなのがこちらのニュースです。

旭中央病院、救急を制限/内科医減が深刻 /千葉(2012年4月22日朝日新聞)

 県東部の中核病院、国保旭中央病院が4月から、救急の受け入れを制限している。内科医が大幅に減ったことが原因で、外来の診療にも影響を及ぼし始めている。同病院は受診者数を減らすため、「病状が安定したら近くの医院で受診を」と呼び掛けている。

 同病院によると、病院全体の常勤医師数(研修医を含む)は、昨年度の253人から239人に減った。深刻なのは、59人から50人になった内科。救急現場で働き盛りとなる免許取得6年目前後の医師が抜け、補充できなかった。
 救急にあてる医師が足りないため、脳卒中患者については、東金市や山武市、茨城県からの救急車の受け入れ制限を決め、4月から実施している。同病院で年間に受け入れる救急車(約6千台)のうち、両市の患者数は12%、茨城県からは11%になる。
 両市の患者は原則、千葉市内の病院に搬送されるという。同病院は「医師の補充を急いでいるが、短期的な解決はできない。このままでは圏域の医療を守れなくなるので制限せざるをえなかった」という。

 内科の中の一部の診療科では、入院や外来診療にも影響が出かねない状況だ。
 呼吸器内科は現在2人の専門医が外来診療をしているが、うち1人は今夏に退職を決めている。同病院の肺がん患者の新規患者数は県内で3番目に多く、医師1人あたりでは最多。すでに新規患者の一部は千葉市内の病院を紹介している。
 新人医師からは、定数を大幅に上回る臨床研修の希望がある。だが「指導役の中堅医師が少なくなれば、研修希望も減る。そうなると病院自体の魅力が下がり、さらに人が減る悪循環になる」(指導医の1人)という懸念も出ている。

 同病院は、生命に危険が及ぶような重篤な患者を扱う3次救急を担う。入院が必要なけがや病気への対応が本来の役割だが、軽症者の対応にも追われている
 1日の外来患者数はここ数年、3100~3250人に上る。患者数を減らすため、紹介状がない受診を後回しにしたり、薬だけの通院をなくそうと処方箋(・・せん)の日数を延ばしたりした
 だが、地域の高齢化率の上昇などもあり、効果は上がっていない。同病院広報部は「どうしてもここで診てほしい、という人を拒めない」と悩む。

 同病院に負担がかかる一因は、県東部の医療機関の縮小だ。
 隣接する銚子市の市立総合病院は2008年9月、医師不足や市の財政難などを理由に休止。10年5月に診療を再開したものの、手術や入院は大幅に制限されたままだ。
 本来、山武市や東金市の保健医療圏域は、旭市がある香取海匝圏域とは別。しかし、現在両市では救急機能がある基幹病院が弱体化しており、そちらからの患者流入も止まらない
 一方、基幹病院としての義務は高まる一方だ。09年からは県の委託で、救急車の搬送先が見つからない場合、必ず受け入れる役目を負った。当初の年間受け入れ件数は200台だったが昨年は600台になった。
 同病院の伊良部徳次副院長は「患者さんには申し訳ないが、安定した状態になった方は地域の医療機関への通院に切り替え、緊急性が高い方を優先させてもらいたい」と話す。(重政紀元)

もともとご存知のように千葉県というところは人口が多い割に医学部定員が千葉大一つだけで少ないと問題視されていた県ですが、特に2008年に銚子市立総合病院が休止に追い込まれて以来、近隣の大病院である旭中央に患者が殺到しパンク状態になっているということでした。
これに加えて以前に千葉でのシンポで亀田信介・亀田総合病院院がコメントしていたことですが、地域の病院が旭や亀田といった大病院に不採算な患者を「ヘリでどんどん送り込んで」来るといった状況にもあるようで、地域全体で大事な基幹病院である旭中央を支え維持するという様子では到底ないらしいですね。
ひと頃話題になった救急搬送受け入れ不能、俗に言う「たらい回し」の続出を受けて千葉県でも救急搬送のルール作りがなされていますが、旭中央はありとあらゆる疾患での受け入れ先に指定されている上に搬送先が決まらない時に受け入れも強いられますからただでさえ救急が幾らでも来る、それに加えて以前にもご紹介しましたように千葉県東部では病院の連鎖的崩壊が絶讚進行中という特殊事情があります。
地域内で東金病院→成東病院→銚子市立病院→成田赤十字病院と崩壊の連鎖が続いていて、すでに救急車の行く先は旭中央しか残っていないと言いますから、ここが救急制限をするということはいよいよ崩壊も最終段階に入ったかと思わされますよね。

もちろんこうした救急医療を担うべき大病院が普通の外来診療まで担わされているということが医師らスタッフの過重労働にも結びついているのは明らかで、「どうしてもここで診てほしい、という人を拒めない」などと甘いことを言っている場合ではないのは当然なのですが、拒めないという背景には亀田信介氏なども言及しているように同病院が自治体を母胎にしているという事情もあるようですね。
しかし同病院の院長も語っていることですが、旭中央の予算は旭市の予算よりも大きいというくらいですから一自治体だけで到底支えきれるものではない、ましてや周辺自治体からこれだけ患者を取っているというのに何らの財政的な支援も受けられないのもおかしな話で、こういう事態に至れば周辺自治体も金を出すか受診を遠慮するかくらいの選択を迫らないことには当の旭市民も納得しないのではないでしょうか?
またこれも多忙な現場の医師としてはやむを得ざるところだとは理解できますが、処方日数を長くしてしまうというやり方は余計に患者を呼び寄せる場合もあって、長期処方が可能な状態になっているのであればそもそも地域の医療機関に逆紹介していくというのが筋であるはずです。
いずれにしても何でも大病院に丸投げという姿勢ではいつか大病院の側もパンクするというのは当然で、旭市のみならず千葉県も協力して地域医療の連携を構築していかないことには遠からず完全な破綻に追いやられてしまいそうですし、旭中央自体も心を鬼にしてでも「完全破綻よりはマシ」な道を探っていかなければならないはずです。

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コメント

定数から言えば神奈川より千葉に医学部新設の意義はあると思いますけど。
ただ医学部を作れば地域の医師が増えるってわけでもなくて、亀田にしても旭中央にしても全国から人材が集まっているブランド病院ですし、魅力がなくて逃げてく病院も多いから崩壊してるんですよね。
新しく医学部を作ってもわざわざ千葉の片田舎で働くくらいなら東京でと考える人の方が多いんじゃないですか?

救急については軽症者が多いといっても一次救急では完全な診断は出来ないので、大病院にコンサルトするのは仕方がないです。
ただ診断もついた患者がいつまでも大病院に居座っても仕方ないし、どこでもみられる患者を際限なく抱え込んで仕事が回らなくなるなんて自爆行為ですよ。
言っても聞いてくれない民度ならインセンティブで抑制するしかないんじゃないですか。

投稿: ぽん太 | 2012年4月24日 (火) 09時26分

東京近辺ならともかく誰だって東部や南部なんて行きたくはないわなw
緊急性のない患者は全部千葉市に送ったらいい

投稿: aaa | 2012年4月24日 (火) 11時34分

軽症の患者の時間外のコンビニ受診を防ぐためにも「一律に」時間外料金を上乗せして徴収するしかないと思います。

投稿: 浪速の勤務医 | 2012年4月24日 (火) 11時42分

>同病院広報部は「どうしてもここで診てほしい、という人を拒めない」と悩む。

今回気になっているのはこの部分なんですよ。
例によって現場は何とかしろと言っているのに、事務方が「いやいや先生、患者様を断るなんて市民に顔向けが出来ないじゃないですか」なんて言って押し切ってるのであればどうしたものかと。

投稿: 管理人nobu | 2012年4月24日 (火) 11時48分

>同病院広報部は「どうしてもここで診てほしい、という人を拒めない」と悩む。
他所で働きたいという医者を引き止められないのも仕方ないですね。

>例によって現場は何とかしろと言っているのに、事務方が「いやいや先生、患者様を断るなんて市民に顔向けが出来ないじゃないですか」なんて言って押し切ってるのであればどうしたものかと。
娑婆で待ってるぜ。

投稿: JSJ | 2012年4月24日 (火) 12時20分

この界隈の某有名病院も某診療科が一斉逃散したんだが、予定手術が真夜中に組まれてたりでそれは逃げたくもなるわなという状態だったらしい
スタッフの労働管理すら出来ない病院がまともな疾患の管理が出来るとは思えないな

投稿: kan | 2012年4月24日 (火) 12時55分

>例によって現場は何とかしろと言っているのに、事務方が「いやいや先生、患者様を断るなんて市民に顔向けが出来ないじゃないですか」なんて言って押し切ってるのであればどうしたものかと。

どうしたものかもくそも、医師の立場からするとそんなクソ病院、一刻も早く辞める以外の選択肢は存在しないと愚考しますが、情弱や変態性欲者にはそんなまっとうなリクツは通用しないので、まあ好きなだけこき使われればよろしいかとw。

一方市民及び公務員事務の立場からするとせっかくの貴重な奴隷ですからして、生かさず殺さず末永くこき使うのが得策です。

医師法第19条「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」

つまり非医師の事務が断りまくる分には合法なわけでw、職場がなくなって分限免職くらいたくないのであればそのくらいの仕事はやってしかるべきかと。
*当方法曹ではないので法解釈が間違ってるかもしれません。くれぐれも自己責任でw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年4月24日 (火) 17時36分

>免許取得6年目前後の医師が抜け  
ってのがポイントでしょうね。
少々体の無理のきくうちに、責任を上司に投げられる立場で、ピンキリで様々な症例を経験させてもらったゾと。では興味のある専門分野に進もうか。え、後進に指導?そんな責任の伴う立場にはなりません。地元出身でもないし。じゃ、さようなら・・・
最近の若い人達はしっかりしてますね。

投稿: 蛾蜻蛉 | 2012年4月24日 (火) 21時26分

数年前を思い出しますね。私も東海地方のある医療過疎地域の病院で勤務してましたが、地元大学医局からの内科・外科医師の大量撤退を契機に
私を含めて内科医・外科医が大量離散しました。今も内科医2人外科医1人でやってるそうですが、地元で吐血しても助からない状況だそうで。
千葉県や埼玉県は人口が多いのに県下に1つしか大学ないですから、東京都内の大学に頼るしかない(とてもそんな所へ派遣できない)わけで。
新臨床研修制度の煽りをモロに食らってますね。
一方で地元民の現状認識の乏しさも深刻で、病院から内科医・外科医が続々と逃げて行ってるのに相変わらずの大病院信仰ですから。
ドクターフィーもなく能力に関係なく全ての医者の評価は一律、フリーアクセスですから混乱するのは当たり前でしょうね。
ただクリニックで軽症患者を診ている立場としては初診で軽症に見えても実は深刻な腎不全とか心筋梗塞とかはいくらでもありうるわけですし
後方に病院がないと安心してやってられないのが正直な所です。病院で精査して思いのほか重症だったとかいくらでもあるわけですから。

投稿: 元神経内科 | 2012年4月25日 (水) 11時42分

>ただクリニックで軽症患者を診ている立場としては初診で軽症に見えても実は深刻な腎不全とか心筋梗塞とかはいくらでもありうるわけですし後方に病院がないと安心してやってられないのが正直な所です。病院で精査して思いのほか重症だったとかいくらでもあるわけですから。

「初診で軽症に見えても実は深刻な腎不全とか心筋梗塞とか、病院で精査して思いのほか重症だったとかいくらでもありますから御心配なら大きな病院に行って下さい。」、とムンテラ&記載。ご希望であれば「外来担当先生御机下」な紹介状渡せば済む事かと。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年4月25日 (水) 12時26分

まずは受信料値上げだろjk
愚民は金以外の指標は理解できないんだからw

投稿: aaa | 2012年4月25日 (水) 12時59分

>まずは受信料値上げだろjk

NHK乙w

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2012年4月25日 (水) 14時51分

関係ないけど沖縄って給食費未納率だけじゃなくて受診料未納率も全国トップなんだね
http://ninsito2.blogspot.jp/2012/03/blog-post_09.html

投稿: | 2012年4月25日 (水) 16時04分

山武市に住んでいますが、受診拒否や診断書を書かなかったり、しっかりとした説明をしない医師は当たり前、救急の拒否は当然のように行われていて、誤診なんてのは日常茶飯事、とてもまともな医療実態とはいえません。
東金はもはや病院とは言えず、患者は旭に行くしかないのです。
それさえも拒否されて、現在救急は、千葉や柏、佐倉、白井といった遠くの病院に行かなくてはならないのが現実です。
救急が救急ではない。
病院の数も医師の数も問題ではありますが、一番の問題は医師の質のような気がします。
医師が、来院した患者の症状を悪化させているケースが多々ありますから。

投稿: へこへこのら | 2012年12月29日 (土) 10時43分

今日は久しぶりに陽気が良いのでsun釣られてみましょうhappy01

こういう、いまだに逃げ出さずがんばっている医師をこきおろす、というのは医療崩壊の聖地の伝統芸能ですか?
一言ご忠告申し上げるならば、こういう怨嗟の声というのは、外から良医を呼び込む役には立たないです。
外にいる医師にしてみれば、自分のほうがレベルが上なのか下なのか分かりませんし、
大半の医師は「普通の医師」であることからすれば、同レベルである確率が一番高いのですから。

投稿: JSJ | 2012年12月29日 (土) 12時24分

でもそういう状況って今後悪化することはあっても改善する見込みはないでしょ?>医師の質
だって大戦末期よろしくできの悪い学生も根こそぎ動員して医師に仕立てて僻地に送りだそうってのが国策なんだもの
大丈夫!医療水準全体がだだ下がってけば今日の迷医も明日は並医、明後日には名医になれるはずだ!(^-^;

投稿: 元僻地勤務医 | 2012年12月29日 (土) 12時48分

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